インタビュー
【特別企画】「figma シューティングゲームヒストリカ アイアンフォスル」インタビュー
海老川氏がリファインした「ダライアス」巨大戦艦がフィギュアに!
2017年1月26日 00:00
FREEingが企画し、グッドスマイルカンパニーより発売が予定されている「figma シューティングゲームヒストリカ アイアンフォスル」は、多くの人から注目を浴びる商品である。まず、アクションフィギュア「figma」と、シューティングゲームのキャラクターをフィギュア化する「シューティングゲームヒストリカ」、2つのブランドを冠する商品というところでとても興味を惹かれる。
しかもモチーフとなるのは「アイアンフォスル」である。アイアンフォスルは、1986年にタイトーよりリリースされたアーケードゲーム「ダライアス」のゾーンAに登場する「キングフォスル」の形状を受け継ぐ巨大戦艦。アイアンフォスルは続編となる「ダライアスバースト」シリーズに登場する。「化石」を意味する「フォスル(Fossil)」の名称は、そのモチーフとなった“生きている化石”と呼ばれるシーラカンスから名付けられたものだ。
その最大の特徴は、全身にウロコのような形で装備されたチョバムアーマー(複合装甲)で、これにより敵からの攻撃を最大限に防御可能。船尾にはバーストビーム砲を装備し、高い攻撃性能も持ち合わせていて、常に最前線で戦うことを想定された戦艦という設定だ。
この「figma シューティングゲームヒストリカ アイアンフォスル」は、巨大戦艦のスケール感をほぼそのままに、全長約33cmというfigmaとしては最大級のサイズで設計。特徴的なチョバムアーマーは左右全32枚が全て可動し、その他にも口や船尾バーストビーム砲の展開など、アクションフィギュアとして大いに楽しめる設計となっている。
アイアンフォスルのデザインを手掛けたのは、メカデザイナーの海老川兼武氏。「機動戦士ガンダム00」をはじめとする、人気アニメーションのメカデザインを手掛けるかたわら、この「ダライアスバースト」のシリーズでは、アイアンフォスルやクジラ型の「グレートシング」、そしてプレーヤー機「シルバーホークバースト」の各バリエーション機体をデザイン。さらにこのアイアンフォスルのフィギュア化にあたり、そのデザインのリファインも手掛けている。
今回特別企画として、この「figma シューティングゲームヒストリカ アイアンフォスル」を企画したFREEingの依田智雄氏と、リファインを手掛けた海老川兼武氏にインタビューを敢行し、企画の経緯や開発秘話などを聞いた。
モデリズム小林和史氏の原型写真に、海老川氏が新規ディテールを直接描き込んでリファイン
――まずは海老川さんが、「ダライアスバースト」シリーズのメカデザインに関わられたきっかけを簡単にお聞かせいただけますか。
海老川氏: タイトーさんで「ダライアスバースト」の企画が立ち上がってから少しして、私と柳瀬さん(柳瀬敬之氏)に声がかかりました。丁度アニメの仕事が忙しい時期でしたが「ダライアス」は昔から大好きなタイトルでしたので、二つ返事でお受けさせて頂きました(笑)。
――柳瀬さんが主にボスなどを含む敵キャラクターで、海老川さんは自機である「シルバーホーク」の担当だったのが、海老川さんが「ダライアス」シリーズのファンだったということで、急遽アイアンフォスルと巨大なクジラ型のボス「グレートシング」も担当されることになったとか。
海老川氏: 確かそんな感じでしたね(笑)。
――このアイアンフォスルを手掛けるうえで、何か心がけたことはありましたか?
