【第1幕】
Reported by:ジョン・カミナリ
logo design:フランチェスコ・アッカッターティス
manga:ベッティちゃん

 “電遊”。辞書に載っていない造語である。電気的な遊び。いわゆる、テレビゲーム。“道”。その道を、自分の価値観だけを信じて最後まで歩むのが、侍精神である。電遊道は、妥協を許さないサムライゲーマーが歩むべき道。他人に影響されることなく、自分のゲーマーとしての信念を貫き通せばいい。たとえ、ゲームが別の道に進んでも、自分の好きな道をずっと信じ続けるのみ。たとえ、“これこそがゲームの未来形だ!”と言われても、自分の好きなゲームライフを思う存分楽しむのみ。

 この連載記事では、毎月1回、僕のゲーマーとしての物語、そしてゲーマーとしての哲学や信念を独特なスタイルで紹介していきたいと思う。日本のゲームに大きく影響を受けた僕のゲーマー人生を、イタリア人としての個性を生かして面白く語りたいと思う。あるときは、話題沸騰中のニュースについて掲載ギリギリのところまで正直な感想を書いたり、またあるときは、今でも心に大切にしまっている過去の作品を振り返ってみたいと思う。

 1番注目して欲しいのは、「イタヲタのレトロなゲームライフ」というコーナー。僕のオタクとしての青春を文章と漫画を交えて懐かしく振り返りたいと思う。連載の途中で新しいコーナーも生まれるのかもしれない。回を追う毎に中身が変わったり増えたりするのかもしれない。とにかく、サプライズたっぷりの連載を目指しているので、末永くこのページの中で付き合って欲しい!

ジョン・カミナリ(芸名)
国籍:イタリア 年齢:33歳
職業:俳優、声優、タレント、テレビゲーム評論家
趣味:テレビゲーム、映画鑑賞、読書(山田悠介)、カラオケ
主な出演作品:銀幕版スシ王子!(ペぺロンチーノ役、デビュー作)、大好き!五つ子(アンソニー・ジャクソン役)、侍戦隊シンケンジャー(リチャード・ブラウン役)、ピラメキーノ(テレビ東京、月曜~金曜 18時30分~19時放送中)
ブログ:ジョン・カミナリの、秘密の撮影日記
 イタリアで6年間テレビゲーム雑誌の編集部員として働いたあと、新しい刺激を求めて2005年に大好きな日本へ。子供の頃から夢見ていた役者の仕事を本格的に始める。堤幸彦監督の「銀幕版スシ王子!」で個性的なマフィアのボス、ぺぺロンチーノを熱演。現在もTVドラマやTVゲームなどで、俳優・声優として活躍中。日本語を勉強し始めたのは23歳のとき。理由は「ファイナルファンタジーVII」や「ゼノギアス」などのRPGの文章を理解するため。好きなジャンルはRPGと音楽ゲーム。「リモココロン」のような個性的なゲームも大歓迎。お気に入りのゲームは「ゲームセンターCX」と「ワンダと巨像」。芸名はイタリア人の友達に、本人が雷のように予想不可能なタイミングで現われるからという理由で付けられた。将来の夢は、「侍戦隊シンケンジャー」に出演した時から大好きになった戦隊モノにまた出演すること



【もくじ】
一刀両断~話題のゲームニュースについて鋭くコメントしちゃうぞ!~
傑作の如く~期待している新作TOP5~
過去の宝物~こよなく愛した過去の思い出の作品をピックアップ!~
イタヲタのレトロなゲームライフ~ハプニング満載のオタク人生~


■ 一刀両断 ~話題のゲームニュースについて鋭くコメントしちゃうぞ!~

 今話題のニュースや注目のテーマをピックアップして僕の率直なコメントを載せたいと思う。現在のゲームが抱えている問題を解決するアイディアや提案も、このコーナーを通じて考えてみたいと思う。例えばあの大作は、なぜ予想通りよく売れなかったのか?欠点だらけのゲームをダウンロードコンテンツの追加で補おうとするポリシーは正しいのか?具体的な名称を出さなくても読者がなんとなくわかるような書き方で、なお且つ、なるべく消費者側の目線で、ゲームマーケットの現状を分析したいと思う。何故なら僕も、ライターである前に消費者の1人だから。大作、かかって来るがよい!

