インタビュー
「ファイナルファンタジーXV」&「キングスグレイブ」E3インタビュー
“生きている世界で、仲間たちと共に歩んで、一生残るような感動体験を”
2016年6月15日 09:00
9月30日の発売に向け鋭意開発中のプレイステーション 4/Xbox One「ファイナルファンタジーXV」。ロサンゼルスで開催されるE3 2016でも試遊デモの出展やステージイベントが行なわれるということで、このタイミングにインタビューを行なわせて頂いた。
インタビューにお答え頂いたのは、「ファイナルファンタジーXV」の田畑端ディレクターと、7月9日より全国ロードショーされるフルCG映画「キングスグレイブ ファイナルファンタジーXV」の野末武志ディレクター。
なお、インタビューの文中ではゲーム「ファイナルファンタジーXV」を「FF15」、CG映画「キングスグレイブ ファイナルファンタジーXV」を「キングスグレイブ」と表記している。
また、この日は事前に、5月に行なわれた北米のゲームレビュー会「ジャッジズデイ」向けに使用された「FFXV」本編を1時間ほどプレイしており、また、インタビュー後にはE3 2016に出展される試遊デモもプレイさせて頂いた。その本編&E3試遊デモのプレイレポートも掲載しているので、そちらもぜひご覧頂きたい。
E3 2016の試遊デモは、巨神「タイタンとのバトル」! タイタンは“メテオを背負っている”
――まずはE3 2016での試遊デモについてお伺いいたします。
このインタビューの後にプレイさせてもらうという流れなので、実はまだどんな内容になっているのか知らないのですが……、今回のデモはどのようなコンセプトで切り出されたものなのでしょうか?
田畑氏:ゲームって緩やかに始まっていきますから、ゲームのスタート部分から遊んでもらうのだと、覚えなければいけないことがあり、ゲームに慣れてからいろんな文脈が展開していくという感じになるので、10分程度という短時間の試遊には向かないんです。
そこで、今回のE3デモには短時間でもこのゲームの一面が伝わるところとして、「タイタンとの戦い」を選びました。
――タイタンとの戦い!
田畑氏:試遊を始めるといきなりタイタンとの戦いが始まります。タイタンってでっかいし、ガンガン攻撃してくるので、ボス戦ならではの迫力があるんですよ。
そんな突然の戦闘でも「どうすればいいのかわからない!」とはならないことが大事です。適当に戦っていても何をすればいいかすぐにわかるし、ゲームになるっていうところを味わってもらいたいな、と。そういう考えでタイタンとの戦いのシーンをチョイスしています。
――なるほど。それはぜひ、インタビューの前にプレイしてみたかったです。触ったらいろいろと伺いたくなりそうですが
田畑氏:E3のデモは実はまだ今も調整中なんですよ。ギリギリまで手を入れていますので。でも「仕上がったら凄いだろうな」っていうのは、わかってもらえるとは思います。
あと、コンソール機でちゃんと動いているのを今回のE3で見せたかったので。そういうところも感じてもらえればと思いますね。「ちゃんと発売しそうだぞ!」という感じで(笑)。
――なるほど。迫力のある戦闘と、操作のわかりやすさ、家庭用ゲーム機で実際に動いているところを知ってもらいたいというデモなわけですね。
現在、ゲーム本編の開発状況はどのようになっているのでしょう?
田畑氏:今も話にでたコンソールゲーム機、PS4とXbox Oneで動くように最適化を進めるというのが1番優先していることです。並行してローカライズ……各国版の言語対応ですね。
後はデバッグ……不具合をどんどん直していく。それとポリッシュ……ブラッシュアップですね。いろんな表現を磨いていって遊びやすくしていく。これらを並行して行なっているところです。
――このインタビュー前に、E3 2016で公開される最新のトレーラーを拝見させて頂いたのですが。召喚獣を中心に「こんなものと戦うのか!」というものや、「これは何だろう?」というものも含めて、かなり興味深かったです。今回はタイタンとの場面が多いですよね?
田畑氏:そうですね、E3試遊デモもタイタン戦なので、タイタン推しです(笑)。
E3トレーラーでは、“召喚獣としてのタイタン”と“ボス敵としてのタイタン”、両方あるというのを知ってもらいたいですね。
――タイタンの外見が異なるシーンが映っていますよね? 顔や体からクリスタル的なものが突き出ている痛々しい姿がありました。あれもタイタンなんですか?
