「Dance Central 2」がついに10月27日に発売となった。米Harmonixの音楽ゲームのノウハウと、Kinectの技術の融合した本作は、「世界最高のダンスゲーム」といって過言ではない。音楽に合わせて体を動かす楽しさを実感させてくれるだけでなく、ゲーム技術の進歩、そして前作「Dance Central」からの確かな進化を感じさせてくれる作品となっている。
曲に合わせて踊る、ただそれだけのゲームだが、リズムに合わせて体を動かす面白さを改めて思い出させてくれる作品だ。今作はさらに2人並んで踊ることができる。さらにフィットネス用のプレイリストもあり、様々なダンスがより手軽に楽しめる。音楽ゲームの「幅」を広げる革新的な「Dance Central 2」の魅力を紹介しよう。
■ ディープにもライトにも楽しめる、最大83曲収録の世界最高のダンスゲーム
より派手に、より楽しい画面演出 |
前作の楽曲は「DC」と表示される。驚きのボリュームだ |
2人で踊れる! 今作の大きなパワーアップ要素だ |
「Dance Central 2」はKinect専用ダンスゲームだ。プレーヤーは画面のダンサーを真似ながら踊ることで、自然にダンスを覚えていく。ダンスがうまくいくとスコアが上がっていき、画面の演出が派手になる。どれだけ正確にダンスを踊れるかに挑戦するのかが、基本的な遊び方だ。
楽曲はLady Gaga、O-Zone、Daft Punk、Donna Summerなど有名アーティストの作品が44曲収録されている。EXILEの「I Wish for You」や、「恋のマイアヒ」という邦題でネットで話題になったO-Zoneの「Dragostea Din Tei」など洋楽にあまり知識の無い人でも知っている曲も多数収録されている。日頃、洋楽を余り聴かない人でもCMに使われていたり、フレーズを聴くことで「あ、この曲知ってる」と思い出す曲も多いだろう。
さらに前作「Dance Central」を持っていれば楽曲を「2」に移行できる。予約/早期購入特典があればお金をかけずに移行できるので、前作のユーザーは早めの本作の購入をお勧めしたい。今作が44曲、前作が32曲、さらに別途料金がかかるがDLCで7曲の追加楽曲もある。これだけリッチなラインナップを持つ音楽ゲームはそうないだろう。ちなみに「Dance Central 2」の楽曲はこちら、前作の楽曲はこちらを参照して欲しい。
「Dance Central 2」は前作に比べ、あらゆるところがパワーアップしている。まず画面の演出だ。ダンサー達の踊るステージはより派手に、ギミックも多くなった。特に「地下鉄」は駅から電車の中と場所を変えるミュージックビデオのような演出が楽しい。ダンサー達もさらに個性的になった。ダンサーはインストラクターであり、一緒にダンスを踊る大事なパートナーだ。色々なキャラクターと踊れるようになったのはゲームの楽しさをふくらませてくれる。
また「Dance Central 2」では新モードとして、指定された曲を踊る「クルーチャレンジ」や、様々なプレイリストが用意されている「フィットネス」モードが追加された。前作は曲の選択はユーザーが決め、そしてより正確に踊ることを目指すのみだった。しかし今作では、指定された曲を次々と踊ることも求められる。ダンスを極めるだけでない、広く浅く踊る楽しさも教えてくれるのだ。「とりあえず今はリズムに体を乗せて動かそう!」。本作はユーザーにこう語りかけてくる。
「とにかく踊って楽しもう」という主張は2人で踊る「ダンスバトルモード」で特に顕著だ。2人で並んで踊るのだが、友人と踊る場合はKinectを持ってる家主に友人がつきあうという状況になるだろう。全身で踊る本作は、最初は誰でも戸惑うし、うまくいかない場合もあるが、2人で踊ってると何とかなってしまうのだ。
