【連載第25回】オンラインゲームの楽しさを再認識しよう!


てっちゃんのぐだぐだオンゲーコラム


「TERA」の世界を“散歩”して、クリエイターのこだわりを堪能しよう
レベルアップや戦闘だけじゃない、MMORPGの楽しみ方


 今回はMMORPGのフィールド探索の楽しみ方を提案したい。オンラインゲームは強大な敵を倒す戦闘、ストーリーのしっかりしたクエスト、友達とのおしゃべり、様々な要素が絡み合う戦争など色々な遊び方があるが、今回「てっちゃんのぐだぐだオンゲーコラム」で提案したいのは“散歩”である。

 取り上げるタイトルは「TERA: The Exiled Realm of Arborea」だ。8月にスタートした本作の大きな特徴はやはり美しいグラフィックスにある。最初の「黎明の島」に降り立ったとき、誰もが驚きの声を上げたはずだ。広大な自然と、青い空。空を覆うような美しい紫の葉を茂らせる大樹……。美しく、そして「異世界」を強く意識させられる風景がそこに広がっている。

 「TERA」ユーザーのひとりとして「フィールドにメリハリがなくやることが同じ」、「レベル上げしかやることがない」など、本作のオンラインゲームとしての“遊びの幅の狭さ”を指摘する声は多い。だが、僕はそういった意見に異を唱えたい。MMORPGの楽しみ方はもっと幅広いと思うし、メーカーに提供して貰うものばかりが“遊び”ではない。「TERA」の楽しさはまだまだたくさんあるはずだ。

 そして何より、たまたま知り合った人達と絆を深くし、一緒の体験を積み重ねることこそMMORPGの醍醐味だ。友達ともっと「TERA」を楽しむために、駆け抜けていったフィールドをじっくり楽しんでみることを提案したい。これまで気がつかなかった「TERA」のすごさを再確認できるはずだ。


■ 他の人を誘って「TERA」の世界をじっくり、たっぷり観光してみよう

奇妙な紋様を空に描く「TERA」の太陽

 以前、「真・女神転生IMAGINE」の回にも書いたが、僕は散歩が趣味だ。自転車や車ではなく、“歩く”のが好きだ。流れていく風景では気づかない、例えば人の家のポストの形や面白い看板、路地裏の風景や、意外な道の繋がりなど、徒歩ならではの発見がある。

 この「世界の細かいところを楽しむ」というのはMMORPGでも同様で、僕はマップの隅々まで行くのが好きだ。フィールドの植物相を調べたり、建物のオブジェクトを比較してみたり、まるで探偵が虫眼鏡を持って歩くような、細かいところをチェックする。そうすると意外な発見がある。場所を演出するために使ってるオブジェクトが全く別なところで使われていたり、他では見ないものがその場所だけにあったりする。クリエイターが細部にこめた想いを、たしかに感じることができるのだ。

 そしてただ発見するだけでなく、友達に自分の発見を報告できるのがMMORPGの楽しさだ。普通にゲームを楽しむのだけでは気がつかない細かいものの発見や、景色を楽しめるポイント、一緒に周り感想を言い合うことで見つかるそのフィールドの印象……何より友人が僕の発見に興味を持ってくれたときが1番嬉しい。「オンラインゲームって楽しいなあ」と感じる瞬間だ。

 かつて「リネージュ 2」の開発者に、サービスがはじまる前に「このゲームで1番表現したかったものは何か」と質問したとき、「木や、山の形など自然の美しさだ」と答えが帰ってきた。戦闘などのゲーム性ではなく、自然の美しさを熱心に語る開発者にびっくりさせられた。しかし「リネージュII」をプレイして遠くまで広がる美しい風景を見たとき、開発者が言っていたのはこういうことかと納得させられた。「TERA」もまた、とても風景が美しく、そして細部まで作り込まれたグラフィックスデザイナーの“執念”を感じさせられる作品だ。

