「Gears of War」と「Gears of War 2」の2作品で世界累計1,200万本を達成した「Gears of War (GoW)」シリーズが、ついにひとつの終章を迎える。米Epic Gamesによる本作は、惑星セラを舞台とするTPS 3部作の完結編として、細部まで丁寧に作りこまれた作品となった。
2005年にリリースされた初代「GoW」で生み出されたショルダー視点のTPSシステム、カバーリングを重視した戦闘スタイルは、本作でも変わらず堅持されている。それでいて、レベルデザインや敵の行動パターン、新たな武器特性などの微調整の積み重ねなどにより、本作のプレイフィールは初代作とはずいぶん違う。
「GoW」シリーズの持つ雰囲気……筋骨隆々の男たちがパワフルに動きまわり、銃と近接武器を巧みに駆使して敵をなぎ倒していく。これをそのまま、ユーザーが期待するアクションシューターの痛快感をさらに追求し、望みうる最高のレベルにまとめあげたのが本作だ。これまで本シリーズのゲーム性が口に合わなかったプレーヤーでも再考の余地がある。ぜひ1度試して貰いたいシューターだ。
■ 少しの新要素と多くのブラッシュアップが時に傑作を生む
シリーズを通じて守られてきたTPSアクションがさらにブラッシュアップ |
身をさらけて戦うシーンが増えて爽快感向上 |
これが新種の敵「ランベント」の一種 |
近接攻撃の機会がグッと増えている |
本作「GoW3」は、シリーズ作品としては比較的に保守的な進化を遂げている。ゲームの基礎をなすキャラクターのアクションや、その他の基本的なゲームメカニクスに、前作あるいは初代作からの大きな違いはない。Aボタンを押してカバーポジションを取り、身を隠しながら敵を倒していくという基本スタイルは同じだ。
しかしそれと同時に、ゲーム全般を通じて、完成度を高めるために施された配慮は数え切れないほど多い。キャンペーンモードで言えば、わかりやすく、プレイ意欲を盛り上げこそすれ邪魔することのないシナリオ、より爽快感を増した戦闘、などだ。
特にキャンペーンモードのゲーム性を高める点で貢献しているのが、戦闘のテンポが作品のイメージ通りに高められたことである。従来作では、敵と味方と同時にカバーポジションをとり、そのまま膠着して、カバーからはみ出た背中や腕をチクチク精密射撃するような地味なプレイに終始してしまう傾向が見られ、その繰り返しがプレーヤーを辟易させることもあった。しかし今作では多くのシーンでカバーがより少なくなり、敵がさらに積極的に運動するため、全身を露出して正面から撃ちあうシーンがかなり増えた。
また、敵の背後を取るルートが随所に用意されているため、プレーヤー側も積極的に動いて敵をどんどん撃破していくプレイスタイルが奨励されている。また、カバーリングを基本としたゲーム性を否定するほどには極端ではないが、敵も多くの隙を見せるようになっているため頻繁に近接戦闘が発生する。そこで、「ランサー」のチェーンソウや、新武器「レトロランサー」のランスチャージの出番がぐっと多くなっているのだ。
そのおかげか、作品全体を通して、遠距離、近距離の武器をバランスよく使っていくシチュエーションがうまく構築されている。勢い1シーンに登場する敵の数も増えて、「GoW」の雰囲気に期待する、血みどろでスピード感に溢れたゲーム性が高められている。新タイプの敵種族「ランベント」が、倒す度にドカーンと爆発するのも爽快だ。
また、フルプライスのパッケージゲームに求められるボリューム感も、本作はシリーズ最大規模だ。全5章で構成されるキャンペーンモードはそれだけでも15時間程度のプレイ時間があるが、ロケーションやシチュエーションが豊富で間延びすることがない。近接武器「リーパー」や、必殺の狙撃武器「ワンショット」など新武器、あるいは新タイプのローカストなど新要素が良いアクセントとなって、心地良くプレイを続けられる。
また、そのキャンペーンモードは最大4人で協力プレイがサポートされているほか、マイナーチェンジが加えられた対戦モード、前作から大幅に戦略要素が加えられた「HORDE」モード、そして新登場の「BEAST」モードと、オンラインで繰り返し楽しめる要素も豊富。そのどれもがしっかりと作りこまれて、ガッツリと楽しめるものになっている。
