佐藤カフジのVR GAMING TODAY!

最新VRヘッドセットを全種類かぶってきたぞ!@E3 2015

ぶっちぎりのOculus VR&Morpheus。第三勢力の出来映えも総チェック!!

【著者:佐藤カフジ】

 世界最大のゲーム展示会E3 2015。各種VRシステムが過去最高の注目を浴びた嵐のような3日間が過ぎ去り、VRゲーミングの世界は新たなフェイズに突入する。

 このE3では最新VRデモを求めて会場中を走り回った筆者だが、個人的に掲げていた「出展された全種類のVRヘッドセットをかぶる」という裏目標をなんとか達成。そのラインナップはOculus Rift製品版、Crescent Bay、Gear VR、Project Morpheus、FOVE、StarVR、ANTVR、Vuzix iWear Video Headphones、以上8種類。これに加えてプレE3レポートこと連載第5回でご報告した各種体感型VR入力デバイスも体験してきた。

 PCゲーマーにとって最大の注目株であるValveのSteamVR(HTC Vive)の出展が無かったことだけが痛恨だが、それ以外のVRヘッドセットの体験から得た、各製品のインプレッションを本稿でお届けしよう。

Oculus Rift、Morpheusが2トップ。FOVE、StarVRにも注目だ

 さて、会場で体験できた数あるVRシステムの中でも、プレミアムVRゲーミング時代の到来を間違いなく予感させてくれたのは、いずれも製品化準備を完了したOculus RiftとMorpheusだ。

Oculus Rift 製品版は期待以上の出来栄えだった

Oculus Rift製品版

体験風景

 E3開幕直前に開催されたプレスカンファレンスで製品版が正式発表されたOculus Rift CV1(Consumer Version 1)に、嘘偽りは無かった。それどころか、その装着感と映像の品質は、Project Morpheusのそれを超える水準に高められていた。

 Oculus Rift CV1の詳しいレポートはこちらの記事でお伝えしているが、やはり最大のポイントは、HMDの外装が合成繊維で作られたことによる柔軟性と通気性、それがもたらす快適そのものの装着感だ。

 実は、筆者は最終プロトタイプのCrescent Bayの装着経験(ものすごく窮屈でメガネ併用が不可能に近かった)から、CV1の試遊にあたってはコンタクトレンズを装備して臨むつもりだった。ところが各取材に駆けずり回っている間にこれを失念。正直しまったと思いつつメガネをかけたままCV1の試着に入ったのだが、これが嬉しい誤算だったのである。

 やわらかみのあるバイザー部分のハウジングは、メガネとの干渉を全く感じさせることなく、これ以上ないほどスムーズで違和感のない装着感を与えてくれた。そのHMDはとても軽く、大きなレンズから鮮明なVR映像が視覚に届く。

 その快適度は会場で体験した全てのVRヘッドセットの頂点であり、Morpheusをも上回っていた。このCV1の素材と構造は、後追いでプロトタイプを開発中のVRスタートアップ陣営は積極的に参考にするべきだ。

Project Morpheusはコンテンツの質において圧倒

Project Morpheus

体験風景

 どんなに優れたVRヘッドセットがあろうとも、ゲーマー向けの商品価値を持つためには秀逸なコンテンツが絶対に必要だ。

 そのことを具体的な形で証明していたのが、ほかならぬProject Morpheusである。ハードウェアのお披露目を3月のGDCで済ませたSCEは、このE3会場で20にもおよぶMorpheus用タイトルを展示していた。そのいずれも、消費者向けにきちんと作りこまれ、VRの楽しさを存分に味わえるできとなっていた。

 弊誌のE3 2015ニュースまとめで“Morpheus”と検索していただければ、筆者がご報告した数々のMorpheus対応ゲームに対するインプレッションをお読みいただけるが、その中で最も未来を感じ、VRゲーミングの面白さを味あわせてくれたのは、SCEワールドワイド・スタジオ傘下のGuellirra Gamesが開発する「RIGS」だった(レポート記事)。

 現時点で2,000万以上の普及台数を達成し“次世代機”の勝者となっているプレイステーション 4だが、今年に入り、SCEではPS4のeスポーツ的展開に力を入れ始めている。その中で「RIGS」は、VR+eスポーツという、まさしく未来につながるゲーミングの新分野を切り開くものになるだろう。FPSという巨大ジャンルを切り開いた「DOOM」のような、伝説的タイトルになる可能性も秘めている。

「RIGS」は本当に面白く、eスポーツのVR化という未来を感じさせてくれた

視線追跡型HMDのFOVEはSteamVR互換機となることを目指す!

