★Wiiゲームレビュー★
やりたい放題シミュレーションRPGが 大幅にパワーアップしてWiiに登場 「ファントム・ブレイブ Wii」 |
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3月12日に発売された日本一ソフトウェアの「ファントム・ブレイブ Wii」。本作は、プレイステーション 2で発売されたシミュレーションRPG「ファントム・ブレイブ」をベースに、グラフィックスや操作性の向上、新シナリオの追加など、大幅にパワーアップした内容となっている。本稿では、Wiiで生まれ変わった本作の魅力について、基本的なゲーム内容と共に紹介していこう。
■ 純真無垢な少女が辛い目に遭いながらも懸命に生きるストーリー
オープニングでは、主人公の1人であるアッシュ(画面中央)が、マローネの両親と共にサルファーと呼ばれる魔物(画面右)によって殺されるところから始まる |
両親を殺されてしまったマローネ(画面中央)は、ファントムとなったアッシュが見守る中、クロームとして生計を立てている |
本作の舞台はイヴォワールという世界。そこのおばけ島に住むマローネは、霊魂(ファントム)と会話できる能力を持つ13歳の女の子。彼女は、8年前に両親と共にサルファーと呼ばれる魔物に殺されてアッシュとともに、請負人(クローム)として生計を立てていた。ファントムと会話できるという能力があるゆえ、“悪霊憑き”と呼ばれて忌み嫌われるマローネだが、正直に生きていればいつかは皆にわかってもらえると信じ、くじけることなくまっすぐ育っていた……。
というのが、本作の序盤のストーリー。人の役に立ちたいと、さまざまな依頼を嫌な顔をせず請け負っていくマローネと、自分がいなければ“悪霊憑き”と言われることもないのでは?と、マローネのそばにいるべきか苦悩するアッシュの2人が、悩みながら成長していく物語となっている。
PS2からの移植作品ということで、美麗なムービーなどはない。しかし、キャラクター達はストーリーの展開に合わせて細かく動くほか、感情を的確に表現する吹き出しなど演出も用意されており、丁寧に作られた温かみのあるグラフィックスに感じられる。派手さはないもののさまざまなバリエーションが用意された、職人芸的なドット絵アニメーションもあり、キャラクターを見ているだけでも楽しめることだろう。
第1話では、島荒らしをしている白狼騎士団を退治して欲しいと依頼される。ところが、無事依頼を遂行したものの、生活が苦しいからと報酬は相場の約3分の1に減らされてしまう。なんとも理不尽な話だが、これも悪霊憑きという偏見で見られているからこそ。マローネにかけられた誤解と偏見が晴れる日は果たして来るのだろうか…… |
■ アイテムにキャラクターを憑依して召還する独特のシステム“コンファイン”
イベントシーンでは、イヴォワールの世界に住むさまざまな人達との会話が楽しめる |
全体マップから依頼があった島とマップを選べば戦闘がスタートする。シナリオが進行したり、新たなイベントが発生している島は点滅して表示されるため、どこに行けばいいか迷うようなこともない |
ゲームを開始すると、マローネの住むおばけ島に、依頼が入るところからストーリーは始まる。イベントシーンで依頼の内容を確認して、全体マップで依頼された島を選択すると、戦闘マップへ移行して戦闘が始まる、というのがゲームの大まかな流れとなっている。
戦闘マップでは、各所に配置されているアイテムに、アッシュなどのファントムをコンファインする(憑依する)ことで、戦闘に参加させることができる。どんどんアイテムにファントムをコンファインして、味方キャラクターを増やして、敵を倒すことが基本となる。
敵味方のキャラクターはSPD(素早さ)の値が大きいほど早く行動できるようになっており、その行動順は、画面右上に表示されている。高い攻撃力や攻撃スキルを持つ味方キャラクターがいても、SPDの値が低いと攻撃する前に倒されてしまう、なんてことになりかねないので注意したい。
味方キャラクターの順番が回ってきたら、行動開始となる。1回の行動中には、1回だけスキルを選択して攻撃できるほか、MOVE(移動)値が残っている限りの移動と、アイテムなどを持って装備することなどが可能だ。