正直に告白すると、筆者は前作「GoW2」あたりで、本シリーズのゲーム性は一定の完成を見たのかな……とどこか冷めた目で見る部分があったのだが、本作をプレイして認識を改めるに至った。本作は、シリーズの基本システムが持つ面白さをもういちど再発見させ、また別の角度でも楽しませてくれる。やはり、「GoW」は面白いゲームだ。
本作の一番の新要素である、新種の敵「ランベント」。倒す度にドカーンと爆発。近くで倒すと危ないが、撃破時の爽快感に拍車をかけてくれる |
■ 怒涛の勢いで、しかしわかりやすく、多数のロケーションで進行するキャンペーン
冒頭、通信士官だったアーニャによる報告という形で過去の歴史が語られる |
戦艦ソヴリンズの艦上にあるマーカス一行 |
コールたちは街に補給物資の調達へ出かけている |
メインゲームのひとつであるキャンペーンモードについてもう少し詳しくご紹介しておこう。本作では前作のラストから2年後を舞台として、主人公マーカス・フェニックスらデルタ部隊の活躍が描かれる。
3部作の締めくくりを飾る作品であるということで、シナリオの演出には相当の力が入れられている。それも、単にカットシーンが多いとか派手だという意味ではない。それ以上に、プレーヤーに対してわかりやすく伝わるように構成されているのだ。
「GoW」の舞台である惑星セラで何が起き、今、主人公たちが何を目指して戦っているのか。本作の冒頭となる第1章では、戦艦ソヴリンズ上にあるマーカスらと、ハノーヴァーの街に補給物資を調達しに行っているコールらの2グループの活躍がそれぞれ別視点からプレイきるようになっており、ゲームプレイを通じて大局的な状況が理解できるようになっている。
冒頭よりたくさんの戦闘、その合間に沢山のカットシーンという構成は前作同様だが、そのペースの速さは前作以上。テンポよく次々に新しいロケーションと状況が現れて、怒涛のようにゲームが進んでいくように印象させられる。視点を変えつつ丁寧に描かれるシナリオのおかげで、前作までのようにセリフひとつを見落としただけでゲームに「置いてけぼり」にされることもない。
今作から登場する「ランベント」という敵や、新種のローカストとの戦いもいいアクセントになっている。ランベントは、惑星セラの地下深くにある「イミュルシオン」という特殊な物質の影響で凶暴化したローカスト。知能はローカストより低いようだがより凶暴で、打撃を受けると手足や胴体が伸びたりと気持ち悪いパワーアップをする種類も居る。例外なく死ぬと爆発し、近接攻撃で倒そうものならこちも手痛い打撃を受けてしまう。
ローカストもまたランベントに追いやられて地上に出てきており、なかには難民キャンプに住み着いたローカストも居る。また、序盤を過ぎてからは地面から土煙を上げて突然ボーンと飛び出てくるローカストの群れもいて、独特の緊張感を与えてくれる。
前作以前に比べ、かなりオープンな地形が増えたことも今作の特徴だ。カバーリングポジションをほとんど取れないような場所で戦うこともざらで、そんな場所でローカストがボーン、ボーンと飛び出てくるものだから、勢いオープンフィールドでの壮絶な撃ち合いになる。こういった味付けがうまく効いて、キャンペーンモードは進めていくほどに「次はどうなるのか」とワクワクさせてくれる。
凶悪なランベント。基本的にキモいl。触手を伸ばしたり、本体を倒してもパーツが生きていたり、やたら巨大で大味な攻撃を加えてくる奴もいる | ||
ある意味進化したローカストを始め、異なる種類の敵や、様々なロケーションがゲームのテンポを心地良いものにしている。特に地面からドーンと発射されてくるローカストは一見の価値あり |
プレーヤー部隊は常に4人編成だ。全方向に警戒できる |
各所の協力アクションはチームの再合流を促す |
また今作のキャンペーンモードで重要な要素となっているのが、「常に4人単位で行動する」というフィーチャーだ。4人COOPをサポートするための仕様でもあるが、それだけではない。前作ではマーカスとドムが2人で行動するシーンが長かったが、本作では常に4人単位のチームで行動することで、ゲーム性にも大きな変化がある。
まず、1度に戦う敵の数がかなり多い。グループを離れてプレーヤーが単独で戦おうものなら、あっという間に敵に囲まれ倒されてしまうこともしばしばだ。逆に言うと、プレーヤーがきちんとグループの中で行動すれば、仲間がサポートしてくれるためあまり上手にプレイできなくても先に進むことができる。
