(2014/1/28 15:00)
2004年1月。マウスコンピューターはゲーミングブランドのG-Tuneシリーズの展開を開始した。ゲーム用のPCは高価なパーツが組み込まれているため高価で手を出しづらい。ゲームをPCで遊びたいけれど、どんなPCを購入してよいかわからない。こんなユーザーが多かった当時、どんなPCを買えばよいかわかりやすいように、ゲーム推奨モデルを打ち出し、ゲーミングPCを安価に購入できるようにしたのがG-Tuneシリーズだ。2014年1月28日、G-Tuneシリーズは展開を開始してから10年を迎える。その記念すべき10周年モデルとしてGAME Watchとコラボして発売されたのが、今回レビューをお届けする、「G-Tune NEXTGEAR-MICRO im550BA2-SP-GW」。通称「NEXTGEAR-MICRO 10周年モデル」だ。
ゲーミングPCとして必要な性能を安価に実現
今も昔もPCゲームの事情として変わらないもの。それが、使用するPCに高スペックを要求することだ。最新のゲームをストレスなくプレイするにはある程度の性能を持ったPCが必要となる。あれこれ考えずに、ビデオカード搭載のハイエンドPCを購入すれば、最新ゲームをプレイすることはできるが、コストがかかり過ぎるのが問題だ。最高のCPUや容量の大きなSSD、大量のメモリ、ウルトラハイエンドクラスのビデオカードなどを搭載したPCの価格は20万円オーバーが相場となってしまう。最新ゲームをプレイしたい。しかし、もっと気軽に購入できるような安価なPCはないかと探している読者諸氏にピッタリなのが、今回紹介する「NEXTGEAR-MICRO 10周年モデル」だ。
この「NEXTGEAR-MICRO 10周年モデル」は、最新ゲームをストレスなくプレイすることができるのを目的にデザインされたゲーミングPC。最高の性能を追求したモデルではないが、現在販売されている3Dゲームタイトルなら、動作環境としては過不足ない性能だ。まず、その仕様を見ていこうと思うが、主なものを表にまとめてみた。
G-Tune NEXTGEAR-MICRO im550BA2-SP-GW | |
---|---|
CPU | Core i7-4770 |
マザーボード | Intel H81 Expressチップセット採用マザーボード |
メモリ | PC-12800 DDR3 SDRAM(8GB×1) |
ビデオカード | GeForce GTX 760 |
ストレージ(HDD) | 1TB、7200rpm、Serial ATA 3.0 |
光学ドライブ | DVD±R 2層書き込み対応22倍速DVDスーパーマルチドライブ |
PCケース | NEXTGEAR-MICRO |
電源 | ATX 500W |
OS | Windows 8.1 64bit版 |
その他 | G-Tuneブランド キーボード・マウスセット、17メディア対応マルチカードリーダー |
CPUにはハイエンドシリーズのCore i7シリーズから、Core i7-4770がチョイスされている。Core i7-4770は、今回紹介するLGA1150プラットフォームの対応CPUとしてかなり上位の製品。4つのコアを搭載しており、3.4GHzで動作。ターボブースト時には、3.9GHzで駆動する。これよりも上位のCPUにはCore i7-4771やCore i7-4770Kがあるが、通常時の動作周波数が3.5GHzであることと、Core i7-4770Kで倍率変更によるオーバークロック(OC)ができることを除けば、性能的には、ほとんど変わらない。
マザーボードはIntelのミドルレンジクラスであるIntel H81を採用した製品。上位のIntel Z87はOCや、ビデオカードを複数搭載するSLIやCrossFireXといった構成を視野に入れた仕様になるため、妥当な選択と言えるだろう。
ゲーミングPCのキモとなるビデオカードにはNVIDIAのGeForce GTX 760を搭載したカードを採用している。ビデオメモリは2GBのGDDR5を使用したモデルで、現行のゲームを楽しむためには十分な性能を持ったビデオカードだ。無論、最上位というわけではなく、上位のビデオカードにはGeForce GTX TITANやGeForce GTX 780 Ti/780/770などが存在している。しかし、これらのビデオカードの相場価格は、GeForce GTX 770でも4万円以上。ハイエンドでは、15万円を超える製品もちらほら見かける。本機に搭載されるGeForce GTX 760は3万円前後が相場となっており、価格を抑えつつも性能を意識したコストパフォーマンスの高いモデルだ。