・今回のテーマは……
アイデンティティが失われつつある大作ゲーム。これで本当にいいのか?

 昔のゲームは、独自のルールを持った1つのジャンルに属していた。レーシングゲーム。アクションゲーム。パズルゲーム。アドベンチャーゲーム。RPG。それぞれのジャンルは独自の“文法”を持っていて、そして、絶対的と思われていたルールが、法律のようにきちんと守られていた。

 アドベンチャーで言うと、各コマンドが表示されたウィンドウ。パズルで言うと、「テトリス」のようにピースが入れられていく枠。RPGで言うと、住人との会話が楽しめる町。同じルールがずっと使われると、それが常識として認められるようになる。そして、もしその常識を変えようとする“悪いやつ”が現われたら、当然、保守主義のゲーマーたちは猛反対するのだろう。

 新しいことに挑戦することには、僕は賛成している。アイディアが斬新であれば、新しいものを何でも歓迎するほうだ。しかし、そのアイディアが、多くの人々に支持されるゲームジャンルの弱体化に繋がるのであれば、その場合は異議を唱えざるを得ない。

 最近のゲームはもう既に、ジャンルというアイデンティティを失いつつある。その“病気”が始まったのは、ハイデフゲーム機が発売されてからだと思う。ハリウッド映画のような豪華なグラフィックスと引き換えに、開発者たちは大切な何かを犠牲にしてしまったのだ。その理由は簡単。ハイデフゲーム機のデビューでゲームの開発費が爆発的に高騰した。つまり、リスクを背負わない為にも、大作は以前よりも沢山のユーザーに受け入れられなければならない。

 だから、高い予算を必要とする大作が、本来のアイデンティティを失いつつあるわけだ。強烈な内容、やりこみ要素、初心者に面倒くさいと思われる部分を排除し、その代わり万人に受け入れられるようなベタなものを取り入れているのではないだろうか。

 中身が“浄化”されただけでなく、昨今の大作は難易度も下がっていると思う。“生まれたて”のプレーヤーでさえも1日でクリアできると言わんばかりに。いつからゲームのバトルや謎といった部分は1回目の挑戦で乗り越えられるようになったのだろう?この質問を頭の中で繰り返しつつ、昔、とある名作RPGで遊んだときの気持ちを思い起こしてみる。

 強力なボスとの戦闘でポーションを使い切って、攻撃のコマンドに最後の希望を託す。この攻撃でボスを倒せるようにと心の中で祈りつつ、剣がヒットした直後のモンスターの反応を凝視する。モンスターを倒したときのエフェクトが現われるように、音が聞こえるように。おっ!聞こえた!戦闘に勝利!ボスを倒せた。

 苦戦した後の充実感。“ディスクを窓から投げてやる”と、“負けるものか”の間の微妙な気持ち。ベテランゲーマーはずっとその気持ちを感じ続けたいだろう。苦労を重ねて難題をクリアする満足感。今でも忘れられない気持ちだ。だからこそ、それが欠けている昨今の大作にはがっかりすることが多いのだ。

 ベテランゲーマーがゲーム離れしそうなほど深刻なこの問題を解決する策は存在するのだろうか?僕はポジティブに考えたい。絶対にあると信じている。面倒くさいものを排除することにはもちろん賛成だが、愛されるゲームジャンルの弱体化を引き起こすコンテンツの大幅な簡略化には反対している。

 実は、どっちもお互い喧嘩することなく共存できると確信している。どの道を進むべきか、それは1人1人のプレーヤーが決めればいい。ビギナーは易しい1本道を最後まで辿ればいい。ベテランはその1本道からそれて、強い敵に遭遇する未知の道に挑めばいい。大事なのは、選択肢が存在すること。プレーヤーの経験やプレイスタイルがそれぞれ違うから、本当に良いゲームは皆のニーズを大切にするゲームだと思う。

 ハイデフゲーム機ならではの性能の高さがコンテンツの制限を意味するのなら、昔のゲーム機に戻りたいものだ。大作RPGを作る為に64Kという、ケータイ画面ほどの小さい容量と闘っていた20年前の開発者たちは英雄のような存在だったと思う。

 だからこそ、高性能になった現在のゲーム機は、僕たちの好きなジャンルの可能性を拡大する力を持っているはず。開発者たちが工夫して頑張れば、あらゆる層のプレーヤーが好きなジャンルに満足できる未来が、きっとやってくると信じている。