田畑氏:あれは“召喚獣として使えるようになる前のタイタン”なんですね。最初にあの状態のタイタンと戦うんです。タイタンはノクトの力を試すのですが、認めるとノクトに力を貸すようになります。それ以降は召喚獣として呼ぶと、どこからともなくやってくるようになるんです。
――その前後で外見に変化があるんですね
田畑氏:容姿そのものは同じなんですけど……“メテオを背負っている”というのはなくなります。背負った姿のままで召喚されるわけではないんですね。
――メテオを背負っている! 背中の丸い巨大なものがメテオなんですね。あの姿は、メテオを背負ってダメージを受けているというか、何かに浸食されているという表現にも思えますが。
田畑氏:そうですね。あれは今回の本編ストーリーにはあまり関係しない設定なのですが、あの世界を構築するなかに、タイタンはメテオ……隕石ですよね、あれを受け止めて背負ったままに眠りについたという設定がありまして。それでああいう姿をしているんです。
物語は2国間の争いから、世界全体の変化へと広がっていく
――「FF15」の世界は、とても現実的で最先端な文明もあり、そんな世界観のなかで政治的なもの、戦争があって、そこでの旅があり絆が描かれていますが……一方であの世界のバックボーンには、今のタイタンのエピソードのように神秘的なもの、神話的なものがありますよね
でも、今のタイタンのお話はゲーム本編にはあまり関係しないということで、それがなんとも気になります
田畑氏:バックボーンがどういうものなのか、ということですか?
――それも、もちろんそうなのですが……「FF15」というゲームは中盤から後半には、序盤とは全然雰囲気の違う神秘的な世界の話へと一気に変わっていったりするのでは、と想像してしまうんですよね
田畑氏:それ鋭いですね。全然違うゲームになったりはしないんですけど……ゲームの中盤以降は“だんだんと変化していく世界と、それに巻き込まれるプレーヤー”という図式に変わっていくんですよ。
――世界全体の話へと広がっていく。
田畑氏:王国ルシスと帝国ニフルハイムという2国間の争いから、世界そのものの変化というものに推移していきます。
――以前には、ヒロインであるルナフレーナが星の病を癒やす役割を持っていて、それがなければ“あの世界の夜が長くなる”というお話もありましたが、それが今のお話なのでしょうか?
田畑氏:そうですね。ただ、ルナフレーナがいないと夜が長くなるのではなく、それはあの世界に絶対に起きる環境の変化なんです。
あの世界の夜はだんだんと長くなっていきます。ルナフレーナはそれに抗い、ノクトの持つ使命を支える……という役割になっています。ヒロインであるとともに、世界の変化にも役割を持っている存在ですね。
ノクトたちはゲームの始まりの時点ではそれを知りません。だんだんと世界に何かが起きているということを知っていきます。
――うーん、ノクトはそれこそ、自分の国であるルシスが襲撃されたことも旅先で突然知るようですし……何も知らされていないお坊ちゃん扱いのような状態ですね。でも、次第に身近な人が世界に関わるような運命を持っていることを知っていく……。
田畑氏:そして、皆が自分に対してどんな期待を抱いているのかもわかっていく。それ応えるためには、自分は成長しなければいけないということも知っていく。
――緩い言い方をすれば、ノクトは“選ばれし者”というようなスタンスに立たされるのかなと思いますが、本人はそれをあまり望んでいないような。そういう葛藤のある成長物語なのかなと感じます
田畑氏:そうですね。最初は自覚や覚悟が伴わない。けれども皆の期待には応えたい。彼は最終的にはがんばっていくことになりますね。
――お話を聞けば聞くほど、ノクトは2面性のあるキャラクターになっているのかなと思えてきます。ツンデレなところもあるというか、少年から大人へと変わっていく狭間というか
田畑氏:おぉー! ようやくそこまで来てくれましたね(笑)。
ノクト自身はもっと等身大な自分でありたいと思っているけれど、でも、それを素直に表現できない。今作の主題歌である「Stand by Me」の歌詞は、そこを補完しているところもあるんですよ。主題歌の歌詞と主人公の心情がマッチするというのは、なかなかいいかなと思ってチョイスしたんです。
――「Stand by Me」の歌詞は、今は遠く離れている人に、そばにいてくれたら、そばにいたい、と想いを伝えるような……直接は素直に言えなかったけどというニュアンスも感じられるあたり、とてもノクトっぽい感じがしますね。
田畑氏:そのへんの人間らしさを伝わえていくことで、よくある成長物語ではなくプレーヤーの感情に訴えるようなゲーム体験になってくれるのではないかなと思っています。
ゲームを楽しんでおしまいではなく、ノクトの物語を体験することで、プレーヤーが現実に心が繋がっている人との関係性にも、なにかプラスの作用が出てくれるのではないかなと思っています。
ノクト自身は一国の王子ですし、いい立場なんですけどね。ルックスももちろん大事なんですけど、今回はよりキャラクターの内面を描く、これまでできなかった領域まで引き上げる、というのを意識して作っています。
プレーヤーが彼らをちゃんと人間として思えるようにする、というものですね。
――それは田端さんとしては制作当初からコンセプトとして持っていたのでしょうか?