1人だとどうもダンスがうまくいかないと萎えてしまう。しかし、2人で踊ってると隣の人のがんばりにつられてこちらもテンションが上がっていく。このテンションの相乗効果こそ、「Dance Central 2」の最大の楽しさだと思う。正確さ、かっこよさは後にして、今はとにかく踊ろう、というのが、今回の「Dance Central 2」のテーマだと筆者は感じた。
日本の住宅事情やKinectの普及台数を考えると、この楽しさを味わえる人は限られてしまうのが残念なところだが、Kinectの世界でのヒットを受けて、今後さらに様々なKinect専用・対応ゲームが発売され、Kinectの世界はさらに広がっていく。Kinectで遊ぶにはテーブルを片づけてプレイ空間を確保しなくてはいけなかったり、派手な音を立てないように気を遣わなくてはいけないところはあるが、それでもこの「新しいゲームの楽しさ」にできるだけ多くの人に触れてもらいたいと思う。「Dance Central 2」はKinectならではの楽しさを感じられる、Kinectユーザー必携のゲームと言えるだろう。
初の日本楽曲EXILEの「I Wish for You」。凝ったムーブも入っており、難易度は中級となっている | ||
前作の収録曲Lady Gaga「Poker Face」をコンバートにより「Dance Central 2」で踊る事が可能に |
■ 音声コマンドでより快適なプラクティス、白熱のダンスバトルも楽しめる「ダンス」モード
楽曲を選ぶとムーブが表示されるのも新機能の1つ |
「Xbox 録画」とボイスコマンドを入れると自分の姿を見ながらムーブのチェックができる |
前作から引き続く本作のメインモードである「ダンス」は、だからこそ最も進化が感じられるモードだ。有料DLC含め全44曲を移行していれば最大で83曲もの楽曲にチャレンジできる。各曲には難易度が設定されていて、お気に入りを集中して練習するも良し、最初は簡単な曲を遊び、徐々に高度なダンスに挑戦するもいい。今作ではまさに目移りするほどの多彩な曲に挑戦することができる。
「Dance Central 2」では曲名を選ぶと基本的なムーブが表示される。ムーブは各曲の歌詞や雰囲気に合ったものが設定されていて楽しい。このムーブでお気に入りの曲を決めるのも良いかもしれない。ダンスには「イージー」、「ノーマル」、「ハード」の3つが設定されており、それぞれムーブが異なる。イージーは同じムーブを繰り返すシンプルな構成で、ハードはターンしたり難易度の高いムーブが入る。
「ダンス」モードには「プラクティス」、「ダンスバトル」、「パフォーマンス」の3つの項目がある。プラクティスで練習し、パフォーマンスで通しで踊る、というのが基本的な流だ。ダンスバトルは2人用のゲームモード。得点を競う仕掛けが盛り込まれている。
前作で高い評価を受けたのがプラクティスだ。ムーブを1つ1つ集中して学ぶことができる。ダンサーの動きに合わせて練習し、3回うまくいくと成功になって次のムーブを学んでいく。複雑な動きの場合はスローにしてじっくり学べる。“声”の演出も楽しい。「右、左、ツイスト」などダンスのポイントを指示してくれるだけじゃなく、「すごい!」、「惚れちゃうよ!」、「君ひょっとして天才?」などなど、実に良い気持ちにさせてくれるセリフを連発する。失敗してもフォローしてくれる。歯の浮くセリフに「褒めすぎだろう」とツッコミを入れつつも、「いけるかも」と前向きの気持ちにしてくれる。
そして「Dance Central 2」では「音声認識」機能がプラクティスの使い勝手をさらに良くしている。「Xbox スローダウン」といえば即座にスローになり、「Xbox 前のムーブ」と言えば前に戻る。前作は手で指示をしていたのだが、今作のボイスコマンドは慣れるととてもやりやすい。ボイスコマンドは曲の選択や難易度の設定など様々な機能があるが、特にこのプラクティスとの相性はばっちりだ。プラクティスでの新機能としてはもう1つ「録画」がある。ムーブ時のプレーヤーの動きをカメラで録画し、ダンサーとの動きを見比べることができるのだ。前作からの進化をはっきり感じさせられる機能だ。