海老川氏: 前身となる「ダライアス」のキングフォスルがかなり完成されたデザインで、タイトーさんからもそれがわかるレベルで残しつつアレンジをしてほしいという依頼で、そこを守りつつも新しい機体にしなければなりませんから、そのバランス取りが難しかったですね。
幸い、私がアイアンフォスルをデザインする頃には柳瀬さんのデザインしたボスの作業が数体進んでいましたので、そこにデザインラインを合わせて統一感を出しつつ、自分なりのテイストを盛り込んで仕上げたのがアイアンフォスルでした。
――そのアイアンフォスルが、今回「figma シューティングゲームヒストリカ アイアンフォスル」としてフィギュア化されたわけですが、この企画はいつ頃から始まったんでしょうか。
依田氏: 最初にタイトーさんにお話をしたのは2015年末ぐらいでした。そこからすぐに準備に取りかかって、翌2016年2月のワンフェスで最初の試作品を出展したんです。
――企画からかなり早く立体化できたんですね。
依田氏: はい、実はあの最初の原型は、モデリズムの小林和史さんに、ゲームのCGを参考に立体化用のCGを起こしていただいて、それを3Dプリントで出力したものだったんです。元のCGビジュアルを参考に見える範囲でのディテール再現は行なっていたのですが、立体になったことで今まで見えなかった面やディテールなどが見えるようになってきたんです。
それをタイトーさんに監修していただくにあたり、せっかくのフィギュア化の機会ですので、海老川さんにご監修とディテールのチェックをお願いすることになったんです。
――なるほど、海老川さんに打診した時点で、最初の形はできていたんですね。それをご覧になったときの印象はいかがでしたか?
海老川氏: 最初の印象はとにかく「デカい!」ということでした。しかもこれがfigmaブランドというのも驚きで、サイズも1/12フィギュアを基準に考えていたものですから、大きくても20cm程度かと思ったら、30cmオーバーですからね(笑)。
依田氏: ワンフェスの後にグッドスマイルカンパニーさんの展示会があるんですが、そこで展示させてもらったときに、グッスマさんの関係者の方から「これfigmaなんですか?」って言われましたしね(笑)。
――(笑)。方向性としては、非可動のスタチュー的な商品化も選択肢としてあったかと思うんですが、やっぱり動かしたかったんですか?
依田氏: このサイズで作るのであれば、非可動のディスプレイモデルよりは、ある程度ポーズを付けて飾れたほうが楽しめますからね。しかもゲーム中のアイアンフォスルは、とにかくウロコがよく動くので、フィギュアにするなら、ぜひそれを表現したかったということがありました。
企画後にすべての関節パーツをを新規で起こすのかを社内で検討させていただいたときに、弊社でもfigmaブランド商品を企画・販売させていただいているので、もしfigmaの関節パーツを使わせて頂けるなら、製品としても安定したものを供給できるだろうという判断でしたね。
――ウロコの関節はfigmaのものですが、胴体を接続する関節は新規の設計のようですね。こちらはやはり動きを考慮したものなのでしょうか。
依田氏: はい、そうなります。モデリズムの小林さんに最初に設計していただいたときに、魚らしい動きを出すために、いくつかの分割線を決めてモデル上で角度を付けられるようにしたんです。その段階である程度魚らしい動きは出せていたんですが、いざそれを立体にして関節を仕込んで動かせるかどうかは、実際に金型を作って調整をした段階で確認できたことでしたね。新規の関節部分については、現状のサンプルからもう少し調整する予定でいます。
――どのような調整をするんでしょう?
依田氏: サイズがあって自重もあるので、それに対する強度を上げるとか、動かしたときに関節が抜けにくいようにするとか、そういった部分ですね。海老川さんにリファインしていただいたディティールについては、現状で全て反映できています。
――成形にはクリアパーツがいくつか使われていますが、ここもこだわられた部分ですか?
依田氏: そうですね、ゲーム中のイメージとして、光っている部分はなるべくクリアで再現したかったということがあります。今回価格設定に関しては企画当初から低価格では難しいだろうと判断していましたので、それに見合う仕様でまとめています。このサンプルでは、目のパーツはクリア仕様ですが、色がまだあまり明るくないので、裏をシルバーで塗装する等の調整を行なっていきます。
――海老川さんとは、どのようなやりとりをされたんですか?
依田氏: 実は最初の原型をお見せしたときに、その写真を細かく撮影して、その上から直接リファイン用のディテールを描いていただいたんです。(海老川氏のデザインが入った画像を見せて)それがこれですね。
海老川氏: 小林さんが設計して下さったおかげでプロポーションは完璧だったのですが、ゲームのCGと同じく当然見えていない部分がたくさんありまして、それがそのままフィギュアになると、何もディテールのない部分が気になってしまいますからね。見せていただいた時点で基本的な形にはなっていたので、そういう部分を中心に新たにディテールを追加させていただきました。
依田氏: 最終的には動いて見えるところだけでなく、例えばウロコやエラの裏側のように、組んでしまうとわからないようなところまでディテールを入れていただきました。
海老川氏: 可動するフィギュアとなれば、触っているときにチラ見するところもあるでしょうし、ユーザー心理としては隙間を覗き込みたくなりますから、そこにディテールがあれば、喜んでいただけると思うんですよね。
―― 特にここはこだわったという部分はありますか?
