モバイルゲームレビュー

夜の世界で“女帝”を目指す1人の女
銀座の伝説への階段を主人公と共に駆け上がる

「女帝・乱れ咲く華」

  • ジャンル:ドラマチックアドベンチャー
  • 配信元:ドワンゴ
  • 開発元:ゲームズアリーナ
  • 利用料金:月額315円
  • プラットフォーム:iモード
  • 対応機種:FOMA 703i/901iシリーズ以降
  • 配信日:3月2日(配信中)
  • アクセス方法:iMenu → メニューリスト → ゲーム → アドベンチャー/ノベル → 女帝・乱れ咲く華



 「女帝」という劇画をご存知だろうか。「夜王」や「嬢王」の原作で知られる倉科遼氏・作、和気一作氏・画による全24巻の漫画は、2000年に映画化、2007年には加藤ローサさん主演でドラマ化もされている。掲載誌が男性向け雑誌「週刊漫画TIMES」だったこともあり、女性の読者は少ないと考えてしまいそうだが、実は「女帝」には女性ファンが多い。特に作品の舞台にもなっている、夜の世界で活躍する女性には熱烈なファンも多く、ホステスたちの間で回し読みされていると聞いたこともある。

 ネットカフェで単行本をむさぼり読む若い女の子も見たことがあるし、本屋で大人買いしているマダム風の女性も目にした。かく言う女性の私も「女帝」は大好きで、続編にあたる「女帝花舞」と共に、かなり読み込んでおり、愛している。今回紹介するゲームアプリ「女帝・乱れ咲く華」のプロデューサーもまた女性だそうだ。「女帝」は女性にこそ愛される作品なのかもしれない。

 とはいえ、劇画の世界は一般女性には少しばかり敷居が高い。それが遊びやすいモバイルゲームになったのは、女性にとって非常に喜ばしいことだ。




■ 火の国・熊本生まれの女、彩香。「女帝」への道を歩み始める

主人公・彩香の物語は熊本から始まる。大阪ミナミ、銀座へとステップアップが始まる

 物語は火の国・熊本からはじまる。主人公は勉強もスポーツも学年一を誇る、美貌の女子高生「立花彩香(たちばなあやか)」。スナックを営む母とふたり暮らしの彩香は、「名門大学にもストレートで合格できる」と太鼓判を押されるほどの頭脳と明るい性格で、少し貧しいけれども幸せな生活を送っていた。

 しかし、地元で建設業を営む権力者の息子で、初恋の相手でもある同級生・杉野謙一の裏切りと、その父が母のスナックを地上げしようと目論んだことにより、運命が大きく変わり始める。いやがらせやひどい仕打ちをうける彩香親子だが、ほどなく母親が癌で亡くなったのを機に、彩香は高校を中退し、故郷を捨てることを決意した。

 金と権力で人を操る奴らへ復讐をするには、同じ土俵に上がらなければ、と彩香は考えた。コネも金も学歴もない彩香が成り上がるために選んだ道は、母と同じ水商売の世界。色とりどりのネオンが輝く夜の街だった。彩香が目指すのは、並大抵のホステスではない。彼女が目指すのは、政財界の重鎮とも肩を並べられる「女帝」という存在であった。

 大阪に出てきた彩香が、大阪の繁華街ミナミでホステス生活を始めるところから、物語は転がり始める。彩香を支援する友人や店のママ、顧客やパトロンになってくれる男たちに支えられ、彼女は少しずつ女帝への道を歩んでいく。彩香を愛し、彩香が心惹かれる男性も多数登場。甘いラブストーリーも楽しめる。


【スクリーンショット】
彩香の母親が銀座でホステスをしていたときに知り合ったという父。母が亡くなった時、彩香は出生の秘密を知った
親友としてずっと一緒に歩むことになる美樹と、彩香が変化するきっかけを与えるリエ
クラブのママたちも彩香の才能を見抜き、影になり日向になって支援する
銀座の街をずっと見てきた人々や、「ミナミの怪物」と呼ばれた曲者社長も彩香をかっている



■ コマンド選択で展開する華麗な物語。ライバルたちと対峙して「女帝度」アップ

 ゲームは、オーソドックスなコマンド選択形式。画面に表示される「話す」、「見る」など、いくつかのコマンドを実行しながらストーリーを進める。シナリオの変化に影響する選択肢を除き、基本的には選ぶべきコマンドは決まっており、「○○を選ぼう」などとガイドもしてくれるので、悩むことなく物語が進むようになっている。


