インタビュー

「フォーオナー」の戦いは信念をぶつけ合う「アート」!

企画者Jason氏が語る、15年かけて実現させた“剣術の素晴らしさの体感”

2月16日 発売予定

価格:8,400円(税別)

 ユービーアイソフトが今年2月16日に発売を予定しているプレイステーション 4/Xbox One/PC用メレーアクション「フォーオナー」。このたび、クリエイティブ・ディレクターを務めるJason VandenBerghe氏が日本に来日した。

 「ナイト」、「ヴァイキング」、「侍」の3つの勢力が剣による戦いをくり広げるメレーアクションとして制作されている本作。複数のルールが用意されたマルチプレイモードと、そのバックボーンとなるストーリーを体験する1人用のストーリーモードが用意されていて、国内では昨年10月にマルチプレイに特化したαテストが行なわれ、熱心な「フォーオナー」ファンはその駆け引きの面白さを体験していただけたかと思う。

 そんな本作の生みの親とも言えるのが、冒頭に紹介したJason氏だ。かつては同社で「レッドスティール2」や「ゴーストリコン フューチャーソルジャー」をはじめとする多くの作品を手掛けてきた人物で、本作は同氏がプライベートで体験してきた西洋剣術からイマジネーションを得て、製作に5年、構想段階ではなんと15年もの月日をかけて完成させた超大作のプロジェクトとなっている。

 弊誌では同氏にインタビューを敢行し、その開発秘話やゲームプレイにおけるアドバイスなどを聞いてきた。

 なお本作に興味を持っている方は、このインタビューと同日に行なわれたメディア向け体験会でのストーリーモードのインプレッション記事も掲載しているので、こちらとともに読み進めていただければ幸いだ。

【「フォーオナー」ストーリートレーラー】

構想15年、制作5年。ゲームで構想がすべて実現!

ユービーアイソフト クリエイティブ・ディレクターのJason VandenBerghe氏。「フォーオナー」は氏の企画から生まれた
実直かつ骨太なバトルシーン。剣術をぶつけ合うアクションは、戦いそのものが「アート」として捉えられている

――まずは、本作におけるJasonさんの役割と、この「フォーオナー」の開発経緯からお聞かせください。

Jason氏: はい、私は「フォーオナー」のクリエイティブ・ディレクターとして、5年間開発に携わっています。このゲームは約15年前から構想していた私の企画から生まれたもので、ついにその夢がこの2月に叶うことになりました。

――そんなに前から思い描かれていた作品が発売されるとなれば、本当に夢が叶いましたね。

Jason氏: ありがとうございます。本作の大まかな仕様やストーリーなども全て私の構想から実現したものなので、とても嬉しく思っています。

――15年という月日は、ゲームの構想期間としては非常に長いものかと思うのですが、なぜこれまで実現できなかったのでしょうか。

Jason氏: このゲームの思いついた頃の私には、それを誰かに上手く伝えられるような技能もなく、思い描いている表現をするためのテクノロジーも追いついていませんでした。月日が経つにつれ、「ロード・オブ・ザ・リング」や「ゲーム・オブ・スローンズ」のような作品が登場してきたことで、ファンタジーの世界観が世に浸透してきて、そして1番必要だったテクノロジーと最高の開発チームが揃ったことで、ようやく実現することができたんです。

――Jasonさんが思い描いていたゲームの内容は、本作でどこまで実現できましたか?

Jason氏: 構想は全て実現できたといっていいでしょう。15年温めていたものが、実際に遊べるゲームになって、それをE3で発表し、そしてこの2月に発売できるというのは本当に夢が叶った、あるいはそれ以上の気持ちで胸がいっぱいです。

――そんな本作の生みの親であるJasonさんから改めて本作のセールスポイントを教えていただけますか。

Jason氏: このゲームで描かれている戦いは「アート」であり、登場する戦士たちは自分たちの信念をもって戦う「アーティスト」なんです。「アート・オブ・バトル」というゲームシステムの概念もそこから由来しています。プレーヤーはこのゲームで、戦士というアーティストの1人となって、戦いというアートを描いていくことになります。コントローラーを通じて、彼らがそれぞれ持っている信念と、様々な武術や剣術の素晴らしさを体感できるようになっています。

 もともとこのゲームを思いついたきっかけは、その昔私が学んでいた「ロングソード・ファイティング」という剣術なのですが、ゲームをプレイしていただくことで、そうした実在する武術や剣術に興味を持っていただければ嬉しいですね。

