【連載第24回】オンラインゲームの楽しさを再認識しよう!


てっちゃんのぐだぐだオンゲーコラム


「アミーゴ・アミーガ」の日本製ならではの面白さと問題点
魅力的な世界観ではカバーしきれなかった発展途上のオンラインゲーム制作技術


 今回取り上げるMMORPGはチュンソフトの中村光一氏がプロデューサーを務めた「アミーゴ・アミーガ」。僕の中で「5本の指に入るほど世界観が魅力的だったMMORPG」として今でも印象に残ってるゲームだ。この作品ではすべての“モノ”に命が宿っている。椅子やテーブル、家などの建物まで目や口を持ち、世界の住人として暮らしている。おとぎ話そのままの世界なのだ。

 この世界で自分の相棒「アミーゴ」を作っていくのがこの作品の面白さだった。椅子やモップといったモノが自分の大事な仲間になっていく。序盤のストーリーからプレーヤーは強く引き込まれる。「これこそが国産のオンラインゲームの面白さだ」と実感した。

 しかしその一方でMMORPGとしての全体の完成度はどうだったろう。「アミーゴ・アミーガ」は2007年にサービスがスタートし、2009年に終了している。国内産MMORPGはいくつかのヒット作を生み出しているが、本作のようにユーザーの支持が得られない作品も多く、海外で成功するようなMMORPGはさらに少ない。本作の場合やはり「技術の足りなさ」が目立ったように思う。今回は、「アミーゴ・アミーガ」の“光と影”を取り上げていきたい。


■ 全ての“モノ”に命が宿る世界で、大切な「アミーゴ」と出会う。当時の水準に達しきれなかったゲーム部分

テーブルや椅子やタンス、全てのモノに目鼻があり、生きている、とてもユニークな世界だ

 「アミーゴ・アミーガ」は企画、開発をチュンソフトとゲームズアリーナが共同で行ない、ゲームズアリーナとNHN Japanが共同で運営を行なっていたMMORPGだ。2007年1月に基本プレイ無料のアイテム課金制で正式サービスを行ない、2009年6月にサービスを終了している。

 「アミーゴ・アミーガ」はなんといってもコンセプトが素晴らしかった。全ての“モノ”に命が宿っている世界。木や花だけでなく、ポストもテーブルも脚立も椅子もタンスもベンチも噴水も本棚も金庫も……何もかもに目や口が付いている「アミーゴ」たちなのだ。アミーゴはぬいぐるみのようなかわいらしいデザインで、暖かな雰囲気を感じさせる。「実際にこの世界を見てみたい」と強く感じさせるのだ。

 そして展開するストーリーがまた良かった。プレーヤーキャラクターが冒険に出るきっかけは1体のアミーゴを救う場面から幕を開ける。彼はアミーゴと強い絆を結んだ冒険者達が結成する組織「アミーゴ・アミスタ」の1員で、人々からの依頼で様々な事件を解決している。彼の主人である「ナゼット」がゴブリンの洞窟を調査中に襲われ、彼だけが逃げ帰ってきたという。

 ナゼットを救出しようと調査隊が組まれるが、助けたアミーゴはパートナーがいないため置き去りにされてしまう。プレーヤーは彼に手をさしのべる。腕試しで街の外のモンスターに挑んだとき不思議なことが起こった、プレーヤーとアミーゴの力がシンクロし、強力な力が発動したのだ! アミーゴとプレーヤーは特別な絆で結ばれている。そして自分の力に目覚めた主人公はさらに多くのアミーゴを仲間にしながら、1人前の冒険者へと成長していくのだ。

 「これぞ日本のRPGだ!」と感心させられた冒頭だった。世界観はユーモラスで、ちょっと間抜けなのんびりとした感じなのだが、“新米冒険者の旅立ちと、未来の可能性”を強く感じられる。アミーゴの健気な感じがまた良くて、何としても協力しなくてはと言う気持ちになる。「さすがチュンソフトが関わったMMORPGだなあ」と感心させられた。

