★Xbox 360ゲームレビュー★

陥落するリーチで人を救い自らも生き残れ!
納得のストーリーとさらに充実のマルチプレイ

「Halo: Reach」

  • ジャンル:FPS
  • 開発元:Bungie
  • 発売元:マイクロソフト
  • 価格:7,140円(通常版) / 8,610円(リミテッド エディション) / 16,590円(レジェンダリー エディション)
  • プラットフォーム:Xbox 360
  • 発売日:9月15日
  • プレイ人数:1~4人(マルチプレイ:2~16人)
  • CEROレーティング:D(17歳以上対象)

 マイクロソフトは、9月15日にXbox 360向けFPS「Halo: Reach」を発売した。本作は全世界で大きな人気を誇る「Halo」シリーズの最新作であり、Bungieが制作する「Halo」の最後の作品となるという。

 「Halo: Reach」は、エピックスケールの壮大なストーリーが展開された「Halo」シリーズの“前日譚”となる作品である。本作の舞台となる惑星リーチはこれまで凄惨な戦いが行なわれた場所として断片的なエピソードが語られてきた。その戦いがどれだけ壮絶なものだったのか、絶望的だったものなのかを、プレーヤーは知ることになるのだ。今回は発売前のプレイということで、シングルプレイにフォーカスを当ててレポートしたい。



■ 選ばれた者スパルタン6人によるノーブルチーム。絶望へ向かう惑星リーチでどう戦う?

主人公のノーブル6は、プレーヤーが設定可能だ
基地を出発するノーブルチームの6人。今作ではチームで行動することが多い
空一杯に広がる敵艦。絶望が心の中に広がる瞬間だ

 西暦2500年代という遙か未来、人類は宇宙に進出を果たし、いくつもの惑星を植民生としていた。しかし、コヴナントと名乗る複数のエイリアン種族から成る大規模な軍事同盟が突然人類に対して攻撃を仕掛けてきて、人類は撤退を余儀なくされる。植民星の多くは完膚無きまでに破壊され、人類は地球の位置を知られまいと戦い続けていた。

 西暦2552年、UNSC(国連宇宙司令部)は最重要軍事拠点の惑星リーチを、地球防衛の最終ラインに設定、コヴナント軍と戦うべく準備を進めていた。特殊部隊として身体・遺伝子、技術的に選別した兵士を作り出す「スパルタン計画」によって生み出された超兵士も、この戦いに投入された。

 プレーヤーはスパルタン6人からなる精鋭部隊「ノーブルチーム」の新人隊員「ノーブル6(シックス)」としてこの戦いに参戦する。敵の侵攻は圧倒的であり、惑星リーチは人類にとって地獄そのものに変わっていく。その絶望的な状況の中、ノーブルチームは人類の勝利を信じて戦うことになる。

 この「Halo: Reach」の物語は、人類側の敗北に終わり、惑星リーチは陥落するものの、唯一生き残ったスパルタンがやがて、人類を救う英雄「マスターチーフ」となるということを、「Halo」ファンならば誰もが知っている。物語の結末は既に提示されており、北米のテレビドラマでよく使われる手法でいうところの“フラッシュフォワード”はすでに過去の作品で示されているわけで、そこにどう繋がるのかを想像するのが楽しい作品となっている。主人公であるノーブル6こそが未来のマスターチーフなのか、気になるところである。

 個性豊かなノーブルチームにも注目だ。リーダーの「カーター」は常にチームを生き残らせるための責任感を感じさせられる。女性兵士の「キャット」は分析能力に優れ、最初はプレーヤーに冷たいが仲間として徐々に信頼を寄せてくれるようになる。スナイパーの「ジュン」は冷静さと熱さを併せ持つ男で、ステージ3で特に活躍する。辛辣な冗談が好きな「エミール」はドクロのようなヘルメットをつけている。ショットガンとナイフが得意で、危険な匂いがする男だ。ジョージは心優しい大男で、大きな機銃を武器とする。惑星リーチ出身で、現地人との通訳もする。