他の音楽ゲームと一線を画すプラクティス。下中央はボイスコマンド画面。下左は手のアクションによるコマンド入力だ |
ダンスバトルでの“フリータイム”。得点の高いムーブを相手より早く成功させる |
ダンスバトルも新しいゲーム要素だ。2人で個別に難易度を変えることもでき、左右にそれぞれ別々のダンサーに合わせて踊っていく。常に2人のスコアが表示されており相手より高得点を目指していく。面白いのはそれぞれにスポットライトが当たる“見せ場”が用意されているところ。「右の人、頑張って!」というようにアナウンスも対戦を煽り、ダンスに一層熱が入る。
通常のダンスでは曲の合間に自由に踊れる“フリースタイル”があるが、ダンスバトルの場合は“フリータイム”という特別なボーナス要素が用意されている。これは1度に4つのムーブが表示され、2人のプレーヤーはそのどれかを踊ることで達成し、ボーナスを得られる。ムーブに挑戦するとゲージが上り上まで到達するとすると得点ゲットなのだが、同じムーブを2人のプレーヤーが挑戦してると競争になる。どちらかが到達してもゲージは0に戻ってしまうため、どのムーブをいかに正確にできるだけ早くクリアしていくことが求められる、かなり熱いルールである。
特にダンスバトルに関しては、お互い何も知らない曲を初挑戦でやってみるのが楽しかった。慣れてきても初見の曲はなかなか踊れないもので、全体の流れや細かい手の動かし方を「こうかな、どうかな?」と言いながら、画面を見ながら試行錯誤する。フリータイムではどのムーブがいいのか、うまく判定されているのか、相手のゲージの伸び具合に注意しながら必死にアピールする。「対戦してる」という気分が盛り上がる瞬間だ。ダンスバトルはパーティーゲームとしても盛り上がる要素だと思った。
そしてプラクティスから実践であるパフォーマンスへの流れは、変わらず面白かった。筆者は前作では、課題曲を覚えるため、数日夢中になって1曲を繰り返し練習した。ダンスの流を細かく覚え、繰り返し練習してものにする感覚はやはり楽しい。「Dance Central 2」は前作同様の1曲に集中したプレイを引き継ぎつつ、多数の曲を踊れる楽しさ、両方を持っている作品なのだ。
2人でのダンスバトル。フリータイムの他、スポットライトの当たるとそのプレーヤーだけが踊る要素など、ダンスバトルならではのギミックが盛り込まれてる。 | ||
こちらは練習したダンスを実践するパフォーマンス。ダンスがうまくいくと、背景がダンスフロア風に変わる。中央上が自由に踊れるフリースタイルだ |
■ 次々と曲に挑戦できるキャンペーンモード風の「クルーチャレンジ」
クルーチャレンジでは、クルー達の魅力を紹介するムービーが入る |
新モードである「クルーチャレンジ」は、クルーとはチームのことで、「リプタイド」、「ハイデフ」、「フラッシュフォワード」、「ラッシュクルー」という4つクルーに挑戦できる。クルーにはそれぞれ指定曲があり、指定曲を踊って星を得ることで彼らの信用を勝ち取っていく。
リリースではこのモードでの“ストーリー要素”をアピールしていたが、実際には簡単なクルー紹介と会話のやりとりくらいで、物語性はなかった。各クルーに対してのドラマなどはもっと盛り込んでもらいたかったところだ。
とはいえ、このクルーチャレンジには通常のダンスとは違った魅力がある。各クルーには得意の楽曲があり、プレーヤーは彼等が提示する条件をクリアしていく。この相手から指定された曲を次々と踊っていく、という感覚が新鮮だ。クルーのクリア条件はスコアに応じて与えられる“星”をとっていくこと。つまり1つの曲で高評価を目指さなくても、低評価で多数の曲をプレイしてもクリアできるのだ。
