★Windows phoneゲームファーストインプレッション★
プロペ発、スタイラス操作による新感覚アクション 一直線に走る「アイビィ」をゴールへ導け! 「アイビィ・ザ・キウィ?」 |
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AppleのiPhone、googleのAndroidケータイをはじめ、国内でもスマートフォン(PDA機能のついた高性能携帯電話)市場が盛り上がってきた。これまでスマートフォンはPCと連動して用いる「ビジネスケータイ」というカテゴライズだったが、iPhone以後、急速にエンターテイメントでも使えるカジュアルなデバイスという認識が強まってきた。
こうした中で今回プロペが新作「アイビィ・ザ・キウィ?(IVY THE KIWI?)」を、マイクロソフトの「Windows phone」向けにリリースした。Windows phoneはWindows CEベースのOS、Windows Mobile 6.5を搭載したスマートフォンの総称で、今までは「Windowsケータイ」と呼ばれていたものだ。日本ではNTTドコモ、ソフトバンクモバイル、ウィルコムから対応端末が発売されており、ゲームはWindows phone向けアプリの配信ポータル「Windows Marketplace for Mobile」で配信される。
プロペは「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」や「ファンタシースターオンライン」シリーズの生みの親として知られる中裕司氏が率いるゲーム開発スタジオだ。タイトルに共通するのは「オリジナルタイトルのこだわり」で、これまでもWiiでコントローラーに触れずに遊ぶ「レッツタップ」や、Wiiウェアで直感操作の体感スポーツゲーム「レッツキャッチ」をリリースしてきた。その精神は本作にも継承されており、スタイラスで操作する、今までにないプレイ感を実現している。
なお本作はWindows phone以外に、前バージョンのWindows Mobile 6.0/6.1を搭載した端末にも対応している。またWindows Mobileを搭載したスマートフォンは各社から様々なタイプの機種が発売されているが、今回は東芝製の「T-01A」(NTTドコモ向けに供給)で体験プレイを行なった。
■ 「アクションパズル」ではなく「アクションゲーム」
「アイビィ・ザ・キウィ?」の主人公「キウィ」は、卵からふ化したばかりの元気なヒナ鳥だ。羽があるのに空が飛べず、火のように真っ赤な羽を持つキウィは、あたりを見回してママがいないことに気づく。そこでアイビィは卵の殻を体につけたまま、ママを探しに走り出した……。これが本作の背景ストーリーだ。ゲームはスクロールタイプの2Dアクションで、アイビィをゴールに導けばステージクリアとなる。
【プロローグ】 | ||
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生まれたばかりのアイビィは、あたりに母鳥がいないことに気づく。そこで森の中を探しに走り出した。スタート画面は絵本の表紙で、プレーヤーは読者、あるいは神という視点で、この物語に「介入」していく |
ただし、本作ではプレーヤーは直接キウィを操作できない。ひたすら真正面に移動するキウィに対して、タッチパネルにスタイラスで線を引き、画面に「ツタ」を描き入れることで、間接的にゴールまで導いていくのだ。キウィはヒナ鳥なので、ステージ上のちょっとした段差やくぼみも乗り越えられない。そこでツタを描き入れて障害を乗り越えさせるなど、うまく誘導していくのだ。
なおアクションゲームの文法通り、「ステージ上のトゲに触れる」、「ネズミなどの敵キャラクターに触れる」、「制限時間をオーバーする」とミスとなる。またステージ上には1ステージにつき10枚の赤い羽がある。ステージをまたいでもかまわないので、これを10枚集めるたびに残りのアイビィが1UPする。
【スクリーンショット】 | ||
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ゲームがスタートするとアイビィは右に向かって歩き出す。障害物や敵キャラクターなどをタッチでツタを引いて乗り越え、ゴールまで導けばステージクリアだ。なお右上の羽アイコンのパラメーターは、そのステージで集めた赤い羽の枚数だ |
このようにゲーム内環境を修正してゴールまでの導線を作り、間接的にキャラクターを導いていくゲームは、一般的には「アクションパズル」と呼ばれている。スーパーファミコンマウス専用ソフトとして発売され、バケツをかぶったマリオをゴールまで誘導する「マリオとワリオ」や、タビネズミの生態をモチーフとした「レミングス」などが恒例だろう。筆者もリリースで概要をみて、「ああ、このタイプね」と早合点をしてしまった。特にタッチ操作はボタン操作と比べて誤入力がつきものなので、アクションパズルのような比較的ゆっくりとした操作が、デバイス的にも適していると思ったからだ。
しかし、その先入観は触ってみて心地よく破壊されてしまった。スタイラスで線(ツタ)を引くシンプルな操作にもかかわらず、さまざまなアクションができ、誤入力もほとんどない。アクションゲームで重要な操作のリズム感も秀逸だ。しかも何度も繰り返してプレイするうちに、徐々にゲームが上手くなるという体育会系、別名「死んで覚えろ」的な心地よい快感に満ちている。なるほどこれは「アクションパズル」という枠におさまらない、腰の入った骨太のアクションゲームだと感じた。特にキャラクターの間接誘導タイプとしては、希にみる内容だ。
■ 見た目より奥が深い「ツタ」アクション
それでは具体的に「キウィ」のアクションについて紹介していこう。本作ではツタを使って、大きく「ライン」、「送り出し」、「きりもみアタック」という3つのアクションが繰り出せる(「ライン」、「送り出し」は筆者命名)。
まず「ライン」は、ツタを直線的に描き入れて段差などを乗り越えさせるという、本作の初心者が、ほぼ100%最初に行なうであろうアクションだ。くぼみなどもこのアクションで簡単に乗り越えられる。あやまってトゲの生えている床にキウィが落ちそうな時でも、サッとトゲの上にラインを描けば先に進められる。ただしラインをあまり伸ばしすぎると、プチンと切れてしまうので注意が必要だ。
