PSPゲームレビュー

ついに魔界も3D化!?
さらに進化したダンジョン・マネージメント!

「勇者のくせになまいきだ:3D」

  • ジャンル:ダンジョン・マネージメント
  • 発売元:株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント
  • 価格:3,980円
       2,800円(ダウンロード版)
  • プラットフォーム:PSP
  • 発売日:発売中(3月11日発売)
  • プレイ人数:1人(アドホックモード対応時2人)
  • CEROレーティング:A(全年齢対象)


 2007年12月に発売され、当時としては珍しい8bit調のグラフィックスと、目新しいゲームシステムで話題を博した「勇者のくせになまいきだ。」、そして翌年10月に発売された「勇者のくせになまいきだor2」。これら2作品の続編となるタイトル、それが本作「勇者のくせになまいきだ:3D」だ。プラットフォームは前2作品と変わらずPSP。

 「。」、「or2」ときて3はどうなるんだ? と思っていたら、「:3D」になった。どちらかと言うと海外でよく使われている顔文字で、「:D」とか「:)」、「:3」などがあるから、きっとこれも横向きになった人の顔なのだろう。相変わらずのテンションである。

 さて、「ダンジョン・マネージメント」と呼ばれる少し変わったジャンルの本作は、そのタイトルからも伺える通り、全体的に良い意味での“適当さ”が溢れるテイストとなっている。そんなわけなので、本レビューの方もそれにならって気楽に執筆していこうと考えた。読んでいただける方も、あまり真剣に読まず、気楽に流し見てくれたら幸いだ。

【スクリーンショット】
魔王のマガマガしさは相変わらず健在。会話を辿っていくだけでも、ああ、続編なのだなと安心させられる



■ 3Dだけど3Dじゃない! 3つのダンジョンで盛り上げる

気になる本編の見た目は前作までとさほど変わらない。安心の2Dドットグラフィックスだ

 上で少し触れた通り、本作のタイトルは「:3D」。3Dと言う用語が含まれているが、これは「three dimension」ではなく、「three dungeon」の略とのこと。つまり3次元立体グラフィックスを指すものではなく、3つのダンジョンが含まれていることを意味する。

 もうここからしてふざけているのだ。わざと「8bit調のドット絵グラフィックが売りだったシリーズなのに、3Dポリゴンにしちゃって大丈夫なの!?」なんて誤解を招きやすいようなタイトルにしておいて、蓋を開けてみたら「ププー!! 実は3Dは『three dungeon』の略なのでした!! ねえビビった? ビビった?」とでも言わんばかりに見た目は従来のままなのである。この感じが、たまらなく良い。

 具体的な3つのダンジョンの内訳は、「メインダンジョン」、「まいにちダンジョン」、「ファミリーダンジョン」の3つ。

 メインダンジョンは従来通りのストーリーモード、まいにちダンジョンはミッション形式で行なわれるランダム形式のダンジョン、ファミリーダンジョンはアドホック通信に対応したマルチプレイ形式のダンジョン、要するにモードが3モードに増えた、というわけである。

 ミッション形式で進むまいにちダンジョンは、ミッションがランダム生成されるので、まいにち少しずつ進めるような遊び方が可能になっている。ただ、別に1日1回しかできないわけではなく、遊びたければ何度でもトライ可能だ。

 特に破壊神検定は全50問の長丁場。腰を落ち着けて、じっくり向き合わなければならない、ストーリーモードにも負けないほどのボリュームがあるコンテンツとなっている。

 ファミリーダンジョンはアドホック通信を使用したマルチプレイモード。

 2人同時プレイが可能で、それぞれ魔王と、魔王のムスメを王将とし、ダンジョンを構築していく。基本的にはシングルプレイの時と同様、ストーリーに沿って協力して先に進めていくコンテンツだが、相手領地内の土を掘れたり、相手の生み出した魔物を間引きしたりもできる。後述の水を相手領地内に流し込んで邪魔をする、などといったことも可能だ。この辺りに関しては、システムだけ用意して、どう遊ぶかはプレーヤーにゆだねる、と言う本作のコンセプトがそのまま反映されているように感じた。