 ただ、「TERA」ではせっかくの美しいグラフィックスが、じっくり味わえる機会は少ないなあという印象がある。クエストを受け次の場所へ進むというゲーム性のために、フィールドはまさに駆け抜けるためだけに存在する感じなのだ。そして同じ場所にはほとんど戻らない。この早いテンポは魅力的だが、一方で先頭を走るプレーヤーとそれを追うプレーヤーの乖離も激しいようで、低レベル帯に人が少ない状態になっている。

 そこで今回は、あまりに先を急ぎすぎなんじゃないか、もっともっと「TERA」は評価するところがあるんじゃないか、ということでゲーム序盤の風景を細かくピックアップしたい。興味を持った人は是非自分のこれまでの冒険をふり返り、仲間と共にピクニック気分でフィールドを探索して欲しい。また、他のゲームのプレーヤーもこのように細かくマップをチェックしてみてはどうだろうか。


 では、実際にスクリーンショットと共に序盤のフィールド「黎明の島」を見ていこう。まず面白いのが天空に輝く太陽の形だ。まるで魔法陣か何かのような光の模様がある。また、ゲームのスタート地点はクエストを進めるため前に進んでいくのだが、実はふり返ると「飛行船発着場」がある。飛行船は青い巨大な石の力で浮いているようだ。ゲームが進むとこの飛行船の1つが墜落した場所に行くことになる。

 前に進むとトナカイ型のモンスター「アルガス」や、木がうこぎ出したかのような「ギリード」といったモンスターがいる。レベル20程度で黎明の島のモンスターは攻撃してこなくなる。このためモンスターの造形も近寄ってたっぷり眺めることができる。

 また、黎明の島は華やかな木々、花々が美しい。足下の花を注目してみると色々な種類があって驚かされる。最もびっくりするのは「遠征隊の補給基地」だろう。この補給基地の中心は巨大な円柱なのだがその上が藤の花のような紫の花や葉を付けた植物が生い茂っているのだ。黎明の島周辺はナイアガラの滝のような巨大な滝になっていて、今にも落ちそうな船や、沈没してしまった船も見える。海の上では鳥が飛んでいる。

【黎明の島】
美しさで初心者の心をつかむ黎明の島。左はスタート地点の後ろにある飛行船発着場。中央はモンスターのアルガス。右は補給基地の中心の巨大な円柱。空を見上げ驚きの声を上げてしまう光景だ
神像や沈んだ船など隅々まで歩くことで発見がある。友達と一緒に来れば楽しさは何倍にもふくらむ
植物に注目するのも面白い。花はその造形の細かさに驚かされる

 また黎明の島ではこれからの戦いを予感させる「黒い裂け目」があり、そこから禍々しい瘴気が吹き出している。この黒い裂け目周辺の植物や動物は歪み、ねじくれてしまっている。ここでは闇の勢力のような存在が闊歩している。

【黒い裂け目】
黎明の島に不吉な影を落とす黒い裂け目。歪んだ生き物が闊歩している

 黎明の島から出ると大陸の文化の中心「ヴェリカ」に一時だけ立ち寄り、「アルカニア領」に向かう。大都会のヴェリカをちょっとだけ見て、ド田舎のアルカニア領の「伐採者の村」に向かう展開が楽しい。伐採者の村の建物は住人の性格を表わしているようで、洗練されておらずいい加減に木を組み合わせてるところが楽しい。丸太を加工する場所や、巨大なクレーンなどもあって生活感がある。

【ヴェリカ・伐採者の村】
大陸の中心都市ヴェリカ。洗練された建物や、生産施設の細かさなど見所の多い場所だ
ヴェリカの滞在は少しで辺境の伐採者の村に。こちらは人々の生活の様子が伝わってくる。乱雑な作りの建物も楽しい

 ここから伐採者の村を中心に様々な場所に進む、「辺境」というキーワードは同じだが多彩な地形が楽しめ、イメージがドンドン広がっていく。「西部伐採地」は伐採者の村からさらに林業部分を切り取った場所だ。ここにあるので面白いのは伐採用の機械。イノシシのようなシルエットの“車”なのだ。車の前面に付けられている回転ノコギリで木を切る機械なのだろう。びっくりするほど凶悪なシルエットだ。またここには「妖精の泉」という美しい場所もある。

