NHN Japan、WIN「ドラゴンネスト」運営チームインタビュー

秋に向け数度のアップデート。クエスト、PvPに続くコンテンツも


5月25日 収録



 NHN Japan株式会社は、Windows用オンラインアクションRPG「ドラゴンネスト」のオープンβテスト(OBT)を5月27日より開始した。

 既に多くのプレーヤーが参加して連日にぎわいを見せている本作について、プロデューサーの杉浦俊輔氏、運営チームの山縣周一氏にインタビューする機会を得た。今後のアップデート計画を含めて幅広くお話しいただいたので、ぜひご一読いただきたい。

 なお、本インタビューはOBT開始直前に行なったもので、OBT開始後の状況については触れられていないので、その点はご容赦いただきたい。




■ CBTまでのスケジュールは順調に進行、日本独自要素も実装

「ドラゴンネスト」プロデューサーの杉浦俊輔氏(左)と、運営チームの山縣周一氏(右)

――まずは先日行なわれたクローズドβテスト(CBT)とエクストラクローズドβテスト(EXCBT)の手ごたえをお聞かせください。

杉浦俊輔氏: CBTでは、お客様のコンテンツ消費速度を知ることと、サーバーシステム面の負荷の確認という2つに比重を置いていました。1つ目のコンテンツ消費に関しては、4日ほどのボリュームを用意して、それに対してお客様がどれだけの時間で消費するのかを見ました。これは我々が想定したとおりの消費速度になっていました。

 サーバー負荷に関しては、CBTとEXCBTを通して緊急メンテは1回だけで、かなり安定的にできたと思っていたのですが、最終日のEXCBTで5,000名までとしていたサーバーキャップの上限をさらに上げた時に、サーバーの問題を発見できました。これは貴重なデータが取れたと思っています。

――ユーザーからの反応はいかがでしたか?

杉浦氏: お客様からのお問い合わせの上位3つを挙げると、ローカライズの精度、ゲームパッド対応、1日のプレイ時間を制限する疲労度システムの是非です。まずローカライズに関しては、今現在も作業を進めており、OBTには間に合わせるよう進めています。ゲームパッドに関しては、現時点ではハンゲームパッドでしか正常に動作しません。ハンゲームパッド以外でも遊べるよう、クライアントでキーアサインができる機能を開発に提案済みです。実装時期はまだ未定ですが、なるべく早く導入できるよう開発会社とコミュニケーションを取っていきます。疲労度に関しては、コンテンツ消費速度が早くなりすぎることを最も恐れているので、現状のまま疲労度の変更はせずにサービスしようと考えております。

――わかりました。ではこれまでの経緯を順番にお伺いします。まずタイトルの発表から現在まで、かなり時間をかけて展開されています。これはどういった理由からでしょうか?

杉浦氏: 1番の要因は、開発側のスケジュールが未確定だった部分があったことです。当初はもっと早くオープンする予定だったのですが、韓国でCBTを3回やっているなど、若干の遅延がありました。また日本で展開する上で、ローカライズに関しては慎重に進めたいと思っていまして、発表から4月末のCBTまで時間がかかってしまいました。ただ当初のスケジュールからは大きな遅れはなく、できるだけ早くオープンするという目標は達したと思っています。

――開発の韓国EYEDENTITIY GAMESとの連携についてはいかがですか?

杉浦氏: サービスまで時間がかかった間に、日本の独自仕様も提案させていただきました。CBTから入ったミッションシステム(詳細は後述)は日本から提案したもので、韓国にも適用されました。またOBTに合わせて、ハンゲームIDなしでできるオフラインの体験版も開発しました。開発との連携はうまくいっていると感じています。




■ ライト層の取り込みを狙い、GACKTなどを起用

オンラインゲームの経験が浅いライトユーザーを取り込みたいという杉浦氏

――本作では、どういったユーザー層をターゲットと考えていますか?

杉浦氏: 以前からオンラインゲームを遊んでいただいているお客様はもちろんターゲットなのですが、今まではコンシューマーゲームが主で、オンラインゲームをさほど触っていないお客様に対してもアプローチできるタイトルだと思っています。そこに対してメッセージを送って、オンラインゲーム市場を拡大していきたいと思っています。年齢層としては10代後半から20代前半がメインになってくるとは思います。

――比較的ライトな層にも楽しんで欲しいという感じでしょうか?