このモードは言わば「Dance Central 2」の「キャンペーンモード」に当たる。次々に提示されるダンスをこなしていく感覚は、前作には無かったものだ。前作ではお気に入りの曲をプラクティスで繰り返し練習して、パフォーマンスで成果を試すという、1曲1曲が独立したゲームだったが、「クルーチャレンジ」は次々に新しい曲が提示されるため、どんどん未知の曲が試せるし、新しいダンスを覚えることができてすこぶる楽しい。豊富な楽曲を擁する「Dance Central 2」の強みを活かしたモードだと言えるだろう。
前作は自由に曲が選べるため、逆にコアユーザー以外は32曲のうち数曲踊るだけで満足してしまったのではないだろうか。どんな曲があり、どんなムーブがあるか、そのポテンシャルを活かしきれていなかった部分があると思う。「Dance Central 2」のクルーチャレンジはより幅広い曲へのチャレンジをさせてくれる。より幅広いジャンル、様々な曲への「出会い」をもたらすゲームモードだ。
指定されたリストから楽曲を選んで挑戦していくクルーチャレンジ。条件をクリアしていくことで、新しいクルーに挑戦できる |
■ とにかく体を動かそう! ひたすら踊る「フィットネス」
たくさん用意されたフィットネスメニュー。運動時間に合わせてチャレンジできる |
「フィットネス」モードは「体を動かす」という部分にフォーカスしたゲームモードだ。「イージースタート」、「ウォームアップ」、「スプリント」等様々なメニューがあり、それぞれ所要時間が提示されてる。例えばイージースタートなら20分で8曲連続で踊ることになる。スプリントなら10分だ。
フィットネスはプラクティスなしのパフォーマンスのみ連続でプレイしていく。筆者は1“エクササイズ「みんなで Dance Central」”というスポーツクラブでのフィットネスプログラムを体験したことがある。受講者の多くは「Dance Central」の練習はしたことない。インストラクターの簡単なアドバイスだけで後はキャラクターに合わせて踊るだけだ。通常のゲームプレイとは全く違うのだが、これが楽しいのだ。フィットネスはまさにこのプログラムと同じ、「とにかく体を動かす」事をテーマにしている。
ムーブやダンスの流れなど全く覚えてないダンスを、キャラクターのダンスに合わせて見よう見まねで体を動かす。とにかく次から次へと指示されるムーブをこなしていく。しかも1曲終わったらすぐ次の曲だ。息が上がり、「カロリーを消費している」という実感をもてる。これを毎日続ければ確かに痩せそうだ。楽曲のチョイスも面白い。イージースタートはスローなリズムで体を揺らすダンスが多く、スプリントは激しい。改めて「Dance Central 2」の楽曲の幅広さを感じさせられた。
フィットネスを中心にプレイする人は、ダンスモードメインのプレーヤーとは全く違うゲーム体験をするだろう。また、クルーチャレンジでとにかくクリアを目指すというプレイをする人も多いだろう。「Dance Central 2」はたくさんの楽曲、充実した練習モードに加え多彩なアプローチを可能にした作品なのだ。
音楽を聴くとつい体が動く。そこに振り付けが加わることでカッコイイダンスとなる。「Dance Central 2」は誰でもダンサー気分になれる、間口の広い、楽しいダンスゲームだ。ダンスに憧れを持つ人には、ぜひチャレンジしてもらいたい作品である。
ここにあえてわがままを言わせてもらえれば、AKB48や、アニメソングといった「軽い」楽曲も加えて欲しい。以前行なったインタビューでは地域ごとの楽曲の追加も検討していると言うことで、日本市場で本作がさらに展開するためにやはりもっともっと間口を広げた曲を、DLCで展開して欲しいところだ。
ひたすら連続で曲をこなしていくフィットネス。汗だくになる激しいゲームモードだ |
(2011年 10月 31日)