【西部伐採地】
伐採者の村のテーマをさらに推し進めたような西部伐採地。中央上の「伐採マシーン」は是非動いているところを見てみたい。右下は美しい妖精の泉だ

 「久遠の盆地」は一転して見晴らしの良い広大なサバンナ地帯を思わせる乾燥した地域だ。木の葉っぱも茶色く、どことなく秋のような雰囲気もある。ここには巨大な遺跡がある。黎明の島との関係も感じさせる。「フキアン保護区域」は“フカ”と呼ばれる種族の住む地域だ。沼地に住むかわいらしい種族で、蛙を使役する。プレーヤー達の種族とは敵対しているようで、近付くと襲われてしまうが、そのかわいらしい姿は思わず倒すのをためらってしまう。トーテムポールの作りやテントなど、デザイナーが力をこめて作っているのがわかる。

 「忘却の幽林」は鬱蒼とした林が邪悪なにおいを発しているように感じる地域。墓所には青い人魂が浮遊していて、死霊を思わすモンスターがいる。ここには角を持つデヴァという種族の戦士や山賊がいる。キャラバンを襲っているらしく、破壊された馬車がそこかしこにある。

【久遠の盆地・フキアン保護区域・忘却の幽林】
久遠の盆地は敵達のテリトリーだ。秋を思わせる白い植物と、紅葉した木々が美しい。赤茶けた砂も強い印象に残る
見て回るだけで楽しくなってくるフカの集落。カエルをふくらましたアドバルーンなど、なにに使うのだろう。カエルと共存するユーモラスな種族だが、プレーヤー達
山賊が跋扈する忘却の幽林。陰気な森の奥という雰囲気が見事だ。うち捨てられた馬車の残骸が、略奪の恐ろしさを物語る

 そして今回最も気に入ったのが、「咆哮の荒野」の“巨神像”だ。咆哮の荒野は広大な平原が広がる地域で、気持ちの良い空間だが敵の勢力は強く、占領された地域もある。ここを進んでいると、巨大な像がまるで山に突き刺さっているかのように見えてくるのだ。像はいくつもあり、様々な角度で見ることができる。「TERA」には久遠の盆地や黎明の島などにも遺跡があるが、この巨神像は特にロマンを感じさせる。

 この像は後光のような輪を背負っており、卵形の頭部に紋様が書かれており、人ではない不気味さを感じさせられる。近くにはこの像が持てるような大きさの剣があったりもする。この遺跡は実はロボットで、何らかの拍子に動き出したら……と思わず考えてしまう。この像を見るには、咆哮の荒野の南部、クチャートの駐屯地から西の街道沿い、そして南西の「ロック追随者の」駐屯地の間のところでいくつも確認できる。ぜひ周辺を探索し、いくつもある巨神像を確認してほしい。

イラスト:阿佐ヶ谷帝国

咆哮の荒野にいくつもある巨大な人型の像はロマンとストーリー性を感じさせる。何体もいるのが面白い。もし動き出したら……

【咆哮の荒野】
咆哮の荒野の南部、クチャートの駐屯地から西の街道沿い、そして南西で見ることができる巨神像。遙か昔の像のようだ。プレーヤー達の文明とは違う、異質さを感じさせられる。どんな秘密が隠されているか、ロマンがふくらむ像だ
気持ちよく開けた咆哮の荒野だが恐ろしいモンスターがひしめいており、そこかしこに敵の拠点がある。襲われた開拓民の村もあり、戦いの厳しさを感じさせられる

 今回、駆け抜けた地域を改めてふり返ったが、様々な発見があった。「TERA」はもっとどんどんやりこんでいくつもりだが、定期的に「観光」もしていこうと思う。他の作品でもフィールドにこだわり、語られている以上の設定を詰め込んでいる。それらを友達と一緒に旅して楽しむことができるのはMMORPGだけだ。「最近やることなくなったなあ」と嘆く人は、友達を誘い広大な地域を共に探険し発見を共有する楽しさを見つけて欲しい。


