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PSPゲームレビュー

王道かつ革新的
再構築された名作をPSPで手軽に!

「タクティクスオウガ 運命の輪」

  • ジャンル:シミュレーションRPG
  • 発売元:スクウェア・エニックス
  • 価格:5,980円(UMD版)
       4,980円(ダウンロード版)
  • プラットフォーム:PSP
  • 発売日:発売中(11月11日)
  • プレイ人数:1人
  • CEROレーティング:B(12歳以上対象)


 11月11日に発売された「タクティクスオウガ 運命の輪」だが、この記事をご覧になられているプレーヤー諸氏はもうクリアされた頃だろうか? 本作は1995年に発売されたスーパーファミコン用シミュレーションRPG「タクティクスオウガ」を、オリジナル版のスタッフらが「再構築」と銘打ち、不朽の名作を現代風にアレンジして復活させた決定版とも言うべきタイトルだ。

 だが、「シミュレーションは時間がかかるからなかなか手が出せない」、「リメイク物は内容が古臭い、またはオリジナル版を遊んだことがあるのでプレイする必要がない」といった理由で購入を迷っているプレーヤーもまだまだ多いのではないだろうか。そこで今回は、プレイしないとわからない本作の魅力を紹介していこう。二の足を踏んでいるプレーヤーはぜひ参考にして欲しい。



■ 「タクティクスオウガ」に関する基礎知識

 オリジナル版「タクティクスオウガ」は、本作のゲームデザイナーである松野泰己氏が手がける全8章立ての「オウガバトルサーガ」シリーズの第7章にあたる作品だ。「タクティクスオウガ」以外にも、1993年に発売された第5章にあたる「伝説のオウガバトル」や1999年に発売された第6章にあたる「オウガバトル64」などが存在するが、実は「オウガバトルサーガ」シリーズはまだ完結していない。ファンの間で何年もの間続編の発表が切望されている、いわば未完の大作なのだ。

 そんなオリジナル版は、15年という月日がたった今もなおプレーヤーの間で高評価を得ている。それほどに人気が出た理由として、誰しも思わずのめりこんでしまうほどに魅力的なシナリオと、それまではターン制が主流だったシミュレーションゲームというジャンルの中で、ユニットごとに行動順が回ってくるという「WT(ウェイトターン)制」という革新的なシステムを用いたということが挙げられるだろう。もちろんゲームとしての完成度も高く、自軍が強くなるほどに強力になっていく敵軍との難易度調整も素晴らしい。

 また、行動や選択肢で変化するマルチエンディング制の採用や、やり込み派にはたまらない高難易度のダンジョンなど、今日では当たり前のようになっている要素を先駆けて導入していた作品だ。現在に至るまで多くの人間を虜にしており、シミュレーションRPGというジャンルを日本のプレーヤーたちに知らしめた1本と言っても過言ではない。

 もちろん、これらは本作をプレイする上で必ず知っておかなければならない知識ではない。だが、もしプレイしていて興味が沸いたのなら、Wiiのバーチャルコンソールで上記3作品が配信されているので、世界観をより深めるためにも1度触れてみるといいかもしれない。

 さて、15年という長い歳月を経て蘇った本作だが、具体的にどのような部分が新しくなったのか。果たしてファンの期待に応え、なおかつオリジナル版未経験者でも楽しめるようになったのか。オリジナル版の歴史も知ってもらったところで、筆者が「ここはスゴイ!」と感じた部分を、項目別にまとめてみようと思う。

本作は「オウガバトルサーガ」の第7章にあたる本作では、ヴァレリア島の覇権を巡る民族紛争が物語の舞台となるが、その歴史が気になるプレーヤーは、ゲームを始める際のタイトル画面を放置することで見られるオープニングムービーで本作の冒頭に至る背景を知っておこう




■ その1:グレードアップしたシステムがスゴイ!

 「タクティクスオウガ 運命の輪」をプレイするにあたり、まず初めに気付いたのが、圧倒的なロード時間の短さだった。実は、筆者はUMD版でプレイしていたため読み込みを早くするデータインストール機能を利用していたのだが、中盤まで進めたあたりで自分が犯した大きなミスに気付かされた。そう、オプションでデータインストールを使用する項目をうっかりオンにし忘れていたのである。恥ずかしながらインストールしたくせにこの恩恵を受けずプレイしてしまっていたわけだが、それに気づく前でも読み込みに関して難を感じることはなかった。むしろ、データインストールなしでもかなりテンポよくサクサクと進んでいたことに本当に驚かされる。ロード時間によるストレスはほとんど存在しない。