【スクリーンショット】
「話す」、「見る」などのコマンドを選びつつ、ゲームは進む



ステータス画面から各数値を確認できる

 物語は原作(漫画)の通りに展開していく。1度でも作品を読んだことのある人には懐かしく、未読の人にはワクワクするようなサクセスストーリーが展開されている。彩香を取り巻く魅力的な男たちや、ライバルや親友、支援者として登場する個性豊かな女性たちの織り成す華麗な物語に、読む人は魅了されるだろう。

 ゲーム中には、彩香の人生を左右するような選択肢や、特定の人物との関係が変化する選択肢が表示されることもある。選択の結果は「女帝度」や特定キャラクターとの「親密度」アップに繋がると共に、後で説明するエンディングの種類へも影響を与える。

 どれを選ぶか、後に繋がる選択肢は非常に悩ましいが、主人公の立場になって選べば、自ずと「女帝」への道は見えるはず。進むべき道を見据えて、最適な答えを選ぼう。「女帝度」、「親密度」などの数値はシステムメニューのステータスで確認できる。


【スクリーンショット】
選択肢を選ぶときは慎重に。「女帝度」や「親密度」に影響が発生する
彩香の行く末に大きな影響を及ぼす選択肢。ゆっくり考えて女帝らしい答えを選ぼう



■ 全18章の壮大なボリュームで、深くて濃い「女帝」の世界を満喫

各章ごとに100ptを使ってダウンロード。まだ購入していない物には「未」マークがついている

 シナリオは全6話。各話は3つの章で構成されており、全部で18章の壮大な物語が待ち受けている。ひとつの章を遊ぶにはスムーズに進んで30分程度かかる。非常に濃厚な漫画「女帝」をボリュームたっぷりに楽しめるのだ。

 進行状況の保存は自動セーブが採用されており、要所要所でデータが保存される。重要な選択肢の後にセーブされてしまうので、1度ゲームを終了して別の選択肢を選び直すというテクニックが使えない。どうしても別の選択肢を選びたくなったら、現在遊んできる章を最初からプレイするしかないのだ。女帝の世界は後戻りなど許してはくれないのだと肝に銘じて、1つ1つの選択肢を選ぼう。自動セーブとは別に、システムメニューからのセーブもあるので、ちょっとした空き時間に少しずつシナリオを進めることもできる。

 ダウンロードは1章ごとに発生し、それぞれ100ポイント(pt)かかる。ptは、基本利用料となる月額315円で毎月300ptが得られるほか、100pt105円で追加購入もできる。ptはシナリオのダウンロードのほか、オリジナルデコメピクチャやデコメ絵文字の購入にも使える。どれもネオン世界を満喫できるものばかりなので、ゲーム世界がお気に召したら、メールの中も「女帝」仕様にしてはいかがだろうか。


【スクリーンショット】
それぞれの章は、妖艶な彩香のイラストからスタート
毎回付いている次回予告も楽しみのひとつ



■ 彩香の人生は1種類ではない!マルチエンディングが待ち受ける

少しコミカルなエンディングが見られるのも、ゲームならでは

 漫画にはない携帯アプリならではの楽しみとして、マルチエンディング方式が採用されている。彩香のターニングポイントとなる選択肢の結果や「女帝度」、「親密度」などによって物語は分岐し、各話ごとにいくつかのエンディングにたどり着く。表示されたエンディングが「No.1」なら原作どおり、それ以外ならアナザーエンドになる。各話にはそれぞれ5種類のエンディングが用意されており、「No.1」以外にたどり着けば、「ホステスをやめて結婚する」、「ヤクザの姐さんになる」など、ひと味違った彩香のその後が見られる。

 ストーリーの途中でも原作とは違う展開に進むこともできる。彩香を取り巻く特定の男性を贔屓したり、わざと女帝らしくない発言をしたり、大事な申し出を断ってみたり……変則的な選択肢を選ぶことで、新たなストーリーが体験できるのも嬉しい。何度もプレイを繰り返しながら、ぜひさまざまなエンディングや物語を楽しんでほしい。


【スクリーンショット】
エンディングで示される画面が「No.1」なら原作どおり、それ以外ならアナザーストーリーになる


 各話は独立しており、エンディングの種類や「女帝度」、「親密度」などの数値も次の話には引き継がれない。すでにプレイ済みの章は自由に何回でも楽しめるので、好きなタイミングでお気に入りの話を繰り返しプレイすることもできる。再プレイで「ホステスをやめる」など、次話に繋がらないエンドへとたどり着いても、以降の物語には影響はない。安心して、さまざまな展開に変化するストーリーを進めよう。1度到達したエンディングは、トップ画面の「アルバム」メニューで確認できる。


【スクリーンショット】
過去に出会った人物についてはシステムメニューの「彩香メモ」で詳しく確認できる



■ 豊富なイラストで作品を満喫。シャワーシーンも欠かせない!?