田畑氏:父親と息子の絆をテーマにするというのを1番最初に決めて、そこから2つのストーリーが生まれて、野末には映画を作ってもらうことになりましたが、それをちゃんと描くには、その2人が人間と思えるレベルでないといけないというところが、強くありました。
――まだ導入部分をプレイさせて頂いただけの状態ではありますが、本編を遊びすすめ、映画も観て、大きな世界観の中でノクトの成長をみていくと、これまでの「FF」シリーズ以上に感情的なものが自分の中に入ってくるのでは、と思えます。
田畑氏:そうなってくれるといいな、というのが僕らの狙いなんですよね。
“本当に人間の仲間たちと旅をしている”と感じられるゲーム体験を作る
――旅の体験のためには、共に旅をする仲間であるイグニス、グラディオ、プロンプトの人間らしさというのも、大事な要素ですよね。
田畑氏:そうですね。物語としてはノクトという主人公がいますけど、作っている僕らからすると、あの4人ともが主人公なんです。なので3人もノクト同様に同じ深度まで描こうとしています。そうしないと人間同士の、仲間同士の旅っていう風に思えるようにならないですよね。すごく都合のいいところだけ切り取った物語であり見せ方になってしまう。
――ノクトは操作キャラでありプレーヤー目線の立場でもあるので、そこから仲間たちの提案や会話を見ていくので、重要度は非常に高いですよね。仲間である3人の掘り下げや、生い立ちなども見られるのかは気になるところです。
田畑氏:ですよね。それはゲームの中でもしっかりと掘り下げていますが、僕らとしてもより深掘りしたいところがあったので。ゲームのなかでは描けない時間軸は無料アニメの「ブラザーフッド ファイナルファンタジーXV」で提供することにしたんですよ。
今回はあえてそういう形にしたのですけど、ゲーム内には仲間を増やしていくという展開はなく、最初から仲間は揃っているんです。しかも、その人達はすでに絆で結ばれているんですよね。
どうしてその絆が生まれたのかというところは、全員が興味があるわけではないと思うんですよね。なので、そこに興味を持ってくれた人には無料のアニメを観て知ってもらおうと。より「FF15」を好きになってもらうためのツールとして「ブラザーフッド ファイナルファンタジーXV」を用意したんです。
――RPGとして考えると斬新な話ですよね。最初から仲間がいて、出会いは描かず、絆の生まれた理由や過去も通り越えているという
田畑氏:日本のRPGではちょっと珍しいタイプかとは思うんですけど、海外のゲームや映画を考えると、それほど珍しくもないのかなと思うんです。
映画で例えると、グループや組織を主人公として扱っている映画が多いですよね。1人にスポットを当てるのではなく、何人かの主人公たちが物語を動かしていくという。そのイメージなんですよ。
あと、仲間集めからゲームを始めてしまうと、どうしても仲間を集めるための時間が長くなるんですよね。その展開から入ると、プレーヤーとの関係性もそこにすごく引っ張られてしまう。それよりはもっと等身大に友達と旅行したな、という感覚になって欲しかったんです。
――なるほど。そういう独特なアプローチもあってのことだとは思うのですが、先ほどプレイさせて頂いてときに“今までに見たことのないようなゲーム”だなと感じました。なんというか……「旅をしている」みたいな。
田畑氏:旅をしている!(笑)
まだちょっとしか遊んでもらえてないとは思うんですけど、旅している感はありました?