 ノーブルチームは最初、基地の近くの居住地で起きた事件を調査するために赴いたのだが、反乱ではなく、大規模なコヴナントの侵攻であることが明らかになっていく。リーチは各居住地、そして都市さえも占領されていく。ノーブルチームは率先してコヴナントとの戦いに投入されるが、戦いはやがて絶望的な撤退戦へとなだれ込んでいく……。

 揚陸艇から次々と下りてくるエイリアン。追いつめられていく人類軍、そして空全体を覆うような巨大戦艦の登場。リーチの敗北をプレーヤーの心に刻み込む演出が見事だ。しかしそんな絶望的な状況の中、人類はあきらめない。そしてプレーヤーは彼等の戦いを支え、少しでも多くの人がリーチを脱出するように尽力していく。新米兵士が戦いを経て成長し、仲間に一目置かれる存在になり、やがて英雄になる。そのカタルシスを体験できる作品だ。

 「Halo」、「Halo2」、「Halo3」の3部作は不死身の英雄マスターチーフが大活躍する話だった。「Halo 3: ODST」ではちりぢりとなった新兵たちによる孤独な戦いが描かれた。「Halo 3: ODST」の主人公はルーキーで、彼らの等身大の成長の過程が描かれたが、プレーヤーはチームメンバー全員をプレイし、それによって全体の戦局が見えてくる、という構図だった。「Halo: Reach」はノーブル6の目を通して描かれる。仲間の戦い、スパルタンを頼りにする他の兵士とのドラマなどが描かれ、ドラマ性は「Halo 3: ODST」からさらにもう一歩進み、より感情移入ができたように感じた。

 また、「Halo: Reach」の大きな特徴としては、プレーヤーのカスタマイズがある。本作ではプレイを始める前にノーブル6の外見を選択できる。バイザーや肩や腕のアーマー、カラーリングからエンブレムなど様々なところをカスタマイズでき、女性キャラクターも選択可能だ。プレーヤーが作り上げた外見は、マルチプレイのキャラクターとしてだけでなく、シングルプレイでもムービーシーンなどにもきちんと反映される。プレーヤーが作ったキャラクターが、シングルプレイで主役を張るという感覚は中々新鮮だった。


カラーリングや性別、アーマーなどを設定可能。シングル・マルチプレイで選択肢が増えていく
左から、カーター、キャット、ジョン。メンバーはヘルメットを外すシーンも多い

心優しい大男ジョージと、憎まれ口をたたくエミール
辺境の調査で始まった任務は、コヴナントとの遭遇戦へ発展する。UNSCが気がつかぬ間に、コヴナントは基地を築き上げていた


■ プラズマと銃弾飛び交う異星人との銃撃戦。今作ではビルの林立する都市での空中戦や宇宙戦も

カラフルなエネルギー弾が飛び交う。これこそが「Halo」の戦場だ
分身を歩かせ敵を引き付ける「ホログラム」
ビルの林で空中戦。浮遊感のある戦いだ

 「Halo: Reach」はシリーズを受け継ぐカジュアルでエキサイティングなゲーム性を持っている。プレーヤーは時には弾丸に身をさらしながら敵を撃退していく。1発撃たれたら死んでしまうようなシビアな駆け引きではなく、時には突っ込んで行くことで状況を突破していくタイプだ。敵の攻撃はクリスタルのようなニードルや、光るプラズマガンを撃つ様々なエイリアンで、赤や黄色の蛍光色の弾が飛び交う。SF的な雰囲気も楽しい。

 今作では他のノーブルメンバーは無敵となっており、いくら撃たれても倒されない。彼等を囮に、側面から敵を攻撃、といった戦い方も有効だ。ただし、敵は正面に捉えたとしても素早いスピードで移動して弾をかわしたり、スナイパーライフルを警戒して細かく動くなどかなり狡猾だ。最初は苦戦しつつも、だんだんリズムをつかんでいく。プレーヤー自身がコツを覚えて成長していく感触を楽しめるタイトルである。