――ゲームに登場する勢力は、一体どんな信念をもって戦いに挑んでいるのでしょうか。

Jason氏: 侍ならば自らの技術を高めることや自己犠牲を尊び、ヴァイキングなら戦いにおける熱意を高め、そしてナイトなら弱きを守る守護者としての誇りを持っている、といったところですね。ゲームをプレイするときは、彼らがこのような信念をもっていることを頭に思い描いて勢力を選んでみると、戦うときの気持ちも高揚すると思います。

ストーリーモードが過去、マルチプレイが現在という時系列

ナイト、ヴァイキング、侍の3勢力が戦う世界観。これもJason氏が初期に打ち出したアイデアだったという

――今回プレイさせていただいたストーリーモードは、どこが見どころとなりますか?

Jason氏: このゲームのバックボーンには、ナイトとヴァイキングと侍が戦っているという設定がありますが、ストーリーモードではその理由を真実味のあるフィクションとして描いています。時系列で並べるとストーリーモードは過去の物語で、マルチプレイが現在なので、この戦いが一体なぜ発生したのかが、あらかじめストーリーモードをプレイすることでわかるような仕組みですね。

――ストーリーモードは、単純に敵と戦うだけでなく、敵の出現場所を破壊したり、馬に乗っての攻防があったりしましたが、ああいった特別なアクションは他にもあるんですか?

Jason氏: ストーリーモードは、プレーヤー同士の純粋な戦いを行なうマルチプレイではできない、プレーヤーの気分を盛り上げる見栄えのする演出をたくさん入れています。あの馬のシーンのように、普段の剣による戦いとはプレイ感覚がまったく違う演出はストーリーモードの随所に入っていますので、ぜひ楽しみにしていてください。

――一方のマルチプレイモードですが、オープンαテストでプレイできた「ドミニオン」に加えて、同じ4対4で戦う「エリミネーション」が追加されたそうですが、こちらはどのようなバトルになるんでしょうか。

Jason氏: マップの征圧や敵を倒すことでポイントを稼ぐという目的を持ったドミニオンとは違い、エリミネーションは「ブロウル」(2対2のチーム戦モード)と同様のチームによるデスマッチで、生き残ったヒーローのいるチームが勝利となるルールになっています。

――αテストから何か変わったところはありますか?

Jason氏: ゲームバランスの調整や、システム的に少し難しかったところを簡単にするなどといった細かな変更はありますが、αテストの段階で多くのプレーヤーがこのゲームのシステムを高く評価してくれましたので、根本的な部分に変更はありません。

――本作を開発する上で、苦労したところはどこでしたか?

Jason氏: 1番大変だったのは、プレーヤーがしっかり感情移入できるような、人間味のあるキャラクターを作ることでした。本作の戦いの中心には、「アポリヨン」という戦いの女神がいるのですが、彼女がつまらないキャラクターでは物語は盛り上がりませんので、その設定付けには大変苦労しました。それだけに、アポリヨンは悪役として非常に魅力的なキャラクターに仕上がりましたので、ストーリーモードではぜひ注目してみてください。

――そんなアポリヨンの画策のもとに3つの勢力が戦うという設定は、最初から決まっていたんですか?

Jason氏: はい、3つの勢力がいることは、開発初期の段階からありました。本作の原点となる「剣と剣による戦い」というゲームにマッチした世界観を改めて考えるときに開発チームから出てきたのが、ナイトやヴァイキング、侍というキャラクターだったんです。

 せっかくチームの中から出てきたアイデアですので、それならば全て使ってしまおうということで、彼ら3勢力全員が主役となって戦う設定となりました。チームのメンバーもまさか全部が採用されると思っていなくて、私が全採用を決めたときは大変驚いていました(笑)。

――本作の「フォーオナー(FOR HONOR)」というタイトルにはどんな由来があるんでしょうか。

Jason氏: 本作は、プレーヤーが戦士になれるゲームです。ゲームを始めるにあたり、あなたが一体どんな戦士になるのかを問いかけるのですが、戦士には常に名誉(HONOR)という言葉が関わっていて、その問いかけを置き換えたのが、本作の「フォーオナー」というタイトルなんです。「あなたはこのゲームでどんな戦士になって戦うのか?」、そして「あなたにとっての名誉とは何なのか?」という問いかけを、このタイトルに込めているんです。

――Jasonさんから、このゲームに挑むにあたってのアドバイスを改めていただけますでしょうか。

Jason氏: 技術的なアドバイスとしては、2つあります。まず最初に頭に入れるべきは「防御」です。このゲームはとにかく、確実に防御をすることが大事で、防御が上達することでゲームも上手になっていきます。

 もう1つ大事なのは、人数が不利な戦いには絶対に挑まないことです。他のゲームなどでも、状況を打開したくて不利な戦いにあえて挑むような状況はあるかもしれませんが、このゲームは不利なときは本当に不利なので、自分1人に対して敵が2~3人いる場合などは逃げた方が確実です。

――初めて遊ぶ人にオススメのヒーローは誰でしょう?

