【連載第33回】あなたとわたしのPCゲーミングライフ!!


佐藤カフジの「PCゲーミング道場」


ノートPC・ゲーミング環境改善講座
快適・本気で遊べるPCゲーム空間を実現! 目指せ擬似デスクトップ!


色々な意味で業界の「最先端」を走る、PCゲーミングの世界。当連載では、「PCゲームをもっと楽しく!」をコンセプトに、古今東西のPCゲームシーンを盛り上げてくれるデバイスや各種ソフトウェアに注目。単なる製品の紹介にとどまらず、競合製品との比較や、新たな活用法、果ては改造まで、様々なアプローチでゲーマーの皆さんに有益な情報をご提供していきたい。



■ ノートPCの使い勝手を「ゲーマー的視点」で改善してみよう

筆者が夏の帰省中にゲーミングPCとして活躍した愛機「DELL Studio XPS 1645」

 近年の市場データによると、PC全体の販売台数に占める非デスクトップ型PC(ノート、サブノート等)の割合は7割を超えるそうで、いまやPCといえばノートブックタイプを連想する人が主流になりつつあるようだ。いまだにミドルタワークラスのデスクトップPCを何台も使いまわしている筆者などは、もうオールドタイプということかもしれない。

 そんな筆者も最近はノートPCでゲームをプレイするシーンが増えつつある。近頃帰郷した折に、ちょうど帰省のスケジュールが「Civilization V」(英語版)の発売日にかぶっていたため、日頃は取材旅行くらいでしか使わないノートPCを実家に持ち帰った筆者。暇な時間は「Civ V」をプレイして過ごしていたわけだが、そんな中でとある事実に気づかざるを得なかった。

 それは何かというと、「ノートPCでゲームをプレイするのはとても疲れる!」ということだ。キーボードとモニターが非常に接近しているため、ついつい姿勢が悪くなってしまうし、3Dゲームを遊ぶとCPUやGPUの発熱が凄いことになって、キーボードに触れる手のひらが凄い勢いで汗ばんでくる。また筆者の使用しているノートPCはモニターがテッカテカのグレアタイプなので、明るい場所でゲームをプレイすると周囲の風景が画面に写り込みまくって目が疲れることこの上ない。

 本連載の読者の中にも日頃ノートPCでゲームを遊んでいるという方が少なくないはず。というわけで今回は、ノートPCでゲームを遊ぶ際、いかに快適な環境を実現するかという問題に正面から取り組んでみることにした。周辺機器の選択や便利グッズの採用、その組み合わせ方でデスクトップ環境並の快適さを目指す。その工夫をお伝えしよう。



■ 何はなくともまずは良いマウス。ノート環境にピッタリのゲーミングマウスとは?

Razer Orochi
ROCCAT Pyra
大きさはほぼ同じ。いずれもモバイルマウスとしてデザインされた製品だ

 ノートPCにおける標準のポインティングデバイスといえばタッチパッドだが、あまり素早い操作ができないという問題もあり、モバイルマウスを組み合わせて使用しているという人も多いだろう。その中でもある程度ハードにゲームをプレイしたいのであれば、やはりそれなりの性能を持つ製品が欲しいところ。

 この目的で筆者が強くおすすめしたいのが、ゲーミンググレードのモバイル向けマウス「Razer Orochi」と「ROCCAT Pyra Wireless」の2製品だ。これらのマウスはいずれも小型・ワイヤレス対応という特徴を持ち、ノートPCと一緒に使うシーンに最適だ。ゲーミングデバイスメーカーから発売されていることもあって、マウスとしての性能も非常に高い。

 まず「Razer Orochi」について。Razerの国内代理店MSYから発売されている本製品は、無線方式にBluetoothを採用したワイヤレスゲーミングマウスだ。価格は7,980円。Razerの主力有線マウスにも採用されている3Gレーザーセンサーを搭載し、トラッキング能力は最高レベルだ。本連載のバックナンバー「【連載第27回】PCゲーマー御用達メーカーRazer総力特集!!」にてご紹介しているので詳しいスペックはそちらを参照していただくと良いだろう。