――そうですね……「冒険」というより「旅」だな、という感じです。仲間が自由にわいわいしていたり、何かに反応したり。むしろノクトというか自分が仲間の反応に引っ張られてウロウロしたり。
マップの作りがオープンワールドだからというようなシステム的な意味ではなく、ゲームのテイストそのものがオープンだなと……正直に言って、変わったゲームだなと感じました
田畑氏:すごく鋭い。本当の旅というのを実感できますよね。実際にああやってキャンプしたり、料理を食べたりもしますし。それは実在感や現実味というところにゲームの体験を持っていった結果かなと思うんです。
「ゲームだから、こういう記号化をして済ませる」というのではなくて、徹底的に自分たちの実体験を活かして、感じた良さや感動をどう作ればゲームに入れられるのかを考えてやってきたんですよ。
――例えば、プロンプトに「写真」のレベルというのがありますよね。キャンプなどで宿泊したときに「写真」という能力に経験値が入ってレベルも上がるそうで。
「これなんですか?」とスタッフの方に伺ったら、「プレイ中のシーンをプロンプトが写真に撮っていてキャンプなどで宿泊した時に見られるんですけど、これレベルが上がれば良い写真を撮るようになるんです!」と教えてもらって。
それって、従来のゲームだと「このエリアならこの敵でこの場所で……」みたいないくつかの写真パターンを用意するぐらいで済ませてしまう要素だと思うんです。でも、「FF15」ではプロンプトにAIが組み込まれていて、実際に彼の立ち位置からプレイ中に写真を生成しているそうで。さっきプレイしたときにはレベルが低いからかピンボケだったり何を撮りたいのかわからないような、ひどい写真だらけでした。
それを聞いて「なんて手間のかかることを!」というか、「そこにそんなにがんばってるの!?」となったんです(笑)。
田畑氏:まさにそこが“本当に人間の仲間たちと旅をしている”と感じられるかどうかの瀬戸際だと思うんですよ。
ただ後ろからついてくるだけのキャラクターだったら、人間の仲間との旅という感覚には絶対にならないと思うんです。そこを越えるために、現実の旅の中で当たり前に行なわれていることを、なるべくちゃんとゲーム内に実現しようとがんばったんですよね。
「FF15」はノクトは自分が操作しますけど、その他の仲間も、NPCも、モンスターも、全部AIで動いているんですよね。そうすると、そこをしょぼく作るとあっという間にゲーム体験もすごくしょぼくなってしまう。もう、よくあるゲームと変わらなくなってしまう。
でも、そうならないためには、周りの人々やモンスターが生きていると思えるレベルにAIを良くして、世界そのものが本当にあると感じられるように作っていかなければいけない。僕らは今回、テクノロジーをそのために使ったんですよね。本当に仲間と旅をしている感覚を宿すために、技術を高めました。
――まだチャプター1をプレイさせてもらっただけですが、あの仲間と一緒に旅をしているシーンを旧来のゲームのようにリニアに、単調にイベントシーンをなぞるだけのゲームにしたなら……ひどくつまらないと思うんですよね。
でも、道中でAIがあっちこっちいろいろと反応したり、動いたり、仲間同士やお店の人が会話している中に自分がいることで、全然変わってくるんだなと感じました。
田畑氏:そうなんですよ。そこはぜひ記事に書いてください(笑)。
――わかりました(笑)。ところでそうした試みを開発スタッフの皆さんにはすぐに理解してもらえたものなのでしょうか?