■ 傑作の如く ~期待している新作TOP5~

 僕が期待している発売間近の新作TOP5。有名なシリーズの続編であれば、新しく追加して欲しい要素やモードについても触れたいと思う。必ずしもメジャーなタイトルではなくて、逆に注目して欲しいマイナーな作品をピックアップすることもある。

(C) 2010 Nintendo/MONOLITHSOFT
※画面は開発中のものです。

1位:ゼノブレイド
Wii RPG 任天堂
6月10日発売予定 価格:6,800円

 「ゼノギアス」や「ゼノサーガ」の監督・脚本を手掛けたモノリスソフトの高橋哲哉氏の新作RPG。舞台は、人間が住みついた神の巨体。ローディングなしに神の体を覆う広大な野原や森を探索することに。平面だけでなく、ジャンプを使った垂直への移動も可能。RPGというジャンルでは珍しく海での水泳パートもある。Wiiの夏を彩る最高レベルのRPGになりそう。

□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□関連情報
【2010年5月31日】任天堂、Wii「ゼノブレイド」新テレビCM公開
「機械の体」編にAKB48の渡辺麻友さんがCGで登場
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20100531_371197.html

(C)2010 Konami Digital Entertainment
※画面は開発中のものです。

2位:ラブプラス+
DS コミュニケーション KONAMI
6月24日発売予定 価格:4,800円

 去年発売された「ラブプラス」は、恋愛ゲームという歴史を作った「ときめきメモリアル」の正統後継者だ。その高いゲーム性やDSの特徴を活かした機能が、大ヒットに繋がった。この夏、さらに強くなって帰ってくる!ヒロインたちの服装や髪形が追加され、しかも一緒に旅行もできるようになる。プレーヤーたちのハートはさらにときめくだろう。

□KONAMIのホームページ
http://www.konami.jp/
□関連情報
【2010年6月2日】KONAMI、DS「ラブプラス+」
オリジナルデザインのDSi LL同梱版も同時発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20100602_371659.html

(C)SEGA

3位:ソニック・ザ・ヘッジホッグ4 エピソードI
PS3/Xbox 360/Wii 2Dアクション セガ
2010年夏発売予定 価格:未定

 国民的マスコットの最新作は……3Dではなく、2Dの世界に戻ったのだ。メガドライブを世界中に普及させたハリネズミのソニックは、今回、PS3、Xbox 360、Wiiでダウンロードゲームとして同時に登場する。グラフィックスの解像度は飛躍的に上がったが、ゲームの魂は昔のまま。2Dの世界で超高速に走り回るソニックのリターンに乾杯!

□セガのホームページ
http://sega.jp/
□関連情報
【2010年5月21日】セガ、PS3/Xbox 360/Wii「ソニック・ザ・ヘッジホッグ4 エピソードI」
最新トレーラームービーを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20100521_368662.html

(C)CAPCOM CO., LTD. 2010 ALL RIGHTS RESERVED.

4位:ゴースト トリック
DS ミステリー カプコン
6月19日発売予定 価格:5,040円

 「逆転裁判」シリーズを担当したスタッフが送る新感覚アドベンチャーゲーム。主人公は死んでいる。しかし、自分の“タマシイ”でステージ中のオブジェクトに干渉することで、謎を解くだけでなく、キラーに追いかけられている人の命までも救うことができる。独自のグラフィックス技術を使ったキャラクターのアニメーションも必見!

□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□関連情報
【2010年6月3日】カプコン、DS「ゴーストトリック」完成披露パーティ開催
発売日を6月19日に前倒し! 各種プロモーションも発表!!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20100603_371809.html

(C) HUDSON SOFT
※画面は開発中のものです。

5位:影の塔
Wii 謎解きアクション ハドソン
7月22日発売予定 価格:6,090円

 ハドソンの新作を見逃してはならない。斬新なアイディアから傑作の予感がするアクションゲームが生まれる。主人公は影となった少年だ。「ICO」を思わせるような幻想的な世界で、影となった主人公を誘導していく。彼が進めるのは影だけ。リモコンで光源を変えたり仕掛けを作動したりすることで影の道を作れる。絶対遊ぶべき!