杉浦氏: そうですね。そこがオンラインゲームのお客様の中でかなりのボリュームを占めているので、本作ではそのお客様を取り込んでいきたいと考えています。

――そういったターゲットもあって、コミックなどのマルチメディア展開や、GACKTさんやKOKIAさんとのタイアップも行なっているわけですね。

杉浦氏: オンラインゲームはハードルが高いと思われがちなので、GACKTさんとのタイアップで興味を持ってもらい、メッセージをもっと広く伝えたいという意図です。

完成披露会で「ベルスカード」に扮したGACKTさん

――GACKTさんを起用したのはどういった経緯からでしょうか?

山縣周一氏: GACKTさんに演じていただいた「ベルスカード」というキャラクターがいます。このキャラクターの声を誰にお願いするのかとプロジェクトチームで相談したところ、初めからGACKTさんの名前が挙がりました。知名度もありますし、ゲームファンにも、そうでないお客様にも受け入れられるのではないかと思っています。

――ちなみにGACKTさんの歌うテーマソングはもう完成したのですか?

杉浦氏: もう少しだと聞いています。4月にエイベックス様に移籍されて、その移籍第1弾のシングルとして発売される予定です。

――4月に行なわれた発表会の当日に移籍が発表されましたが、それを狙ってお願いしたわけではないですよね?

杉浦氏: たまたまです。運がよかったですね(笑)。我々がGACKTさんにアプローチしたのは昨年末で、OKをいただいたのは3月だったと思います。そこから音声収録していただいたりと、結構慌しいスケジュールでした。

――既に曲が公開されているKOKIAさんのほうは、どういった経緯からの起用でしょうか?

杉浦氏: 「ドラゴンネスト」の売りとなるのは、アクションと世界観の2つだと思います。アクションに関しては、GACKTさんの演じるダークヒーロー「ベルスカード」が、主人公と同じくらいのストーリー展開をしていくところを売りにしていきます。もう1つの世界観は、綺麗な歌声と楽曲の世界観が合うKOKIAさんにオファーしました。

――ドラゴンネストの世界観と、どういうところが合うのでしょうか?

山縣氏: 本作では自然豊かな森や城下町、さらには砂漠など、多彩なフィールドがファンタジーでありながらしっかりと作られています。「この世界がどうして作られたのか」という深いところまで開発がしっかり作っているからです。その世界観や開発者の思いを音楽として伝えられるミュージシャンを探したところ、KOKIAさんの名前が挙がりました。KOKIAさんにはゲームを見ていただいて、「これなら私も楽しみながら詩を書けそう」と前向きにお答えいただいたので、お願いすることになりました。




■ OBTで2次職実装。ゲーム外では専用SNSを立ち上げ

OBTで導入された2次職を見ながら、今後の展開を聞いた

――では今後の話を伺っていきたいと思います。まずは、OBTから正式サービスにかけてのアップデート計画を教えてください。

山縣氏: 5月27日からのOBTで、CBTではレベル15までだったレベルキャップをレベル24まで開放します。合わせて8種類の2次職が入り、新しいアクションができるようになります。またメインストーリーを進めるメインクエストも、レベル24でプレイできるところまで追加します。今回は「エレナ」というダークエルフのキャラクターとのお話が中心となる展開です。

 セキュリティ面も強化します。通常だとハンゲームIDとパスワードを入力してすぐゲームプレイという形なのですが、新たに4桁の数字を入力する2次パスワードを実装します。昨今、アカウント盗用などの不正行為が多発していますので、セキュリティを上げるために追加しました。ただ、手間が増えるだけのことをお客様に強いるだけでは使っていただけないと思い、2次パスワードを利用するとステージクリア時の経験値を常時5%増やすことにしました。2次パスワードの利用は任意ですが、メリットもありますので、ぜひ設定していただきたいと思います。

杉浦氏: ゲーム外でも、SNSサイトを立ち上げます。ゲーム内のコミュニティーをWEBに設けようというもので、キャラクターデータにひもづいています。

――それは例えばレベルや装備がWEBで見られるのですか?

杉浦氏: 5月27日の時点では、基本的なSNSの機能のみの実装となります。今後はお客様のご意見ご要望に応える形でアップデートしていこうと思っています。例えばミッションを消費した内容をお客様同士で比較しあえるようなものを考えています。

山縣氏: ミッションはやり込み要素の1つで、ある条件を達成することでミッションポイントが貯まっていきます。ポイントをどう使うかは今後色々と考えていきますが、他にもキャラクターの名前の前に付ける「称号」がもらえるという要素もあります。

杉浦氏: ミッションの中には、達成条件がわからない「隠しミッション」もあります。これがSNS上で見られれば、「これってどうやってクリアしたの?」という会話が生まれたりして、コミュニティーの活性化にも繋がると思っています。

――SNSには他にどういった機能がありますか?