■ てっちゃんの割とどうでもいい話 「巨人と少女でも同じ性能。差はどこでつけるか!?」

少女のようなエリーン。この小さな体で大剣を振り回す

 「TERA」はどの種族でも全ての職業に就ける。ステータスなどは職業固定で、種族の違いは「種族スキル」で設定される。このため筋骨隆々の「アーマン」と、少女のような「エリーン」は見た目ほどに強さに違いがないわけだ。

 今回僕はアタッカーの「スレイヤー」をアーマンでやってみた。パワフルなアーマンが巨大な両手剣を振る姿はかっこよく、いかにも重戦士という感じで彼を選んだことを満足している。「TERA」のパーティでは盾役と回復職が人気だが、「火力職」として能力を鍛えていきたい。

 ただちょっと納得いかない気持ちにさせられるのがエリーンだ。同じスレイヤーの場合、エリーンのスレイヤーは体以上の巨大な両手剣を持ち、剣に振り回されるような仕草で戦う。「頑張ってるんだなぁ」と微笑ましい反面、性能という意味ではがっしりしたアーマンとほとんど変わらないのだ。アーマンはダウン耐性があり、エリーンは動きが速いという種族スキルの違いはあっても、重要となる攻撃力は変わらない。

 職業・種族による性能の違いは常に議論の的になる。オンラインゲームでは常に最高の効率を求める方向に力が働いてしまうため、コンテンツに要求される能力が劣っている職業や種族はそれだけで不要扱いされてしまうことも多い。そこで昨今のオンラインゲームでは、種族による制限をできるだけ少なくしていく方向をとっている。

 MMORPGは自由度の高いキャラクター作成を望むプレーヤーがいる。選択の幅を狭くする種族の性能差は出しづらいのかもしれない。そうなると我々はどこで差別化を図っていくか。答えの1つは、自分のキャラクターの「スタイル」へのこだわりだと思う。いかにキャラクターを演出するかが工夫のしどころだと思う。

 「スタイル」を1番アピールできるのが装備品だ。多くのMMORPGの場合では、レベルで大体の装備が決まっているため、同じ種族だと姿は似通ってくる。僕はそこに“渋いこだわり”を持たせるようにしている。僕の場合は常に「ベテラン戦士」を意識して、街にいるときなどは同レベルの人達が着る鎧姿ではなく、初期装備に近い使い古した鎧やそれに合う手足の装備を工夫して、ベテランっぽさを演出していた。こうすることで他の人とは違う僕ならではのキャラクターを演出している。

 ちなみに知人はごつい男キャラクタなのに、男女が着られるスカートをピンクに染めてネタ装備にしていた。これもまた強い印象を残す。「TERA」でも、自分が求めるアーマンのスレイヤーらしい姿はどういうものが良いか、これから試行錯誤してみたいと思う。性能的には他種族と変わらないが、自分のスタイルでキャラクターを確立していこうと思う。



~今回ぐだってしまったオンラインゲーム~

「TERA: The Exiled Realm of Arborea」

高レベル向けインスタンスダンジョン「ケルサイクの巣」で待ち受ける魔獣「ケルサイク」

 「TERA」は韓国Bluehole Studioが開発したMMORPG。ノンターゲットと従来型のMMORPGのシステムの利点を取り入れた“フリーターゲティング”による自由度の高いバトルシステムが特徴だ。米Epic Gamesのゲームエンジン「UnrealEngine 3」によって豊かで広大な世界を作り出している。

 日本では8月18日より月額制の正式サービスを開始している。30日3,000円、90日7,500円のプランの他、30時間で1,000円の従量制がある。10月31日までは15時間500円のプランも期間限定で販売されている。9月14日にはアップデートが行なわれ、高レベル向けインスタンスダンジョン「ケルサイクの巣」オープン、パーティーの経験値が調整され組みやすくなったほか、様々な新アイテムが追加された。


【スクリーンショット】
「TERA」はレベル20を超えるとパーティープレイの機会が増える。パーティー募集は常に盛んだ

Published by NHN Japan Corp.
Copyright (C) Bluehole Studio Inc. All rights reserved.

(2011年 10月 13日)

[Reported by 勝田哲也]