(2013/10/16 00:00)
10月10日、コードマスターズより「F1 2013」が発売された。本作は2013シーズンのF1グランプリを再現したレースゲームだ。プラットフォームはPS3、Xbox 360、PC(Steam。日本法人ではなくCodemasters本体からの発売)で、いずれも丁寧な日本語化がなされている。
コードマスターズでは2009年のWii/PSP版から毎年続けてF1のオフィシャルシリーズを手がけてきているが、こういったスポーツ系のゲームというのは作品を重ねて完成度を増していく中で変化が乏しくなっていく傾向があるものだ。特にリアルのF1が、昨年からほぼレギュレーションの変化が無かったため尚更である。
そんな中で「F1 2013」は、さらなるプレイしやすさの向上を果たしただけでなく、歴史的なF1マシンとコースを楽しめる「F1 クラシック」モードを収録することで大幅に遊びの幅を広げてきている。前作からの変化は大きく、いわばシリーズの集大成的な作品に仕上がっているのだ。
高い再現度、遊びやすさ、質の高い走り
伝統的にコードマスターズの「F1」シリーズは、まず毎シーズンのF1グランプリで使用されるコースとマシンを細部まできっちり再現することに重点が置かれてきた。その点で本シリーズは今世代機版のはしりである「F1 2010」で一定の完成を見ており、もちろん本作でも2013シーズンの全コース、全マシーンが精緻に再現されている。その上で、遊びやすさの向上がよく図られていることに感心した。
まず前提として、ドライビングシミュレーターの骨格をもつ本シリーズはF1マシンが求める繊細なドライビング技術をしっかり追体験させてくれる一方で、過去作は少しでも乱暴な操作をするとすぐにスピンやオーバーランしてしまうなどシム系ならではの難しさがあった。現実でもこんなに難しいのか?と疑問を持つ程度には。
本作ではそこがよく見直されたようだ。ABS、TCSのみといった最低限のアシストを効かせただけの状態でも、ゲームパッドを使って充分に理想的な走りができる。置きどころに困るハンドルコントローラーに頼る必要がない。特に違いを感じるのはタイヤ周りの挙動で、縁石で浮いたり多少スライドしたとしても簡単にスピンしてしまうことはなく、コントロール可能な状態が続いてくれるのだ。
おかげで、多少ハンドリングが不正確でも、きっちりと理想ラインを刻む気持ちさえあれば、すぐになかなか悪くない走りが実現できる。かといって好タイムを出すためにはスムーズな加減速とレース状況を考えた戦略が重要になる点、きっちりとシム的なおもしろさも併せ持っているのがいい。もちろん、最高級の走りを楽しむにはハンドルコントローラーがあればなお良いことは言うまでもない。
こうして走りの部分が改良された結果、初心者から上級者までそれぞれの形でF1のスピード感を楽しめるようになっている。アシスト機能を全ONすれば曲がるタイミングさえ間違えなければ完走可能。アシストのうちオートブレーキやTCSのレベルを下げることで路面からプレーヤーに伝わる情報量が増えていくので、自分が扱える限界のレベルに調整すれば間違いなくより深い走りを楽しめるはずだ。
ちなみに良い走りをするコツは、コーナーを回るときステアリングはなるべく一定の角度を維持して荷重移動を安定させつつ、速度調整によって旋回角を調整すること。修正舵を頻繁に入れるようだと曲がれるコーナーも曲がれなくなるので、減速開始とハンドルを切り始めるタイミングの良し悪しが好タイムのポイントとなる。
そのあたりのドライビングテクの基本は本作のチュートリアル的な存在である「ヤングドライバー・テスト」でも学べる。ブレーキング、コーナリングからオーバーテイクまでF1レースの基礎技術を個別に修練できるので、面倒臭がらずにこなしておく価値はある。その後は実際のレースでコースとマシンの特徴を学びつつ腕を磨いていくのが実に楽しい。きちんとしたバックストーリーのある数々のレースチャレンジが存在するとなれば尚更おもしろく遊べるというものだ。