Epic GamesのゲームクリエイターCliff Bleszinski氏は、北米を代表する若手ゲームクリエイターのひとりである。「Gears of War」シリーズの成功で一躍スターダムにのし上がった人物だが、非常に気さくなナイスガイであり、メディア受けも良い。

　今回もインタビューの冒頭で「Xbox 360 Media Briefing」に参加していたことを告げると、「じゃあデモは必要ない。全部Q&Aにしよう」と少しでも多くの質問に答えられるように配慮してくれた。

　彼が手がける「Gears of War」シリーズは、Epic Gamesの「Unreal Engine」の最新バージョンが使用できることに加え、Microsoft Game Studiosの全面的なバックアップも受けられるなど、非常に有利なポジションにあるフランチャイズだが、その立場に甘んじることなく丁寧にインタビューに応じてくれる彼の態度は非常に好感が持てる。個人的に“名前買い”したくなるゲームクリエイターのひとりである。

　インタビューに入る前に最新作である「Gears of War 3」について簡単にまとめておきたい。「Gears of War 3」はEpic Gamesが手がけるXbox 360独占タイトル。発売時期は2011年4月5日（日本では4月7日）を予定しており、E3からまだしばらく先であるため、試遊台は用意されていなかった。ナンバリングからもわかるようにシリーズ第3弾にしてトリロジーとして完結編となる。発売時には日本でも大いに盛り上がりそうだ。

【Gears of War 3】
グラフィックスもアクションも、そしてモンスターもすべて大幅にパワーアップしているのがわかる

■　女性キャラに、新武器、「Beast Mode」。前作で人気の「Horde Mode」は“まだ秘密”

Epic GamesのゲームクリエイターCliff Bleszinski氏。

今回のデルタ部隊。お馴染みの面々に加えてついに女性も戦場に立つことになる

Cliff Bleszinski氏：　今年のE3はメディアの皆さんから見てどうですか？

編：　「Crysis 3」や「KILLZONE 3」といった大型タイトルが続々と3D立体視への対応を表明したことがひとつの特徴だと思います。そこで質問したかったのですが「Gears of War 3」は3D立体視には対応しないのですか？

Bleszinski氏：　今のところはまだ3D立体視はテクノロジーとしてうまくいってないと思うので、そこが解決すればやりたいと思っています。

編：　それは、たとえば、目への負担がまだ大きいとか？

Bleszinski氏：　確かに「アバター」を見たときには目が疲れましたね（笑）。3D立体視については我々はまだ取り組んでいませんが、将来的には様子を見ながらやっていきたいと思っています。

編：　「Gears of War 3」の前作からの強化点を教えてください。

Bleszinski氏：　パワーアップは多岐にわたります。ゲームプレイ、照明効果、さらに女性キャラクターの登場などいくつもの点があります。その中でも重要なのは4人でのCo-opモードですね。これはストーリーベースなので、4人それぞれのキャラクターのストーリーに沿ったプレイが楽しめます。つまり、今回の「Gears of War 3」では4人の主人公が登場します。環境や展開に応じて、プレイするキャラクターが変わっていきます。また、ストーリーモード以外に「Beast Mode」という新しいゲームモードが追加されます。「Beast Mode」ではローカストや、他のモンスターとなって戦う、といったことができます。

編：　今回、2人の女性キャラクターが登場しますが、なぜ女性キャラクターを追加したのでしょうか？

Bleszinski氏：　「Gears of War」シリーズの戦争は、もうギリギリの状態、人類は窮地に立たされているという状況です。これまで女性は雑役や、後方支援などを行なっていましたが、女性も銃を持って前線に向かう、という人類存亡の危機になってしまったのです。このため、プレーヤー達が戦う最前線にも女性兵士が登場するのです。

編：　男性キャラクターと、女性キャラクターで能力的な違いはありますか？

Bleszinski氏：　展開するストーリーは別になりますが、プレーヤーキャラクターとして能力に違いはありません。女性キャラクターも接近戦ではパワフルに戦います。ガンで撃ったり、武器で突き刺したり。もちろん人気のチェーンソーも登場します。今回も様々な武器が登場します。画面に映っているのは進化するより前の武器になっていますね。

編：　現在開発中の武器にはどのようなものがありますか？

Bleszinski氏：　「ディガーランチャー」といって手榴弾カテゴリの武器ですが、障害物の向こうにいる敵に向かって使うと、爆弾が地面を掘り進み、敵のところまで進んだら爆発するというものです。他にもダブルバレルのショットガン、さらに「ワンショット」という武器は、すごく大きな弾丸で、ローカストの巨大モンスターを1発で細切れにする大威力の武器です。外見はジャイアントライフルともいうべき重火器で、弾丸がとても大きいのです。

編：　新モードである「Beast Mode」についてもう少し教えてください。

Bleszinski氏：　Beast Modeは本来は敵役であるローカストの大きいモンスターから小さいモンスターまで様々なモンスターとしてプレイできるモードです。最大5人のプレーヤーが協力して、ローカストの一員として人類殲滅のために戦うことができます。人類キャラクターが敵となるモードで、「Gears of War 2」で登場した巨大モンスターや、「Gears of War 3」の新モンスターなど、ゲームに登場する様々なモンスターになって戦うことができます。

