2人の連携と掛け合いが楽しいファンタジーアクション
- ジャンル:
- アクション
- 発売元:
- 開発元:
- inXile Entertainment
- プラットフォーム:
- PS3
- Xbox 360
- 価格:
- 7,980円
- 発売日:
- 2011年8月25日
- プレイ人数:
- 1~2人
- レーティング:
- CERO:D(17歳以上対象)
「Hunted: The Demon's Forge(以下「Hunted」)」は、人間の戦士キャドックと、エルフの弓使いエラーラのコンビが強力な敵に立ち向かうファンタジーアクションゲームだ。
剣と魔法、粗末な革鎧に身を包んだ亜人間ウォーガーにスケルトン、そしてドラゴン。本作の世界観は王道といえるファンタジー世界である。重厚で、ダークで、骨太なファンタジー世界は人を強く引き付ける魅力がある。「Hunted」はそんな世界で大立ち回りが存分に楽しめる作品である。
■ キャドックとエラーラが戦う本格ファンタジー冒険譚。2人の掛け合いに注目
屈強な肉体の割に慎重な性格のキャドック |
爆発や破壊が大好きなエラーラ。キャドックをおじさん呼ばわりするが、彼の倍以上の年齢だ |
怪しげな美女セラフィーヌ。キャドックの夢を通じて2人を冒険へと誘う |
「Hunted」の主人公はキャドックと、エラーラの2人だ。キャドックは最近謎めいた美女が自分に呼びかける夢を繰り返し見ていた。2人はある依頼主による仕事で「エリシャの泉」におもむく。そこでキャドックは夢に出てきた建物を見つける。そこで2人は死者の声を聞くことができるという神秘の石「デスストーン」を発見するのだ。
デスストーンを前にした2人の前で突然空間が歪み、1人の怪しげな女が出てくる。それはキャドックの夢に出てきた女だった。彼女はセラフィーヌと名乗り、デスストーンを受け取り、自分に協力すれば富と名誉を約束するという。信用できないと躊躇するキャドックの前で、エラーラがあっさりデスストーンを手にしてしまう。
セラフィーヌはそれから「クリスタル」を集めるように2人に言う。クリスタルと引き替えに魔法の力を授けるというのだ。さらにセラフィーヌは、自分はすぐ近くにある「ダベット」という街の領主の娘であり、父を助けて欲しいと2人に頼む。2人が訪れたダベットの街は臆病なはずの亜人間ウォーガーに襲われ、壊滅寸前にあった。2人は訳がわからないまま、襲いかかってくるウォーガーを迎撃する。
「Hunted」は屈強な人間の戦士キャドックと、美しいエルフの弓使いエラーラが謎だらけの状況の中、この世界に起きている大きな災厄に立ち向かっていく。2人はことあるごとに「俺達は英雄なんかじゃない。金のためにやってるんだ」と口では言いながら、結局困っている人を見捨てられず戦いに飛びこんでいく。臆病なはずのウォーガーが凶暴に、組織だって人々を襲う謎、彼等の目的、そして黒幕は?
「Hunted」ではプレーヤーはキャドックとエラーラを操作し、敵と戦っていく。シングルプレイでは片方はAIが操作する。キャドックは接近戦が得意で、エラーラは弓が強い。AIはなかなか優秀でプレーヤーをフォローするように動く。相棒と力を合わせて戦う感覚が楽しい。パズル要素もあり、2人が力を合わせて動かす仕掛もある。「協力プレイ」を前面に押し出したゲームデザインとなっている。
本作はシングルプレイも楽しいが、それぞれがキャドックとエラーラを操る協力プレイはさらに楽しい。オンラインはもちろん、1台のハードで画面分割のプレイも可能だ。ぜひ友達と遊んでもらいたい作品だ。
「キャラクター性の濃さ」も注目して欲しいところだ。キャドックは屈強な外見にもかかわらず意外に慎重派で、臆病なことも言ったりする。エラーラは逆に過激で、「爆発って大好き」なんてセリフを色っぽくいったりする。セラフィーヌのセクシーな衣装を下品だなどとけなしておいて、自分の格好は「機能的だから私のはいいの」なんてケロリという。
戦闘が終わるごとにどちらが多く倒したかを比べ合うし、常に憎まれ口を叩き合っている。それでいながら、深い信頼関係も確かに感じられるのだ。欧米のゲームでは個性をあまり感じさせないキャラクターも多いが、この2人は違う。「Hunted」はこのコンビの掛け合いを楽しむためのゲームと言っても過言ではないだろう。