つまり4人制システムはプレーヤースキルの不足を補う役割も果たしている。もちろん、あなたが上手なプレーヤーなら敵をどんどん撃破して、グループには背後を任せ、先に導いていけばいい。
AIが仲間の操作を担当してくれるシングルプレイではそういった感じだが、複数人でプレイするCOOPでは、腕自慢のプレーヤーがバラバラに行動することになるかもしれない。ただ、時折存在する協力アクションシーンのおかげで、常にプレーヤー同士が再合流する機会が与えられている。
例えば消化器で火を消しながら進む、2人で力を合わせて扉を開ける、などである。こういったシーンでは全員が1箇所に集まらなければ先に進むことはできないようになっている。
そして、シングルプレイ、協力プレイのどちらでも、仲間の誰かが倒れたらゲームオーバー。常に全員の状況を把握して、ダウン状態になっている仲間がいれば助ける、という行動も必要だ。このように本作では、4人のプレーヤーが常に一蓮托生となるようゲーム全体がデザインされており、協力プレイが単なる撃破数競争になることを仕組み的に抑制している。
これがいいか悪いかは別として、協力プレイモードなんだからお前ら協力しろ、というゲームデザインだ。初心者と上級者が混ざってプレイする際に、互いのプレイレベルの違いから孤立して協力が成り立たない、といった他のゲームではありがちな現象が原理的に起こらないという点では、よくできた仕様になっていると言えるだろう。
キャンペーンモード内で流れる「シナリオ内の時間」は、実はけっこう短い。それを複数の視点で描くことにより、わかりやすく重厚なストーリーラインが表現されている。豊富なロケーションもゲーム性に変化を与えてくれる |
■ 新仕様のTDM、そして「HORDE」と「BEAST」。充実のオンラインモード
復活制となったTDM。より速いテンポでアクションを楽しめる |
マップレイアウトが確認できるようになったのも嬉しい配慮だ |
本作の各種オンラインモードはキャンペーン以上に長く深く遊べそうだ。オンライン専用のモードとしては大別して「対戦」、「HORDE」、「BEAST」の3モードが搭載されている。
対戦モードはプレーヤー同士で戦う趣向で、「TEAM DEATHMATCH(TDM)」、「WARZONE」、「EXECUTION」、「CAPTURE THE LEADER」、「KING OF THE HILL」、「WINGMAN」の各ルールが存在する。各モードの最大参加人数は共通して10人、5体5で競う内容となっている。「WINGMAN」のみ2人チーム制で最大5チームで対戦だ。
これら各種ルールの内容については前作「GoW2」と同様なので触れないが、「TDM」だけは大幅な改修が施され、より楽しいゲーム内容が実現されている。
変わったのは復活のシステム。前作までは1ラウンド内でプレーヤーが倒されれば即観戦状態となり、ラウンドが終了するのを待つしかなかったのだが、今作では各チーム毎に15回の復活が可能となって、倒されても続けて戦えるようになったのだ。
復活回数はあくまでチーム毎だ。1人のプレーヤーが15回復活しても、5人のプレーヤーが3回づつ復活しても、復活回数0になって以降の復活ができなくなる。その状態で全員が倒されればラウンド終了だ。
このおかげで1ラウンドが従来よりも長丁場になり、早くても5分、たいていは10分弱程度、休むことなくアクションを楽しむことができる。前作までは倒されるばかりだった人でも、これならチャンスを見つけて敵を倒せる機会が増えるだろう。これは非常に大きな改良だと思う。
TDMで対戦。迫撃砲が置いてある場所の奪い合いになりやすいので、シンプルに突撃すると死にまくる。待ち伏せや別ルートからの奇襲を活用して、敵の裏をかこう |
ローカストとなってプレイできる「BEAST」モード |
近接攻撃型のローカストの破壊力は大味なまでに強力。一撃で2、3人倒せることも |
そして、本作で大きな攻略対象となっているのが「HORDE」と「BEAST」の2モードである。「HORDE」は前作で実装されたモードで、WAVE単位で押し寄せるローカストを撃退して、できるだけ多くのWAVEを生き残ることを目指すゲームモードだが、バージョン2.0への大拡張で戦略性が大幅に増した。「BEAST」はその逆で、各WAVEをローカスト側としてプレイし、防衛する人類を打ち倒すというルールである。
