「マフィア III」大暴れ連載 奏でろ! 復讐のブルース

「マフィア III」連載第5回:ニューボルドー観光ガイド! 禁断の“世界の果て”にも挑戦!

 オープンワールドのゲームの楽しさの1つは「観光」にある。メインストーリーではほとんど足を踏み入れないであろう路地裏や、橋の下、山の上などどこまでも詳細に作り込んであって、クリエイター達のその力の入れ具合に圧倒される。

 「マフィア III」の舞台である“ニューボルドー”は魅力溢れる街だ。様々なランドマーク、濃密な生活描写、豊かな自然の描写……ミッションをこなしつつ車窓から通り過ぎる景色を見るだけでワクワクさせられる。今回はあえて車から降りて、色々なところを細かく見て回ろうというわけだ。ニューボルドーは南から北まで最高速の車でぶっ飛ばせば5~6分で突っ切れるが、細かいところを見ればそれこそ時間がいくらあっても足りないぜ。

 ニューボルドーは実在するアメリカの街、ニューオリンズをモデルにしている。そこでニューオリンズの街について色々調べて、どのようにニューボルドーの街に反映されているのか確認してみた。ニューオリンズは「ジャズ」発祥の地だ。そしてミシシッピ川との独特の歴史がある。ニューボルドーはそういう文化をきちんと再現している。それを確認できたんだ。

 そして今週の「俺のチャレンジ」では東西南北、行けるとこまで行ってみて“世界の果て”を見てきたぜ。ゲームの世界は有限だ。それをあえて確かめるというのは、ある意味“禁断の領域”だ。しかし究極の観光として、今回はあえて踏み込んでみたぜ!

“フレンチクォーター”の雰囲気をたっぷり感じさせる「フランス街」

 俺は他のオープンワールドゲームでもモデルとなっている街がわかると「逆聖地巡礼」をやる。ゲームのモデルになった街の観光ガイドを調べて、その観光名所や、ランドマークがゲームの中にあるかを探しに行くんだ。

フランス街のポップな建物が並ぶ街並みは散歩しているだけでもウキウキしてくる。ただし、制圧前はあまりウロウロしてると、敵に遭遇する危険もあるので油断は禁物だ
見事に再現された「セント・ルイス大聖堂」。細部まで忠実に再現しようとしているのがわかる。ミッションに絡まないので、意識的に観光目的のドライブをしてないと、こうした正面からの絵を見ることはない

 この地域のモデルになっている、ニューオリンズの観光の目玉は「フレンチクォーター」だ。フランスの植民地時代に建てられたというポップな建物が今尚多く立ち並び、ジャズ発祥の地としても名高く、街の至る所で人々が楽器を演奏している。路面電車の線路跡が街をぐるりと一周するように設置されており、古くからの建物や教会が今でも多く現存しているのが確認できる。

 ニューボルドーの観光をする上で外せないのはフレンチクォーターを再現した「フランス街」だ。街の至る所で楽器の音色が響き渡り、建物のデザインもとても雰囲気がいい。街を歩いてるとジャズが聞こえて、探してみるとレストランのステージでバンドが生演奏しているところを見つけたりする。歩いているだけで観光気分に浸れるぜ。

 中でも街の中心にある円形の広場「ジャクソン・スクウェア」と、広場の奥に厳かにたたずむ「セント・ルイス大聖堂」が観光サイトの写真のまま、忠実に再現されていて、見つけた時は思わず声を上げちまったぜ。セント・ルイス大聖堂は3本の尖塔で構成され、中央の尖塔がより高く山の形状を模したデザインとなっていて特徴的だ。プレーヤーのみんなもぜひ見つけて、そして写真と見比べて欲しい。

【雰囲気たっぷりのフランス街】
街中のレストランなどに入ると、ジャズの生演奏をしていたり、女性がダンスを踊っている場合もある。しっかりした作り込みにうれしくなってしまう
セント・ルイス大聖堂前に広がる「ジャクソン・スクウェア」の再現性も見事だ。この正面からのビジュアルなどはそのまま絵葉書に使っても違和感がないほどだ
「アンドリュージャクソン像」については実はミッションでかなり印象的なシーンで出てくる。その際にニューオリンズにある像とまったく同じ名前であることが確認できる。像の作りも精巧だ