田畑氏:もちろん、すぐにモノにできるだろうと考えた人もいれば、何かにボトルネックがなくはないので。今までできなかったことをできるようにするというのには当然これまでのやり方では作れないわけで、そこに対する難しさを瞬時に理解して、開発リスクがあるんじゃないかという人もいました。
ただ、最終的には到達できた今の形こそ僕らの作れる1番新しいゲーム体験だろうと、まとまることができましたね。当初はそれこそ「仲間を人間のようにするんだ」というのも、「それは無理なんじゃないのかな……」という意見が多かったですよ。
――従来の「FF」シリーズとは全く異なるアプローチですよね。人間のような仲間たちがいるからこそのライブ感あるゲーム体験。
田畑氏:それが「旅」ですね。生きているような仲間との旅。だからこそ、プレーヤーも一緒に感動できるものになってくれるのでは、というアプローチです。
――なるほど。新しい感覚でありゲーム体験ですね。
田畑氏:今まで「FF」シリーズをやったことがない人や、スマートフォンアプリぐらいしかゲームはやったことがないという人が、今回こういうゲームが出るらしいからと「FF15」を遊んでみるという人には“普通の感覚で受け入れられるものにしないといけない”、と思うんですよ。
ゲームの作法的なものってあって、ゲームが好きな人が補完している表現ってありますよね。「ゲームだからこういうもの」と済ませているところ。それを僕ら作り手も当然のように頼って作ったら、やっぱり今までのゲームと同じようなものにしかならないし、今までゲームを遊ばなかった人も、また遊ばなくなってしまうと思うんです。
ハードのスペックが上がったのだから、それによって違和感なくゲームに入っていける人を増やさなければいけないんです。そのためには、現実に近い一般的な感覚を入れていかないといけないって思うんですよね。
――ゲーム的な作法だからで済まさずに、スペックが上がったぶんゲーム内の感覚を現実同様にする。新しい世代のスタンダードのひとつに思えますね。
田畑氏:これまでのファンの人にも満足してもらいつつ間口を広くする。そのためには、すごく普通な答えなんですけど、“ちゃんと生きた世界にする”、“生きている人間にする”。すごくシンプルで、すみません。
今作は“遊ぶFF”であり“触るFF”。召喚獣との出会いもひとつひとつを印象的に
――間口を広くという点では今作はアクション操作なので、これまでのトレーラーなりを見て「難しそう」とか「自分にできるかな」と心配になる人もいるかなと思うんです。特に普段あまりゲームをやらないんだけど「FF」シリーズは好きみたいな、女性ファンの方とか。
ゲームの難易度に対する取り組みは、どのようにお考えでしょうか?
田畑氏:まず、そもそものアクションを限られた人しか楽しめないようなものにはせず、すぐに理解できるようにしています。ハードコアなアクションゲームにはしていなくて、いろんな層の人が遊ぶということを想定して作っています。
それに加えてゲームの難易度そのものにも、通常モードだけでなく簡単なモードを用意しようと思っています。敵がもっと弱いとか、自分に対するシステム的な支援があったりですね。
さらに、アクションが難しそうという人たちだけでなく「クラシックなスタイルのFFが好きだった」という人に対しても、ひとつ用意しています。そちらはもうすぐ発表できる……かもしれないので、お楽しみにお待ちください。
――それは……操作のインターフェースごと変わるようなものでしょうか?
田畑氏:詳しくはまだ言えないです(笑)。ただまぁ、そもそも幅広い層の人を考えてワイドにしています、難易度の補助もあります、加えて、ちょっと異なるメカニクスも入れています……と。3重のケアをしています。
ゲームとの付き合い方って本当に人によって違いますし、僕も今は難しいゲームを時間をかけてクリアしていくのは、正直できないんですよね。時間的な都合で好き嫌いとは関係無くですけど。そういう事情の人も多くいると思うので、僕らに作れる選択肢はいろいろと用意しています。
ただ、それによってゲーム体験の価値は変わらないです。旅の体験であり、絆を楽しむゲームだから、ですね。
――なるほど。「FF15」はキャラクターたちの動きや反応、やり取りを楽しむ機会がイベントシーンだけでなく、プレイ中は常にあるという印象で。ちょっとアドベンチャーゲーム的な感覚にも思えました。今までの「FF」シリーズにもそういうシーンはありましたけど、ここまで頻繁で作り込んでいるものはなかったな、と
田畑氏:そうですね、でも個人的に「ファイナルファンタジーV」に近い気はちょっとするんですよ。世界と自分との関わり方とか、遊ばせ方のスタイルが。なんとなくああいうイメージですね。
ただ、最近の「FF」シリーズで言うと、すごくリッチな映像を見せていくというスタイルが多かったですよね、シネマティックに。その世代を“見せるFF”とすれば、今作は“遊ぶFF”であり“触るFF”だと思います。
――今世代のゲームの特徴として、プリレンダムービーの時代を抜けたことでゲームがだいぶ変わってきたという印象があります。「FF15」はシリーズにおいてその皮切りというか、始まりになっていく作品になりそうですね
田畑氏:そうですね。直感的に理解できるし、ダイレクトに世界からの反応や変化が楽しめます。だけど、「FF」を好きでいてくれている人にも満足してもらえるもの。狙っているのはそこですね。
――「FF」らしさという点では、やはり召喚獣の存在がありますよね。
これまで明らかになっているものだと、ラムウ、タイタン、それとリヴァイアサンも存在が明かされていて、「プラチナデモ」にはカーバンクルがいました。他にもまだ登場するのでしょうか?
