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視野角210度! 超野心的VRヘッドセット「StarVR」を試してみた!

6月16日~18日開催



会場:Los Angeles Convention Center

試遊の様子

 VRゲーミングの当たり年となった今年のE3だが、新参のVRヘッドセット「StarVR」が大きな人気を博していた。

 筆者の連載記事「VR Gaming Today!」でご紹介したとおり、「StarVR」は北欧のゲームパブリッシャー・Starbreezeが開発中の超ハイエンドVRヘッドセット。視野角210度、解像度5,120×1,440ドットという超弩級の光学系スペックをぶちあげており、VRファンならだれもが“マジかよ?!”とツッコミを入れたくなるほどである。正直言って眉唾モノだ。

 今回のE3の会場では、Starbreezeがその「StarVR」を初出展。米テレビシリーズ「Walking Dead」を題材にした新作ゲーム「Overkill's Walking Dead」を使ったデモを実施していたので、さっそく試してみた。

 果たして、「Oculus Rift」や「Morpheus」とは比較にならないレベルの超高視野角と超高解像度は、マジモノだった! いろいろと問題もあったのだけれども、そのあたり本稿で詳しくご報告しよう。

2つのホールを結ぶコンコースを日がな1日徘徊していたゾンビ(ウォーカー)の皆さん。迫真の演技!

視野角210度はマジだった! 完全に視界を覆う大迫力のVR体験

デモブースは終日ものすごい人だかり
StarVRの実機
バイザー部分はほぼ全部レンズで、210度という視野角を実現
視界を完全に覆う感じをお伝えできないのが残念。光学系は改良の余地もあった

 「StarVR」のデモブースは、E3会場の東西ホールを結ぶコンコースに接したエリアに配置されていた。会場入口に近く、もとから人通りの多い場所なのだが、空前の超スペックVRが試せるとあってブース前は終日メチャクチャな人だかり。通常なら2時間以上並ばないと体験できないところ、StarbreezeのグローバルブランドディレクターのAlmir Listo氏のご好意でなんとか試すことができた。

 デモに使われていたゲームはStarbreeze参加のスタジオOverkillが開発する「Overkill's Walking Dead」で、その名の通りアメリカの人気テレビシリーズ「Walking Dead」のゲーム版。同じ題材の既存ゲームでアメコミ原作版をベースにした作品があるが、本作はテレビシリーズを元にしたリアル志向の映像を持つ作品だ。

 さて試遊の模様である。「StarVR」の本体は、「Oculus Rift」や「Morpheus」に比べて横方向に一回り大きい。そして、レンズが非常に巨大である。これに、2,560×1,440ドットのパネルが2枚装備されており、両眼で5,120×1,440ドットという超高解像度のVR映像を実現している。

 被り心地は悪くないが、少々重い。「Morpheus」のように激しく頭を動かしてのプレイは少々つらいレベルだ。

 そのぶん迫力はある。視界は巨大なレンズが目の前を完全に覆う感じで、上下の枠はある程度感じられるが、左右の枠はほとんどわからない。目をいっぱいに横に向けても、かすかに左右端の枠の存在が“感じられる”程度で、「Oculus Rift」や「Morpheus」のように、「丸い穴から覗いている感じ」はゼロである。圧倒的だ。

 とはいえ、光学系の調整はまだまだ甘いようで、映像の立体感や遠近感に少々違和感があることと、巨大なレンズ表面に余計な光が映り込んだり、無秩序に乱反射したりしていて部分、部分が白浮きし、視界全体にになんとなくモヤがかかったような画質になっていた。

 解像感は確かに高く、稠密な感じが得られたが、上記のような光学系の調整の問題点があったため、あまり鮮烈な印象は得られなかった。とはいえ、止め絵での画質は「Oculus Rift」や「Morpheus」などよりずっと高いことは間違いない。

 その弱点を差し引いても、視界を完全に覆うVR映像の臨場感は素晴らしい。そうして描かれるのは、実写調で描かれる「The Walking Dead」の世界だ。描画に使うPCにはGeForce GTX 980を搭載しているとのことだったが、フレームレートはちょっと不安定で、このあたりも今後の改善が必要に思えたが、初期プロトタイプとしては悪くない出来だ。

装着! プレーヤーは負傷者という設定のデモで、車椅子にのって一連のシーケンスをプレイした

【Overkill's The Walking Dead】
テレビ版「The Walking Dead」をベースにしたリアル超の新作ゲーム。グロいゾンビが実寸で迫ってくるものだから、半端無く怖い。

荒削りだが大きな将来性。最強VRヘッドセットとしての完成を目指す

迫り来るゾンビをショットガンで撃退しているところ
トラッキングはARマーカーで実装されており、何にでも使える

 デモの内容としては、プレーヤーは負傷者かなにかで、車椅子に乗って病院から脱出するというシーケンスだ。病室らしき場所からシーンがはじまり、2人の仲間が車椅子を押して外に連れ出してくれる。その道中、お約束のゾンビ(ウォーカー)の襲撃がスタート。

 一緒に戦えとばかりにショットガンを手渡され、車椅子に乗ったままのウォーカー狩りが始まる。ショットガンは物理的にもショットガン状のコントローラーで、実際の車椅子に座ってプレイするデモ構成であることもあり、VR内の映像と、自分の実際の感触が完全に連動して、ものすごい一体感である。

 ショットガンで狙いをつけ、ウォーカーの頭をふっ飛ばしつつ脱出行が続く。やがてウォーカーの群れは数を増し、仲間が1人倒れ、2人倒れ……頼みのショットガンも弾切れ。そこに新手のウォーカーが押し寄せてきて絶体絶命! というところでデモのシーケンスが終わる。

 このデモ、車椅子に座ってプレイするというのはよく考えたものだ。ゲーム内のシーンと身体状況が一致するし、動きまわらなくていいので狭いブース内でも快適にプレイできる。

 ちなみに「StarVR」のヘッドセットはポジショナルトラッキングにも対応していて、これはヘッドセット各所に書かれたARマーカーを、壁面に備え付けカメラが捉えることによって実現している。

 この方式のメリットは、マーカーをつければどんなものでもトラッキングできることだ。今回のデモではショットガン状のデバイスにマーカーを取り付けていたが、これは何に対してでも使用できるという。

 ARマーカーを使うことの問題は、精度を確保するためにある程度大きくする必要があり、かさばることだ。これについて、StarbreezeのCTOで「StarVR」の技術面を統括するEmmanuel Marquez氏は、将来的にはValveの「SteamVR」で採用されているトラッキング技術“Lighthouse”の採用も考えていると述べていた。

 まだまだ荒削りな感じもある「StarVR」だが、凄まじい広さの視野角は実際に実現されており、5,120×1,440ドットという解像度も実際に動いていたのだから、そのポテンシャルに期待せずにはいられない。今回出展されたのは初期プロトタイプということで、製品化に向けては多くの改善を加えていくとのこと。

 目指すところは「VRヘッドセットのベンチーマークになること」であるといい、さらに視野角を広げることも考えているそうだ。価格はかなり高くなりそうだが、ハイエンドVRを求めるユーザーにとって注目すべき存在になることは間違いない。

「Star」VR製品写真
担当者によれば、今回出展されたのはまだ初期プロトタイプだという。製品化の日程はまだ未定だが、VRヘッドセット界のベンチマークとなるべく、最高スペックを追求していくとのこと。Lighthouseへの対応も可能性があるとしており、完成が楽しみである。

(佐藤カフジ)