 もちろん、データインストール機能を利用すればさらに読み込みは速くなる。ステージが進むにつれて、エキストラバトルなどで戦闘も増えてロード機会は増えてくる。容量に空きがあるならばぜひこの機能を使っていただきたい。

 また、ロード時間の短縮以外にもさまざまな形でプレイ環境の最適化が施されていると感じさせられた。たとえばイベントスキップなどもその1つで、ムービーやイベント中でも任意にスキップが可能だ。ストーリーを楽しむうえでは余計な要素かと思われるかもしれないが、何らかの理由で同じイベントを再度見る際などに非常に便利であり、1度見たイベントをもう1度見なければいけないといった煩わしさから開放されるのは嬉しい。

 本作は前述の通り、敵軍・自軍ごとに交代で攻撃順が回ってくるターン制ではなく、フィールド上に存在するユニットのWTの値によって、敵軍・自軍関係なくAT(アタックターン)という行動順が決まるシステムを採用している。今作では画面下部に全ユニットの行動順が表示されるため、WTの推移が視覚的にわかりやすくなった。今、操作しているキャラクターの何手後に敵が行動するかということが瞬時にわかるため、これは戦術を組み立てるうえで非常に有効な要素と言えるだろう。

 また、ドットで描かれていたオリジナル版の雰囲気を保ちつつもグラフィックスは大幅に進化しており、オリジナル版の見た目から変えることなく、3Dで新たに描き起こされたマップ上でドット絵の妙を尽くされたユニットが動き回るのは懐かしさと共に斬新さも感じられる。また、魔法や天候などのエフェクト演出もしっかりと強化されている。オリジナル版を経験済みのプレーヤーならばステージクリア後の軍旗がはためく演出だけでもその違いに驚くはず。

基本操作やクラスの追加など大小さまざまな変更が加えられているが、どれもオリジナル版のおもしろさを損なうことなく、細部まで丁寧にリニューアルされていることが伺える
新たにアイテム合成も登場した。弱い武器しか持っていなくても合成で打ち直しをすることによって、その装備品の性能をより引き出すというもの。バトルでうまく勝てないとき、敵が強いと感じるときは積極的に合成をしてみると、より有利にバトルを進めることができるはずだ 操作やシステムなどを参照できるプレイガイドも搭載されている。すぐにはわかりにくい部分も画像付きで詳しく解説してくれるため、身近で頼れる存在 今作でさらに磨きがかかったサウンドは「ディーバの譜面」でいつでも視聴が可能。ヘルプメッセージには作曲者らのコメントも入り、サウンドトラックのブックレットコメントを見ているような豪華な仕様になっている




■ その2:奥の深い人間ドラマがスゴイ!

 「タクティクスオウガ」といえば、主人公のデニムが姉のカチュアや親友のヴァイスと共に大きな戦乱に巻き込まれていくという重厚な物語も魅力の1つ。詳しい展開は実際に触って確かめて欲しいので多くは語らないが、近年の和製RPGにありがちなご都合主義的な展開はなく、すべてのユニットの運命はプレーヤーの行動に委ねられている。さらに、それまでに通ってきた選択(ルート)によって結末が変わるため、たった1度のプレイでは味わい尽くせないほどのボリュームは、本作に没頭できる重要な要素の1つといえるだろう。

 固有のグラフィックスが用意されたユニットだけでなく、戦場にいるユニット1人1人にドラマが用意されているのもおもしろい。それぞれが自分の信じる正義に基づいて行動しており、ときには恋人の名を口にして死んでいくような敵ユニットもいるため、良い意味での後味の悪さが過酷な戦場というリアリティを醸し出している。

 オリジナル版経験者にとって朗報なのは、メインシナリオの大筋にはほとんど手が加えられていないという点だろう。一見代わり映えしないようにも思えるが、元々の物語が非常に秀逸だったため、余計な改変が行なわれていないというのは嬉しいポイントでもある。とはいえ、グラフィックスや演出が大幅にパワーアップしているため、同じ物語でもだいぶ受ける印象は異なり、さらにはサイドストーリーや新キャラクターの追加、テキストの加筆・修正などオリジナル版経験者ならば思わずニヤリとしてしまうような追加要素も豊富に用意されている。

膨大な量の用語やキャラクターが登場するため、全体的に人間関係や世界情勢などを把握するのはちょっと大変そうだが、ゲーム内の「ウォーレンレポート」にて設定は細かく補完されている。これはオリジナル版からある要素だが、本作ではイラストや画面写真付きで詳しく解説され、世界観を深く知る上で欠かせないものに仕上がっている




■ その3:「C.H.A.R.I.O.T.」と「W.O.R.L.D.」、2つの運命の輪がスゴイ!