□ハドソンのホームページ
http://www.hudson.co.jp/


■ 過去の宝物 ~こよなく愛した過去の思い出の作品をピックアップ!~

 ゲームは技術的に進化する。グラフィックスが綺麗になる。ポリゴンの数が増える。ゲーム内の景色が実写と見間違えるほどリアルなものになってきている。しかし、時代が変わっても必ずしも進化しないものもある。それはゲームの面白さだ。昔のゲームはグラフィックスはシンプルだが、面白さでは今のゲームに負けていない。いや、それに勝る特別な何かを持っている作品もあると思う。秋葉原のゲームショップや家庭用ゲーム機のオンラインストアで安く購入できる過去の傑作は山ほどある。このコーナーでは、僕が愛した昔のゲームをピックアップしていきたいと思う。具体的なゲーム内容よりも、僕のその作品に対しての気持ちを伝えることができればと願っている。

「がんばれゴエモン ~ゆき姫救出絵巻~」

 1991年。日本のゲームが、アメリカのゲームと明らかに違うことを確信した年だった。スーパーファミコンの「がんばれゴエモン ゆき姫救出絵巻」(がんばれゴエモン)の発売日だった。輸入ゲームショップのショーウインドーに並んでいた、そのカラフルなパッケージにすぐ魅了された。“このゲームは最高に違いない”という本能に駆られて、迷いなく財布からお金を出した。それは、もちろん正解だった。

 「がんばれゴエモン」は、伝統と技術の共存でできた現代の日本社会のパロディーではないだろうか。一応舞台は昔の日本だが、その中には、過去の日本に属さないものも混じっていたりする。例えば、ゲームセンターや競馬などの施設も存在する。芸者との博打もあるが、日本人の現代的な遊びもある。前代未聞のこの融合が生み出すのは、サプライズ満載のへんてこな世界。「がんばれゴエモン」のユニークで独特な世界。

 本作は、一応アクションゲームだが、1つのジャンルに収まらないぐらいのボリューム、アイディア、バラエティーを誇っている。住人との会話や装備品の購入が楽しめるRPG的な町もあるし、横スクロールで懐かしさたっぷりのアクションステージもある。沢山のミニゲームで遊べる遊園地も存在する。

 その中のゲーセンでは、「かべくずし」や「ホッケー」という“原始的”なアーケードゲームだけでなく、KONAMIのあの名作シューティングゲーム「グラディウス」も入っているのだ。本格的なシューティングゲームが、おまけとして入っていることに気付いた瞬間、感動した。今はミニゲームの概念は常識になっているが、昔は全然そうではなかった。「がんばれゴエモン」は、ミニゲーム文化のパイオニアなのではないだろうか?

 「がんばれゴエモン」のもう1つの顔は、ゴエモンの相棒のエビス丸だ。そう。このゲームは、2人が同時にプレイできる機能を持っていた。1人はゴエモンを操作して、もう1人がエビス丸を担当。今は当たり前の機能だが、エンジンの遅さで知られていたスーパーファミコンの2人プレイは珍しかった。だからこそ、2人で遊んでもほとんど処理落ちすることなくアクションがスムーズに進むことを実感した時、さすがKONAMIだなと感心した。

 2人のチームワークを要求するシチュエーションもあった。例えば、パートナーをおんぶして、難しいプラットフォームパートを1人で挑むという、(当時としては)革新的な遊び方もあった。KONAMIの名作からのアイディアもたっぷり入っていて、KONAMIゲーム好きには今でもたまらない内容とクオリティーになっていると思う。ちなみに、本作は、Wiiのバーチャルコンソールにて800Wiiポイント(800円相当)で購入可能なので、もしまだやっていないのなら是非遊んで欲しい。

