★ PS3/Xbox 360/PCゲームレビュー★
サッカーゲームの最高峰がここに!
豊富なゲームモードで贅沢に楽しもう!
「FIFA 13 ワールドクラス サッカー」
ジャンル:
  • スポーツ
発売元:
  • エレクトロニック・アーツ
開発元:
  • Electronic Arts Canada
プラットフォーム:
  • PS3
  • Xbox 360
  • WIN
価格:
7,665円
(PS3 / Xbox 360)
4,800円
(WIN)
発売日:
2012年10月18日
プレイ人数:
1~22人
レーティング:
CERO A(全年齢対象)

ボールひとつでサッカーの宇宙が広がっていく

 サッカーには様々な楽しみ方がある。プレイする、観戦する、戦術を研究する、スター選手の活躍を見守る、あるいはサッカーをダシにして会話に花を咲かせる。ありとあらゆる楽しみ方に質の高さがあるからこそ、サッカーはスポーツの王様であり続けている。

 本作「FIFA 13」は、そんなサッカーの幅広い魅力をひとつに詰め込んだ、非常に贅沢なコンピューターゲームだ。チーム全体を操ってプレイするオーソドックスな遊び方から、各種のオンライン対戦、22人でのチームプレイ、あるいは監督となってチームを指揮したり、ひとりのプロ選手になりきってキャリアアップを目指すゲームモードや、コレクション欲を刺激するトレーディングカードゲームもある。

 「FIFA 06」で今世代のゲームエンジンに切り替わってから数年、前作「FIFA12」でさらなる刷新を加えてきたゲームエンジンをベースにした本作では、ピッチ内で展開されるサッカーの質が以前なら想像もできないほどの高水準に達した。それに加えて遊びやすさ、遊びの多彩さといった全ての面で、本作はひとつの集大成と言える作品へと進化している。

 本作は多数のプラットフォームに展開していることも特徴だ。国内ではメインプラットフォームとなるプレイステーション 3版をはじめ、Xbox 360およびWindows版がフラッグシップバージョンで、全ての要素が最高の水準で収録されている。PlayStation Vita版は簡略化されたバージョンとなり、次いで、iPhone/Android版などモバイル向けの“手軽な”バージョンが続く。

 本稿ではフラッグシップバージョンであるPS3/Xbox 360/Windows版の「FIFA 13」を対象に、本作のインプレッションをお伝えしていきたい。膨大なコンテンツを持つゲームのため、その評価も長文になることをお許し願いたい。なお、スクリーンショットについては主にPS3版を取り上げている。



■ リアル感とゲーム的楽しさを両立する絶妙なゲームバランス

 サッカーゲームの核心は、ピッチ上で展開される試合そのものの表現にある。本作のように見た目と動きのリアルさを重視する作品では特に、現実に即した表現、ゲームとしての楽しさの両方が求められる。

 その点で、本作は抜かりない仕事をなしとげている。選手同士の接触を物理演算ベースで行なう“インパクトエンジン”の導入を果たした前作「FIFA 12」をベースに、本作ではトラップ、ドリブル、コンピューターAIなどの点で大きく進歩。ゲーム展開の幅広さ、リアリティ、楽しさの各方面でさらなる上積みを果たしている。まずは主だった改善点の影響を見てみよう。

・“ファーストタッチコントロール”

ボールをどう受けるか?そこから次のプレイが決まる

 特に試合展開に違いを生み出しているのがトラップの要素だ。EAでは“ファーストタッチコントロール”と題してアピールするこの要素は、各選手がボールを受ける瞬間のコントロールに幅広い可能性が生まれたことを意味する。

 簡単に言えば、難しいボール、難しい姿勢でのトラップが様々な形で乱れる。前作以前では不自然なまでに上手にトラップするのが当たり前で、状況によらず一定の位置・距離にボールを置けた。それが本作では、ボールを受ける直前の速度、姿勢、またボールの質というものをしっかり把握することが重要になっている。