田畑氏:登場しますね。いっぱいではないんですけど、今回は“ひとつひとつをしっかり作る”というのを大事にしていて。数を揃えるよりも、ひとつひとつの存在意義を作り、それぞれとの出会いを良いものにするという試みです。
召喚獣との出会いと言っても、物語的な出会いというより、体験的な出会いですね。「FF15の召喚獣はいっぱいいたわけではないけど1体1体との出会い方が良かったな」と思ってもらえるような。物語にも当然絡んでくるので、大量に出すのにはもともと向いていないというところもあるんですけどね。
――体験版「エピソードダスカ」ではラムウが召喚できて、大ダメージを敵に与えていましたが、他の召喚獣も同じようにダメージを与えるタイプなのか、それとも特殊な効果を与えてくれるものもいるのでしょうか?
田畑氏:どちらもいますね。
――召喚後に自分が操作できるようなものは?
田畑氏:それはいないですね。
効果付加のタイプだと例えば、「プラチナデモ」をプレイしてくれた人への特典であるカーバンクルは、戦闘中に自分たちが死なないよう、特殊なステータスアップの効果を与えてくれます。
ストーリーだけを追うと40~50時間、やりこむと200時間のボリューム
――強くてニューゲームがある、ノクトたちの車レガリアはやりこみ要素のひとつとして空を飛べるようにもなるなど、やりこみ要素の存在を感じさせるお話がありました。他にも例えば、ストーリー進行には直接関わらない場所などのやりこみ要素もあるのでしょうか?
田畑氏:もちろんそこは、シリーズ通して期待されるところでもあるので、いろいろと用意しています。
配分としては、ストーリーだけを追っていくと大体40~50時間ぐらいでクリアできると思うのですが、いわゆる寄り道的なもの、サイドクエストなどもやっていくと、単純にサイドクエストの数やエリアを考えれば、200時間を越えると思います。
というのがまず、製品版で提供できるボリュームです。100時間は全然余裕で楽しく遊べると思いますよ。あとは買っておしまいには、なるべくならないようにしたいとも考えています。
――購入後にもいろいろありそうですね……。田端さんは以前に手がけられた「ファイナルファンタジー零式」の内容からも感じるのですが、ストーリーとは直接関わらない場所に何かを置いてみたり、隠れた要素を用意したり、ゲーム的な楽しみを重視される印象があります。
田畑氏:僕自身は、あまりシナリオを追うだけで満足するというタイプではないですね。やはりそのゲームの中で楽しめることをいろいろに求めるところがあって。「FF15」は作り方そのものをそうしているんですよね。ストーリードリブンの作り方ではなく、まず世界を作って、その世界にはこういう人が住んでいます、世界にはこういう変化が起きます、そこを旅します、と。そこから、その中でどういうお話をやるかを作っています。
――ある意味、原初的なゲームの楽しみ方を重視されているようにも思えます。世界と仕掛けは用意してあるので、そこで自由に楽しんでくださいというような。
田畑氏:確かに。だから「マインクラフト」とかすごく好きですよ。
――なるほど、でも、これまでの「FF」はストーリーをリニアに辿っていくというスタイルでしたし、そういうものを求めている人もいるかもしれなくて。そこもケアしつつ、となっているわけですよね。
田畑氏:そこはちゃんと。ストーリーをリニアに辿っていく遊びができるようにしながらですね。
リニアに遊べるというのは、突き詰めると「アンチャーテッド」みたいになると思うんですよね。でも、「FF」は冒険とか成長とか物語というものを総合的に持っているIPとしては、広い世界を旅して冒険するという方向性もいいんじゃないかなと。今回は1度そっちへと進めてみたという感じですね。
なので、レベルを廃止して「アンチャーテッド」みたいな「FF15」になっても、僕は全然嫌じゃないですよ(笑)。
「キングスグレイブ ファイナルファンタジーXV」は「15」の世界全体に起きた全体像を知るためには重要な物語に
――「KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV」で描かれている時系列ですが、ゲーム本編のスタートと同じタイミングであり、ゲーム本編であるノクトたちの旅の裏側である「ルシス王国」での出来事になっているんですよね。
野末氏:そうですね。
――そこで気になるのは、例えば「キングスグレイブ」側にノクトたちの旅の様子が入っていたり、逆に「FF15」側にキングスグレイブのシーンがあったりなど、クロスしているというか、重複するような部分があるのかな、と。
野末氏:クロスはしているんですけど、直接的なことはなく、物語はそれぞれ独立していますね。両方を楽しんでもらうと、見えてくるものがあるという楽しみも入っています。でも、1番はそれぞれ単体でも楽しめるものする、というところでした。
田畑氏:独立しているからこそ、クロスしている部分が楽しいんですよね。依存はしていないけど、確かに繋がっているという距離感なんです。
「FF15」の旅は最終的には「キングスグレイブ」で描かれている舞台へと帰ってくるんですよ。
野末氏:ちょっと、いいんですか、言っちゃって?