 今作での大きな特徴は、特殊能力である“アーマーアビリティー”を使えることだ。様々な種類があり、ゲーム内の補給ポイントで切り替えることができる。「スプリント」は一定時間高速で動ける。「アクティブカモフラージュ」は一定時間透明になり、「ドロップシールド」はシールドを張る能力だ。ユニークなのは「ホログラム」だ。分身の術のように、指定した方向に自分から分離した幻影が向かっていく。これで敵を欺き、違う方向から攻撃を加えるのが有効だった。

 また、使い勝手が難しいが、使いこなせるとカッコイイのが「アーマーロック」だ。動けない代わりに一定時間シールドを張り、この間攻撃を跳ね返すことができる。うまくいけば敵戦車のエネルギー砲すら跳ね返すことができるが、使うタイミングが難しい。一定時間空を飛べる「ジェットパック」は状況に合わせて使うことが多かった。落ちたら即死のビルの谷間をジェットパックで越えていくのは緊張感もあって楽しかった。

 エイリアンとの戦いも醍醐味のひとつだ。今作では新たに驚異的なジャンプ力を誇る「スカーミッシャ」という敵も出現する。エナジーソードやグラビティーハンマーなど大威力の接近武器を手に突っ込んでくる敵も怖い。逆に彼らの接近戦武器を奪って、それを振り回す戦いは爽快感があって楽しい。距離を置いて撃ち合うだけのゲームではなく、時には距離を一気に詰めて、殴り飛ばす攻撃も有効だ。

 乗り物に乗るシーンもあり、時には敵の兵器を奪って暴れることもできる。何人か乗る事ができる乗り物の場合は、これまでのシリーズ通り運転手、ガンナー、助手席などを選べる自由度がある。敵の兵器で迫撃砲を撃つ「レヴナント」は弾を当てるのが難しい反面威力が強く、使っていて爽快だった。

 宇宙戦闘機の「セイバー」で戦うシーンは「Halo: Reach」ならではといえる。次々と現われる敵の戦闘機を追いかけ、撃墜するのはフライトシューティングゲームそのままだ。強力なシールドを持つ敵戦闘機「セラフ」と戦う場合は、機銃でシールドをはぎ取ってからミサイルで攻撃しなくてはならない。この他、垂直離着陸機の「ファルコン」でビルの谷間で敵と戦うシーンも用意されている。これまで以上に様々なシチュエーションで戦いが楽しめる作品となっていると感じた。


アーマビリティーはステージ中に交換できる。中央がドロップシールド、右がジェットパック
スナイパーライフル、プラズマリピーター、エナジーゾード
ゴースト、レヴナント。右はファルコンの銃座からの攻撃
大気圏外での戦い。セイバーで宇宙ステーションを防衛する


■ 真のゲームは難易度「アドバンス」から。さらなる高みを目指すマルチプレイもボリュームたっぷり

全軍の衝突。これまで語られてきたリーチの戦いがついに始まる
宇宙戦艦のエンジンを止める。スケールの大きな戦いも
燃える都市。無力感を感じる瞬間だ

 「Halo: Reach」のシングルプレイキャンペーンでは、辺境の調査、敵前線基地の攻略、大規模戦へと徐々にスケールアップしていく。コヴナントは、バイクのような攻撃機ゴーストや、戦車のレイスなどを戦線に投入してくる。UNSCも装甲車のワードホグや、垂直離着陸機のファルコンなどを投入し、戦いは激化してくる。

 改良され、新しい部分も加わったゲームエンジンによる惑星リーチの描写も注目だ。ダチョウのような「モア」や、草むらにいる蛍のような生き物、始祖鳥のような鳥や、恐竜のような巨大な生物などリーチの原住生物が描写されているだけでなく、開拓民の住居や水源施設、都市など植民惑星の描写にも力が入っている。これまでのシリーズ以上にリアリティーのある舞台を感じることができる。