 この世界観と、ストーリーは間違いなくほかのMMORPGにはない魅力があった。新しいアミーゴを仲間に加え、プレーヤーと合わせてどのように育てていくかといった試行錯誤も楽しかったし、何よりも自分と同じようにこの世界を気に入った人達とアミーゴの絆が良かった。街を歩いてすれ違ったり、パーティーを組んで一緒に冒険していると、プレーヤーのアミーゴへの想いが伝わってくる。面白い名前を付ける人、アミーゴ収集に力をこめる人、1体のアミーゴを溺愛する人……アミーゴと共にこの世界を歩くことを楽しんでいる人ばかりだった。


イラスト:阿佐ヶ谷帝国

全ての“モノ”に命が宿っている世界

 ゲーム世界、プレーヤー社会としては「アミーゴ・アミーガ」はとても魅力的だった。しかしその一方で、“オンラインゲームプレーヤー”の視点から見れば、「日本のオンラインゲームなのに、こんな水準なのか。日本のゲーム開発者はこのくらいの作品を世に出してしまうのか」と失望することも大きかった。もちろんこの時点で日本でも世界に誇るオンラインゲームはいくつもあったが、「アミーゴ・アミーガ」は優れたオンラインゲームとはとても言えなかった。

アミーゴ達に囲まれた世界。雰囲気は良く出てるが、グラフィックス的に同時代のゲームと比べて見劣りがする
信じられないくらいシンプルな戦闘画面。アミーゴや仲間と力を合わせる「コラボ」などシステム的には面白かったが……

 最大の問題点はグラフィックスだ。同時代の他のゲームと比べてみても解像度が低く、はっきり言ってショボかったのだ。解像度が足を引っ張り世界は見える範囲が狭かったし、人間キャラクターには魅力が薄かった。「味」ではカバーしきれない物足りなさがあった。特に戦闘画面は「これはないよな」と思わせる、オブジェクトが無くスカスカの画面で僕は強い失望を感じた。

 グラフィックスはゲームの魅力の要素として大きい。「アミーゴ・アミーガ」は世界のデザインセンスは魅力的なのに、単純に開発者がPCというハードを使いこなしてないと感じた。「日本のゲーム開発者って、やっぱりPCのオンラインゲームに関しては、技術的にまだまだなんだな」とその時感じた。

 課金アイテムでは特に「アミーゴ用の回復薬」の必要性が強調されすぎているのが不満点だった。本作ではプレーヤーの体力は回復魔法だけでなく、フィールドで休憩すれば回復するのだが、アミーゴの体力は街で修理するか課金アイテム「アミーゴ用の回復薬」を使うしか回復できなかった。街での修理はゲーム内通貨でできるのだが、バトルで受けたダメージを回復するコストが、バトルによって得られた報酬を上回るバランスであるため、プレーヤーの装備の強化などに資金が回らなくなってしまうどころか、どんどんじり貧になってしまう。課金アイテムでアミーゴの回復を行なわないと、序盤からかなり苦しい冒険を強いられるバランスだった。

 「回復薬」というのは他のMMORPGでも課金アイテムとして一般的な商品だが、多くの作品では店売りのものより効果が高かったり、即効性があったりなど、ゲーム内通貨で買えるアイテムのスペシャル版的な扱いのものが追い。他のタイトルは序盤はすいすいと進め、より強くなるためや、時間を短縮化するために課金アイテムを提示する。しかし「アミーゴアミーガ」では、通常のゲームプレイを継続するために課金アイテムが必須だった。この必要性を強調しすぎた点は、ユーザーの心をゲームから離してしまう、研究の足りない点だと感じた。

 基本プレイ無料アイテム課金というビジネスは、多くのオンラインゲームが実施し、既存の月額制のゲームも移行する作品が多かった。課金アイテムに関しては、その必要性に関して模索の時代にあった。2007年はまだ課金アイテムの方法論が確立し切れてない時代のため仕方がないともいえるが、この他にもチャンネルがないためサービス開始時にはプレーヤーが集中しすぎてサーバーに入れなかったり、当時のオンラインゲームの水準と比べてみれば足りないと感じる点がいくつもあった。結局、「アミーゴ・アミーガ」はサービス開始時は盛況だったもののユーザーをつなぎ止められなかったのだ。

 日本製でも人気のMMORPGは多いが、本作のように消えてしまった作品もまた多い。「アミーゴ・アミーガ」に関してはコンセプト、ストーリー、世界観に関しては本当に魅力的だったが、やはりゲームの根幹を支えるオンラインゲームとしての基本システムが貧弱だった。それはやはり当時求められていたオンラインゲームへの理解が足りず、技術の水準がユーザーの求めるところに達していなかったからだと思う。