【ミニゲーム天国】
ゲームセンターに入ると、インパクトのある大きなスクリーンが迎えてくれる。アニメ系の女性キャラクターがどのゲームで遊びたいか聞いてくれる「グラディウス」は最初のステージだけが入っているが、その完成度はびっくりするほど高かった
「かべくずし」も面白い。ワンステージだけだが、戦闘と戦闘の間のパーフェクトな気分転換になる江戸時代には競馬という遊びはもちろん存在しなかったが、「がんばれゴエモン」の変わった世界ではそれも楽しめるゲームを少し進めると、ミニゲーム好きにたまらない“からくりアイランド”というステージにたどり着く
【宿屋の特徴】
本作は、宿屋も他のゲームとは違う。3種類の部屋があって、その豪華さによって回復するエネルギー量が変動する最も安い「うめ」を選ぶと、馬小屋のような、寝心地が悪そうな部屋に泊まることに……。もちろん、回復量はもっとも少ない「まつ」を選択すると、最高の贅沢ともてなしが提供される。エネルギーも全回復!
【武器やステージの仕掛け】
倒したモンスターが時々落とす「まねき猫」を拾うことで、武器を3段階まで強化することができる集めてきた小判も武器として使える。しかし使いすぎると、後で町での買い物が難しくなるので、バランスが大切!手前と奥という2つのラインで展開するステージもある。当時としては革新的なアイデアだった
このボタンが引き起こす効果は当時のプレーヤーたちを驚かせた。押してみると……スーパーファミコンのトレードマークだった、画面が回転するという特殊効果が発動!画面が回転したことで天井が床となり、画面が回転する前は行けなかった場所に行けるようになる
【ボス戦の例】
面白いボス戦も本作のすごさのひとつ。闇雲に攻撃するのではなくて、頭を使って作戦を練るのも重要だこのボスを倒すためにはまず提灯を攻撃しなければならない。言うのは簡単だが、実際やってみると超難しい。貴重な小判を使ってみるか?
ボス戦でも、スーパーファミコンの特徴だった「モード7」(スプライトが拡大・縮小・回転するエフェクト)をフルに活用。だんだん大きくなっていくボスの顔が、今でも印象に残っているステージをクリアしたときのゴエモンとエビス丸との面白い共演シーンも見逃せない。そのコミカルさは世界共通!

(C) 1991 Konami Digital Entertainment

□KONAMIのホームページ
http://www.konami.jp/
□「がんばれゴエモン」総合サイト
http://www.konami.jp/gs/game/goegoe/
□VC版「がんばれゴエモン ゆき姫救出絵巻」のページ
http://www.nintendo.co.jp/wii/vc/vc_ggy/


■ イタヲタのレトロなゲームライフ ~ハプニング満載のオタク人生~

 このコーナーでは僕のゲーマーとしての人生を懐かしさたっぷりで語っていきたい。毎回、特定の時代をセレクトして、自分の記憶への冒険をしたいと思う。最終的には1つのストーリーになる。僕というオタクのストーリー。僕という和ゲー好きゲーマーのストーリー。文章だけでなく、クライマックスのシーンをもっとダイレクトに伝える為に漫画も使うことにした。ちなみに、漫画は、今イタリアで注目の若手漫画家、ベッティちゃんに描いてもらった。彼女の可愛らしい漫画は、毎回の話しを盛り上げていくに違いないと感じている。とにかく、日本ではありえないシチュエーションについてたっぷり語っていくので、本当に面白いコーナーになると思うぞ!

今回の時代設定:1992年6月10日
イベント:「ストリートファイターII」のスーパーファミコン版発売!
ハプニング:スーパーマーケットで奇跡のおっさんにまさかの遭遇!

 当時の僕は17歳で、高校の4年生だった(日本と違ってイタリアの高校は全部で5年)。ゲームに費やす時間が、勉強の時間を上回っていたにも関わらず、成績は良かった。だから、母は問題なくゲームで遊ばせてくれていた。スーパーファミコンが、家にやってきた時、遊ぶ時間がさらに多くなった。学校、大丈夫かなと心配させるほど。

 そして、1992年6月10日がきた。1年ほど前から、毎日の夜に夢で見ていたあのアーケードの家庭用ゲーム機版が発売される日が、とうとうやってきた。格闘ゲームというジャンルの歴史を作った「ストリートファイターII」のスーパーファミコン版。

 当時のゲーム雑誌に載っていた「ストリートファイターII」の記事のページを読みすぎて、そのページだけが皺だらけで異常に汚くなっていたことをよく覚えている。憧れのゲームが、次の日にゲームショップに届くと考えるだけで、最高の気分になっていた。

 しかし、大きな問題があった。お金が足りないのだ!翌日には輸入ゲームを扱っていたショップに「ストリートファイターII」が入荷する予定だったが、その価格は信じられないほど高かった。今の価値で言うと、およそ3万円。貯金箱の中を覗いてみると、その半分しか入っていなかった。