 特に何カ所かある“遠景ポイント”が強い印象を与える。荒々しさも感じられる惑星リーチの自然だけでなく、敵の配備された基地を遠くから眺めたり、コヴナントの攻撃に黒煙を上げ崩壊する都市ですら、その表現の見事さにため息が出てしまう。殺されてしまった開拓民や護衛兵士、彼等が住んでいた生活の痕跡が、敵の恐ろしさを伝え、逃げまどう市民を目にしたとき、彼等を守るために戦おうと思える。

 これらの演出は、ゲームの“雰囲気作り”の部分で、長いムービーやドラマシーンなどで大きくフォーカスはされているわけではない。しかし、これらのシーンがきちんと描かれていることで、主人公の独白や、語り部などが無くても、きちんとストーリーがわかり、プレーヤーの心が、登場人物と共感していく。その演出が見事だと感じた。

 「Halo: Reach」のシングルモードはストーリーと演出からか、のめり込むようにプレイして、一気にクリアしてしまった。しかしこれは難易度「ノーマル」の話だ。以前の体験会で開発元のBungieスタッフは「アドバンス以上が本来の難易度だ」と語っており、現在はこちらに挑戦中である。

 1度クリアすると「Halo: Reach」ならではのリズムに慣れてくるだけに、歯ごたえが楽しくなってくる。シリーズ初めての人などは、まずノーマルをクリアしてから、難易度を上げて挑戦するのがいい。何度も失敗しながら、どううまく進んでいくか模索が必要となり、スタッフのプレーヤーに向けて表現したい「ゲーム性」が見えてくるような気がする。

 今回は発売前なので体験できなかったが、「Halo: Reach」のマルチプレイは、ある意味シングルプレイ以上に力をこめて作られているコンテンツである。筆者は5月に行なわれたマルチプレイベータや、体験会でのマルチプレイを体験しているが、遊びきれないほどの多彩なルールが用意されており、他プレーヤーと時には協力して戦うのが楽しい。

 プレーヤーがスパルタンとエリートにわかれて陣地の取り合いをする「Invasion」、全てのプレーヤーが敵となる状況で敵を倒すと入手できる“スカル”を集める「Headhunter」、スカルを所持している時間を競う「Oddball」等ユニークなルールも多数用意されている。もちろんシンプルな撃ち合いや、マップ上にある中立の旗を自軍に持ち帰る「Stockpile」と言ったオーソドックスなゲームも用意されている。

 マルチプレイでは、他のゲームにはないアーマーアビリティーが楽しい。相手の意表をつく使い方ができれば効果的だし、発売後はコアプレーヤーがユニークな使い方を発明するに違いない。「Halo」シリーズの魅力は全世界にコアからカジュアルまで多数のプレーヤーを獲得していることだ。子供から大人まで多彩なプレーヤーがマルチプレーヤーロビーをにぎわすだろう。対戦者がたくさんいるマルチプレイは、やはり格別に楽しい。

 「Halo: Reach」はシリーズの集大成として、ストーリー、演出共に優秀なゲームである。ゲームプレイを重ねることで、強力な異星人と互角以上に渡り合っていく強さをプレーヤースキルとして獲得していく感覚が楽しい。カジュアルなプレーヤーも楽しめる難易度もきちんと用意されている。そしてコアプレーヤーには、マルチプレイで全世界のプレーヤーと頂点の座を競える「Arena」が用意されている。ぜひ多くの人に遊んでもらいたいタイトルだ。


左はリーチの現住生物。中央は植民者の生活の痕跡。右は逃げる市民を守るシーンだ
敵の揚陸艇、対空砲、そして空からの戦艦。圧倒的な物量に、UNSCは窮地に立たされる
時には民兵と共に戦ったり、チームで動いたりと、様々なシチュエーションが用意されている。右は凶暴な接近戦兵器グラビトンハンマーで敵を殴り飛ばすシーンだ

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(2010年 9月 15日)

[Reported by 勝田哲也 ]