 日本のユーザーは欧米、韓国、台湾、中国、そして最近はロシアと様々なMMORPGに触れている。ユーザーは敏感であり様々なゲームを比べている。そして優れたシステムがあれば、自分の好きなタイトルにも取り入れてもらいたいとすかさず要望する。反対に「入っているべきシステム」がないと大きく失望する。ユーザーの要求水準は非常に上がっており、それを満たせないタイトルは人気が得られない。

 「アミーゴ・アミーガ」は当時のMMORPGの水準には達しなかった。しかし、本作のコンセプトに魅力を感じ、サービス終了後も再開や続編を希望するユーザーもおり、惜しまれながら終了してしまった作品という印象がある。もし続編や後継作が作られるならば、あの素晴らしかった世界観とコンセプトを持ったMMORPGを、現在のオンラインゲームを越える作品として作って欲しい。

 日本産オンラインゲームといえば、先日、「ドラゴンクエスト新作発表会~いま開かれる新たな扉~」で、 「ドラゴンクエスト」シリーズの最新作「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」が発表された。本作の全貌が明らかになるのはまだ先だが、オンラインゲーマーも要注目のタイトルである。オンラインゲームとして、本作がどのような作品になるのか、日本の開発者がどのようなゲームを作るのか続報に期待したい。世界を圧倒するような日本産オンラインゲーム、そしてMMORPGが生まれて欲しい。


■  てっちゃんの割とどうでもいい話 「吉本志望だった開発者の生むギャグセンス」

ユーモラスなキャラクターとセリフ。本作の大きな魅力だった

 「アミーゴ・アミーガ」のほのぼのとしたギャグセンスが好きだった。こればかりは外国だとセンスが異なる日本人でしか作れないものだとおもう。歌手志望の女の子がしゃっくりが止められなくて苦しんでるのを止めたり、小ネタが光る。

 敵と戦い街を守るアミーゴ・アミスタの隊員も、大きなぬいぐるみのように見えるタンスのアミーゴだったりするし、建物に立てこもるゴブリンに「田舎のお母さんが泣いてるよ!」と声をかけたりする。かなりベタではあるが、このセンスがたまらない。他にもコテコテのギャグが随所に盛り込まれていた。アミーゴたけでなく人間もユーモラスな人物が多く、クエストでは会話のやりとりも大きな楽しみだった。

 当時のインタビューによると「アミーゴ・アミーガ」のメインディレクターは以前“吉本のお笑いを目指していた”ということで、その彼が一生懸命ギャグを盛り込んでいたという。こういう小さなこだわりが作品全体を楽しいものにしてくれるのだ。



~今回ぐだってしまったオンラインゲーム~

「アミーゴ・アミーガ」

こちらはイメージイラスト。このくらい世界が細かく描けていたら、ユーザーの反応は違っていただろう

 「アミーゴ・アミーガ」は、企画、開発をチュンソフトとゲームズアリーナが共同で行ない、ゲームズアリーナとNHN Japanが共同で運営を行なっていたMMORPGだ。2007年1月よりアイテム課金による正式サービスをスタート、2009年6月にサービスを終了した。

 “世界にあるすべての「モノ」と友達になれる”をコンセプトに、すべてのモノが生命を持った生き物として人間と共存しているというユニークなファンタジー世界が冒険の舞台となっており、プレーヤーはアミーゴを増やしながら世界各地を冒険していった。濃厚なストーリークエストもプレーヤーから人気だった。

 季節イベントなどもひな人形のようにアミーゴが飾られていたり、本作ならではの楽しさだったが、アクティブモンスターを追加したところ、生産プレーヤーが活動しにくくなってしまうなどアップデートでの不満が出たり、課金アイテムや課金アミーゴのバランスなどでも批判の声が上がった。それでも本作が好きだった熱心なプレーヤーは本作の復活を希望し、署名運動もしているようだ。


【スクリーンショット】
上段はアップデート、下段はゲーム内イベント。とても楽しそうな雰囲気が伝わってくる

(C) Games Arena

(2011年 9月 13日)

[Reported by 勝田哲也]