【特集】

【年末特集】この冬休みにイッキ見して欲しいアニメ! 可愛い女の子編

「スキップとローファー」

巧みな心理描写が壮快な青春群像「スキップとローファー」

「スキップとローファー」キービジュアル

 2023年春期に放送された「スキップとローファー」は、高松美咲さんが2018年10月から講談社月刊アフタヌーンで連載している同名のコミックが原作のTVアニメ。制作はP.A.WORKSで、「夏目友人帳」や「銀の匙」で知られるの出合小都美さんが監督した。

 原作マンガは2023年12月現在単行本が9巻まで発売され、累計部数は190万部を突破。マンガ大賞2020第3位、第47回講談社漫画賞総合部門を受賞した人気作品となっている。

 「過疎地から東京の高偏差値高校に首席入学した美津未。本人も気づかぬうちにみんなをほぐす彼女は天然のインフルエンサー!」と、公式サイトで紹介されているように、石川県の過疎地から、T大を経て官僚になることを志して単身上京してきた岩倉美津未(CV:黒沢ともよさん)が主人公。勉強以外は天然の岩倉美津未が、都会の進学国に通う高校生と過ごす青春群像劇が描かれる。

岩倉美津未

原作派も納得の丁寧なアニメ化で学園生活を追体験

 2023年12月現在9巻まで発売されている原作から、4巻の最後である文化祭終了までがアニメ化。原作の味である、学校を舞台にした生徒同士の言葉や態度での駈け引きや巧みな心理描写を声優陣の掛け合いでテンポ良く表現されていて思わず引き込まれる。

 そして屈折した都会の人間模様の斜め上をいく主人公・岩倉美津未の、深い思考力・考察力に裏打ちされた反省力とポジティブさで吹き飛ばしていく描写が非常に壮快でカタルシスがある。

 連載中のコミックを限られた話数でアニメ化する場合、どこまで忠実に描くかが非常に難しくなる。好評だった場合のシーズン2制作の可能性を考えれば、原作に無い結末も付け難い。作中の伏線や謎をどの程度回収するかを考えた上で、アニメを3カ月見たファンが納得する結末を迎えなくてはならないのだ。その点、本作は原作をかなり忠実に映像化している。

 P.A.WORKSは2022年の「パリピ高明」でも素晴らしいまとめ方をしていたが、本作では4巻の最後で描かれる学園祭のエピソードでアニメ版を締めくくっている。原作でも、岩倉美津未の新しい学園生活の最初の大きな山場に位置付けられていて、同時に主人公が淡い恋心を抱く志摩聡介(CV:江越彬紀さん)との関係性にも一応の決着を付けている。その上でシーズン2が見たいラストでもあり、流石のまとめ方だと唸らされる。

 筆者はアニメから本作を知ったのだが、思わず原作をまとめ買いしてしまった。原作派にも納得のいく丁寧な構成で、アニメから入ったライトユーザーにも楽しめる、アニメ化のお手本の様な作品となっている。

志摩聡介

少女マンガ風タッチで描かれる少女達の可愛い内面に萌える!

 原作の高松美咲さんの絵柄は少女マンガ風のタッチで、アニメファンが好きな、いわゆる「萌え絵」とはやや趣を異にする。アニメも原作の絵柄を踏襲したキャラクターデザインになっていて、原作のテイストを色濃く反映したキャラクターがイキイキと動いている。

 少女マンガ風タッチに慣れていない人もスルーしてしまうには余りに惜しい魅力が、本作のキャラクター、とりわけ岩倉美津未を中心にしたクラスメート4人組にはあるのだ。

 まず何といっても、主人公の岩倉美津未だ。作中でもそうだが、ビジュアル的には誰もが振り向くような主人公然とした可愛い女の子ではない。他のアニメでは可愛くないとされているがビジュアル的には可愛い少女も多い中、岩倉美津未は劇中の扱われ方に沿ったリアルな容姿だ。

 声優を担当した黒沢ともよさんの木訥とした「方言萌え」と言うには控えめな時折語尾やイントネーションで解るリアルな地方出身者らしい話し方が、非常に好感が持てる。優等生特有の、多角的な視点が重なる思考の深まり方、その行き詰まった部分を吹き飛ばすポジティブな言動と相まって、とても心に染みるキャラクターになっている。

 また、岩倉美津未と仲良くなる江頭ミカ(CV:寺崎裕香さん)、村重結月(CV:内田真礼さん)、久留米誠(CV:潘めぐみさん)という3人のキャラクターの可愛さも見逃せないポイントだ。

江頭ミカ
村重結月
久留米誠

 太りやすい体質で辛い想いをし、努力してスクールカースト上位に登った江頭ミカはいささか卑屈な性格。対照的に村重結月は、産まれながらに群を抜くビジュアルで、中学までの周囲に合わせて無理をする性格から変化し真っ直ぐな物言いをする。そしていわゆる“陰キャ”の久留米誠は、本来そんな2人と相容れない性格だが、クラス委員気質の岩倉美津未によって仲良くなっていく。

 フィクション故の類型化の面も無くはないが、言動が非常にリアルに感じられて、「こういうこと考えがち」、「言いそう」とおもえるような身近な存在に思えるようえがかれている。息遣いが感じられるのだ。

 身近に感じられるぐらいリアルで深みがあり、しかし見ていて楽しいという女の子はアニメでは描くのが難しいが、本作の登場する女の子達はいずれもそういうキャラクターなのである。リアルな女の子ならではの可愛いさ、イッキ見して確かめてほしい。