PS4/Xbox Oneゲームレビュー

ファイナルファンタジー零式HD

“ただのHD化ではない”最新技術で真の魅力を現わす“異端の名作”

ジャンル:
  • RPG
発売元:
開発元:
プラットフォーム:
  • PS4
  • Xbox One
価格:
7,344円(税別)
発売日:
2015年3月19日

 東京ゲームショウ2014にてシークレットタイトルとしてサプライズ出展され、さらに「ファイナルファンタジーXV」の先行体験版までも付属すると発表されて、大きな話題となったプレイステーション 4/Xbox One用アクションRPG「ファイナルファンタジー零式 HD(以下、『零式HD』)」。それから約半年、いよいよ発売の時がやってきた。

 もともと「ファイナルファンタジー零式(以下、『零式』)」は2011年に発売されたPSP用のタイトルで、それを携帯機のPSPから、一気に据え置き機の最新世代PS4とXbox One用へとジャンプアップさせるという驚きの移植となるのが、今作の「零式HD」だ。開発はスクウェア・エニックスおよび、HD移植に定評のあるヘキサドライブが手がけている。

 このレビューでは、そもそもの「ファイナルファンタジー零式」の魅力とはどんなものか?、HD化によってどのような変貌を遂げたのか?、操作性などのプラスアルファは?、などなど。その魅力をお伝えしていこう。

ただの高解像度化ではない!「FFXV」にも使われている技術で生まれ変わった「零式HD」

 最初にお伝えしたいのは“「零式HD」はただのHD化作品ではない”ということだ。HD移植というと、言葉は悪いが“解像度を高めただけでしょ?”という印象があるかもしれないが、本作のHD化というのは“その枠をだいぶ飛び超えたもの”になっている。

 プレイし始めて最初に感じたのは「光の表現や見え方が、場面によってすごく変わるな?こんな見え方のゲームはあまり見た事がないな……」というものだった。「零式HD」は“自然な光の表現”が非常に凝っている。凝っているというより、“すごくスムーズに自然界の表現を作っている”という方が正しいだろうか。

 いわゆるライティング(光の処理)なのだが、単純に明るいや暗いだけでなく、光は眩しく、暗さは闇へ。時に爽やかに、時にホコリっぽく、時にジメジメと。シーンごとにその場面の空気感を再現した見え方がなされている。

 例えば、上の画像は、空の光が飽和してディテールが見えなくなって、のっぺりした画面になっている。いわゆる“白飛び”した状態。だがこれも自然光の作用であり、常時こういうグラフィックスなわけではない。「強い光が当たっている時ってこうなるでしょ」というものだ。

 一方で、爽やかな朝日を思わせる陽射しもあれば、屋内の柔らかな光、夕闇、曇天や霧雨など、光の質が変わって、それに照らされる全てもちゃんと見え方が変わる。光と影が存在するだけでなく、その質や、肉眼に近い見え方が追求されており、“自然な見え方の世界”を創っている。

 次に感じたのは、「明るいところと暗いところを行き来すると、画面全体の見え方が変わる……こういう表現もあんまり見た事がないな……」というものだった。プレーヤーキャラクターの立ち位置によって、そこから見る景色の明るさが変わる。

 これは、眼に関する用語で言うところの「明順応」と「暗順応」、つまり明るいところから暗いところへ、そしてその逆の場合と、眼が慣れて明るさが変わっていく再現だ。

 明るいところから暗い場所を見ると、その場所はより暗く映る。暗い場所の中へ入れば、周囲の暗がりは少し明るく見えやすくなる。その暗い場所から明るい場所を見ると、明るいところで見たよりも眩しくみえる。大体、人の眼の明るさの捉え方というのはこんな感じになるが、「零式HD」でも日なたと日陰で、明度がスムーズに変わっていく。

同じ場所でも、明るいところと暗いところから見るのとでは、明るさが変わってくる。この移り変わりも実に自然に行なわれる

 さらに、「被写界深度」の処理。被写界深度は簡単に言えば、くっきり見える範囲とボケて見える範囲のことで、近くはくっきりと、遠くはぼやけて見える。被写界深度の表現自体はそれほど珍しいものではないのだが、自然光の表現や、明暗の順応が組み合わさって、“その世界の空気感”を感じられるものになっている。