メモリはPC-12800 DDR3 SDRAMの8GBモジュールが1枚搭載されている。筆者としては、同じ8GBでもデュアルチャンネルを有効にするために、4GBモジュールを2枚搭載することをお勧めしたいが、こちらもコストカットの影響と思われる。実際問題、以前に紹介させていただいた同じマウスコンピューターのPC Watchモデルでも同様のメモリ構成であったが、検証の結果、ゲームなどの実行時にはほとんど差が出ないことがわかっているため、問題はないだろう。
ストレージには7,200rpmの1TB HDDが採用されている。SSDの組み込まれたモデルの多いハイエンドPCだが、ゲームは一旦ゲーム画面に入ってしまえば、描画速度のほうが重要だ。ゲームの起動やデータの読み出しなどに差は出そうだが、プレイに大きな支障はないだろう。
特筆すべきなのはPCケースだ。「NEXTGEAR-MICRO」の名前のとおり、本機に搭載されているマザーボードはmicroATX仕様の製品。当然PCケースもmicroATX用のものを採用しており、ケースが非常にコンパクトだ。サイズの大きくなりがちなゲーミングPCだが、この大きさは設置場所に難儀する日本の住宅事情としてはうれしいところ。後ほど写真で紹介するが、このサイズでありながら搭載ファンも大型で数も多く冷却能力に優れている。microATXといえども、ゲーミングPCという使いみちにあったケース選択だ。
電源は500W対応の製品が搭載されている。こちらは、搭載されているパーツの構成を考えると妥当なところだ。ビデオカードの換装やパーツの追加などによる拡張を行なう場合にはこころもとない部分もあるが、そのまま使う分にはまったく問題はない。
OSにはWindows 8.1の64bit版が選択されている。Windows 8は登場当初、対応していないゲームも少なからずあったが、登場から1年近くが経過し、Windows 8.1にアップグレードされた今、ゲームメーカーの対応もほとんど問題がなくなってきている。
そのほかにも、G-Tuneブランドのキーボードやマウス、17メディアに対応したメモリカードリーダーが付属している。キーボードやマウスはゲーマー向けのG-Tuneオリジナルの製品で、高価なゲーマー向けのものと比べると見劣りするが、十分に使用に堪えるものだ。
仕様を見て思うのはところどころコストダウンの跡が見られること。要所を抑えたコストダウンのため、それほど大きな性能ダウンが見られる部分は多くないだろう。ただ、ゲーミングPCとして見た場合に、大きな差が出るのは、ビデオカードとストレージの部分だ。ストレージ部分に関しては前述のとおり、ゲームデータなどの読み出し時間に影響をおよぼすことがあるが、プレイそのものには支障がないと言える。また、ビデオカードも上位製品と見比べるとどうしても見劣りする。ただ、現状のゲームをプレイするためには十分だ。価格と性能のバランスを考えた場合、使用用途から考えると非常によくできた構成であると言えるだろう。
写真でみる内部構成
今回、実機をお借りしているため、分解して中を確認することができた。マウスコンピューターのG-Tuneはメーカー製PCではあるが、基板からオリジナルの設計を行なってPCをデザインしているわけではない。市場に出回っていない製品もあるが、各パーツベンダーの提供するOEM製品を組み込んで作成されている。マウスコンピューターとしては、それらのパーツ構成を検討し、相性の問題などの不安要素が取り除かれた完動品を、OSがインストールされた状態でユーザーに提供する。また、各パーツではなく、PCとしてのユーザーサポートも請け負っているという大きな安心感があるのだ。
話が少しそれたが、そのような事情からG-Tuneに使われているパーツがどのメーカーのどのような製品であるのかという興味がある方も多いはずだ。ここではそれを写真で紹介していこう。ちょっと注意してほしいのが、今回写真で紹介するパーツが必ず使われているかと言われると、そういうわけではないこと。各パーツベンダーの製品の生産状況により、同じパーツが使えなくなることもあるからだ。その場合、マウスコンピューターのようなOEM生産を行なっているPCベンダーは、同じような性能のほかのパーツを利用して、同型のPCを販売し続けることもある。このようなケースもあるということを念頭に、以降の記事を読んでもらいたい。
ゲーミングPCとしての性能をテスト
では、せっかく実機が手元にあるのでベンチマークテストを行なってみよう。ベンチマークを行なったのは、以下の6項目。その下に各ベンチマークの結果を掲載している。