 ジャクソン・スクウェアの中央には一際目立つ「騎馬像」がある。この騎馬像は第7代アメリカ合衆国大統領になった、アンドリュー・ジャクソンが猛る馬に跨る騎馬像で、かなりインパクトのある像だ。これもニューボルドーのフランス街では忠実に再現されている。なお、アンドリュージャクソンは、最大300人近くの黒人奴隷を所有して農場を経営していたことでも知られる。この像はゲーム内でも印象深いところで出てくるが、こういう背景を知ってると意味が変わってくるな。

 フランス街では、このほかにも住居型の墓石が印象的な「セント・ルイス墓地」などもかなり忠実に再現されている。面白いのはまるで小さな家のような墓石の形だ。実はこの墓石の形には意味がある。ニューオリンズは近年では大型ハリケーン「カトリーナ」の被害でも知られているが、古くからミシシッピ川の水害に悩まされていた。

 街に水が流れ込むと、墓地が水につかり、墓が掘り起こされて、まるでゾンビが墓場から現われたかのように、埋葬したはずの死体が浮き上がってしまうと言うんだよ。そうしたことがあってから、ニューオリンズの墓石は死体が水につからないように、浮き上がってこないようにこういう形なんだそうだ。ゲーム内でもその特異な形と、大理石の彫刻が細かくて驚ろかされるぜ。

 死体が浮き上がるような恐ろしいことがおきかねない土地柄と、ハイチ系移民が信仰するブードゥー教の影響もあって、ニューオリンズはオカルトの街としても知られていて、フレンチクォーターには世界的に有名な幽霊屋敷もある。こういったオカルトエピソードはDLCで盛り込まれそうなので、期待したいところだ。

 フランス街はニューボルドーの観光地であり、歩き回るのに特にオススメの場所だ。街並みの再現度の高さもすばらしいので、ミッションの合間には街中を車ではなく、徒歩でブラブラしてみるのも新たな発見があって面白いと思うぜ。

【特徴的な墓地】
歴史ある「セントルイス墓地」も観光名所としてはお馴染みだ。墓地の入り口には厳かな教会がある
意識して見てみると、確かに墓石の形は非常に特徴的だ。しかもバリエーションが豊富なので墓地中を見て回りたくなる
各所に配置された彫刻も実に見事。現地に“聖地巡礼”してみたくなるほど凝った物が多い

【フランス街の名所を紹介!】

リーサークルや水没した遊園地など他にも特徴的な場所が盛りだくさん!

 その他の地域も特徴的な観光地はかなり忠実に再現されている。中でもダウンタウンの街の中央にある円形のデザインの広場に注目だ。ここは実際のニューオリンズでもアップタウンのあたりにある「リーサークル」と呼ばれる場所で、ロバート・E・リー将軍の立像を中心として道路も一体となった円形の広場だ。

ダウンタウンの街の中央にある「リーサークル」も観光地としてはメジャーな場所だ。中央の塔の上には、ロバート・E・リー将軍の立像がそびえたつ

 この広場の再現性も実に見事だ。立像は高い柱の頂上に設置されているため、近付きすぎると、像の様子が確認できないのでちょっとサークルの外周部あたりから眺めるのがおすすめだ。サークルの中央では労働者たちのデモが行なわれていたりと、当時の熱気が伝わってくる雰囲気作りも最高だ。ちなみにロバート・E・リー将軍は南北戦争において奴隷制度を守る側である南部連合の軍司令官だが、同時に奴隷制度に反対する思想の持ち主としても知られている。この将軍の前だからこそデモが行なわれているんだろうな。

 また、ゲーム序盤での戦いの舞台となる、デルレイホロウの西南の方にある「水没した遊園地」もゲーム内の観光名所としては面白い。ただ調べたんだが、ここの元ネタがイマイチはっきりしないんだな。しかし実は2005年のハリケーン「カトリーナ」でニューオリンズの遊園地「シックス・フラッグス・ニュー・オーリンズ」が水没して廃墟になってしまってるんだ。

 この水没した遊園地は廃墟になったことで一躍有名になり、映画の撮影に使用されたり、廃墟遊園地ツアーなども組まれるようになった。推測だが、ゲーム内の遊園地は本来の時代背景からはズレるが、雰囲気重視であえて水没した遊園地をチョイスしたのではないだろうか? 確かにかなり強いインパクトを残す場所で、かなり良い雰囲気だ。しかし、遊園地の内部に入れるのは、前述のメインミッション時のみで、後から遊園地に向かっても、ミッション時に使っていた入り口の壁が封鎖されているため、入れなかったのは残念だ。今後入れるようにアップデートして欲しいぜ。