【ライン】 | ||
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これが「ライン」アクション。始点から終点まで直線でスタイラスで線を引けばいい。トゲの生えた床の上を進んだり、落ちてくる障害物を防いだりと、さまざまな場面で使える |
ただし窪みに落ちてしまった時などは、ラインだけでは対応できない。そこで必要になるのが「送り出し」だ。ツタを描く時、そのまま画面からスタイラスを離してしまうと「ライン」になるが、画面につけたままスタイラスを上下に動かすと、始点を基点としてツタを上下に動かせる。ツタはレベルデザインに邪魔されずに動かせるので、これを用いればキウィをエレベータのように上方に持ち上げられる。これが「送り出し」だ。
なお「送り出し」は上方向だけでなく、横方向でも使える。キウィの後ろでツタを引き、下からしゃくり上げるように回転させると、びよーんとバネの効果が働いて、キウィが斜め上にジャンプするのだ。うまく操作すると、びよーん、びよーんとリズミカルに連続ジャンプが繰り出せる。このテクニックを習得すると、本作がアクションゲームだということが実感できるだろう。またキウィを素早く移動させられるので、タイム短縮に効果的だ。ただし誤って障害物に触れるなどの危険性も増すので、気をつけよう。
【送り出し】 | ||
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窪みに落ちたとき、反射的にキウィの上にツタを描きがちだが、これでは救い出せない。そんな時でも「送り出し」のテクニックを使えば、無事に進められる |
【「送り出し」による連続ジャンプ】 | ||
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横方向にリズミカルにキウィを送り出すことで、連続ジャンプが決められる。赤い羽をコンプリートするためには必須のテクニックだ |
最後の「きりもみアタック」は、あらかじめツタを引いておき、スタイラスでドラッグして引っ張って、パチンコのようにキウィをびよーんと打ち出すというアクションだ。このときキウィの体がくるくると回転し、一気にジャンプさせられる。2度、3度と送り出しが必要な長いトンネルを、一気に飛び上がる時などに有効だ。またステージを構成するブロックには2種類あり、もろいブロックならこのアクションで崩して進める。
【きりもみアタック】 | ||
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これが「きりもみアタック」アクション。バネの要領でキウィをはじき飛ばす。もろいブロックを壊して、ひとっ飛びで遠方までジャンプできる。複数のツタを組みあわせてジャンプするテクニックも有効だ |
実際には、この3種類のアクションを平行して進めていく。ステージによっては「ライン」で傾斜をつけてツタをひき、キウィが降りてきたところで「きりもみアタック」でジャンプさせる、などの複合技が必要な場合もある。壁のトゲの部分にあらかじめ「ライン」でカバーを作っておく、などの予防策も有効だ。
画面上にはツタを3本引くことができ、4本目を引くと初めに引いたツタから順次消えていく。画面に点をつけるだけでも前のツタが消せるが、画面がスクロールしても前のツタは残っているので、うまく活用していこう。
■ 新しさと懐かしさが同居した意欲作
本作のチャレンジはグラフィックスにも現れている。よく言えば「絵本のように落ち着いた、温かみのある配色」で、悪くいえば「地味」という、かなり思い切ったデザインだ。ゲーム屋というのは、ステージをクリアすると全体マップがカラーになっていくとか、無敵状態になると点滅するとか(本作でもスターアイコンを取ると一定時間、無敵状態になる)、「色」を効果的に使うのをよしとする傾向にある。しかし本作には、こうした要素は特にないという。これも世界観を大事にしたいという開発陣のこだわりだろう。
レベルデザインも、さすがプロペというだけあって、非常に力が入っている。自キャラクターのアクションとレベルデザインはアクションゲームの両輪だ。特に序盤ではチュートリアルの要素も必要になる。これが本作では、1ワールドに5ステージ、全50ステージが用意されており、段階的にテクニックが必要なように配慮されている。担当者によると、1ステージのクリア感覚や要する時間を踏まえて全体のボリュームを50ステージと設定し、そこから逆算してレベルデザインを行なっていったそうだ。
ちなみに筆者は序盤で赤い羽を集めるのに夢中になり、ワールド3までしか体験できなかった。同行した担当編集者はステージクリアを優先してワールド7まで到達していたが、後半になるにつれて難度が上がっていき、かなり「噛み応え」があったと語っていた。いわゆる「間口が広く、奥が深い」内容になっているようだ。
なお、プロペではゲーム作りに際して、みんなでアイデアを出し合って取捨選択し、調整に時間をかけるそうだ。中氏も本作について、細部に至るまで、かなりの指示を出しているという。実際、本作は「スタイラス」という新しい操作方法にも関わらず、80年代的な「古きよき」香りが濃厚に漂っている。ブロックを崩すと隠しアイテムが存在する、といった「ウラ技」要素もあるようだ。1ステージのクリア時間も数分と短く、とにかくテンポがいいので、ついつい止め時を失ってしまう。
また発表会で中氏は「タイトルの最後の『?』に注目してください」と語っていた。ゲームをクリアすると、この「?」の意味がわかるそうだ。ぜひ、最後までクリアして「?」の意味を説き明かしてほしい。
【プロモーションムービー】 |
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(C)PROPE
http://prope.jp/
□「アイビィ・ザ・キウィ?」のページ
http://prope.jp/kiwi/
(2009年 12月 17日)