 もうひとつの「ROCCAT Pyra」は、ドイツのゲーミングデバイスメーカーROCCATが開発し、ドスパラが販売しているワイヤレスゲーミングマウス。こちらはUSB装着タイプの独自レシーバーを使用する独自の無線方式で、Bluetooth接続時の「Orochi」に比べて無線状態でも高いパフォーマンスを発揮する製品だ。本製品についても本連載のバックナンバー「【連載第31回】ゲーミングマウスカタログ 2010夏モデル編 」にてご紹介したことがある。

 実際にノートPCで本気でゲームに取り組むというシーンを考えた場合、ワイヤレスというのは非常に重要なポイントだ。持ち運んで出先でちょっくらゲームという場合などは、いちいち線をつながなくても使えるというのは便利だし、自宅環境でもノートPC周りのケーブルをすっきり保てる。

 その上で「Orochi」と「Pyra」のスペックを比較すると、無線方式の違いから、実際のゲームプレイ時のパフォーマンスは「Pyra」の方が高い。「Orochi」はBluetooth接続であるために、無線時は一般マウスと同等のパフォーマンスで動作する仕組みである一方、「Pyra」はポーリングレート1,000Hzというフルスペックで動作する。「Orochi」をゲーミンググレードの性能で動作させるためには付属のケーブルでマウスを接続しなければならないため、実は少々本末転倒なところがあるのだ。一方の「Pyra」は、無線のままデスクトップ環境でも全力で使えるというところが大きなアドバンテージになっている。

 これに加えて、マウス本体の重量。両方のマウスが乾電池型のバッテリーを使用して動作する仕組みだが、「Orochi」は単3×2、「Pyra」は単4×2という違いがあり、結果的に「Pyra」のほうが使用時重量が軽い。というわけでノートPC用とセットで使うマウスを選ぶなら、現時点では「Pyra」に軍配が上がりそうだ。


「Orochi」。無線時はBluetoothマウスとして動作するため、ポーリングレートが125Hzに限られるという弱点アリ。電源として単三乾電池2本を使用
「Pyra」。独自の無線方式のためUSBスロットをひとつ消費してしまうが、無線時でも1,000Hz、16bitデータバンドのフルスペックで動作。電源には単四型充電池2本を使用



■ キーボードのタッチ感を重視するユーザーなら・省スペースタイプで「上乗せスタイル」!

ノートPCと組み合わせるなら省スペース型キーボードがオススメ。なぜなら……
このような使い方が可能

 ついでにもうひとつ、入力デバイスの話題を取り上げておきたい。筆者はノートPCの薄型パンタグラフ式キーボードというのがどうも苦手で、ゲームに限らず、出先でノートPCを使う際にはフルストロークのメカニカルキーボードを使うようにしている。そうでなくても、ゲームではしっかりとしたタッチ感のあるキーボードを使いたい、という人は多いはずで、そんな方におすすめしたいのがキーボードの「上乗せスタイル」だ。

 どういうものかというのは、写真を参照していただきたい。ようするにノートPC本来のキーボードの上にフルストロークの外付けキーボードを乗っけるというだけだが、これだけでもずいぶんゲームの快適さが増すこと請け合いである。

 これを行なう際に最適なキーボードは省スペース型。テンキーまでフルで搭載するフルレングスのキーボードは、大抵のノートPCの横幅よりも大きく、「上乗せ」した場合に大きくはみ出してしまうためだ。それによりマウス操作のスペースを狭めてしまうし、不恰好でもある。これが、ちょうどテンキーを省いたサイズのキーボードであれば、15インチ~17インチクラスの、ゲーミングノートPCでは一般的なサイズにぴったりフィットしてくれる。

 写真にも使用しているが、一例としてご紹介するゲーミングデバイスは、シグマA・P・Oシステム販売のDHARMAPOINTブランドより発売されている「DRTCKB91UBK」。USB接続のキーボードで、高級品として有名な東プレの「Real Foce」をベースにデザインされたゲーミングキーボードだ。全キーの荷重30グラムという軽いタッチで、長時間のゲームプレイによる疲労を軽減してくれるという優れものだ。