Jason氏: やはりオススメは「ヴァンガード」のクラスですね。ナイトなら「ウォーデン」、ヴァイキングなら「レイダー」、侍なら「剣聖」の3人です。戦士としてのバランスが取れていて、防御も優れたキャラクターで、操作もスタンダードで使いやすいです。他のヒーローを選ぶのは、ヴァンガードを使ってゲームに慣れてからチャレンジしてみるのがいいと思います。

――逆に通好みのテクニカルなヒーローはどれですか?

Jason氏: 好みはプレーヤーによって変わると思いますが、例えば格闘ゲームのような駆け引きが好きな人なら「アサシン」のクラスのヒーローが面白いかもしれません。ナイトの「ピースキーパー」、ヴァイキングの「バーサーカー」、侍の「大蛇」ですね。彼らはブロック時の「中立スタンス」という特殊な構えを持っていて、個々の技もテクニカルで、上手く扱うことができれば、非常に面白く戦えるヒーローです。

――この作品を作るにあたり、Jasonさんが影響を受けたエンターテインメントなどはありますか?

Jason氏: 私は子供の頃から剣術や武術に興味があり、映画で言えば「七人の侍」や「キング・アーサー」など、その手のものが出てくる作品には片っ端から触れてきましたので、そういった多くの作品から吸収した情報は、本作に大きな影響を与えていると言えますが、どれか1つを挙げるというのは難しいですね。何か1つの作品に特化した情報が強調されているわけではなく、多くの作品からアイデアを取り入れて、ゲームとしてまったく新しいものに完成させた、というのが正しい言い方でしょう。

プレーヤーの勝利が勢力の力となる壮大なモードも用意

発売後も様々な要素が加わっていく。新たなゲームシステムも登場予定

――ゲームの発売がこの2月に控えていますが、現在の開発状況はいかがですか?

Jason氏: 現在はほぼ完成の状態まで到達していて、私を含め開発チームの多くは先日まで休みをいただいていました。今は復帰して、最終調整とデバッグをしています。

――今後のDLCやアップデートの構想などはありますか?

Jason氏: 先日「ファクションウォー」というシステムを発表しましたが、私としても、何年も遊んでもらえるようなゲームになってほしいので、発売後もいろいろな遊びを提供していく予定でいます。まだ詳しい内容については、お知らせするにはまだ早いのでもう少し待っていてください。

――ちなみにそのファクションウォーとは、どんなシステムなのですか?

Jason氏: ファクションウォーは選んだ勢力に所属して、マルチプレイで勝利するとポイントが手に入り、それをワールドマップ内に投入することで所属勢力の力を伸ばせるという、勢力争いを楽しむシステムです。シーズン単位で勝利が決まり、勝った勢力に所属したプレーヤーには特典が用意され、さらにその結果がこの世界における歴史となっていきます。

――システムとして気になるのですが、所属する勢力は変更できるたりするんでしょうか。

Jason氏: はい、途中変更もできますが、変えた場合にはそのシーズンの特典は手に入らないルールになっています。ですので結果を見て勢力を変えたとしても、特典は次のシーズンでその勢力が勝ってからもらえるということですね。

――最後に、本作を楽しみにしている日本のプレーヤーに向けてメッセージをいただければと思います。

Jason氏: 先ほどもお話ししましたが、ゲームから皆さんへの問いかけとして、皆さんはまず自分の居場所となる勢力と、自分の分身となるヒーローを見つけてみてください。

 もちろん1人に限らず、いろいろと試していただいて、自分の中の内なる戦士を目覚めさせるようなヒーローを見つけてもらえれば嬉しいです。ゲームは1人で遊ぶストーリーモードや、たくさんの人と遊ぶマルチプレイモードと、いろいろな遊びを用意しましたので、自分に合ったモードで楽しんでみてください。

――わかりました。ありがとうございました。

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