 もちろん、トラップのうまさは選手能力に大きく依存する。下部リーグのパラメーターが低い選手ならやさしいボールでもうまくコントロールできないことがあるし、トップリーグのテクニシャンなら強く早いボールをワンタッチで完璧な位置に置くことができる。

 隠れた効能として、選手のメンタル面のパラメーターも重要性を増している。次の展開を予測して動いているかどうかで、来たボールを良い姿勢で受けられるかどうかが決まるためだ。その一方で、時には思わぬコントロールミスが大チャンスにつながることもある。予想できないボールの動きに、ディフェンダーも騙されてしまうためだ。

 戦術理解が高くテクニシャン揃いのトップチームは、正確なパスとトラップで手堅いゲーム運びが可能だ。その一方でテクニックはそれなりだがフィジカルに優れるチームは、競り合い覚悟のロングボールに賭ける展開でゴールチャンスを掴む。“ファーストタッチコントロール”ただひとつの要素だけでも、各チームの特性がいっそう顕著に現われるようになったことは間違いない。


パスの出し方、パスの受け方という、サッカーの基本がより深く再現されるようになった。繊細な部分でプレイの質が問われる

・“コンプリートドリブル”

プレシジョンドリブルの操作で、細かくボールを動かしてキープできる

 前作までの時点で、「FIFA」には通常ドリブル、スロードリブル、ダッシュドリブル、スキルドリブル、プレシジョンドリブル、ノックオンと6種類のドリブル操作が存在した。今作でもこれは継承しているが、ストリートサッカーを題材にした「FIFAストリート」のフィードバックを生かし、さらに強化されている。

 これが“コンプリートドリブル”と呼ばれる改善点。アニメーションパターンを大幅に増やし、操作方法はそのままに各ドリブルの自由度をさらに増したというものだ。より細かいボールタッチを駆使できるだけでなく、特殊ボタンを使わない通常ドリブル操作だけでも多彩なドリブルが可能になった。

 これにより、ボールをキープしてタメを作ったり、わずかなスキマを作ってパスを通すといった幅広いプレイが試せるようになっている。緩急の使い分けもまた重要性を増しており、無理のない姿勢からのペースチェンジや方向転換は前作以上の切れ味だ。センスと知性がモノを言う、そういうドリブルシステムになっている。


対面してからのプレーに幅がある。ドリブルで運ぶ、DFをかわす、コースを作る。目的に応じたドリブル操作を選ぶことで、試合展開が迫真性を増す

・“アタッキングインテリジェンス”

AI操作選手がスペースを見つけ、抜け目なく走りこんでいく

 ピッチ内での表現においてトドメの一撃となるのが“アタッキング・インテリジェンス”と呼ばれるAIの改善だ。サッカーではオフザボールの動きで試合の大半が決まってくるが、本作ではAIがスペースを見つけて走りこむ動きや、パスを引き出す動きに大きな進歩が加えられている。

 AIは斜め方向へのカットインはもちろん、中に入ると見せて外、外と見せて中といった柔軟な動きも見せる。そこにあるスペースを使うだけでなく、スペースを作り出す動きも堂に入っていて、オフサイドにならないようラインを見極めた動きも見事だ。その賢さは前作以前とは比べ物にならない。

 これにより、プレーヤーがボールをしっかり保持して周りの動きをよく見ることの重要性が増し、頭を使ったプレイがより効果的になっている。チーム全体で相手を崩していく、サッカーの醍醐味が本作でさらに1段高いところへ昇華したと言えるだろう。


選手の走り込みが効果的になったぶん、よく狙いすましたスルーパスは切れ味抜群。いい形を作るためのお膳立ても重要だ

・AIの向上で対CPU戦もさらに楽しく

少なくない数をプレイする対CPU戦。多彩な展開を楽しみたい

 ひとりで対コンピューター戦を行なう場合、EAによって宣伝されていない部分でもAIの向上を実感できる。まず、AIはチーム特性によってプレイ方針を変えてくる。次に、得点の状況、時間帯によっても攻め方を変えてくる。前作以前の、どのチームとやってもある程度似たような展開になるAIとは一線を画す内容だ。