杉浦氏: ギルド内のコミュニケーション機能や、一言発言、お客様間のメッセージのやり取りができます。

――ユーザーであれば誰でも無料で使えるのですか?

杉浦氏: はい。ただしレベル5以上でないとSNSのページを開設できないようにしてあります。

――NHN Japanさんにはもともと「ハンゲーム」という大きなコミュニティーがあるのに、独自で作るというのは意外ですね。

杉浦氏: そこには意図があります。弊社でパブリッシングしているタイトルには自由掲示板を用意していて、ゲームIDを表示しているものと、ハンゲームIDを表示しているものがあります。その中で、ハンゲームIDを表示させているコミュニティーは、あまり活性化していません。ハンゲームIDを表示させると、「僕はどこどこのサーバーにいる誰々だよ」という説明からしなくてはならず、お客様にとってあまり使い勝手がよくないのかなと感じています。そこで今回は独自のSNSを作って、ゲーム内のデータでWEBでもコミュニケーションをとってもらうというのが狙いです。




■ 6月末には「セントヘイブン」を実装。秋に向けて新コンテンツも企画中

OBT以降のアップデートについても説明を聞けた。6月24日には早くもレベルキャップが引き上げられる

――OBT以降はどういったスケジュールになっていますか?

杉浦氏: まずは6月9日より、有料アイテムの販売を開始します。販売するアイテムは消費系アイテムが主になっています。外見を変えるアバターアイテムはこのタイミングには入らず、6月24日にアバターの販売開始と同時に、大型アップデートを行ないます。

――アバターは有料アイテムとしてのみ提供されるのですか?

山縣氏: もう1つ、「PETAL」というゲーム内通貨でも購入できます。OBTでは、PETALはレベル5、10、15といった特定のレベルに到達すると獲得できます。これを使って、6月9日に販売する課金アイテムと同等の物を入手できます。OBTで取得したPETALは正式サービス時になくなりますので、OBT期間中にアイテムを交換して欲しいですね。

――レベルアップ以外にPETALを入手する方法はあるのですか?

杉浦氏: 現時点ではまだ企画段階ですが、ログインをすると貯まっていくといったことも考えています。課金の有無で大きな差が開かないような仕組みを作っていかなければならないと思っていて、その対策としてPETALを導入しています。

――アバターは見た目の変化だけですか?

杉浦氏: 能力値のプラスもあります。

――それ以外に、能力を上げる有料の装備品は出てこないということですか?

杉浦氏: 現時点では、ありません。

――わかりました。続いて6月24日の大型アップデートについても教えてください。

山縣氏: レベルキャップを32まで開放し、4つ目の街「セントヘイブン」を公開します。それに伴ってメインストーリーも開放し、クエストやスキルも増えます。コンテンツの横の広がりを感じられるアップデートになると思います。

――3次職はまだ出てこないのですね?

山縣氏: ここでは追加されません。とはいえレベル32になると、2次職で使用できるスキルが大幅に追加されますので、それをプレイしていただきたいですね。各職業でスキルツリーが大きく3つの系統に分かれているのですが、平均的に伸ばしたり、1つに集中して伸ばしたりすることで、同じ職業でもかなり個性的なキャラクターを作れるようになります。

――わかりました。ではさらに先の話ですが、今秋にも大型アップデートを行なうという話がありました。これについて今お答えいただけることはありますか?

杉浦氏: 現状、韓国で発表されているものがレベルキャップを40まで開放したものなのですが、これは秋のアップデートではなく、その前に入れようと思っています。秋のアップデートについては、縦のアップデートよりは横のアップデートですね。遊び方のバリエーションをもっと増やすものを入れようという方向で開発と相談しています。

――今は4人でプレイしてモンスターを倒しに行くものと、PvPという、2つのコンテンツがあります。それに並ぶ別のカテゴリを作ろうということですか?

杉浦氏: そうです。

――具体的にはどういったものになるのでしょうか?

杉浦氏: 今はまだ秘密ですが、7月か8月には話せるかもしれません。企画はほぼ終わっていて、開発にかかっているところです。


【セントヘイブン】
6月24日に実装予定の第4の街「セントヘイブン」。かなり大きな街のようで、巨大な建造物が立ち並んでいる



■ 3DチャットやARなど、新しい試みも多数

――ではゲームについて、細かいところをいくつかお伺いしていきます。まず本作がNVIDIA 3D Visionでの立体視に対応しているという発表がありましたが、何か特別なチューニングをされているのですか?