田畑氏:これは言った方がいいよ(笑)。
野末氏:いや、言ってOKならいいんですけど……(笑)。
――(笑)。そう聞いてしまうと「キングスグレイブ」の物語はすごく重要度が高いんだなと感じますね。
田畑氏:そうですね。「FF15」の物語を理解する上では必要ないんですけど、あの世界で起きた出来事の全体像を知るためには……とても重要です。
――少なくともノクトたちは途中にはルシス王国には戻らないし、戻れないわけですよね。最終的にというお話ですので。
田畑氏:国を取り戻すという意思のもと、ノクトたちはあそこに帰ろうとするんですね。
――「キングスグレイブ」の制作はいつ頃から始まったのでしょうか?
田畑氏:2年半ぐらい前ですかね。会社が事業部制に変わったタイミングがあったのですが、その時に野末に、ビジュアルワークスからうちのFF15チームへと移ってもらって、プロジェクトを立ち上げてもらったんです。
――当初から、物語は裏側であるルシス王国襲撃の話にしようと決まっていたのでしょうか?
野末氏:「キングスグレイブ」は最初からもうそういう方向でした。
田畑氏:「FF15」を最初に構成していった時に、「2つのストーリーにしよう」というものがあって、「父親と息子の絆」がテーマなので、2人それぞれにストーリーを見せていこうと決めていきました。
――そうなんですよね。「キングスグレイブ」は父の物語、「FF15」は息子の物語と……ものすごく上手く構成されていますよね。それぞれ独立していて離れているけど、繋がっているというのもまた……。
野末さんと言えば「ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン」も手がけられましたし、長編のCG映像作品をゲーム業界で作られた人として、とても稀有な存在と思います。今回「キングスグレイブ」を作られていかがでしたか?「FFVIIAC」と比べると、やはり技術面の進化が大きいのでしょうか?
野末氏:もともといたビジュアルワークスでもいろんなPVを作ったりして、技術のアップデートは常に行なっていたんですよね。ようやく集めた技術を「キングスグレイブ」でがっと出せた、人間の表現として出せた、という感じです。
何気に、あまり触れられないんですけど、長編の映像作品を作るという根幹の部分ですよね。話が繋がっているものを作るということそのものが、実はチャレンジなんですよ。
――確かにそうですよね。「キングスグレイブ」は全体で110分ほどあると伺いました。完全な映画のサイズですよね。プロジェクトチームのスケールももちろんそうだと思うのですが。
野末氏:そうですね、スタッフロールを入れるともう少し長くて。115分ぐらいですかね。構成も、ハリウッドの方や外部の脚本家の皆さんとやり取りしつつ作っているんですよ。
田畑氏:もともとはスマートフォンでも楽しめるものを提供しようというものだったんですけど、できあがった中身は本当にもう凄くて。映画ですよ。実際、映画館でも上映してもらえることになったわけですけど(笑)。
――先ほど最新のトレーラーを観せて頂いたのですが、今世代ではやはり眼の動きによる表現が進化したことで、もの凄く人間らしさや感情表現が高まったと思えて。「キングスグレイブ」でもやはり力を入れられたところでしょうか?
野末氏:そこはかなりこだわったところですね。以前からコツコツとフェイシャルのリグ(顔の表情コントロール)を作ってきたのですが、なかなかリアルな人物にそれを使えるチャンスがなかったんです。今回の「キングスグレイブ」ではその積み重ねたもので表現することで、しっかりと感情表現できたんじゃないか、と思えています。
――眼球の動きや頬の動きが自然になると、グッと感情表現が伝わる様になりますよね。
野末氏:本当そうなんですよ。フェイシャルリグはものすごく力を入れていたので、そこを言ってもらえると嬉しいですね。
田畑氏:登場キャラクターのなかではアーデンが面白いですよ。「FF15」に登場するのと見た目には同じなんですけど、「キングスグレイブ」では表現がゲームとまた異なるからこそ、わかるもの、伝わってくるものがあるんです。
――なるほど、どちらにも登場するキャラには、そうした比較からの補完というのも楽しめるんですね。ただ、補完というよりも直接的なゲーム側へのネタバレになるような要素もあったりはするのでしょうか? ネタバレというか、物語がわかるようなヒントぐらいのものかもしれませんが。
野末氏:ネタバレにはならないですね。
田畑氏:ないですね。
――ゲーム側で語られているあらすじであったり、公開されている映像のテイストからは、「キングスグレイブ」だと悲惨な結末が待っているのかな、と想像してしまうところがありますが……。そこはやっぱり観てのお楽しみ?