 例えば、前線に大柄な選手がいるチームならAIはロングボールを多用する。スピードに勝っていればどんどん攻め上がって数的優位を作ったり、裏狙いのパスが増加している。さらに時間帯によっても、例えばAIチームが試合終盤でビハインドを負っていれば、これでもかと大勢で攻め上がってきて前線に圧力をかけてくるのだ。これにはプレーヤー側もボール保持が危うくなるほどで、刺すか刺されるかといったハラハラドキドキの展開が楽しめる。

 サッカー的なリアリズムをさらに向上させつつ、ゲーム的な深み、面白さも同時に高めているという点で、本作はリアル系サッカーゲームとして新たな高みに上り詰めてきた感がある。これをベースとして、各種ゲームモードでさらに広がる楽しさが用意されているわけで、なんとも贅沢な話だ。


AIの進化でチームの個性が際立つ。5秒でゴールを脅かすレアル・マドリーの速攻は、対人戦でなくとも大きな脅威だ


■ひとりでも、多人数でも楽しめる遊びがそろい踏み

 サッカーゲームのプレイシーンで最も多いのはひとりプレイだろう。遊び方としては対CPUマッチ、キャリアモード、FIFAアルティメットチーム、スキルゲームと各種用意されているが、それぞれの進化点、ポイントをまとめてみたい。

・通常マッチが“EAS FC マッチデイ”として再誕

通常マッチに選手・チームの調子が自動的に反映される。リアルサッカーと合わせて楽しみたい

 サッカーゲームにはお約束の、任意のチームを選んで対戦できるオーソドックスなゲームモードは、今作で何か違うものに変貌しつつある。前作までは有料サービス(ライブシーズン)として提供されていたリアルサッカー連動機能が、無料のまま基本機能として統合された上、さらにグレードアップしているのだ。

 「EAS FC マッチデイ」ではまず、直近の試合でのパフォーマンスを踏まえ、各選手の調子がゲーム内に反映される。もちろん、デフォルトのチーム編成、フォーメーションなども直近の試合そのままに反映。昨日テレビで見た試合を、今日のゲームで遊べると思えばいい。

 そこまでは“ライブシーズン”にもあった機能だが、さらに凄いことに、「EAS FC マッチデイ」では、選択チームの今後数試合の対戦スケジュールもゲームに組み込まれている。つまり、好きなチームのリーグ戦予定を前もって体験できるというわけだ。

 例えばFCバルセロナなら、レビュー執筆時点で1.RCデポルティボ、2.ラーヨ・バジェカーノ、3.セルタ・ビゴ、4.RCDマジョルカ、という日程を即座にプレイできる。前もってプレイしておけば、リアルサッカーの観戦もいっそう楽しくなるに違いない。

選手の調子を確認して試合をプレイしたり、好きなチームの対戦日程をひと足早く体験することができる

・“キャリアモード”はUI改善+代表チーム収録

選手または監督、どちらかの立場で長いキャリアを楽しめるゲームモード

 選手または監督として十数年にわたるキャリアを体験できる“キャリアモード”は、本シリーズにおけるひとり遊びのメインコンテンツだ。今作ではインターフェイスが大幅に洗練され、サッカー独特のライブ感がひときわ強まっている。

 1日づつ進んでいくスケジュールの中で大型移籍やビッグマッチのニュースが飛び交い、自分自身が選んだ選手・チームに対してフロントからのメールも舞い込んでくる。メイン画面には必要な情報がうまくまとめられており、現在進行中のサッカーシーンを常に把握しながらキャリアに取り組めるところが特にいい。

 今作ではキャリアモード念願の国家代表チームも組み込まれた。日頃はクラブチームで研鑽を積みながら招集を待ち、見事代表に選ばれたなら一期一会の舞台で活躍を期す。クラブでも代表でもスタメンを張る一流選手になれたなら、試合によってはあえて力をセーブして体力を温存し天王山に備える。そういう遊び方にもきちんと意味があり、効果的にプレイしようとすればするほど、なりきり度も高まるという寸法だ。