そして何よりも本作の王道といえる「ファンタジー世界」が良いのだ。剣と魔法、強力なモンスター……フィールドも戦場となった街から、地下の要塞、神殿と変わっていく。全てから立ち上るむせかえるほどに濃い“ファンタジーの雰囲気”が心地良い。リアルな現代の戦場や、SF世界も楽しいが、ファンタジー世界を舞台とした作品には独得の魅力があると思う。
キャドックの夢を通じて語りかけるセラフィーヌ。死者の声が聞けるというデスストーンを手にしたとき、新たな冒険が始まった | ||
臆病なはずの亜人間ウォーガー。彼等は何故街の人々を襲い、どこへ連れていこうとしてるのだろうか | ||
2人の掛け合いは本作の大きな楽しみ。キャドックは基本的にはツッコミ役だ |
■ 近接武器と弓、そして魔法を使いこなせ。お互いをカバーし、臨機応変に戦う楽しさ
剣と弓と魔法、お互いの状況に合わせて瞬時に切り替えて戦う |
クリスタルを消費して、魔法を習得、強化する |
キャドックとエラーラは近接武器と魔法、遠距離武器をそれぞれ持っている。2人の装備や魔法には違いがあり、キャドックは近接武器として剣以外にも棍棒や斧などを装備できる。エラーラは振りが早いがダメージの少ない片手剣のみだ。その代わりエラーラは長射程のロングボウを装備できる。キャドックは有効距離が短く、狙いをつけるのに時間のかかるクロスボウを使う。
魔法は「武器魔法」と「戦闘魔法」があり、戦闘魔法は共通だが武器魔法は異なる。キャドックの武器魔法は一定時間攻撃力を増す「レイジ」や、敵に向かって突進する「ダッシュ」などがある。エラーラの武器魔法は敵を凍りつかせる矢を放つ「アイス・アロー」や敵の鎧を貫通しシールドを破壊する「アーク・ボルト」といったものだ。
戦闘魔法は電撃を照射する「ドラゴンブレス」、範囲に入った敵にダメージを与える「ペインシール」といったものがある。これらの魔法はドクリスタルを消費して習得し、威力の強化やMPの消費を抑えるといった強化ができる。クリスタルはフィールドに置かれていることもあれば敵がドロップする場合もある。
どの魔法を習得していくかでゲームの攻略は異なってくる。ドラゴンブレスは強化すると複数の敵に電撃を浴びせることができる。ペインシールは敵に囲まれるキャドックだと使い勝手が良い。シールドを破壊するアーク・ボルトは援護に最適な魔法だし、足の遅いキャドックには突進できるダッシュはありがたい。また「ドラゴン・ティアー」というアイテムを入手することで味方に魔法をかけ攻撃力を増加させる「バトルチャージ」といった技も使える。どう育てていけばより自分にあった戦い方ができるか考えるのが楽しい。
武器はフィールドの「武器ラック」を壊すことで入手できる。中には魔法効果がエンチャントされたマジックウェポンもある。エンチャントされた武器は回数制限があるものの強力な攻撃が繰り出せる。武器は攻撃速度も重要で、特にエラーラの弓はいくら攻撃力が高くても攻撃速度が遅すぎると敵を狙いにくくなる。隠された場所に置いてある武器などもあり、ダメージを軽減させる鎧を入手できることもある。フィールドを探索するのが楽しいゲームだ。
左から攻撃力を上げるレイジ、突進のダッシュ、敵の鎧を貫くアーク・ボルト | ||
ドラゴンブレスをバトルチャージでキャドックに。敵を凍らせるアイス・アロー、範囲に入った敵にダメージを与えるペインシール | ||
魔法を強化するクリスタル、武器ラックを壊しての武器の入手、武器のエンチャントが発動し相手を凍りつかせた瞬間 |
■ 謎はさらに深まる。強大な敵を相手に、力を合わせて立ち向かえ
シングルプレイでは、相棒に指示を出して仕掛を作動させる |
謎の液体を飲むウォーガー。この液体は…… |
このゲームで特徴的なのは、ステージに点在する「オベリスク」というオブジェクトを利用することで使用キャラクターを切り替えることができるところだ。基本的にどちらを使っても問題ないが、いくつかの場所に火を付ける、といった仕掛がある場所では、火矢が使えるエラーラを使用している方がスムーズに進めた。
シングルプレイでは、キャドックを操作している場合は、その都度エラーラに指示を出さなくてはいけないが、エラーラが地形に引っかかるようなこともあり、意外と手間取ることもあった。しかしこういった不具合はまれで、基本的には相棒のAIは優秀だ。
バトルチャージを習得したらきちんとこちらを強化してくれるし、倒されたときも蘇生をしてくれる。こちらが弓を取り出すと接近攻撃を行ない、前に出ると援護してくれる。砲台などを使っているときはカバーしてくれるし、心強い存在だ。シングルプレイでも協力プレイで進んでいるような感触で楽しめる。