　中には自爆攻撃を仕掛ける小型モンスターや、蛇のようなモンスターなど種類は様々で、他のモンスターを治療できるヒーラーのような役割のモンスターもいます。「Gears of War2」では次々と現われるローカストとひたすら戦う「Horde Mode」というルールがありましたが、それのモンスター版と言えるものです。ただし、「Horde Mode」よりも掘り下げています。モンスターの種類、戦い方がより個性的になっているので、より個性的になっています。

編：　前作の「Horde Mode」は非常にエキサイティングでした。今作の「Horde Mode」はどういったパワーアップを遂げているのでしょうか。

Bleszinski氏：　「Horde Mode」についてはまだ未公開ですが、実装予定です。とても中毒性のある、エキサイティングなモードになる予定です。前回と同じ5人でのプレイが可能になります。

編：　Beast Mode、Horde Mode以外に、マルチプレイではどんな進化を遂げているでしょうか。

Bleszinski氏：　マルチプレイの部分で今あきらかにできるものはないのですが、シングルプレイではスコアを記録できるようになり、何度も挑戦してよりよいスコアを目指すことができるようになりました。

編：　マルチプレイは、オンラインとオフラインで一緒にプレイできるのでしょうか。

Bleszinski氏：　「Gears of War 3」では1つの画面で2人の同時プレイが可能です。ここにさらにオンラインでプレーヤーが参加することが可能です。

■　ついに三部作が完結！　「Gears of War 3」は世界を救うストーリーに

1番のウリはストーリーだというBleszinski氏

マーカスをバックアップ女性ふたり。彼女たちがストーリーにどのように絡んでくるかが注目されるところだ

編：　「Gears of War 3」のストーリーはどういったものになりますか。

Bleszinski氏：　前作から18カ月後の物語となります。新しいエネルギーによって生み出された敵のモンスター達により、人類は危機に瀕しています。前作で死んだと思われていた主人公マーカスの父は実は生きており、地球を救うためのメッセージをマーカスに届け続けています。マーカスは父を救うためにも仲間達と敵軍深く進んでいくのです。

　設定としては、物語の舞台となる「惑星セラ」が汚染され、滅んで行くのを食い止める、というものになっています。「Gears of War」が“バトル”だとしたら、「Gears of War2」は“戦争”、そして「Gears of War 3」は“世界を救う”というテーマになります。

編：　「Gears of War」シリーズは「Gears of War 3」で完結するのでしょうか？　また、ハッピーエンドがあるのでしょうか？

Bleszinski氏：　3部作として終了しますが、今後フランチャイズをどうしていくかは未定です。ハッピーエンドになるかどうかは、お楽しみ、というところですね。

編：　仮に「Gears of War 4」が今後発売されるとすれば、ストーリーも主人公も一新したものになるのでしょうか？

Bleszinski氏：　新しい展開になるとは思いますが、まだ具体的なことは話せません。

編：　「Gears of War 3」のUnreal Engineのバージョンを教えてください。

Bleszinski氏：　私は正確にナンバリングは知らないのですが、最新のものです。照明効果や、環境の数、セクシーなグラフィックス表現……木々の間から漏れる陽光など、これまで以上に美しいグラフィックス表現が可能となりました。

編：　新しいアクションは、どんなものが入っていますか？

Bleszinski氏：　「Gears of War 3」ではコンバットのアクションが充実しました。カバーに隠れる敵に向かい、それをよじ登って向こう側にいる敵をキックできるようになりました。「Gears of War2」では敵の背後から首締めができましたが、さらにナイフを突き立てたり……プレスカンファレンスで見ましたよね、様々なアクションができるようになったのです。

編：　今回、シングルモードをクリアするのはどのくらいかかるでしょうか。

Bleszinski氏：　まだはっきりと時間を計ってはいないのですが、「Gears of War2」と同じくらいになると思います。

編：　Bleszinskiさんにとって「Gears of War 3」の最大の魅力はどこでしょうか。

Bleszinski氏：　1つに絞るのはやはり難しいですが、やはりストーリーだと思います。クレージーなアクション、そしてグッと来る叙情的なシーンもあるので、満足してもらえると思います。

編：　「Gears of War2」ではたくさんの敵が画面に登場するというグラフィカル的な衝撃がありましたが、「Gears of War 3」ではそう言った驚きをもたらす表現などはありますか。

Bleszinski氏：　「Gears of War 3」では人間の腕が切断され、そこから変異した何かがグッと伸びて攻撃してくる敵がいるなど、モンスターの表現もパワーアップしています。

編：　最後に、日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。

Bleszinski氏：　いままでシリーズをプレイしていただいたユーザーさんには感謝しています。「Gears of War 3」はこれまで触ったことのない方にも魅力的なグラフィックスを実現していますし、遊びの要素も充実しています。是非チャレンジしてみてください。

編：　ありがとうございました。