 本棚を見てみる。売れるゲームがないかなと。「スーパーマリオワールド」。考えられない!「F-ZERO」。売れるものか!どうしようかと悩んでいたら、母に、スーパーに行ってくれないかと、お使いを頼まれた。チップも出るらしい。いいね!塵も積もれば山となる。よっし!クリスティアーノ(8-Bit時代からの大切なゲーム友達)を呼んで近くのスーパーへと急いだ。

 頼まれた食材を揃えると、レジに向かう。10人ぐらいの行列がある。「ストリートファイターII」の話題で時間を潰そうと。「しかしね、あのゲームショップって最低だよね。人の足元を見て値段を付けるなんて信じられないよね」。2人で愚痴を言いまくっていると、奇跡が起きた。夢にも思わなかった出来事が……。

 神様が存在すると確信した瞬間だった。

 前にいたおっさんが僕たちのほうを振り向く。40歳ぐらいのおっさん。サングラスを外しながら、「『ストリートファイターII』が欲しいのか?」と聞いてきた。ちょっと待った!今、なんて言った?「ストリートファイターII」って言ったよね?聞き間違いじゃないよね?と、確かめる為にクリスティアーノのほうを見た。

 「だから、『ストリートファイターII』を探しているんだったら、俺、持っているよ、今。」

 これは現実じゃない。今、ベッドに横たわっていて、夢を見ていると。いや、これ、意外と現実かもしれない。そして、このおっさんは、子供をバカにするのが趣味のおっさんに違いない。または、詐欺師。確か、ナポリのほうで、パッケージの中にカートリッジじゃなくて、同じ重量のプラスチックの塊が入ったソフトを売っていた詐欺師が存在していたことを思い出した。都市伝説かな?どっちにしても、気を付けるに越したことはない。

 「おっと、自己紹介遅れちゃったね。俺はマリオ。店は持っていないけど、日本のゲームを売っているよ。買い物を済ませたら、見せるよ。君たちが欲しがっている『ストリートファイターII』をね」

 この人、怪しすぎる!でも、名前はマリオだよ。任天堂から派遣された天使かもしれない。このおっさんの話を信じてみよう。そうすると、謎のおっさんはスーパーの駐車場に止めてあった車まで案内してくれた。そして、さりげなく、トランクを開けた……。

 トランクの中は、おっさんが言っていた通り、「ストリートファイターII」の箱で埋め尽くされていた。本物の箱かなと疑うと、おっさんは、僕の心を読み取るかのように、箱を1つ取り出して、僕の目の前で開けて見せた。中には、あの特殊な形のカートリッジが入っていた。日本語の説明書もちゃんと入っていた。本物、新品、ピカピカ、最高!響きのいい単語の羅列が、僕の頭をよぎっていった。このおっさんは、とにかくすごい。スーパーで会えた偶然もすごい。

 ちょっと待って!まだ喜ぶところではない。ほら。値段だよ。高額だったら、店で買ったほうがいいに決まっているだろう。

「すみません、いくらですか?」
「えっと、15万リラ」
「たった、じゅ、じゅうごまんリラ?!」
「そうだよ。だから?」

 信じられないことに、あの泥棒のゲームショップの値段の半額だった。この金額なら、貯金箱に入っている。しかし、今、ポケットの中は空っぽ。マンマミーア!おっさんに、10分ぐらい待ってくれないと聞いたら「大丈夫だよ」とあっさりOKしてくれた。その言葉を聞いた瞬間に、僕とクリスティアーノは、人間と思えないほどの超高速で走り出した。

 走って、走って……息が切れても「今日、『ストリートファイターII』で遊べるぞ~!」と大はしゃぎだった。“ザ・キング・オブ・オッサン”のところに戻って約束の金額を渡すと、「ストリートファイターII」を2個もらった。僕の分とクリスティアーノの分(彼ももちろん日本版のスーパーファミコンを持っていた)。

 その日から、僕たちの友情はさらに深く、素敵なものになっていった。そして、最高の格闘ゲームで遊びまくった。確かその週は、嬉しくない出来事もあった。テストの成績はあまり良くなかった。しかし、これは別の物語だ。

□VC版「ストリートファイターII」のページ
http://www.nintendo.co.jp/wii/vc/vc_sf2/




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(2010年6月4日)

[Reported by ジョン・カミナリ ]