FOVE

小さくも話題を集めていたFOVEブース
CEOの小島由佳氏とCTOのウィルソン・ロクラン氏

 日本発のVRスタートアップ企業である株式会社FOVEも、小さいながらブース出展を果たしていた。

 世界初のアイトラッキング搭載VRヘッドセットであるFOVEについては当連載で繰り返しご紹介してきているとおり(連載第2回連載第4回)、次世代のVRシーンに革命的な影響を及ぼしうる、非常に将来性のあるプロジェクトだ。

 会期全体を通して人だかりの尽きなかったFOVEブースだが、彼らが狙っていたのは現在進行中のKickstarterキャンペーンにさらなるはずみを付け、製品版に向けての開発により広い可能性を作り出すことだ。E3 2015の開幕に合わせてアナウンスされた、ValveのOpenVR SDKとLighthouseテクノロジーへの統合予定もその一環である。

 これについてFOVEのCEO小島由佳氏とCTOのウィルソン・ロクラン氏に話を伺ったところ、Kickstarterキャンペーンの新たなストレッチゴールとして70万ドルでLighthouseをサポートすると表明したことには大きな理由がある。

 Lighthouseをサポートするとなれば、ユーザーがFOVEでポジショナルトラッキングを有効にするため、当然ながらHTC Viveに付属する2つのベースステーションが必要となる。70万ドルのストレッチゴールは、このベースステーションの別売化と、FOVE向けの量産体制を確保するための費用を賄うためのものだ。

 とはいえ、ウィルソン氏はこのストレッチゴールを達成できなくても、OpenVRおよびLighthouseテクノロジーに対応していく可能性は高いと語っていた。それは、ウィルソン氏がLighthouseテクノロジーを現段階で最高のポジショナルトラッキング技術であると考えていることと、FOVEがメインターゲットに据えるコアPCゲーマー層におけるSteamVRの早期普及(とVRゲーミングプラットフォーム戦争における勝利)を確信しているからだ。

 実現すれば、FOVEはHTC Viveに続くSteamVR互換ヘッドセットとなる。ロクラン氏らはそのためにValveとも話し合いを続けているという。今回のE3への出展が、目標に向けての大きなステップとなったことは間違いない。FOVEに期待する皆さんは、ぜひKickstarterプロジェクトに投資して、彼らの試みを応援してほしい。

視界をほぼ完全に覆う、StarVRへの期待

StarVR

体験模様

 北欧のゲームパブリッシャーStarbreezeが開発中の超ハイエンドVRヘッドセット「StarVR」も驚きの体験をもたらしてくれた。

 こちらの記事で詳細なインプレッションをお届けしているが、Oculus RiftやProject Morpheus等、100度〜110度の視野角を持つ主流のVRヘッドセットを遥かに超える視野角の広さ(水平210度)は、やはり衝撃的だ。

 レンズが巨大すぎて見え方に違和感があったり、表示フレームレートが60Hzにとどまっていたことなど、製品化に向けての課題は多いが、眼前をほぼ全て覆うVR世界の風景は圧倒的であり、期待は膨らむ。将来、かなりの高額で販売されることになっても、ハードコアなVRゲーマーなら手に入れる価値のあるVRヘッドセットになる、そんな手応えを感じることができた。

 ちなみに、ARマーカー方式のトラッキングはでかくてかさばる問題があるが、これは最終仕様ではないとのこと。光学系の改良と同じくトラッキングシステムも最良のソリューションを模索するつもりで、ValveのLighthouseに対応するプランも検討しているという。今後の開発経過についても大いに注目していきたい。

この想定外の視野角は本当にチャレンジングだ。製品としての完成が待ち遠しい

中国製のANTVRは論外レベルの低クオリティ

ANTVR

ハウジングは革製でゴワゴワしている

 中国のANTVRが開発するVRシステム、All-IN-ONE Universal Virtual Reality Kitも会場で体験することができたが、クオリティは低かった。視野角はカタログスペックの100度ところか体感で80度以下に感じられる上に視界は四角く、装着感もゴワゴワしていて、時々手で支える必要があり、デモゲームのFPSは不安定で、トラッキングは飛び飛びになりやすく、付属のVRコントローラーは玩具レベルの質感であったなど、まだまだ第三者に見せられるような完成度にはほど遠かった。

 逆説的に、OculusやMorpheus、FOVEといった先駆者たちが、いかに様々な問題をクリアして高品質なVR体験を実現しているかを再確認する始末だった。こんな状態で出展してしまうようでは、今後の改良にもあまり期待が持てない。