【スクリーンショット】
まいにちダンジョンは1日1回しかできないわけではない。加えて、プレイ内容によってプロファイルもされる。パラメータのすばやさやひらめきはわかる気もするが、魔ごころにいたっては何が基準になっているのかさっぱりわからない



■ 過去作の戦術は通用しない? 新要素はずばり「水」

コケに始まりコケに終わる、その基本は本作も変わらない

 ここからは本編における変化に注目していきたい。

 システム面の追加要素は2点。魔水の追加と、ツルハシスキルの追加だ。

 生態系構築ゲームである本作において、生物の活動に欠かせない要素である水の概念が導入された。それが魔水である。魔水はダンジョン内の特定のブロックから湧き出ており、そこを掘ることで噴出する。噴出した水は周囲の土から養分を溶かしだす性質があり、溶け出した養分からは「もにゅもにゅ」と呼ばれる特殊な魔物が生まれる。もにゅもにゅは周囲の土や水から養分を吸収し、ツボミに成長する。そしてそのツボミから、水棲魔物と呼ばれる新しい種類の魔物が生まれるのだ。

 特筆すべきは、水と養分さえあれば、土を掘らなくとも新たな魔物が生み出される点。従って水棲魔物は例え勇者に壊滅させられたとしても、時間さえあればまた再び再構築されるのだ。前作までのファンからすれば、生態系が自動的に再構築される水はまさに夢の新システムと言えるだろう。

 ツルハシスキルは、前作でのダンジョンクエイクが複数種類に拡張されたシステム。あらかじめ任意のツルハシを装備してからゲームを開始することで、好きなスキルをゲーム中に発動させることができる。

 これにより前作までは1種類しか使えなかったダンジョンスキルが複数種類に増加し、それにあわせた攻略が可能になっている。魔物の種類だけでなく、ツルハシの選択も重要な要素になっている。

 ツルハシは勇者が落とすドラゴンオーブと呼ばれるアイテムを集めることで増加していくので、ゲームの進行に合わせて増えていくようになっている。新たなツルハシを手に入れたら、それを使ってまた前のステージをやり直してみるのも面白い。

【スクリーンショット】
水は、重力に従って上から下へと流れ落ちていく。計画的に掘って、うまく誘導していこう
エリア攻略の途中では、装備ツルハシを変更できない。どのツルハシを使って、どのような戦術でエリアを攻略するのか、それを考えるのも新たな楽しみになっている



■ 勇者や魔物もボリュームアップ

条件を満たすと現われる、EX勇者。彼らもドラゴンオーブを持っているので、ツルハシをコンプするためには避けて通れない相手だ

 魔物の種類や勇者の種類もボリュームアップされている。特に勇者の種類に関連して、新たなスキルが追加されたことはゲーム性に大きな影響を及ぼしており、例えば魔封箱と言うスキルは、相手の強さに関係なく、近くにいる魔物を吸い込んでしまうもので、これを置かれるとどんなに強い魔物でも一瞬にして倒されてしまう。そのため前作までで有効だった、ドラゴンを使った戦術などでは、かなり攻略が難しくなっている。

 他にも水の導入に伴って、そのカウンター要素として導入されているのが「ブリザード」。このスキルを食らうと魔物は凍らされ、ツルハシでつついて解除してあげるまで行動不能になってしまうのだが、これを水場で使用されると、連結している全ての水が凍らされ、その上に乗っている魔物も全て凍ってしまう。普段は強力な水棲魔物だが、こうなると大打撃を受けてしまうので、何らかの方法でこれを回避する方法も考えなければならないようになっている。

 また、EX勇者のシステムが追加されているのも見逃せない変更点のひとつ。EX勇者はステージクリア時に特定の条件を満たしていると現われる勇者で、彼らは魔王を連れ去ること以外にも目的を持っている。例えば経験値稼ぎを目的にダンジョンを訪れる勇者は、ある一定数以上の魔物を倒すと満足して帰っていく。彼らはドラゴンオーブを持っているほか、倒すと掘りパワーボーナスも獲得できるため、できれば倒しておきたい存在だ。