野末氏:そこは観てのお楽しみですね(笑)。
ただ、いろんな人にいろんな楽しみ方をしてもらえるものになっていると思います。「FF」好きな人はそうした要素に気づいてにやりとするところもありますし、アクション映画が好きな人は「FFVIIAC」を踏襲しているので、CGじゃなければできないアクションシーンが満載ですし。「FF15」が好きな人はキャラクターを観て頂ければ。
仲間たちと共に歩んで、感情移入した先で、一生残るような感動体験を
――「FF」シリーズのストーリーに感動を求める人も多くいるかとは思うのですが、今見えているノクトの旅というテイストはこれまでにないアプローチで。ストーリーからどんな感動になっていくのかが想像ができないところがあります。どのような感動になりそうなのでしょう?
田畑氏:それは言えないですよ!(笑)。
――ですよねー(笑)。
田畑氏:感動してもらいたいとは思っていますが、ただ単に感動させたいと考えているわけではなくて。長く遊ぶゲームなので、物語の結末にプレーヤーも一緒に喜べるような……。
――感情移入しながら長くプレイして、ノクトを長く見ていったことで、たどり着く感動?
田畑氏:ノクトだけではなく、仲間たちと共に歩んで、感情移入した先で、一生残るような感動体験をしてもらいたいと考えていますね。
――今までの「FF」シリーズのシナリオにあった感動とはまた異なるものになっていくような気がしますね。
田畑氏:うーん、それはどうなのかなぁ。
野末氏:これまでのシリーズにも、いろんな側面があったので。
田畑氏:うん、そんなことはないと思いますよ
――なんといいますか……ストーリーの起伏で感動するものだったところが、プレーヤー自身が自分の現実とゲーム内に描かれている物語とをリンクさせていって感動を生んでいくというアプローチはありそうでなかったのかな、と思えて。
田畑氏:あぁ、なるほど、なるほど。そうですね。
野末氏:ですね。親しみによって変わる度合いが強い。
――人それぞれに感動の種類が変わっていくのかな、とも思えます。泣く人もいるし……。
田畑氏:うん。
――……笑顔の人もいるし。
田畑氏:うん、うん。
――ある意味、とても表現の難しいゲームになっていそうです。人によって体験の捉え方も大きく変わっていくような。生き物のようなゲームなのかもとすら思えます。
田畑氏:そうですね。だけどそれは、ハードのスペックが上がってきたからこそできるようになったもので。表現の多くをプレーヤーの補完に委ねないといけない時には、こういうものは提供できなかったんです。
プレーヤーが感情移入する、実際に自分で触る。だけど、そこで提供される体験はとてもハイレベルな表現で、ちゃんとアウトプットされている。それらがバランスできたときに、初めて目指せるようになったものなのかなと思います。
――わかりました。それでは最後に、読者の皆様に向けて一言ずつ頂けますでしょうか?
野末氏:「キングスグレイブ」はマスターアップ致しました! 映像作品ですし、内容的にも、幅広い方に楽しんで頂けるものになっていると思いますので。「FF」シリーズを普段やらないというゲームファンの人にも、ぜひ観て頂ければ。
劇場だけでなく、いろんなメディアで観られますので、自分の1番観やすいメディアで観て頂ければいいかなと思います。よろしくお願い致します。
田畑氏:GAME Watchの読者さんはコアな人もたくさんいると思うのですが。遊んで満足しクリアして満足し、ただ、それだけではなく“これからゲームがどういう進化をしていく可能性があるのか?”が伝わるゲームになっていると思います。
その一端はE3 2016でも紹介できると思います。そういった視点で、これからのゲームがどうなっていくのかなという興味も併せて、「FF15」に注目してもらえれば、嬉しいなと思います。
チャレンジャーとして挑戦している姿をぜひご覧ください。
――ありがとうございました。
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