 なお、この近くには水没してしまった空港も確認できたが、遊園地と同様で奥に入るための入口は固く閉鎖されており、奥にまで潜入することができなかった。この辺りはニューオリンズがそもそも水没しやすい地域であることの象徴として、意図的に水没させているという演出なのかもしれないな。

【他の名所も楽しい】
少数の黒人労働者たちがプラカードを持ってデモをしている様子が見て取れる。プラカードには「EQUAL RIGHT」、「EQUAL JUSTICE! 」、「EQUAL WORK! 」など平等を謳う文言が書かれており、当時の差別主義の実情を露骨に表現している
水没した遊園地のゲーム内での名前は「バロンサタデー遊園地」だ。元ネタは不明だが、おどろおどろしい雰囲気が漂い、廃墟と呼ぶのにふさわしい雰囲気作りを演出している。ここにミッションでしか来られないのは非常に残念だ
水没した空港も発見したぜ。「MARAIS AIRPORT」の元ネタは確認できていないが、高いフェンスの奥には今では飛べなくなった飛行機の残骸も確認できる

 まだまだ印象的な地域は多い。ドライブするのに面白いエリアとして、フレスコフィールズを紹介しておこう。郊外なので、観光地というほど有名な建物があるわけではないが、舗装された道路の脇にはうっそうと木々が立ち並び、ドライブして回ると気持ちがいい。そうして走っていると、高級住宅地があちこちに点在しているので、そういった建物を眺めて回るのが面白いんだよな。

高級住宅地が点在するフレスコフィールズ。一見するとのんびりした雰囲気で、周囲の人々も品があり、余裕のある人々のように見られる
ところが、こうした高級住宅地の中には、庭の奥に監禁小屋が設置されている場所もある。ミッションでこの小屋から監禁されている黒人を救出する。小屋の内部の意匠も禍々しい差別主義者たちの掲げるシンボルが飾られている

 本作ではフレスコフィールズのミッションで黒人の人身売買や差別にまつわるエピソードが語られる。特にゾッとさせられたのはプールのあるきれいな豪邸の裏山に黒人を誘拐して閉じ込め、売り飛ばしていた“アジト”があったことだ。良い生活をしていて、多分社会的地位も高いであろう豪邸に住む主人が恥ずべき犯罪に手を貸している、人間の暗部を見せつけられる、嫌なリアリティのある風景だ。

 歴史を紐解いても、ニューオリンズはかなり長い間、白人による黒人の奴隷制度により苦しめられた地域だ。こうした歴史の黒い部分の一端がちょっと住宅地を眺めているだけで感じられるというのは、本作を通してこの辺りのテーマを語っていきたい部分なのかもしれない。

 フィールドを回ってさらに「マフィア III」が大好きになった俺だが、ちょっと残念に感じた部分もある。それは「路面電車や蒸気船に乗れないこと」だ。蒸気船はミッションで乗るシーンはあるんだが、のんびり楽しめなかったんだよな。フィールドに普通に置いてあれば良いのに、今回は見つけられなかった。ぜひ乗れる蒸気船を導入して欲しい。

 もう1つ、路面電車についてはニューオリンズでは1964年に廃止され、観光用として2004年に復活する。つまり1968年を舞台にした「マフィア III」では乗れないのが“正しい”んだな。わがままを言えばやっぱり乗りたいんだが……。

 今回、観光名所を探すために地域を見て回ったのだが、ゲームでミッションを進めるだけでは得られない街のイメージがしっかり入ってきた。高級住宅地のすぐ近くに廃材や廃車を家にして住んでいるスラムの地域があったり、倉庫街や、大型の工業地帯があったりする。金持ち相手のヨットクラブや、うらぶれた港など、「こんなところにこんなものがあったのか」と驚かされたぜ。

 そしてこういった調査をしたことで車で駆け抜ける場所にも愛着が湧く。「ここの建物の裏に意外にきれいな家があったな」、「この先は家もない行き止まりだ」、「さっっき通り過ぎたのは意外に繁盛しているドライブインだったな」などなど色んな記憶がフラッシュバックする。たまにはミッションを追わず、観光をたっぷりすると、ゲームがさらに面白くなるぜ。