海老川氏: このサイズなので、それに見合った最低限のディテールは入れないといけないなと思いました。また巨大戦艦なので、それなりの解像度も意識しましたね。
―― そのやりとりは、比較的スムースにできた感じですか?
依田氏: はい、このディテールアップのデザインは比較的早いタイミングでいただけたので、金型用のCADデータのチェック段階ですべて追加ディテールを追加し、工場からのトライ品(試作品)ではすべて再現できていました。
海老川氏: エラの裏側だけ最後に追加したんですよ。全部反映していただいたところでCADのデータを見せてもらうと、「あれっ、ここ思ったより見えますね」って気付いて(笑)。
依田氏: 確かにそうでした(笑)。エラの裏が最後でしたね。
フィギュア化はこのアイアンフォスルと、グレートシングが候補だった
――「ダライアスバースト」シリーズには、たくさんのボスが登場していますが、アイアンフォスル以外にフィギュア化の候補はなかったんですか?
依田氏: いろいろ考えましたね。私が最初に提案したのは、同じ海老川さんがデザインされたグレートシングのほうでした。ただグレートシングだと、最終ボスなので、ミッションで終わってしまうような気がしたんです。あととにかく巨大ですし。1番最初に作るのであれば、このシーラカンス型がわかりやすいですよね。
海老川氏: 最初のボスだけに、ユーザーさんはほぼ全員戦っているでしょうしね。
――確かにそうですね。ルートによっては見たことがないボスがいたりもしますし。
海老川氏: おまけにシルバーホークがついたことでそのスケール感がわかって、これに乗る人の大きさを考えることで、アイアンフォスルの大きさがわかりますからね。
依田氏: グレートシングだとアイアンフォスルと比較してもかなり大きいので、そのサイズに合わせてシルバーホークをおまけで付けるとなると、本当に豆粒ぐらいになってしまいます(笑)。
――(笑)。スケールだと何分の一ぐらいになるんですか?
海老川氏: (手元の資料を開いて)大きさは、全長518フィートになっていますね。
依田氏: 約158メートルなので、それを約33cmに換算すると、計算では1/478ぐらいになりますね。
――これでもかなり小さめのスケールだったんですね。ちなみに付属のシルバーホークは、最初から付けることを考えていたんですか?
依田氏: はい、大きさを対比する存在として用意するつもりでした。さらにこの「レジェンドシルバーホークバースト」は、オリジナルのシルバーホークに近いシルエットで、魚型ボスとともに「ダライアス」シリーズのアイコンにもなっていますので、並べることですごく絵になるんですよね。
――シルバーホークのディテールも、このサイズにしてはかなりシャープな造形ですが、これも海老川さんに監修いただいんですか?
依田氏: そうですね、こちらも見ていただいています。パーツ数の関係でオミットしているディテールもいくつかあるんですが、入れられる情報は全て入れました。
海老川氏: このサイズなのに凄い細かくてビックリしました。CADの画面で見せてもらったときのディテールがほとんど反映されていましたからね。
――先ほど最初から高めの価格を想定しているということを伺いましたが、21,111円(税別)という価格設定についてはどうお考えですか?
依田氏: 正直なところ、価格はもう少し抑えたかったという気持ちはありました。ただやはりサイズとクオリティを考えると、どうしてもこの価格より低くは設定できなかったというのも事実でした。もちろん価格以上のクオリティの製品になるように、ここから発売までにさらに調整をしていきます。
海老川氏: このサンプルの時点で、ここまで高いクオリティを出せているのは本当に凄いです。私の経験上この手のアイテムは絶対に予約しておいた方が良いかと思います(笑)。
依田氏: はい、ぜひ予約はしていただきたいですね。タイトーさんのオフィシャルTwitterなどでも、このアイアンフォスルの画像を出していただくと凄くたくさんリツイートされて、手応えも感じています。それに応えられるよう、発売に向けて最終調整中です。
8月の発売後には、この大きさと可動を実際にその手で触れて確かめてみてほしい
――海老川さんとしては、このアイアンフォスルの他に、フィギュア化してほしい機体はありますか?
