山村智美の「ぼくらとゲームの」
連載第58回
ふっかつのじゅもん入力ミスに悩む“過ぎ去りし”日がまた来るかもしれない「ドラゴンクエストXI」の話
2017年4月12日 12:00
この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。
「ドラゴンクエストXI」発売日発表会が開催され、気になる発売日はプレイステーション4版、ニンテンドー3DS版ともに、7月29日と発表されました。
1986年5月27日に発売された初代「ドラゴンクエスト」から数えての30周年内からは、残念ながら2カ月ほど過ぎてしまうことになりましたが、30周年を越えて、10作品を越えて、新しい始まりになる原点回帰の11作目が発売されるというわけで。発売まであと3カ月と少し。待ち遠しいところです。
発売日発表会では開始早々にまず発売日が明かされ、ご挨拶もそこそこに発売までの各種プロモーションやキャンペーンが手早く紹介され、そこからは実機プレイによるデモをがっつり約1時間行なうという、実機プレイデモを中心にした発表会となっておりました。
詳しくは、
□各種プロモーションやキャンペーンについてはこちら
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1054384.html
□PS4版の実機プレイデモのレポートはこちら
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1054416.html
□3DS版の実機プレイデモのレポートはこちら
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1054434.html
を、ぜひご覧ください。
いやー楽しみですね。発表会の模様を見ていて、1番感じたのは改めて“今作のアプローチの魅力を実感できた”ということなんです。
PS4版は等身大のスケールで「ドラゴンクエストXI」の世界が広がっていますし、プレイされていたヒノノギ火山の流れる溶岩も、しっかりと光源を持っているような光りかたが印象的。
戦闘を見ても、特技の豊富なモーションに、エフェクトもかっこよくて、見た目の楽しさ、面白さを追求した、まさに最新世代のシリーズ作という印象でした。
映像による強さで、眼で楽しみたいという人にはPS4版がやはりいいのではないでしょうか。
一方で3DS版は、なんといってもまず携帯ゲーム機ならではの手軽さという強さがあり、3Dモードではその手軽さのなかでも味わえるポップなグラフィックスがあります。そして、2Dモードはなんといってもドット画の魅力。シンプルな描写だからこそ自分なりの想像力をかき立てるような良さがあります。
3DS版の実機プレイでは懐かしいドラゴンクエストネタが入っている一例として、なんと「ぱふぱふ」が紹介されましたが、そういうものも2Dモードと3Dモードとだと、演出や見た目にどんな違いがあるのか気になってくるところがあります。一挙両得というか、一粒で二度美味しいといいますか。そうした良さがあるのを実感しました。
3つの表現がある「ドラゴンクエストXI」ですが、これらグラフィックスや表現は僕としてはゲームとして見た時には優劣はなく、それぞれに良さがあると思えます。ハイエンドな見栄えの良さ、エフェクトの美しさ。ポップでコミカルな3D表現の良さ。ドット画のノスタルジーと味わいもまた、3D表現にはない魅力がありますよね。
そんな一方で、実機プレイデモではいろいろと細かな工夫に感心させられるというか、「これは開発に時間がかかるわけだわぁ……」と感じるところもたくさんありました。
PS4版、3DS版の「ドラゴンクエストXI」はグラフィックスの違いがあるだけでなく、それぞれのテイストに合わせて細かに変更して工夫されています。
PS4版には「ドラクエX」からの操作であるジャンプがあって、ジャンプで建物の上にも登っていける様子が実演されたのですが、
3DS版の2D/3Dモードはジャンプがない世代のシリーズ作のテイストであり、ジャンプ操作は雰囲気に合いません。そこで、PS4版だとジャンプして登るところは3DS版だとハシゴなどで登れるようになっているそうです。
また、水路の移動に使う足場も、3DSの2Dモードだと「イカダ」ですが、3Dモードだと「ゴンドラ」に、グラフィックスのテイストに合わせて置き換えられています。PS4版だとおそらく、観光気分にもなれそうな豪華な見た目になっているのかもしれません。
テイストだけでなく遊びやすさの面でも、建物の出入り口の位置を3DSの2D/3Dモードでは変えているというお話もあり(ドット画の見下ろし画面でも見える手前の位置に出入り口がないといけないですからね)。
リアルスケールの3Dグラフィックス、デフォルメの3Dグラフィックス、ドット画の2Dグラフィックスと3種類の作り方をするだけで大変そうですが、そこにそれぞれのテイストに合わせたオブジェクトの置き換え、さらに遊びやすさの面を考慮した差異もつけているというのだから、
それはもう時間かかりますし、ただ作ればいいだけではない“プレーヤー目線&心情”に立っての細かな調節が必要になります。
でも、それでこそ個人的にドラクエの1番の魅力である、レスポンスの気持ち良さや手触りの良さができあがるのでしょう。
ちなみに「DQXI」ディレクターの内川毅氏からは、ストーリーをクリアするだけでもプレイ時間は50時間ほど、やりこみをしていくと100時間を越えていくと、今作のボリュームについても言及がされました。
それだけボリュームもあり、今のところ2つのプラットフォーム、3つの表現で作られている「ドラゴンクエストXI」を、「ドラゴンクエスト」ならではの手触りへと仕上げていくというのだから、これはセンスが必要ですし、作業量も膨大だろうなと思えます。
気になるのは、任天堂での発表会やリリース等で存在が明かされているNintendo Switch版「ドラゴンクエストXI」なのですが、今回の発表会では触れられませんでした。
ですが、前述のようなPS4と3DSという2つのプラットフォームと、3つのグラフィックス表現への調整がそもそもあり、30周年内を目指していた発売も2カ月ほど過ぎての発売となったのを見ても、さすがにもう1つプラットフォームを増やしての同時3機種リリースというのは物理的にも難しいところがあったのではないでしょうか。
ひとまずはPS4版と3DS版の完成と発売が最重要で、Nintendo Switch版に関するアナウンスはそれを越えてから、ということかもしれませんね。
前述のようにそれぞれのハード、それぞれのグラフィックス表現に細かな工夫をしている「ドラゴンクエストXI」ですから、Nintendo Switch版が後発で発売されるにしても、独自の工夫、調整を効かせた、また異なる魅力の楽しめるものになるのかも……と、ちょっと贅沢な想像もしています。
というわけで今後の続報や展開も気になるところですが、まずは7月29日のPS4版と3DS版「ドラゴンクエストXI」をどう遊ぶかが当面の嬉しい悩みですね。PS4版でリッチに楽しむのか、3DSで手軽とポップさ、ドット画の良さを味わうのか、はたまたダブルパックで「ふっかつのじゅもん」を駆使して遊ぶのか。
……また、「ふっかつのじゅもん」の入力ミスで「あれーなんで?おっかしいなぁ……」と悩む日が来るのかもしれないと思うと、それはそれですごいというか、おもしろ恐ろしいというか。
まさに“過ぎ去りし時を求めて”にふさわしい、懐かしい思いを楽しめそうです。
ではでは、今回はこのへんで。また来週。