A代表に呼ばれるべく活躍を重ねていく、新たな楽しみが加わった。自身のキャリアを続けていく中で、サッカーシーンの大きなニュースが次々に飛び込んでくるのも現実感があって楽しい

・やりこみゲームの“FIFAアルティメットチーム”

チュートリアル機能の搭載で、スムーズに始められる
試合をプレイすれば相応のコインを獲得。貯めてレアカードゲットを目指す

 GREE版の「FIFAワールドクラスサッカー」を遊んだことがあるなら、本作のゲームモード“FIFAアルティメットチーム”(FUT)が必ず気に入ることだろう。FUTでプレーヤーの財産となるのは選手・監督・その他のトレーディングカードだ。

 最初は“ブロンズ”クラスの選手カードでチームを作り、ゲーム内ストアでの購入やオークションハウスでのトレードを通じて“シルバー”、“ゴールド”グレードのカードをゲットし、次第にチームを強化していくという遊びだ。1ゲームモードながら、これのみでもひとつのゲーム製品として成立するほどの内容を持っている。今作ではUIが大幅に改善され、またチュートリアル機能も充実して非常に遊びやすくなった。

 ゲーム内ストアやオークションハウスでの共通通貨となる“コイン”は、FUT内での試合を通じて獲得。試合にはシングルプレイ・マルチプレイで遊べるトーナメントを始め多種用意されているが、特に今作で追加されたシーズン戦が熱い。1シーズン10試合を戦い、獲得した勝ち点によって残留・昇格・優勝が決まるというものだ。もちろん、より高いディビジョンに昇格し優勝を決めれば多くのコインやその他の特典が得られる仕組みだ。

 コインを貯めれば“ゴールド”クラスの選手カードを購入・トレードしてチームを強化できる。そこで重要なのがチームの“ケミストリー”だ。各選手カードには得意なフォーメーション、ポジションがあり、相性の良いカードを配置することで連動性を高めることができる。たとえ能力値の低い選手同士でも、“ケミストリー”が高いレベルにあれば試合での動きが一目瞭然のレベルで良くなるという仕組みだ。

 その他、選手の能力を底上げするトレーニング、負傷の治療、士気を上げる各種コーチやボール、スタジアムといったものも特殊カードとして存在しており、単に選手を集めるだけでなくマネジメント面も重要なゲームだ。監督的な立ち位置でそこをメインに楽しむなら、試合操作はパス・シュートのみを指示すればいい“2ボタンコントロール”を使って、戦略的に楽しむのもいいだろう。


選手やその他のカードは、コインを使用するゲーム内ストアや、プレーヤー間のオークションで手に入れることができる。次第にチームを充実させながらコインを集め、より高いレベルの試合に挑戦していこう

・初心者から上級者まで手応え抜群の“スキルゲーム”

全8種類の科目に挑戦できる

 「FIFA」シリーズは長い歴史の中で多彩なドリブルとキック操作を導入してきた。結果として同時に使用するボタン数が非常に多くなっており、初心者には辛いゲームであることも確かだ。そこで今回、ビギナーを特に意識して実装されたのが“スキルゲーム”モードだ。

 このモードではパス、ドリブル、シュートなど全8種のお題に沿って、初級から上級までのチャレンジをクリアしていくという内容になっている。例えばドリブルなら、ポールやコーンが設置されたコースをできるだけ速く正確に走破すると好スコア。パスやシュートなら的当てゲームの要領だ。

 上級のチャレンジではディフェンダーも登場し、相手の動きをきっちり見ながらコースを突くような、実際の試合にも通じる技術を磨くことができる。ロブパスの上級チャレンジであるフットボールテニスもなかなか楽しい。DF2人に追いかけ回されながらのシュート練習は手に汗握る。サッカーのまた違った楽しさを、これでもかと見せてくれるのがこのスキルゲームなのだ。