海老川氏: 月並みですけど、やっぱり動くグレートシングは見てみたいですね。アイアンフォスルとスケールを合わせるとなると、一体どんな大きさになるんだって話にもなるんですが(笑)。あとは単純にダイオウグソクムシ(「バイオレントルーラー」)なんかは、単純に関節も多いですし、背中のクリアパーツから見える内部ディテールなど立体になると結構おもしろいかもしれません。
――それを受けて依田さんはいかがです?(笑)
依田氏: アイアンフォスルの売れ行き次第です、と言っておきます(笑)。海老川さんと柳瀬さんの機体ともども、個人的にもすごくやりたいという気持ちはあるんですが、シリーズとして続けられるかどうかは、当然アイアンフォスルの販売動向が重要になってきますからね。
海老川氏: 例えばメカではなくて「Ti2」のfigma化とかはどうですか?(笑)
依田氏: 島田フミカネさんのキャラクターですよね。実は以前話もあったんですが、PSP版「ダライアスバースト」のときに披露されたキャラクターで、それ以降あまり露出がなかったので、企画までには至らなかったんです。
――ちなみに「シューティングゲームヒストリカ」ブランドとしての展開については、何かプランなどはあるんですか?
依田氏: まだ具体的なことはお話しできませんが、今後何かしらの形で展開ができればと考えています。お知らせできる機会もあるかもしれませんので、しばらくお待ちください。
――アイアンフォスルの購入者の方に、こんな風に遊んでほしいという提案のようなものはありますか?
依田氏: ディスプレイに関してのことなんですが、最初は固定台座だったんですが、せっかくなのでfigma用の台座を使ってみようということになって、立てるための板だけ新規に作りました。台座を2つに分けたので、魚のように体をくねらせて飾ることができますので、お客様の好きな状態で飾ってみてほしいですね。
海老川氏: ウロコが全部動くので、それこそ全てを展開させた状態でも飾れますよね。ゲームでは見られないようなポーズが取れるのは、アクションフィギュアの醍醐味ですからね。
私も個人的にフィギュアやプラモデルは持っていますが、その中でも本当に新感覚ですよね。「メカ魚」という呼び方が正しいのかわかりませんが(笑)、ジャンルとしてはこれまでなかったもので、実際に触っていただくことで、その楽しさが分かると思います。
依田氏: あと触っていただくときは、その大きさも感じてみてください。手にとってもらうと、恐らく展示しているときよりもずっと大きく感じられると思います。雑誌用で巨大感を出す写真を撮影しようと思って、「宇宙戦艦ヤマト」のうように、前方から奥に向けたアングルで撮ってみたら、どうやっても全身に焦点が合わなくて苦労したぐらいの大きさがありますからね。
――発売に向けて、お気持ちはいかがですか?
海老川氏: 「ダライアス」シリーズのボスがフル可動するフィギュアになるというのは、自分のデザイン云々に関わらず驚きでした。30年の歴史の中でも初めてのことでしょうし、それが恐れ多くも自分のデザインした機体というのも感慨深いです。
依田氏: 私としても「ダライアス」シリーズのみならず、シューティングゲームのボスキャラは一度は商品化してみたかったんです。ワンフェスなどで一般のディーラーさんが当日版権で出していることはあったのですが、マスプロダクトとして一般流通に乗せられることができることになったのは嬉しいです。
―― そういう意味では、「ダライアス」を選んだのは正解だったのではないですか?
依田氏: そうかもしれません。むしろ「ダライアス」だからこそできたと言っても過言ではないですね。
――今年8月の発売に向けて、メッセージをいただけますでしょうか。
依田氏: 発売は少し先ですが、この1月末には予約が開始されます。価格に合ったご期待に応えられる商品になっていますので、ぜひご予約いただければと思います。この次の段階の最終に近いサンプルは2月のワンフェスでお見せしますので、そちらも購入の参考にしてみてください。
海老川氏: 立体としての完成度が凄く高いところに収まっているので、私個人としてはここで見させていただいた時点で、価格以上の価値があると思いました。何はともあれ、触って動かして遊んでいただきたいです。またゲームでは見られないディテールも入れましたので、そのあたりも見ていただければ嬉しいです。
――8月の発売を楽しみにしています。ありがとうございました。