 これに限らず、ノートPCと組み合わせて使うキーボードは、幅30cm~40cm程度の省スペース型からお好みのものを見つけるといい。外付けキーボードを使うことによって、後述する使用レイアウト変更にも問題なく対応できるようになるのでオススメだ。


無線マウスと合わせて、かなりデスクトップPCの快適さに近づいたキーボードのスタンドを立てる場合は、ノート本体のキーに干渉しないように注意が必要



■ 便利アイテムで疲れにくい環境を実現する!

「Cooling Pad N100」。中央にファンが付いている
やや傾斜がついており、ノートPCのモニターをややせり上げる効果がある

 ノートPCでゲームを遊ぶ際に、かなり気になるのが本体の発熱だ。もともとCPUやGPUをはじめとする各種パーツを限界まで詰め込んだ機械であるだけに、それらを全力でブン回すような3Dゲームを遊び続けていると、本体内の発熱というのは凄いことになってしまう。筆者の使用しているノートPCでも、ゲームを初めて5~10分経過したころから携帯型カイロのような熱を持ち始め、内蔵ファンが「ブゥウウウン」とうなりを上げはじめる。

 あまりに発熱がひどい状態になると自動的にセーフティ機能が働き、CPUやGPUの動作クロックを下げてしまうというノートPCもある。ノートPCでゲームをプレイする場合、放熱対策はかなり重要になってくる。そこでオススメなのが、各サプライメーカーから発売されている「ノートクーラーパッド」、「クーリングパッド」などと呼ばれている製品だ。価格帯は2,000~5,000円程度。

 一例としてご紹介するのは、ロジクールから発売されている「Logicool Cooling pad N100」。モノとしては板状の本体内部にUSBバスパワーで駆動する静音ファンを搭載した製品で、価格は2,980円。これにノートPCを乗せると、本体底面ファンからの熱を吸い上げて周囲に散らしてくれるというものだ。

 筆者のノートPCでは3Dゲームを遊んでいる最中に放熱ファンが全力で「ブゥウウウン」と回り始めるのだが、このクーリングパッドを使用することでファンが全力で回り始めるタイミングがかなり遅くなった。より負荷の低い一般的な作業でファンが全力になることがなくなり、ファンの音がほとんど気にならない。また、クーリングパッド自体のファン動作音は元々全く気にならないレベルなので、全体的に快適さが増す印象だ。


使用中の図。ノート本体の放熱が改善されるほか、モニターの位置が若干上になるため姿勢改善の効果もある



Notebook Riser N110
背面に角度調整のための機構が付いている

 もうひとつの快適さを増すアプローチとして、ゲームプレイ時の「姿勢改善」を挙げたい。ノートPCを机上に普通に置いた状態ではモニターがかなり「下の方」に位置するため、プレーヤーはどうしても前かがみ気味の、猫背な姿勢で長時間固まってしまうことになる。これがノートPCで遊ぶ際の疲労に少なからず影響を及ぼしていると考えられるが、これを解決するためのアイテムが「ノートPCスタンド」である。これは多くのサプライヤーから発売されており、価格は1,000~3,000円程度が主流だ。

 今回一例としてご紹介するのは、こちらもロジクールから発売されている「Notebook Riser N110」。さきほどのクーリングパッドに似た板状の製品だが、こちらはファン等はなく、そのかわりに面の角度を20~40度まで調整できるスタンド機構が付いている。価格は2,980円。

 これを使用することによる最大の恩恵は、ノートPCのモニター部分をググッとほぼ垂直にせり上げることで、疲れにくい姿勢で使用できるようになることだ。最大傾斜の40度で設定した場合、モニターの位置はおよそ30cmほど本来よりも高くなる。感覚としてはデスクトップモニターを眺めている形に非常に近くなり、胸を張った姿勢で違和感なくゲームをプレイできるのだ。これによる疲労度の低減効果は大きい。