好スコアを獲得するためには、正確な操作、広い視野、ボール扱いのセンスが必要だ。本作の操作システムを基本から学べるチュートリアル的な役割もあり、初心者にもありがたいゲームモードになっている


■ オンライン派を惹きつけて止まないゲームモード

 オンラインでフレンドや世界のライバルと競い合えば、サッカーの楽しみはさらに深まっていく。本作ではほぼすべての要素がオンライン要素と連動する作りになっているが、マルチプレイに特化したゲームモードではその真骨頂を体験できる。

・ペアプレイにも対応した“FIFAシーズン”

シーズン戦では勝ち点を競って試合を戦っていく

 前作に引き続き搭載されたオンラインのシーズンプレイは“FIFAシーズン”としてさらに強化され、遊びやすさ、やりがいの双方が高まっている。このゲームモードは、任意のチームを選び、10試合で構成されるシーズンを通して勝ち点を積み上げ、10ディビジョン制のリーグで残留・昇格・優勝を目指すというものだ。

 今作では、旧作のオンラインマッチで利用できたペアプレイ機能が実装された。ローカルで2つのコントローラーを使い、2人で選手操作を分担しながら試合ができるという機能だ。また、各シーズンの昇格ラインのさらに上にディビジョン優勝ラインが追加され、昇格を決めてからも白熱の試合を続けることができる。

 もちろん、最高位はディビジョン1でのリーグ優勝だが、各ディビジョンで獲得したトロフィーも“トロフィーキャビネット”に並べられるので、実力の範囲内で目指せる目標に具体性が増した。このようにちょっとした要素だけでも、勝ち点を争う各試合への意気込みが変わってくるものだから、不思議なものだ。

 また前作では弱点だった、チームマネジメントの不便さも解消されている。プレーヤーがカスタマイズしたチーム編成・フォーメーション・戦術は、現実の移籍などにともなうオンライン編成データの変更が加わるまでは保存されるため、いちど設定しておけば決定ボタンを連打するだけですぐ理想的な編成で試合を始めることができる。これはありがたい。


シーズンを戦い、優勝ラインを超えてカップを獲得。トロフィーキャビネットに集まっていく栄光の証を楽しみながら、次なるシーズンに挑戦だ

・22人オンラインプレイは“プロクラブシーズン”へ

最大22人でプレイできるオンラインクラブ。人間同士ならではのチームプレイを楽しむ

 多くのコアファンが「FIFA」シリーズをプレイする理由は、“プロクラブ”の存在だ。各プレーヤーが選手ひとりの操作を担当し、最大22人でピッチ上を駆けまわる。仮想サッカー体験として、これ以上のものはないかもしれない。

 「FIFA 10」で22人対戦が実現してからというもの大きな変更は無かった本モードだが、今作ではシーズン戦が導入された。“FIFAシーズン”と同じく10ディビジョン制で、オンラインで結成されたクラブ同士で勝ち点を競い合う。勝利目標が具体化されたことで試合はさらに引き締まり、また、自分たちの実力程度も測りやすくなったというわけだ。ネットワークラグも前作に比べ軽減されている印象があり、各試合で力を出し切る準備は整った。

 もうひとつ大きな変更点は、プロクラブに参加するバーチャルプロの仕様だ。プレーヤーの分身となるバーチャルプロの成長度合いはオンラインに保存されるようになり、ローカルデータの書き換えで最強選手を作るようなインチキが根絶された。また、今回からクラブ用バーチャルプロはクラブマッチもしくは個人単位でランダムマッチに参加する“ドロップインマッチ”でしか成長しない仕様となり、オフラインマッチやフレンド等との出来レースで急速に成長させることは不可能になっている。

 これらの変更により、バーチャルプロはプレーヤー自身が試合でどのように振舞ったかをより反映して成長していく。前作以前のように完全無欠の選手を育て上げることはほぼ不可能である一方、それぞれの得意ポジションに応じた個性が出るというわけで、各試合での取り組みにいっそうのやりがいを与えてくれることだろう。