山縣氏: 特にクライアント側に何かを入れ込んだというわけではありません。ただ開発時からNVIDIA 3D Visionをある程度視野に入れていて、元々組み込まれていたというところです。オフライン体験版も立体視にできますので、そちらをご覧になっていただきたいです。

――3Dというと、発表会で「3Dチャット」が入るという話もありました。これはどういうものなのでしょうか。

杉浦氏: ボイスチャットを3Dに拡張する機能で、3Dサラウンド機能とボイスチェンジャー機能が含まれます。4人でパーティープレイをすると、自分より前にいるキャラクターのボイスは前から、右にいたら右から聞こえるという3Dサウンドの演出をしてくれる仕組みを考えています。韓国で7~8月に導入予定で、日本ではその1~2カ月後に導入する予定です。

山縣氏: これは普通のステレオヘッドホンでも音の方向性が感じられるという、非常に新しいシステムになっています。

発表会でのAR機能のデモでは、キャラクターが現われるだけでなく、KOKIAさんのCDのジャケットをかざすと曲が流れるといった仕組みも披露された

――あと発表会では、AR(Augmented Reality、拡張現実)のデモも行なわれました。これはどういったものになるのでしょうか?

杉浦氏: 従来のARだと、1つのマーカーで1つの遊びしかできませんでした。我々のARでは、マーカーではなくて画像認識を使っているのですが、1つの画像でいろいろなものを表現できます。キャラクターデータのデータベースとひもづけることによって、同じ画像でもARで表示されるものが変わります。例えばキャラクターのレベルが1だとソーサレスしか現われなかったものが、レベル3になるとソーサレスとクレリックが出現する、といった仕掛けが可能です。

山縣氏: ハンゲームにログインしていただいた状態でARのアプリケーションを起動させるので、そういったデータ連動ができます。まだ開発中の話なのですが、サーバーのデータをリアルタイムに書き換えることもできます。例えばサーバー情報をモニタリングして知らせるAR画像があったら、普段は「稼動中」と知らせるキャラクターを見せておいて、サーバーのメンテナンスが始まると「メンテナンス中です」と変えるとか。常にARを出しておいても変化が見られて面白いという機能は実装できると思います。

――ちなみにこれを利用するには、WEBカメラは別途必要ですよね?

杉浦氏: そうなんです……。

――あと先程もお話が出た、ゲームパッド対応についてはどういった状況でしょうか?

杉浦氏: クライアントにキーアサインする機能を用意することで、他社のゲームパッドにも対応できると思います。今のところ、6月末のアップデートの後の実装項目になっていまして、なるべく早く導入できるよう調整してまいります。

――EYEDENTITY GAMESさんはコンシューマーゲームの開発経験もあるので、ゲームパッド対応がされていないのは意外でした。

杉浦氏: ただゲームパッドには、エイムアシスト機能(ターゲッティングを補助する)など独自機能も盛り込んでいます。韓国の開発会社では、普通はゲームパッドの企画者はいないのですが、EYEDENTITY GAMESさんにはゲームパッドの企画者を専属で置いていただいて、予定よりも早くこういった機能を実現しています。

山縣氏: ゲームパッド対応には、コンシューマーゲームのお客様を狙いたいという大きな意図がありますので、そのためにもエイムアシストなどの機能も盛り込んでいます。ハンゲームパッド以外のゲームパッド対応には、今後も力を入れていきます。

――ゲーム外でのキャンペーンなどは何か予定されていますか?

杉浦氏: まだ企業名はお話しできませんが、大手ファーストフードチェーンさんと組んだマーケティング施策をやらせていただこうと思っています。関東地区だけではなく、全国で予定している大規模なものですので、期待していてください。他にも、協力していただいているPCメーカーさんや、コミック展開など、他社とのタイアップ企画を予定しています。

――わかりました。では最後におふたりから、改めてこのゲームの魅力について語っていただけないでしょうか。

杉浦氏: やはり世界観とアクションが売りです。特にアクションはかなりのスピード感があり、直感的なプレイを実現しているので、私もとても楽しいと感じています。お客様のプレイ動向を見ていても、そのように感じていただいている方が多いようで、そこは確信を持っています。まずは、ID不要でどなたでもプレイできる体験版をプレイしていただき、その後、ぜひ本編の「ドラゴンネスト」のアクションを楽しんでいただきたいと思います。

山縣氏: スピード感あふれるアクションだと、操作が難しそうだと感じるお客様も多いと思います。「ドラゴンネスト」はゲームパッド対応やエイムアシスト機能で、初めてオンラインゲームをやってみようというようなお客様でも簡単に入れる仕組みをしっかり整えています。ぜひ最初のオンラインゲームとして遊んでいただければと思います。

――ありがとうございました。


Published by NHN Japan Corp.
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(2010年 6月 4日)

[Reported by 石田 賀津男 ]