「HORDE」で拡張されたのは各ラウンド間における「陣地構築」の概念だ。マップ中の各所にはバリケードや自動タレットを配置できるポイントがあって、敵を倒してWAVEをクリアすることで得るクレジットを使って設置、強化していくことができる。これによってタワーディンフェンス系ゲームに近い戦略性が加味されており、非常に攻略のしがいがある。シューティングスキルに恵まれないプレーヤーでも、知恵と工夫次第で大きく成績を伸ばすことが可能なのだ。
「BEAST」モードでは、同様のルールを逆の視点でプレイすることになる。プレーヤーはローカストとして人類を全て倒すことを目標とするのだ。ルール上大きな特徴となっているのが厳しい時間制限。初期状態で60秒しか残り時間がなく、0秒になるとドーンハンマーが発動して全てのローカスト(プレーヤー)が死ぬ。そのかわり、人類を倒す度に数秒~10秒程度のの追加タイムが得られるので、とにかくガンガン攻めて倒しまくるというプレイが要求されるのだ。
こちらもWAVE単位の進行となっており、WAVEをクリアしていく毎に人類側の防衛体制が万全になっていく。人数が増え、各所にバリケードが張り巡らされ、タレットが火を吹き、やがてはパワーローダーまで装備し始める。その上、ヒーローキャラとしてマーカスを始めメインキャラたちが登場しはじめる。彼らはブームショットの直撃ですら耐える体力があるため厄介なことこの上ない。
対するローカストであるプレーヤーは、人類を倒して稼いだクレジットを使って、復活時に好きなタイプのローカストとして出現できる。これが本モードの一番面白いところで、各ローカストの能力が全く異なることから、独特のチームプレイが生まれてくるのだ。
通常タイプのローカスト兵士に、自慢のブームショットを装備したブーマーから、強烈で大味な一撃で近接した敵を粉砕するブッチャーに、モーラー。さらには節足動物サベッジコープサーやクモ型ローカストのジャイアントセラピード。果ては最強戦士のバーサーカーまで。傾向的には、遠距離火力型と近接攻撃型に別れており、前者は打たれ弱く後者は滅法打たれ強い。
これらローカストの特殊な力をプレーヤー間で分担し、いわばMMORPGのパーティような形で、タンク役とDPS役とで連携して戦うというわけだ。WAVE毎における人類側の装備内容、陣地の防衛施設の具合によっても戦略が変わってくるため、単に全員バーサーカーでいいということにはならない、面白いゲーム性が提供されている。
このように本作のマルチプレイモードは戦略性も高く、長く楽しめそうな大充実の内容だ。オンラインゲームライクなイベントスケジュールもあり、期間限定で各モードに変化が訪れる要素も備えられているため、当分のこと多くのプレーヤーを満足させてくれることだろう。
個々のローカストは強力だが、準備万端構えてくる人類の防備の前には脆弱だ。特徴を生かしてチームプレイを図ることが攻略の糸口になっている |
■ ストーリは完結。ゲームとしても完成。理想的な3部作の集大成
マーカス達の運命やいかに。ストーリーの結末はぜひ自分の目で見ていただきたい |
ご紹介したように「GoW3」はキャンペーンモードとオンラインモードの両面で、非常に質の高い遊びを提供する作品となった。それがシリーズ本来のテイストを最大限に高めた結果なのだから、まさに理想の完結編といえる。
2005年末に登場した初代「GoW」は、ショルダー視点のTPSシステムという点で新ジャンルを切り開き、世界に驚きと感動を与えてくれた。しかし初代作ならではの粗さもあり、各所に大味さが目立ち、シナリオも理解しづらいなど、様々な弱点もあった。
続く「GoW2」では、グラフィックスのリファイン、演出やシナリオのボリュームを向上させると同時にマルチプレイモードも大幅に拡張し、同ジャンルの世界を大きく広げてくれた。しかしまだ、そのプレイフィールには初代に見られた大味さや、噛みあわせの悪さが残っていた。
そして今作では基本システムを墨守しつつも、レベルデザインの工夫や丁寧な演出、敵キャラクターの挙動といった、ゲーム性チューニングに属する面での多大な努力を通じて、「GoW」本来の面白さを100%発揮するようになっている。これにて本シリーズは本当の意味で完成したと見ていいだろう。
本作は冒頭でシリーズの歴史が語られる場面もあり、単体でも十分に楽しめる作品となっている。これまで「GoW」シリーズを敬遠していた人たちも含めて、多くのゲーマーに一度プレイされることをお勧めしたい。
(2011年 9月 21日)