ロックオン中の被写界深度。上の画像だと左右はボケが入っているが、ロックオンを切り替えた下の画像では、深度と焦点が一気に切り替わる

 そして最後に、より全体的なものだが「素材感の表現」があらゆるものに効いているところも見どころ。

 素材感、いわゆるマテリアルの質感だが、柔らかそうな布地、磨かれた石床の映り込みや照り返し、金の装飾のにぶい光沢感、でこぼこや無数の穴がついている石壁、風雨にさらされたオブジェクトの朽ち加減……あらゆる質感表現のクオリティが高く、それがまた自然な光によって見え方が変わっていく。

 こうした質感やディテールというのは、一定以上の全体解像度とテクスチャ解像度がないと、単にチラチラしたものになってしまいがちだが、据え置き機のPS4/Xbox Oneでなら、自然と注目してしまうほどの魅力になってくる。

 もともと「零式」は、きらびやかさと重厚さのコントラストが効いた、PSPトップクラスのグラフィックスも魅力のゲームだったが、「零式HD」では見た目から伝わる情報量が増えて、その魅力が120%発揮されていると感じた。

質感表現のクオリティも見どころ。床石が磨かれ、照り返していたり、照明が映り込んだり。そうした表現ももちろんキャラクターの立ち位置や視点の角度によって、見え方がリニアに変化していく

 「零式HD」は、「FINAL FANTASY XV」の体験版「-EPISODE DUSCAE-」のダウンロードコードが付属することも注目を集めるところだが、「零式HD」そのものにも、「FINAL FANTASY XV」に使われている技術が一部使われているという。それによって「零式HD」においても新世代の魅力を体験できるところがあり、単純な高解像度化を超えた作品となっている。

 ただし、あくまでは「零式HD」はリメイクではなくHD移植作であり、モデリング自体はPSPを元にしているのを感じさせるところはある。元の印象を変えすぎず、テイストを残しつつ、最新技術を使えるところに入れたという印象だ。

 そういう印象もあるが、表現の向上によってもともとあった魅力がさらに高まっているし、他のゲームのどれにも似ていない独特の空気感を感じさせるシーンや瞬間すらある。それは「ファイナルファンタジー」シリーズにおける新世代の技術であり、「ファイナルファンタジーXV」にも通じていくのかもしれない。

 ちなみに、静止画を中心にお伝えしているレビューでそんな事を言ったら身も蓋もないのだが、本作はそれこそ、シーンごとに映像の質感が変化するので、静止画では本作のグラフィックスを伝えきれない……と思える。そのあたりが気になる方は、ぜひ“できるだけ大きく表示したHD画質でのPV”や、実機でのプレイでご確認頂きたい。

同じ場所に立って視点を変えている2枚の画像だが、光の反射がこれだけ変わる。表現がリニアに動き続けるので、静止画像での印象とプレイ中の印象はまた変わってくる

「零式はどんなゲーム?」 - ファンタジーと戦記の融合、アクションバトル、個性の塊のような、心に残るものがある意欲作

「零式」は、これまでの「FF」では扱われなかったシビアでハードな戦争ものという、意欲的な作品だった

 続いては、そもそも「零式」がどんなゲームなのかに入ろう。

 本作が最初に登場した2011年にはPSP版の「零式」をレビューした筆者だが(このレビューが今読むと実に長いのだが、本稿以上にゲーム内容を知りたい方はそちらも参考にしてもらえると良いかもしれない)、思い返すと「零式」はいろいろな点でインパクトのある作品だった。

 携帯機PSPでのオリジナル作品にして、UMD2枚組というボリューム。RPGでありつつもバトルは本格的なアクション操作。「FF」のエッセンスで描かれるもハードな戦記物であり、主人公達は最初から14人もいるのにどのキャラも個性と魅力がしっかりとあった、などなど……。思えばチャレンジの塊のようだ。

 当時のレビューでも筆者は“クセがあり個性的かつ独特”と繰り返し書いているのだが、「零式」はゲーム性・内容・システムのどれにおいても意欲作として印象に残っている。4年経った今でも、「ここ数年で印象に残っているゲームは何?」という話題になると、結構早い段階で「『零式』も良かったなぁ」と、名前が浮かんでくる。

 ……PSP版に対してのものではあるが、ある意味これが「零式」という作品に抱いている筆者の最終評価といっていいかもしれない。

おびただしい流血、無線から響く断末魔、惨たらしい死……シリアスでハードな物語となっている

 PSP版への余談はさておき。未プレイの人に「零式」がどんなゲームなのかをあらためてまとめよう。

 本作は“東方国家群オリエンスを舞台にした4大国家の戦争”を描いた、ファンタジー軍事戦記物といっていいテイストの作品だ。

 4大国家はそれぞれクリスタルを擁した「朱雀」、「青龍」、「玄武」、「白虎」があり、物語は白虎を擁する「ミリテス皇国」が魔導アーマーや銃器などの兵器を用い、朱雀へと侵攻していくところから始まっていく。