本作ならではの演出としてはデスストーンを使ったものがユニークだ。フィールドには非業の死を遂げた死体があり、これにデスストーンを使うと、彼等の生前の声が聞ける。過去の戦争のことが語られたり、意外な歴史が明らかになったり、現在の戦場の状況が語られたりと、様々な「死の状況」が見て取れる。時には彼等が隠した宝物も入手できる。「Hunted」のストーリー要素を補足する要素だ。
メインストーリーではウォーガーの凶暴性が鍵となる。彼等が組織だって人間達を攻撃できるようになったのは何故なのか。さらに彼等は捕虜をとり、どこかに運ぼうとしている。捕らえた人間達をどうしようというのか。そして彼等の凶暴性の影には「謎の液体」が関わっているようだ。シナリオは大きな謎を提示しながらスケールアップしていく。
2人の戦いは過酷になっていくなかで、「橋を爆破してくれ」といった願いに、突然ノリノリになるエラーラが楽しい。彼女は物を壊す状況になるとものすごく喜ぶのだ。一方、キャドックは蜘蛛が苦手で、昆虫型のモンスターが出てくるとうんざりした声を出す。エラーラはすかさずからかうのだが、彼女は高所恐怖症で高いところでは弱音を吐く。様々な状況での2人の掛け合いは、プレイの大きな楽しさとなっている。
ゲームを進めていくとプレーヤー自身の成長も実感できる。魔法の効果的な使い方、AIパートナーとの有効な連携の仕方を覚えていき、徐々に強力になっていく敵を倒して進む高揚感。より強力な武器を手に入れたときの喜び。本作は難易度設定も細かくでき、アクションが得意な人はより高みを目指したプレイも可能だ。フィールド、ストーリー共に雰囲気たっぷりで思う存分「ファンタジー世界の冒険」を楽しむことができる。
「Hunted」は、ゼニマックスが得意とする大作タイトルと比べると、確かにコンパクトではあるのだが、個性が色濃く出た2人の主人公、重厚なファンタジー世界、モンスター達を倒して進む爽快感と、「こういうゲームがプレイしたかったんだ」というユーザーの希望を叶えてくれるゲームだと思う。古い例で申し訳ないが、セガの「ゴールデンアックス」シリーズや、カプコンの「D&D」シリーズが持っていた“ファンタジーアクションゲームのエッセンス”を受け継いでいる作品だと感じた。
■ 本作の本当の楽しさを引き出す協力プレイ。オリジナルマップ作成も
画面分割の協力プレイ。シングル以上の楽しさがある |
「Hunted」はシングルプレイでも十分楽しめるが、本作の「本来の姿」はやはり、協力プレイにある。オンラインでの協力プレイはもちろん、自宅に友人を呼んで画面分割プレイも可能だ。今回は発売前ということで画面分割によるオフラインでの協力プレイを体験してみた。
画面分割による協力プレイは、画面比率で横幅も小さくなってしまうので見づらいが、それを補ってあまりある楽しさがある。友人と肩を並べてプレイし、「そっち援護するから」、「敵、どっちから来てる?」など声をかけながら進んでいくのはやはり格別だ。
シングルではキャドックでも弓を撃ったり、エラーラでも接近戦をしなくてはならない場合も多いが、協力プレイは「自分のやりたいこと」に専念できると感じた。今回はエラーラでプレイしたのだが、「遠距離の敵は俺にまかせろ!」という感じで、ドンドン敵を仕留めていった。友達が突っ込んでいくタイミングに合わせてバトルチャージを使ったり、ゲーム性もシングルプレイ以上に各要素を有効に使えると感じた。
本作はMMORPGをプレイしている友人を誘ってみたりしても楽しいのではないかと思う。「PS3やXbox 360を持っているけどゲームは全然持ってない」という友人を“洋ゲー”の世界に引き込むのにいいかもしれない。ファンタジーという世界観と、いつもMMORPGで一緒に遊んでいる友人と他のゲームで濃い協力プレイをするのも楽しいのではないかと思った。
この他、クリア後も楽しめる要素として、「クルーシブル マップクリエーター」というマップ作成モードがある。モンスターやアイテムを配置し挑戦するモードで、他のプレーヤーが作ったマップにも挑戦できる。本編とは全く違った冒険ができる場所として、こちらも友人と挑んでみたい要素だ。
刻々変わる状況を、力を合わせて進んでいく。シングルプレイより自分の役割に集中できる感じだ | ||
「クルーシブル マップクリエーター」。友人と一緒に自分が作ったマップを遊べる |
(2011年 8月 26日)