オンラインクラブ用のバーチャルプロは、キャリアモード向けとは別モノになった。オンラインプレイによってしか成長しないため、実地でのプレイ経験がそのまま選手の個性につながっていく

・さらに遊びの幅を拡げてくれる“EAS FC”

EAS FCのゲーム内ストア。プレイに応じて得られるクレジットで買い物ができる

 “EA Sports フットボールクラブ”、すなわち“EAS FC”は、「FIFA」シリーズ全体にまたがって実装されたオンライン・コミュニティ機能だ。前作同様にフレンドランキング機能、サポートチームランキング機能をはじめ、直近のドラマチックな試合からピックアップされる“チャレンジ”など、リアルサッカーとゲームコミュニティの連動がメインに据えられている。

 さらに今作では、独自通貨“EAS FCクレジット”が導入された。このクレジットを使えば、各ゲームモードにおける様々な特典をアンロックすることができる。例えばFUTコインの一定期間ブースト、FIFAシーズンの追加試合・引き分け権(勝ち点1)、バーチャルプロの能力値の底上げ、その他クラシックユニフォームやボールなどなどだ。

 クレジットを獲得するには、本作のどのゲームモードでもよいので試合をプレイすればよい。そのほか様々なアクションを行なうことでクレジットが付与される仕組みになっているので、夢中になって遊んでいるうちに結構な額が溜まっているというタイプのものだ。

 クレジットと同時に貰える経験値によってプレーヤーレベルも向上していき、それに応じてEAS FCで購入できるアイテム数が増えていく仕組みもあるので、本作のプレイにいっそうのやりがいが生まれてくる。ちなみに、プレーヤーレベルは前作時点のものが引き継がれるので、これまで本シリーズをやりこんできた人ならいきなり大量のEAS FCアイテムにアクセス可能だ。


EAS FCで連日楽しめるフットボールチャレンジ。現実の試合のドラマを再現して経験値とクレジットを獲得できる


■ 選べるなら、どのプラットフォームで遊ぶべきか?

 冒頭でご紹介した通り、「FIFA」シリーズは多数のプラットフォームに展開している。特に今作では各プラットフォーム毎に独自色を打ち出しているので、プレイ環境を選べるプレーヤーにとって、どのバージョンを遊ぶかが悩ましい選択だ。そこで参考のため、フラッグシップバージョンであるPS3/Xbox 360/Windowsそれぞれのメリット・デメリットについて簡単にご紹介しておこう。

・プレイステーション 3版

 国内ではメインプラットフォームとみなされ、プレーヤー数が格段に多い。オンラインマッチで国内プレーヤー同士の対戦に困らないのが特に大きなメリットだ。ソニーの協賛により毎年開催されている“FIFA インタラクティブワールドカップ”に連動したマルチプレーヤーモードも搭載。今作ではこちらもシーズン戦形式で提供される。また今作ではPlayStation MOVEに対応し、ボールの運び先やパス・シュートの狙いをポイントして直感的にプレイできるゲームモードが収録されている。

 弱点としては、人口が多いぶんオンラインプレイでマナーの悪いプレーヤーに接触する機会が多くなること、また、HDDインストールが可能なXbox 360/Windows版に比べてロードが遅いという点が挙げられる。特にマネージャーモードの進行の遅さは大きなストレス要因だ。

・Xbox 360版

 オンラインサービスの品質については軍配が上がるが、国内のプレイ人口が少なめで、海外プレーヤーとのマッチングが多くなるのが弱点。とはいえ、アジア・北米のプレーヤー相手であれば気になるほどのネットワークラグはない。ロシア・欧州・南米プレーヤーとのマッチングで問題を感じる程度だ。多くのフレンドに囲まれていれば、オンラインプレイで不便を感じることはないだろう。

 また、HDDインストールが可能なため、PS3版に比べてロードが速いのがメリット。ゲームの節々でディスクアクセスが発生するゲームであるだけに、レスポンスを重視するシングルプレイ志向のプレーヤーなら一考の価値がある。なお、発表当時はKinect対応が話題となっていたが、これについてはローカライズが行なわれておらず、残念ながら国内版は未対応となっている。