【魅力たっぷりのニューボルドー】
フレスコフィールズを歩き回っていると、明らかに貧困層が住んでいると思われる、オンボロの建物も確認できる。裕福層に見えて貧富の差が明確な地域だということがわかる
ニューオリンズのミシシッピ川では蒸気船のクルーズが盛んだが、本作内にて蒸気船はボスのイベントでのみ乗船できる。これだけ凝った物を用意しておいて、イベントのみというのはもったいない。これを常時川に走らせるのは難しいかもしれないが、せめて港に泊まっていて、中を見れるようにして欲しい
路面電車の線路跡や駅の名残は確認できるが、残念ながら実際に走り回る姿は確認できない。ちょうどこの時代は路面電車が廃止された時期ではあるが、ぶっちゃけ街中を見て回ると貨物列車用の線路も多く見られるので、そちらも走ってないのは若干不自然さも感じる
金持ち相手のヨットクラブにも行ってみた。残念ながらどのヨットにも乗り込むことはできない。まぁそもそも帆がたたまれてるしな。ちなみに手漕ぎのボートも発見したがこちらも上に乗れるだけだ

「俺のチャレンジ」、世界の果てを超えていけ、限界を突破せよ!

 今週の「俺のチャレンジ」は“世界の果て”に挑戦してみたぜ。ゲームである以上、本作のフィールドには限りがある。そこがどのようになっているのか、実際本当に行けないフィールドはどのようになっているか、見てみたくないか? 今回、“究極の観光”として「マフィア III」の限界ラインを探ってみたぜ。

西の端は生い茂る草木とフェンスで遮られていてこれ以上進むことはできない
静止画だと意味が分からないが、ここから先の道はどんなに歩いても先に進めないようになってるんだ。なんてこった

 結論から言えば色んな方法で道がふさがれていることが確認できた。例えば西側の奥地に向かうと、そこには人よりも巨大な草木が生い茂り、人の侵入を拒むようになっていたんだ。西北の奥の陸地については上がれそうで上がれないように工夫されているうえに、西側の一部の山奥はその先に道が開いていても奥にいけないようになって通れない場所もあった。同様に北の大地についても、サルのカジノが建っている最終ステージがある都合上、高速道路からでないと入れないような作りになっていた。

 バイユーファントムの東のエリアについても陸地の前に草木が生い茂り、人が侵入できないばかりか、ところどころに点在する島も合わさって、迂闊に奥に入ってしまうとボートが乗り上げてしまうような危険地帯も見られた。

 そして南だ。ここでは見渡す限り海で遮るものが何もないため、途中から奥にいけなくなるのかと思いきや、なんと、画面上部に赤いアラートで「街から離れようとしている」というメッセージが出てきたんだ! 勿論無視して突っ切ってやったが、しばらく走ると画面がブラックアウトしたんだ。

 これは……死ぬのか? と思ったがそこまで厳しくはないようで、再度明るくなった時にはボートの向きが北の方に向いた状態で、若干北に押し戻された場所から再開することになった。……ということで調査報告。ニューボルドーを囲む壁はこちらの想像以上にあらゆる手が駆使されており、突破は不可能だったぜ。オープンワールドの楽しみ方は、こういうのもアリだぜ、みんなもぜひ色々なゲームで試してみてくれ!

【世界の果てに行ってみる】

【世界の果てに挑戦!】
北に向けて川を渡ってみたが、岩に登れなくて川の中で右往左往している隙にワニに食い殺されちまった
北の端はサルのカジノが建っていることから最終ステージがあると思われる場所だ。そのためか高速道路が解放される以外の北に行くための道は全て厳重に封鎖されてしまっている
東端は岩の壁が登れそうで登れない。また、その先も草木が生い茂っていて進むのも困難になっており、とても奥までいけそうにないように厳重にふさがれている
南の海ならどうだ! とボートで走破しようとした矢先に、画面上部にまさかのレッドアラート! これは死んだか、と思ったが何事もなかったかのように画面が暗転し、気が付くと逆向きにセットされなおされてしまった
ちなみに地図上ではこの辺までくることができた。これ以上はいくら進もうとしても暗転して戻されてしまう