 今作の新要素で1番の目玉となるのが、「C.H.A.R.I.O.T.」と「W.O.R.L.D.」という2つのシステムだろう。この2つのシステムは、シミュレーションゲームを遊ぶプレーヤーに常に付きまとう、「もしもあの時こうしていたら……」という要望に応える画期的なものになっている。

 まずは「C.H.A.R.I.O.T.」だが、これはリスクやペナルティを払うことなく「敵味方問わずATを最大50手前まで巻き戻す」というもの。どんな些細なミスでもその場でやり直すことが可能なので、ただ単に難易度を下げるためのシステムだと誤解されがちだが、「C.H.A.R.I.O.T.」の真価はそこに留まらない。

 このシステムの優れている点は、「どの手が悪手だったのかを視覚的に明らかにし、それによってそのバトルにおける最も理想に近い形のプレイを試行錯誤することができる」という部分だ。元の状態も樹形図として記録が残るというのもポイントで、以前のプレイで最適だった動きを参考にしたり、「C.H.A.R.I.O.T.」を使ってみたものの、やっぱり前の手の方が良かったといった場合も、50手以内であればすぐに戻ることができる。

 シミュレーションゲームでありがちな「セーブ&ロード」(事前にセーブし、失敗したらまたデータをロードしてプレイする)という手段に対する回答が、この「C.H.A.R.I.O.T.」なのかもしれない。使い方次第では大幅に難易度を下げることもできるが、どちらかというと詰め将棋のような新鮮な感覚で楽しむことのできるシステムだと感じられた。

煩雑なチュートリアルステージを遊ばされるより、「C.H.A.R.I.O.T.」を用いて究極の1手を模索するほうがずっとプレイスキルが上達するように感じられた。ただし、「C.H.A.R.I.O.T.」の使用もすべてプレーヤーの意思に委ねられている。「C.H.A.R.I.O.T.を使わない」という“自分ルール”も、緊張感のあるプレイが楽しめるだろう


 対して「W.O.R.L.D.」だが、こちらは1度ストーリーをクリアすれば、特定のポイントまで物語をタイムトラベルのようにさかのぼることができるというもの。選択肢によって異なるルートを、ニューゲームから改めてプレイするという手間を省くことができ、現在の自軍のデータを引き継いだまま物語を自由に行き来できるため、分岐点まで戻って別ルートを楽しむことや、以前のルートでは敵対していたユニットを仲間に加えることだってできる。このシステムは、本作のようなマルチエンディングのゲームを繰り返し楽しむための究極の形の1つと言えるだろう。

 ただし、この「W.O.R.L.D.」を使用することで物語上の矛盾が出てきてしまうが、それを差し引いても本作のような大ボリュームのシナリオを隅から隅まで遊びつくすためには、不必要にかかる時間を省略し好きなタイミングで物語を再開できる「W.O.R.L.D.」というシステムは必要不可欠だと思わされた。

もちろん、「W.O.R.L.D.」を使って物語の序盤に戻った後でも、「アンカーポイント」と呼ばれる特定のポイントであれば、歴史上を何度でも行ったり来たりできる。アイテムを探したり、あの時救えなかった仲間を強くなった自軍で助けに行くなど、純粋に物語を味わうという楽しみ方以外にもいろいろと利用できそうだ




■ 最後に

 一通りプレイした感想だが、すべてが現代風にアレンジされているにも関わらず、オリジナル版の長所が損なわれていないのは嬉しかった。根底のバトルシステムはそのままで、15年という月日でユーザーの間で少しずつ変化していったプレイスタイルに合わせ、遊びやすくなるような工夫が随所に凝らされているのだと感じることができた。

 また、手軽さと奥深さという一見矛盾した要素を上手に共存させているというのも評価できるポイントの1つ。全体的なゲームのテンポは上がっているが、やり込むための要素は増えているため、ストレスを感じることなくプレイに没頭できる。「C.H.A.R.I.O.T」と「W.O.R.L.D」のおかげで難易度は人それぞれで調節可能なので、物語を細部まで味わうもよし、育て上げたユニットで最強のチームを作り上げるもよし、といったようにプレーヤーごとに遊び方の方向性を選べるのも本作の特徴だろう。1度ハマッてしまえば抜け出せない、年末年始をどっぷりゲーム漬けにしてくれること間違いなしの1本だろう。

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(2010年12月10日)

[Reported by 桃井サカコ(ねこひげ合同会社) ]