★PCゲームレビュー★
あの「Starcraft」の続編が13年ぶりに登場! シングルからマルチまで充実の満足感を提供 「Starcraft II: Wing of the Liberty」 |
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Blizzard Entertainment(以下、Blizzard)の新作リアルタイムストラテジー(RTS)「Starcraft II:Wing of Liberty」(以下、「SC2:WoL」)が7月27日に発売された。前作にあたる「Starcraft: Brood War」から4年後の世界を舞台に、「Terran」、「Zerg」、「Protoss」という3種族の壮絶な戦いを描いた作品で、シングルプレイキャンペーンから各種マルチプレイモードまで広く深く楽しめる作品である。
「Starcraft II」(以下、「SC2」)は、すでに発表されているように、各種族ごとのキャンペーンを盛り込んだ3つのパッケージを発売する予定だ。「Starcraft II:Wings of Liberty」に続いて、「Zerg」のキャンペーンを盛り込んだ「Starcraft II:Heart of the Swarm」、「Protoss」のキャンペーンを盛り込んだ「Starcraft II:Legacy of the Void」が順次発売される予定になっている。2作品の発売時期は未定。
Blizzardタイトルの通例として今回も日本語版の発売予定はないため、英語版でのレビューをお届けする。英語版は、「Battle.net」のデジタルダウンロードサービスを利用して購入するのが便利で確実だ。
■ シングル、マルチとも多彩なゲームモードを用意
ゲームのスタート画面。「Battle.net」にログインしてプレイする |
本作は基本的にBlizzardのマルチプレイプラットフォーム「Battle.net」にログインしてからプレイする仕組みになっている。シングルプレイはオフライン上でもプレイはできるが、プレイの達成記録を残すAchievementsシステムなどは利用できない。
本作のゲームモードは大きくシングルプレイとマルチプレイに分かれている。シングルプレイには「SC2:WoL」のストーリーが盛り込まれたキャンペーンモードと、様々なシチュエーションのバトルが楽しめるチャレンジーモード、そしてAIと対戦ができるAI戦がある。難易度はCasual、Normal、Hard、Brutalの4段階から選択することが可能だ。
一方、マルチプレイは最大8人まで楽しむことができる。ゲームモードは、個人戦、チーム戦、Free for All戦、そして、マルチプレイでもAIと戦うCOOP(強力プレイ)モードが盛り込まれている。また、ユーザーが自作したマップ(MOTD)も利用して楽しむことができる。
本作はXbox 360でお馴染みのAchievements(実績)システムが盛り込まれている。「全てのミッションをクリア」、「Terranで勝利」など、シングルプレイからマルチプレイまでカバーしており、Achievementsを集めていくと、プロフィールの写真や建物に表示される文様(ステッカー)などが得られる。
【Achievements(実績)】 | |
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Achievementsは様々なゲームモードで達成でき、プロフィールの写真や文様といった報酬も貰える。約450個のAchivementsが用意されている |
■ キャンペーンでは壮大なスケールのストーリー展開と様々なギミックのミッション展開が魅力!!
本作の主人公Jim Raynor |
シングルプレイキャンペーンの紹介に入る前に、まずは前作「Starcraft」(以下、SC)のあらすじを説明しておこう。
武装組織Sons of KorhalのリーダーであるArcturus MengskはTerran連合の司令部があるTarsonis惑星にZergを呼び寄せてTerran連合を壊滅させ、Terran Dominionを立ち上げた。その際に、Arcturus MengskはSarah Kerriganを惑星に見捨てることになるが、Sarah Kerriganとの親密な関係であったJim RaynorはArcturus Mengskに復讐心を抱いた。しかし、Sarahは死なず、Zergを統べるOvermindによってThe Queen of Bladeとして復活する。
一方、Zergの侵略によって故郷を失った最後にProtossは、執政官Tassadarの母艦による自爆攻撃を行ない、Overmindを倒すことに成功する。そして、「SC」の拡張版「Starcraft:Brood War」では新たな勢力UEDとの戦いとSarah KerriganがZergを全て統治するまでの話が盛り込まれている。
そして今回のキャンペーンは「Starcraft:Brood War」から4年後、Jim RaynorがArcturus Mengskへの復讐と、Zergの侵略から人々を守るために戦っていくストーリーになっている。キャンペーンは「SC2:WoL」のメインキャラクターに当たるJim Raynor、Ariel Hanson、Gabriel Tosh、Matt Horner、Tychus Findley、Zeratul、Valerian Menskの7人に関わる全29個のミッションが用意されている。1ミッションに付き、30分前後でクリアできるようになっており、すんなりいけば10数時間でクリアできる。