 漫画にはない魅力のもうひとつは、多彩な演出。音楽やフルカラーで楽しめるイラストなどはもちろんだが、駆け引きや戦いのシーンで登場するカットインも忘れてはならない。特に女の戦い時に挿入されるカットインは、非常に緊迫していて、手に汗握る気分にさせてくれる。


【スクリーンショット】
彩香の表情が良くわかるカットインで、物語はさらに盛り上がる
緊迫感に満ちた女の戦い。手に汗握るシーンの連続だ


 イラストも豊富で、章ごとに10~15枚程度のイラストが用意されている。女同士、一触即発の瞬間もあれば、男と女の艶っぽい場面もある。彩香のシャワー・入浴シーンというちょっとしたボーナスシーンもさまざまなバージョンが描かれている。選んだ選択肢によって見られる絵と見られない絵があるので、全部見たい人は何度も遊んですべてのイラストを揃えよう。1度見たイラストはトップ画面の「アルバム」メニューで参照可能。過ぎ去った物語を懐かしく振り返りながら、確認するのもいいかもしれない。


【スクリーンショット】
シャワーや入浴シーン、ラブロマンスのイラストも多数用意されている
過去の名シーンは「アルバム」を選んで閲覧しよう



■ 女性への配慮を感じるゲーム設計。原作全部のゲーム化を希望!!

 ゲームを始める前は「コミックをゲームにして面白いのだろうか?」と不安もあった。しかし、ゲームには漫画とは違う魅力があり、何度も原作を読んでいるにもかかわらず、必死に物語を追いかけてしまった。携帯を離さない自分の姿に家族が心配したほどだ。原作を知っているので、つい原作通りにストーリーを進めてしまい、なかなかアナザーエンドにたどり着けないという弊害もあったが、何度も同じ章をクリアして各キャラクターの反応やマルチエンディングも堪能できた。

 本作全6話の物語は、コミックスの1巻から11巻くらいまでに相当する。原作は24巻まであるので、彩香の旅は半ばにも到達していないことになる。原作に忠実な展開のため、ゲーム内で解決していない問題もいくつか残っている。後半に進むにつれスケールが大きくなる物語なだけに、できれば最終巻まで今ゲームで読みたいというのが希望だ。しかし、今後は政財界や任侠道とも密接に関わってくる上、原作が描かれた当時と今では時代が変わっているので、そのままゲーム化するのは難しいのかもしれない。


【スクリーンショット】
彩香を巡る男たちの物語も始まったばかり。最終的にどうなるのか、知っていても読みたい!


 操作の点で少し残念だったのは、バックログ(テキストを読み返す機能)がないこと。登場人物も多く、テキスト量も多いため、うっかり読み飛ばしたり、読み間違えたりすることもあり、バックログの必要性を感じたシーンもあった。マルチエンディングが採用されているため、ほかのエンディングも見たいし、別の選択肢も選んでみたいと思うのが人情。何度も頭から同じ章を読み直すのではない方法で別の展開を見られると、もっとよかったように思う。

 嬉しかったのは、原作の世界観を崩さずにいながらも、全体的にマイルドな味付けになっている点だ。多数使われているイラストも、ストーリーも、原作よりは幾分ソフトなものに修正されている。おかげで劇画に不慣れな女性や若者にも遊びやすく、感情移入しやすくなったと感じる。より多くの人に「女帝」を楽しんでもらえる細やかな配慮といえるだろう。

 「女帝」の舞台はミナミや銀座のネオン街で、主人公はホステス。大多数の人にとっては未知の世界で、自分とは無関係な人々の話に思うかもしれない。しかし生き方や人との関わりなど「女帝」から学ぶものも多いはず。この「女帝・乱れ咲く華」にもそのエッセンスや想いはたっぷりと込められている。あなたの人生をより豊かにしてくれるかもしれない貴重なゲームだ。


【スクリーンショット】
彩香の周囲で起こる事件を、ひとつひとつ乗り越えて大きくなっていく
本格的に「女帝」へと近づきつつある彩香。後の物語もゲーム化希望!

【プレイムービー】


(C)倉科遼/和気一作/日本文芸社/ブックマーク ジャパン

(2009年 9月 7日)

[Reported by 南奈実]