 朱雀はクリスタルからの魔力供給による魔法や軍神(召喚獣)を主体に防戦するも、クリスタルジャマーという特殊戦略兵器によってクリスタルの力の供給を絶たれ、魔法が使えなくなり、一方的に虐殺されていくこととなる。

 プレーヤーはまず、その侵攻の様子からこの世界に触れていくことになるが、従来の「FF」にはなかった、おびただしい流血。無線から響く断末魔。惨たらしい死など。シリアスで生々しい描写を目撃していくこととなる。こうしたところも、本作が新しい領域に挑んでいる意欲作たるところだ。

 この圧倒的に不利な戦局を覆すため出撃するのが、朱雀の魔導院内でも存在が隠されていた特殊クラス「0組(クラスゼロ)」だ。クラスゼロのメンバーが、プレーヤーの操作する主人公となるのだが、なんとオリジナルメンバーだけでも12人おり、さらに、レムとマキナという2人が加わって総勢14人となる。

 プレーヤーはその14人から自由に操作キャラを切り替えられるのだが、普通はいきなり14人もキャラクターが出てくると名前や顔を覚えられないもの。だが、本作の14人はすんなりと馴染んでいくし、愛着も湧いてくる。それぞれ使用する武器が違うというシステム的な個性付けもあるが、外観や性格付けといった個性がくっきりと出ていて、いわゆる“キャラがしっかり立っている”、良キャラ揃いだ。

エース -Ace-(CV:梶裕貴)。一見するとクールだが感受性豊かで行動力が高く、名前の通り0組(クラスゼロ)のエース的な存在として君臨している。武器とするのは、魔法を具現化したカード。チョコボが好き
デュース -Deuce-(CV:花澤香菜)。おっとりとした穏やかな少女だが、とてもしっかり者。意志が強く、いざという時は己を犠牲にすることも辞さないため、「怒らせると怖い」と仲間には思われている。戦場で優雅にフルートを吹き、音色で敵を攻撃する特殊なバトルスタイル
トレイ -Trey-(CV:中村悠一)。知性派で成績優秀な0組の知恵袋的存在。丁寧な口調でスマートな印象の青年だが、長話なのが玉にキズ。弓を操り、その腕前は数キロ離れた敵をも狙えるほどのもの
ケイト -Cater-(CV:茅原実里)。戦場ではひるむことなく敵陣に切り込む、勝ち気で勇敢な元気のいい少女。幼少のころから魔法が得意で、魔法弾が打てる特殊な魔法銃を操る。幼少のころから魔法が得意で、魔法弾が打てる特殊な魔法銃を操る
シンク -Cinque-(CV:豊崎愛生)。どうせならダメージが大きい方がいいという理由で重く扱いづらいメイスを選んだ力持ちな女の子。のほほんとした口調から警戒心がなさそうに見えるが、0組とアレシアしか信頼していない
サイス -Sice-(CV:沢城みゆき)。一匹狼気質の女戦士。「この世のすべては弱肉強食」をモットーとし、1度恨みを持つと延々と根に持つタイプ。0組のメンバーとも距離を置き、冷酷なようだが突き放すようなことはしない
セブン -Seven-(CV:青木まゆこ)。0組の中でも年長の部類に入る。物静かで落ち着きがあり、物事や状況を的確に判断できる、頼れる女性。さばさばした性格と凛々しい雰囲気をもつため、魔導院の女子から絶大な人気を誇る。鞭に変化する「鞭剣」を操り戦う
エイト -Eight-(CV:入野自由)。運動能力が高く、正義感の強い少年。命を簡単に奪う武器を嫌い、拳で戦う。いつも身体を動かすことを忘れず、ストイックに鍛錬を積んでいる
ナイン -Nine-(CV:小野大輔)。乱暴な発言・行動が目立つ、0組の問題児。学業の成績は底辺だが、頭でなく身体で考えるタイプで、ずば抜けた行動力を持つ。槍の名手でもある
ジャック -Jack-(CV:鈴村健一)。のんびりした口調で、真剣な話はのらりくらりとかわす、緊張感のない青年。いつも笑顔を絶やさないが、本質はストイックで道化に徹して戦場を和ませている。刀を扱い、一撃必殺にすべてをかける
クイーン -Queen-(CV:小清水亜美)。知識豊富な才女。特に魔法の知識に富み、魔法錬成に力を入れている。普段は冷静だが、戦闘時において危機状態に陥ると豹変してしまう。自身を表すかのような、真っ直ぐな鋭い剣を使う
キング -King-(CV:杉田智和)。寡黙で冷静、かつ行動力のある不言実行タイプの青年。合理的という理由から2丁の拳銃を武器として選んだ。直情的で一本気なナインとは対照的だが、なぜかウマが合うらしい
マキナ・クナギリ(CV:神谷浩史)。素直かつ爽やかな青年で、元2組の優等生。一緒に0組へ編入したレムとは幼なじみ。エースと同じくチョコボ好きで、兄の所持しているチョコボに“チチリ”と名付ける
レム・トキミヤ(CV:白石涼子)。慈愛にあふれ、誰にでも親身に接する優しい女性。魔法が得意で、元は魔法特化型のクラスである7組に所属していた。不治の病を抱えており、残り少ない命であるが、幼なじみであるマキナにすら病を患っていることを伝えていない
PSP版に登場した夏服や礼服、さらに新衣装の“教導軍装[ホマレ]”が条件を満たすと手に入る