・Windows PC版

 Windows PC版は前作「FIFA 12」から他のプラットフォームと同等のバージョンが提供されている。ただし国内では英語版での提供のみとなる。非公式の日本語化データは存在するが、公式のものはない。PC版の最大のメリットは動作の軽さ。多少古くてもそれなりのビデオカードを搭載したPCであれば数百fpsで動作し、映像品質もピカイチ。ノートPCでも全く問題なしだ。さらには全プラットフォームの中でロード時間がダントツに速い。SSD搭載PCなら試合前のロードも一瞬だ。マネージャーモードやFUTがサクサク進み、快適で仕方がない。

 最大の弱点はプレーヤー人口の少なさ。オンライン対戦は大抵海外プレーヤーとのマッチングになる。EAのPCゲーム販売システム「Origin」の認知度が高まれば、価格も4,800円とPS3/Xbox 360版と比較してもかなり安いため、こうした状況は良くなりそうではあるが、現状ではクラブマッチでディビジョン1まで上がると対戦相手の確保にすら苦しむことになる。なお、PCであるためゲームコントローラーは幅広く選べるが、Windows向けのXbox 360コントローラーかロジクールのRumbleシリーズがオススメである。



■ 細かい不具合の多さは懸念点。Wii U版にも期待

 豊富なゲームモードの搭載で、非常に贅沢なサッカーゲームとなった「FIFA 13」。それぞれのゲームモードが単独で1年は遊べる内容と深みを持っているだけに、本作の隅々まで遊びつくすのはまず不可能と思えるほどだ。これに比肩するコンピューターゲームはそうそう見当たらない。サッカー好きのゲームファンなら選んで間違いのないタイトルだ。

 しかしながら、過去にも何度か触れたように、「FIFA」シリーズには、日本代表やJリーグが収録されていないことは国内サッカーファンにとっては残念ではある。これについては国内売り上げが増加してライセンス費をペイできるようになるまで解決しなさそうだ。ただ、海外リーグでプレーする主要な日本人選手については大半が固有フェイスが採用されるなど、日本のファンに向けてのコンテンツは少しずつ充実しつつある。

 その一方で気になるのが、細かい不具合の多さだ。特に筆者がよくプレイするオンラインクラブがらみで、マッチングが失敗したり、しばらく試合準備ができない状態になったり、突然のクラッシュに見舞われたりと、頻度はそれほどでもないが酷い経験をしている。

 そのほかにも、FUTをプレイ中にEAサーバーへの接続が突然失われてゲームが中断したり、キャリアモードをセーブして再開しようとしたらクラッシュしたりと、現状ではオンライン要素を中心にクリティカルな不具合も散見される。例年の傾向として、こうしたクリティカルな不具合は通年で行なわれるアップデートを通じて次第に解消されていくのだが、まず発売時点でもう少し何とかならなかったのか、というのが正直な感想だ。

 不具合の解消と平行して、今後の展開として特に期待したいのはWii U版だ。12月8日の本体と同時発売が予定されている「FIFA 13」Wii U版では、Wiiリモコンでの直感操作に加えて、Wii U Game Padを使った全く新しい遊び方が実現される模様だ。

 Wii U PROコントローラーを使えば従来のPS3/Xbox 360/Windows版と同等のハードコアな遊び方も可能で、初心者から上級者まで幅広い層が満足できる、「FIFA」シリーズの集大成的な存在になりそうである。

 筆者としてはWii U版にも期待しつつも、いちはやく「FIFA 13」をプレイしたいため、現行プラットフォームでガッツリとプレイしつつ12月を待つことにしてみたい。サッカーファン、ゲームファンの皆さんも、まずはPS3/Xbox 360/Windows版で本格サッカーゲームの世界に飛び込んでみよう。


【スクリーンショット】

Amazonで購入

(2012年 10月 18日)

[Reported by 佐藤カフジ]