視野角はスペック値よりも明らかに狭かった
コントローラーは汎用性の期待できない作り

HMD老舗のVuzix新作はVRからほど遠かった

Vuzix iWear Video Headphones

レンズ部をちらりと見た瞬間「あっ、これは違う」と思った

 HMDを作り続けて20年近い歴史を誇る老舗のVuzixもブースを出展。VR対応を謳ったヘッドセット、Vuzix iWear Video Headphonesを出展していた。HMD開発に長い蓄積を持つ企業の製品だけに、ちょっと期待しつつ試遊したが、完全にあてが外れた。

 この製品、VR対応を謳っているのに、視野角は50度そこそこで、既存の映像観賞用HMD(ソニーHMZシリーズなど)と同じく、虚空に浮かぶ大型スクリーンを眺めている感じである。3D映画の鑑賞には良いだろうが、VRゲームは到底無理だ。このため、本製品については評価なしだ。

高品質なヘッドフォンが一体化しており、3D映画の試聴用にはいいだろうが、もうそのような時代ではないとも思う

玉石混合の体感型VRデバイス。過酷な生存競争が避けられない

 プレE3の記事でご紹介したグローブ型デバイスOmni Handsは、今回は出展なし。このため、E3会場では以下2つの体感型VR入力デバイスを体験するにとどまった。しかし、その少ない体験内容からでも、この分野の実用化が非常に難しく、各製品とも過酷な生存競争に直面せざるをえないだろうことを強く認識することになった。

歩行入力デバイスVirtualizerで感じたガッカリ感

Virtualizer

体験模様。抵抗が強いため力んでいる

 ドイツ企業Cyberithが開発中の全身体感型VRマシン、Virtualizer。床面のセンサーがユーザーの歩行の動きを検出することで、VR空間内で歩きまわる動きを体感的に実現するものだが、その使用感は期待にはほど遠いものだった。

 特に期待を裏切っていたのは、専用の靴カバーを装着しているのにもかかわらず、床面の抵抗が大きく、歩行の動きをするためにものすごく大きな力を入れる必要があったことだ。腰を支える部品に手をつき、ぐっぐっと押し出すようにしないとまともに前進できず、まるで泥を掻きながら進んでいるような感じである。しかも、足裏が接触しているときにしか移動モーションを検出しないくせに床面が平なため、スキップみたいな動きは不可で、常にスリ足みたいな不自然な歩き方を強制される。5分もデモを体験したらもうお腹いっぱい、ヘトヘトだ。

 この製品、見た目はかっこいいが、このままでは間違いなく大失敗に終わる。先行するOmniのように、摩擦抵抗を大幅に減らす専用ブーツを前提とし、床面をすり鉢型にしたデザインを導入するなりしないと、実用に達することはないだろう。

常時力むことになり、ほんの5分程度の試遊でヘトヘトになってしまった。ダイエットにはよさそうだが、あいにく筆者は生来の骨皮ボディだ

VRグローブManusは大きなポテンシャルを秘める!

Manus

どんな指の動きもしっかりと追従、遅延もほぼなく、良い感触を得た

 上述のVirtualizerに比べれば、こちらのグローブ型VR入力デバイスにはかなり有望な未来を感じることができた。ドイツのスタートアップ企業Manus Machinaが開発するVRグローブManusだ。

 実際に試した所、その軽量さは本物であり、薄手のやわらかなグローブをはめるだけで、精密なハンドジェスチャーのトラッキングが可能となっていた。各指の検出はグローブ内に仕込まれたセンサーで行なわれており、光学的な手法を取る「Leap Motion」とは違って、手が死角に入っても指の動きを取りこぼすことはない。遅延も非常に低く、まるで自分の手がVR空間内にそのまま入っているような感覚を得られる。

 もっぱらの問題は、手そのものの位置の検出を、GearVRの前面カメラによる光学的なトラッキングに頼っている点だ。このため、手を視界外に動かすと、位置が検出不能となり、たちまちVR空間との同期が崩れる。ただ、開発者によれば、これはプロトタイプだけの仕様であり、製品版に向けては、ValveのLighthouseに対応することを計画しているそうだ。

 この問題点が解決すれば、軽く、柔らかく、装着感の良いグローブで五指の動きを完璧に検出できる本製品は、ハンドジェスチャー入力用のVRデバイスとして決定的な存在になるかもしれない。期待大である。

Manusは軽く、薄い。快適な装着感を得られる
装着することで、すりこぎをハンドルに、バナナを銃にできる