作戦の合間にはクエスト的な依頼やイベントなどをこなすRPG的なパートがある
ワールドマップも存在。街や、隠された洞窟などの場所も存在し、敵とのエンカウントももちろんする
戦闘のアクションで鍵になるのは、敵の隙を突いて大ダメージを与える「キルサイト/ブレイクサイト」。これが上手くできるかどうかで、本作のバランスは大きく変わる

 ゲームシステム、プレイの流れも本作は独特。本作は大まかに書くと以下のような流れになる。

「作戦(戦闘パート)」
    ↓
「自由時間(RPG的な探索などのパート)」
    ↓
「次の作戦へ」

 朱雀魔導院からの指令を受け、戦地での任務をこなしていくのが「作戦」という戦闘パート。戦闘パートはアクション操作だ。作戦後は、次の作戦までの「自由時間」が与えられ、朱雀内だけでなくワールドマップへと出て、他の街や洞窟などを探索することもできる。

 自由時間の短縮もできるので、アクションゲーム的に戦闘パートを次々にこなしてストーリーをどんどん進めてもいいし、RPG的にイベントを巡ったり、世界を探索してもいい。2つの遊び方をプレーヤーが好きにできる自由さがある。

 戦闘パートのアクションで鍵になるのは、「キルサイト/ブレイクサイト」という敵に大ダメージを与えるシステムだ。攻撃の直前や直後に、赤または黄色のマークが敵に表示され、その瞬間に攻撃を与えれば、赤なら即死、黄色なら大ダメージを与えられる。

 本作のアクションのポイントはこのキルサイト/ブレイクサイトにあると言っても過言ではなく、移動や回避で敵の攻撃を誘い、サイト表示のタイミングを的確に突いていく。華麗な回避からの一撃が決まり、「ガシャーン!」という割れるような音とともに敵が倒れていくのは、かなり気持ちがいい。

 ただ、このキルサイトを突くというコツを掴めるかが、本作の手触りを変える大事なポイントであり、クセとも言える。上手くいくと、一撃で敵をしとめていく気持ちの良いプレイになるが、リズムが崩れてうまくいかない時は、苦戦したり、ひどい時には全滅という事態も待っていることもある。荒削りと言えば荒削りと言えなくもないが、じゃじゃ馬なゲームだからこそ乗りこなすと快感とも言える。

 実際、PSP版をプレイした時の筆者もそうで、遊びはじめにはその独特さやバランスに悩むところがあった。だが、中盤あたりから飛躍的にゲームへの理解が進み、エンディングを迎える頃には「いいゲームだったなぁ」という感想になっていった……という経緯がある。

 こうした、筆者が言うところの“クセのあるところ”は、プレイした限り「零式HD」でも同様と思えた。「クセはあるけれど、乗り越えると他にない気持ち良さが味わえる」という個性もまた、本作が印象深い作品になる理由とも言えるので、初プレイの人は操作キャラクターをいろいろと試しつつ、トライしてもらいたいところだ。