 スタンドを使用する際に注意したいのは、見ての通りノートPC本体のキーボードも大きな傾斜がついて使いにくくなってしまうため、別途外付けキーボードを使用すべきという点。前章でご紹介したように省スペース型のキーボードを組み合わせると、レイアウト的に無理のない環境が構築できることだろう。参考写真でおわかりのとおり、ほとんどデスクトップ環境に近い風景が出来上がる。


角度調整を行なうことでモニターの位置を理想の形に調整。外付けキーボードはほぼ必須となるが、使用時の姿勢が改善されて快適な環境が実現



■ 究極! これがノートPCによる擬似デスクトップ環境だ

映像端子。筆者のPCの場合はHDMI、DisplayPort、アナログRGB端子の3系統が装備されていた
外部モニターを接続!
電源プランを変更してノートを閉じても動作するように

 さて、そろそろ究極のソリューションへとテーマを移したい。これは家の中で長時間ノートPCを使うという方にオススメのスタイル。外付けモニターによる「擬似デスクトップ環境」の構築だ。

 ノートPCのモニターというのは、大抵の場合コストとサイズの問題から、デスクトップモニターに比べて性能が限定されたものが付いていることが多い。筆者の使用しているノートPCのモニターはLEDバックライト搭載型でわりと良い方だが、視野角は狭く、発色は明るいが白飛びしがちで、グレアタイプなので環境光が明るすぎると反射して見づらいという問題がある。

 だからこそ、長時間PCを使うユーザーならば、デスクトップモニターを使って「擬似デスクトップ環境」を構築することには大きな効果がある。そこで気にしたいのは、ノートPCに搭載されている外部映像出力端子の種類だ。現在販売されているノートPCには、大抵の場合HDMIが装備されている。最近のモデルではDisplayPortの搭載も主流になりつつある。出力端子の種類によって、利用できる最大解像度が違うという点に注意しよう。

 HDMIでは、スペック上の最大解像度は1,920×1,080ドット@60Hz。ものによっては縦1,200ドットを出力できる場合もある。より新型のPC用映像出力端子であるDisplayPortでは、この上限が2,560×1,600@60Hzとなり、フルHD程度の解像度であれば120Hz出力も可能だ。実際にその解像度を出力できるかどうかは、あとはそのノートPCに搭載されているグラフィックスチップの問題である。

 筆者の使用しているノートPCの場合、グラフィックスチップにATI Mobility Radeon HD 4670を搭載しており、チップ自体の最大解像度は2,560×1,600ドット。搭載モニターは1,920×1080ドット表示タイプだが、DisplayPortを使って外部モニターに接続すれば、それ以上の解像度が出力できるというわけだ。というわけで写真の例では、DELLの27インチワイドモニター「U2711」への接続を試してみた。このモニターは最大解像度2,560×1,440ドット。

 あとはノートPC側の電源設定で、「モニターを閉じても電源オフ・スリープなどをしない」ようにし、ノートを閉じてしまえば擬似デスクトップ環境の完成だ。ノートPC本体はCPUとGPUが駆動するただの発熱する箱となり、机上にはモニター、キーボード、マウスによる広大な快適環境が出現。ここまで行くと「デスクトップPCでいいじゃん」と言われそうだが、必要に応じてどこぞに持ち去ることのできるノートPCで、この環境を作ることに意味があると信じたい。

 もちろん、外部モニターとノートPCのモニターを合わせてマルチディスプレイ環境を構築するのもオススメ。120Hz出力対応の高速タイプモニターを使えば、FPSなどの競技性の高いゲームを高いレベルでプレイできる環境も構築できる。皆さんにも、ノートPCならではの柔軟性を最大限に生かした快適環境をどしどし構築して欲しい!


というわけで擬似デスクトップ環境を構築。長時間PCを使うことになるライフルスタイルの方には是非オススメしたい形だ



(2010年 10月 18日)

[Reported by 佐藤カフジ ]