ストーリーの展開としては、村人たちを助けるミッションから、ZergやProtossを作ったXel'nagaという種族の遺産と予言を巡る戦い、そしてやがては宇宙の命運をかけた戦いが広げられることになる。「Warcraft」シリーズで見せていたBlizzardの様々な複線が交差しながら、スケールの大きなストーリーに展開していく手法は「SC2」でもちゃんと活かされていた。ただ、前作「SC」は全編シリアスで暗くて重いストーリー展開になっていたが、「SC2:WoL」は所々にはギャグ要素が見られるなど、比較的にライトな展開になっているため、プレイした印象はずいぶん異なる。
各ミッションの内容についても、単純に敵を殲滅するだけのようなシンプルな目標ばかりではなく、非常にバリエーションが豊富になっている。たとえばマップ上のオブジェクトであるレーザーを使って遺産が眠る神殿のゲートを破壊するミッションや、一定時間おきにマグマが噴火するのを避けながらミネラルを採取、英雄キャラクター数人だけつかって様々なギミックがあるマップをクリアなど、飽きさせない工夫が各所に凝らされている。
【Lost Viking】 | |
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艦船Hyperionの中では「Lost Viking」というシューティングゲームもプレイできる。ちなみに「Lost Viking」というタイトルはBlizzardが1992年に発売した横スクロールゲームだ |
【キャンペーン】 | |
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プレーヤーを驚かせるギミックを用意し、様々なシチュエーションを実現していたキャンペーンは毎回斬新で面白かった |
【Protossも操作可能】 | |
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Terranのストーリーが盛り込まれた「SC:WoL」だが、Protossを操作できるZeratulのミッションも登場する |
■ チャレンジモードで、マルチプレイ向けにユニットたちの相性とコントロールを熟知しよう!!
新たに追加された新モード「チャレンジモード」は、ゲームの遊び方を学べるチュートリアルを発展させたようなモードで、ユニットたちの相性や組み合わせ、ユニットコントロール技術など、「SC2」に関する様々なスキルが試されるモードだ。ベーシック、アドバンスト、エキスパートという3種類の難易度で、それぞれ3~4つのマップが用意されている。
ベーシックでは、ユニット同士の相性と配置の善し悪しを学べる。例えばTactical Commandというミッションの場合、Zergling、Roach、Banelingがそれぞれの部屋に用意されており、TerranのMarine、Siege Tank、Marauderをどの部屋に配置するかを決める。そして、準備が終わるとZerg側の攻撃が始まり、プレーヤーは配置したユニットで敵を殲滅していくというシンプルなミッションだ。相性を考えずに適当に配置してしまうと勝利すらおぼつかない。いかに少ない被害で敵を全滅させたかによって、Bronze、Silver、Goldの実績が解除される。
さらに難易度の高いアドバンストでは少ないユニットで敵の大軍を倒すかに挑戦する内容になっている。ここではユニットのコントロール能力が試される。エキスパートでは、マルチプレイにおいて、敵の奇襲を防御するなどの序盤でよく見舞われるシチュエーションを再現して、それを乗り越えるという実戦スタイルの内容になっている。
前作「SC」のヘビープレーヤーだった筆者は「SC2」の本格的なマルチプレイをする前に、前作から変化があったユニットたちの相性やコントロールを確認するために、チャレンジモードをプレイしてみた。ユニットの強弱はヘルプでも確認できるが、実際に戦わせてみることで、より深い相性を知ることができて意外と勉強になった。Goldまで達成するためには、鮮やかなユニットコントロール技術と経験が必要となるが、この技術はマルチプレイで非常に役立つ。マルチプレイを始める前に、まずはこのモードをじっくりプレイすることをお勧めしたい。
【チャレンジモード】 | |
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マルチプレイを始める前にとりあえずチャレンジモードを1回はプレイしていただきたい。チャレンジモードを通じて学ぶことは多い |
■ 「SC」から変わらないスピーディなゲーム展開で、様々な戦略と戦術が試されるマルチモード
さて、メインとなるマルチプレイモードについてだが、「SC2」のマルチプレイは前作に比べて、ユニット群や建物などは大きく変化があったが、基本的な戦闘の流れやゲーム性は変わっていない。
ゲームが始まるとプレーヤーは資源を採集しながら、任意の順番で建物を建て、ユニットを生産していく。それと同時に、敵の基地を偵察しながら、相手を奇襲するための作戦を練ったり、奇襲に備えて防備を整えたりなど、その場その場で変わる状況に対応していく。こうした戦略、戦術性の高いゲーム性は前作からまったく変わっていない。ユニットの動きは全体的に素早い反面、耐久力は弱めに設定されているため、戦闘の際はきめ細やかなユニットコントロールが要求される。