「零式HDならではの操作性アップ」 - 右アナログスティックの活用が嬉しい。ただし、もう1歩オプションの充実を期待したいところも

右アナログスティックでロックオン切り替えがスムーズにできるようになり、かなりプレイしやすくなった

 据え置き機への移植ということで、「零式HD」ではPS4版で言うところの右アナログスティックやL2/R2ボタンが増え、PSP版よりも操作がしやすくなっているのが嬉しいところだ。

 右アナログスティックは基本的に視点操作に使うが、戦闘中のターゲットロックをしているときには、「上で倒した敵に優先ロックオン」、「下で最も近い攻撃対象にロックオン」、「左右もしくはL2/R2ボタンでロックオン対象を左右に切り替え」となる。

 R1ボタンでロックオンし、右アナログスティックでロックオンを切り替えつつもキルサイトを突いて敵を倒し、最後には右アナログを上へ入れてファントマ(絶命した敵から獲得できる、能力アップなどに使うアイテム)を回収。右アナログスティックの存在によって、かなり遊びやすいゲームになっている。

 ただ気になるところもあって、ひとつは、その右アナログスティックの視点操作スピードの調整項目がないところ。視点操作はデジタルに速めのスピードになっているので、狭い場所での戦闘などで視点操作が暴れてしまうことがある。

 もうひとつは、ブラー処理(背景の流れなどを流線で視覚的に作る処理)がちょっと強いかなと感じたところ。視点操作中にぶわーっと画面全体に強めのブラーがかかるので、周囲が見づらいなと感じる時があった。

 この2点は可能なら、アップデートで視点操作スピード調整と加速度調整、ブラー処理のオン/オフができるようになってくれると、非常に嬉しい限りだ。

新世代に真の魅力をみせる「零式HD」! 異端とも言える個性の中に不思議と感じさせる“FFらしさ”を見逃すな!

ただの高解像度化にとどまらず、新世代の技術で新たな魅力を放つ「零式HD」。PSP版でプレイ済みの人もその真の姿を、未プレイの人は異端とも言える個性を楽しんでもらいたい

 新世代の技術を使ってPSPからPS4/Xbox Oneへ……という前代未聞なプラットフォームの大ジャンプをみせた「零式HD」は、“眠っていた真の姿を現わした”と言ってもいいかもしれない。

 当時、PSPでは伝えきれないところもあったであろう、素材の良さや世界の魅力が「零式HD」で発揮され、新しい魅力を感じさせるものにまで化けている。装飾の絢爛さ、兵器の重厚さ、空気感を持った世界に、目を奪われる瞬間があった。その質感は他のタイトルにはない独特かつ澄んだもので、そこに“次世代の「ファイナルファンタジー」”が垣間見える。

 とはいえ、「零式HD」はリメイクではなく、あくまでHD移植作であり。モデリング等々にPSPを元にしているのを感じさせるところはあるにはある。それでも、表現力が向上している部分には驚かされるものがあった。

 ゲーム内容においては繰り返し書いてきたとおり、“クセはあるが、その個性もまた魅力になる”という、ひとクセあるぶん味の濃いものだ。世界観に“ファンタジー”と“戦争”、ゲーム性には“RPG要素”と“アクション要素”の2つを併せ持ち、「FF」シリーズにあってまさに「零式」、まさに異端とも言えるものなのだが、不思議な事にその中に「『ファイナルファンタジー』らしさ」を強く感じさせる作品でもある。

 バトル中のアクションにクセの強さであったり、バランスのきつさをたまに感じさせるところはじゃじゃ馬な印象なのだが、それは乗りこなすと快感になるし、ストーリー、キャラクターの魅力、楽曲ともに、しっかりとした魅力を持っている。それらは“時が経ってもなお心に残るなにか”を持ったものだ。

 楽曲の良さも魅力を語る上で外せない。「零式HD」では楽曲の再ミックス&一部再レコーディングが行なわれており、メインテーマ「我ら来たれり」も、据え置き機ということでよりリッチな再生環境で聴けるのも嬉しい。本作の魅力の強さ、個性の強さをも表現している名曲。「零式」を未プレイの人は、ぜひその高揚感を味わって欲しい。

 PSP版をプレイして本作の個性とその良さを知っている人には、もはや説明不要なものがあり、HD化で圧倒的にパワーアップしている表現の数々と共に、もう1度「零式」の魅力を味わってもらいたい。未プレイの人は、新世代の「ファイナルファンタジー」への期待とともに、この異端児の魅力を知ってもらいたい。そこには充実したゲーム体験が待っている。

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(山村智美)