 EX勇者のシステムが導入されたことで、より同じエリアを繰り返しプレイする意味合いが増した。ひとつの戦術でクリアしたとしても、終わりにならないこのシステムは、本作のゲーム性により深みを持たせていると感じた。

 とにかく新しい要素が追加されたことで、攻略の可能性は増えているものの、勇者の行動も変化しているので、前作までで通用したいくつかの戦術は通用しなくなっていたり、別のアプローチが必要になっている。この辺りは前作までのファンにとって、痛し痒しと言ったところだろうか。

【スクリーンショット】
勇者のスキルもいくつか追加されている。ブリザードは水棲魔物にとって脅威の存在だ



■ 難易度設定にやや疑問

 全体としてみると、前作からの正当進化と言った感じで、安心して楽しめる内容になっていると思う。個人的にはドラゴンが好きなので、今作ではイマイチ使いづらい点が寂しい気もするが、まあこれは完全な私見。いつかどこかのデキる破壊神さまが、ドラゴン主力でクリアとかやってくれるであろうと信じて、それを動画サイトででも見て満足しようと思う。

 ひとつ不満に思った点を挙げると、難易度選択に関して。

 本作のストーリーモードは「ゆったり > ふつう > まがまがしい」の3段階で難易度選択が可能になっていて、初心者でもとっつきやすくなっている……はずなのだが、この難易度設定があまり機能していないように感じる。

 本作は掘りパワーをリソースに、魔物を強化することが可能だ。と言うより、しなければクリアが困難なバランスになっている。この掘りパワーは、ステージクリア時のタイムボーナスと、軍パワーボーナス、そして残り堀りパワーによって加算される。

 難易度を変更すると、勇者が来るまでの時間が変化する仕様で、ゆったりにすると遅く、まがまがしいにすると早く勇者が現われる。要するに難易度設定をゆるくすると、準備に多くの時間を割くことが可能になるのだが、ここで多くの時間を掛けてしまうと、タイムボーナスが減ってしまう。結果的には、ゆったりにして時間を掛けることで、タイムボーナスが得られず、掘りパワーが足りないため魔物を強化できない、と言った事態が発生し、ジリ貧になってしまう。

 難易度設定を引き下げることで、準備に時間を掛けることはできるものの、その結果、全体としてはゲームの進行が困難になってしまうのだ。

 難易度を引き下げつつ、なるべく他の要素に影響を与えず、プレイ感覚は同じものにしたい、と言う意図は理解できるのだが、正直難易度をゆったりにしても、あまり簡単になっているようには感じられなかった。できれば勇者が来る速度以外に、掘りパワーボーナスに難易度ごとに上乗せがあるとか、勇者のレベルを下げるとか、もう一要素ぐらいは救済措置が欲しかったところだ。

 この点を考慮すると、動画サイトやまとめwikiなど、インターネットを活用して情報収集できる層にはなんら問題はないが、そうでないプレーヤーには相変わらず少し敷居が高いかもしれない。

 逆に言えば、それができるプレーヤーには本作をより深く楽しむことが可能だと思う。散々自分でプレイしても全く気付かなかったような戦術が、誰かの手によって発見された時の驚きと、それを共有できる喜びは本作ならではだと感じる。

 そもそも本稿に目を通してくれているプレーヤーは、それができる方々だと思われるので、その点は安心してお勧めしたい。前作までのファンであれば、間違いなく「買い」だろう。

【スクリーンショット】
難易度ゆったりでプレイしていると、掘りパワーが枯渇しがち。無駄に掘りすぎず、時にはタイムボーナスを狙って勇者を呼び込むことも重要だ
勇者は水に入ると、一部のスキルが使えなくなる。この特性を利用した、通称みずびたシティー、及び水地獄などと呼ばれる戦術は、ブリザードを封じる非常に有効な戦術だ


(C)2010 Sony Computer Entertainment Inc.

(2010年4月6日)

[Reported by 米澤大祐 ]