また、前作ではシステムの特性を利用した操作方法が特徴だったが、そうした「Starcraft」ならではの独自ルールはそのまま再現できるようになっている。代表的な例としては「SC」では空中ユニットの場合、大量のユニットを1カ所に集めてスタックさせる(重ね合わせる)ことができたが、それが「SC2」でもそのまま再現可能になっている。
1カ所にスタックさせることによって、攻撃時に攻撃対象までの射程距離が皆一定になり、全てのユニットが同時攻撃できる。これを利用することで、全空中ユニットが同時に移動して、一斉に攻撃して、一斉に後退するという、現実ではありえない戦術をとることが可能になっている。
この空中ユニットだけ1カ所にスタックできるのは厳密にはバグだが、同位置待機、同時攻撃、同時後退が「Starcraft」の基本戦術となったことで、「SC2」ではこれがオフィシャルなシステムとして盛り込まれた。FPSの代表的な存在である「Quake」でも意図してなかったシステムの特性でStrafe Jumpingというスキルが生まれて、以後のシリーズでも踏襲されたのと同じである。
マルチプレイでは、ハイレベルの戦いではシングルプレイとは比較にならないほどの高いユニットコントロール技術と戦略、戦術が必要とされるが、その一方で、これからRTSを始めるというビギナープレーヤーのために、初心者向けのシステムも用意されている。それがPractice Leagueだ。
マルチプレイを始めると最初はPractice Leagueに参加できる。Practice Leagueは初心者だけが参加できるリーグで、ゲームの進行速度が通常のゲームより遅く設定されている。もちろん経験者はこのリーグをスキップすることができる。ここを卒業すると、所属リーグを決める「Placement Match」が行なわれ、この結果によってプレーヤーの実力に合ったリーグに参加でき、その後は実力にあったマルチプレイを楽しめる。
RTSでは、実力差のあるユーザーとの対戦は、両方にとってつまらないが、こうした細かい“ふるい”に掛けることで、実力差の近いユーザーと緊迫したゲームを楽しむことができる。手軽に楽しみたいというユーザーにとってはやや敷居が高いが、ユーザーのことをよく考えた素晴らしいシステムだ。
【マルチプレイ】 | |
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スピーディーなゲーム展開で、プレイ次第では状況が一変することもしばしばだ。「SC」マルチプレイの面白さをうまく現代のテクノロジーで蘇らせている |
■ 2日間で150万本のセールスを記録。韓国では早くも賞金総額6億ウォンのプロリーグが開催
「Battle.net」では利用者数やゲーム数が表示されるが、その計測範囲については現在調整中で、今表示されてる情報はワールドワイドを網羅したものではないという |
「SC2」は「2007 World Wide Invitational」で初公開され、それから3年間に渡って高い注目を集めていた。Blizzardの8月3日リリースによると、「SC2:WoL」は発売して24時間内に100万本を販売。48時間内には150万本販売を記録している。ただ、この数字の中に前作「SC」の全世界販売本数のおよそ半分が販売された韓国の売上本数は含まれていないため、最終的な売上本数は軽くこの数倍は伸びると見られる。ちなみに韓国では、オープンβテスト中で無料でプレイできるようになっている。
「Battle.net」にはEST(米国東部標準時)で午後9時頃に現在接続中のユーザー数が約75万人(別のBlizzardタイトルも含む)、プレイ中の「SC2」ゲームの数が全世界で約31,000ゲームとなっていた。これはあくまで北米サーバーに限定した話であり、ヨーロッパ、アジア、韓国、ロシアなどにも独立したサーバーが存在する。このため、実際にはこれ以上のユーザーがプレイしていることは間違いない。いまだかつて無い凄まじい人気ぶりといって良いだろう。
一方、韓国では早くもBlizzard公式の「SC2」プロリーグ「Global Starcraft II League」(以下、GSL)が9月から開催される。「GSL」のプレシーズンとして3つのオープンリーグが開催される予定で、その賞金総額はリーグごと2億ウォン(約1,500万円)、全部で6億ウォン(約4,500万円)になるという。来年からは本格的なリーグが開催され、12億ウォン(約9,000万円)以上の賞金が用意されるという。韓国だけではなく、2011年からは「Battle.net」の上位ランカーたちのリーグも開催される予定だ。
「SC2」は、まだ3部作のうち1作目「SC2:WoL」がリリースされた段階だが、シングルプレイからマルチプレイまで、どの部分においてもボリューム満点で、Blizzardらしい満足度が高い作品に仕上がっている。特にマルチプレイの奥深さは素晴らしく、オンラインゲームと同様の今後の展開も含めて注目する必要がある。世界的にも様々なコミュニティー活動が行なわれる中、ぜひプレイしていただきたい作品だ。
【MOTD(Map Of The day)】 | |
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ユーザーが作ったMOTDも楽しめる |
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(2010年 8月 10日)