・3DMark
3D性能を測るのだったらこれをおいてほかにないと言われるほど有名なFuturemarkのベンチマークソフト。スマートホンやタブレットなどの性能も計測できるIce Storm、ごく一般的なPC向けのCloud Gate、ゲーミングPC向けのFire Strikeの3つのテストが行なえる。
テスト項目 | 数値 |
---|---|
Ice Storm | 146,672 |
Cloud Gate | 20,048 |
Fire Strike | 5,518 |
・PCMark 8
Futuremarkの最新ベンチマークソフト。PCの全体的な性能をチェックすることができる。
テスト項目 | 数値 |
---|---|
PCMark score | 5,005 |
・PCMark 7
PCMark 8と同じくPC全体の性能をチェックするためのベンチマークソフト。PCMark 8の1世代前のソフトだが、比較できるサンプルを持っている読者も持っている方が多いと思われるため、参考用に計測して掲載した。
テスト項目 | 数値 |
---|---|
PCMark score | 4,109 |
・CINEBENCH R15
CPUの性能を見ることができるベンチマークソフト。レンダリングをCPUで行なう際の処理能力を見ることができるのだが、シングルコアでの処理とマルチコアでの処理時の比較も行なうことができる。
テスト項目 | 数値 |
---|---|
CPU | 750 |
CPU(シングルコア) | 155 |
・「バトルフィールド4」(平均fps)
多くのファンを持つEAの最新FPS。キャンペーンの再プレイを利用し、TASHGARを開始。戦艦の場面のデータ読み込みが終わり、主人公たちが車で移動しているシーンが開始されたら、平均フレームレートをFrapsで1分間計測している。設定を最高にした場合と高の場合で2つの計測を行なった。
テスト項目 | 数値 |
---|---|
設定:最高 | 43.733 |
設定:高 | 65.267 |
・「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」ベンチマーク キャラクター編
スクウェア・エニックスの人気国産MMORPG「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」(FFXIV)のベンチマークソフト。プレイの前に利用することで動作環境を満たしているか、どれくらい快適にプレイできるのかをチェックすることができる。テストは、最高設定で、フルHD、フルスクリーン表示にて行なった。
テスト項目 | 数値 |
---|---|
スコア | 9,620(非常に快適) |
3Dゲームのエントリーマシンとしてぴったり。機能を強化したいのならBTOも可能
ここまで読んで、本機の実力がわかってもらえただろうか。「NECTGEAR-MICRO 10周年モデル」には、このほかにも、新PCへの移行を簡単にする、ファイナルパソコンデータ引越し9plusがプレインストールされており、PCの買い換えの際にも移行がスムーズに行なえるようになっている。そして、先に少し書いたように、自作PCと違って、手厚いサポートが得られるという安心感も大きい。
「NECTGEAR-MICRO 10周年モデル」は、機器の構成やベンチ結果から見た場合、必ずしも最高のゲーミングPCと言えるわけではない。しかし、削るべきところを削り、必要な部分は強化されているという、非常にシェイプアップされたアスリートのようなマシンであることがわかる。このシェイプアップにより価格を抑え、最高のコストパフォーマンスを実現しており、現在の3Dゲームをプレイするための環境を安価に提供してくれるというのが、本機の特徴だろう。
ヘビーなゲームユーザーにはちょっともの足りない部分はあるかもしれないが、ライトゲーマーを卒業し、ちょっと踏み込んで3Dゲームをプレイしたいと思っている人にはぴったりだ。出費としてもお試し価格の範疇であり、筆者としてはそんなユーザーの3Dゲームの入り口として、本機をお勧めしたい。
また、G-Tuneシリーズはカスタマイズの可能なBTO方式での販売も行なっている。たとえばだが、メモリ容量をもう少し増やしたい、CPUをもうワンランク上のものに変更したいといったカスタマイズも可能だ。強化したい機能があるのなら、どのような変更が可能かチェックし、自分の目的にあったPCを予算に応じてカスタマイズすることもできるので、1度は目を通しておくとよいだろう。