キャラクターの移動はマス目などに束縛されることがなく、自由な位置に移動できる。また、移動は、スキルを使用して攻撃したり、誤ってステージ外へ落下したりするまで、何度でもキャンセルしてやり直すことが可能だ。攻撃可能範囲内まで移動できるか確認してから攻撃できるので、シミュレーションゲームが苦手という人でも安心してプレイできるだろう。
攻撃時に使用するスキルは、敵味方どちらのキャラクターに使う場合でも、使用スキルを選択して対象を選択するという、同じ操作で行なうようになっている。場合によっては、味方のキャラクターを攻撃することもできるし、敵キャラクターを回復する、なんてことも可能だ。そのような場合には、警告が表示されるようになっているので、対象が単体ではなく、範囲系の複数に効果がおよぶスキルを使用する際も、簡単に確認できるようになっている。
■ アイテムを持ち帰りキャラクターを強化せよ
アイテムに、ファントムをコンファインさせていられる時間には制限がある。各ファントムにはリムーブという値が設定されており、この回数分だけ行動すると、コンファインが解除(リムーブ)されて元のアイテムに戻ってしまい、その戦闘では2度とコンファインできなくなってしまうので注意したい。序盤から多数のファントムをコンファインすると、敵キャラクターを攻撃する前にリムーブされてしまい、劣勢に追い込まれてしまう、なんてことにもなりかねない。敵キャラクターの位置や行動順を考え、味方キャラクターに無駄な行動をさせないよう、コンファインする場所やタイミングも考慮したい。
なお、アイテムからファントムがリムーブされる際には、アイテムに戻る代わりにアイテムを持ち帰る(入手する)ことがある。こうして持ち帰ったアイテムは、味方キャラクターに装備させたり、ほかのアイテムと合成して強化することも可能だ。アイテムを持ち帰れる確率(持ち帰り率)はキャラクターごとに異なるので、有用なアイテムにはなるべく持ち帰り率の高いキャラクターをコンファインして、確実に持ち帰りたい。
アッシュには、リムーブ直前にのみ攻撃力が2倍になる、特別な能力“エカルラート”がある。最後にもっとも強い敵キャラクターに攻撃できるように、計算しながら行動しよう | リムーブする際、アイテムを持ち帰ることがある。アイテムを入手できるほか、ステージクリア時にボーナスが入るというメリットも。余裕があれば、最後の敵をあえて攻撃せずに味方キャラクターをリムーブさせ、なるべく多くアイテムを持ち帰りたい |
■ なんでも持てば装備可能! 強敵は場外へ投げ飛ばせ!
本作では、マップに配置されているアイテムのほか、味方はもちろん敵キャラクターをも持つことで装備可能だ。アイテムやキャラクターを持つと、ステータスに変化があるほか、持ったものに応じた属性の攻撃スキルが使用可能となるので、得意なものを装備させたい。
さらに、持った(装備した)敵キャラクターをステージ外に投げると場外となり、有無を言わさずに倒すことも可能となっている。低レベルなキャラクターでも、高レベルの敵キャラクターを場外に投げれば、簡単に倒せるというわけだ。このように便利な場外システムだが、敵キャラクターを場外に投げた場合は、経験値が入らない上にステージに残っている敵キャラクターがレベルアップしてしまうというデメリットがある。また、最後に残った敵キャラクターは場外では倒せないようになっているため、無闇に敵キャラクターを場外に投げていると、残った敵キャラクターがどんどんレベルアップしてしまい、倒せなくなってしまうこともあるので注意したい。
とはいえ、有無を言わさず敵キャラクターを倒せるのはやはり強力。弱めの敵キャラクターをマップに残しておいて、強い敵キャラクターからどんどん場外に投げてしまうのもアリだ。状況を見て、必要と思ったら迷わず場外に投げることも考えて戦っていこう。
■ おばけ島でキャラクターを強化し、次の戦闘に備えよう
マローネが住むおばけ島では、世界観をよりよく知ることができる新聞や、送られてきた手紙を読むことができる。読まずにストーリーを進めても問題はないが、ストーリーの進行ともリンクした内容となっているので、新たな話数に進むごとに確認するといいだろう |
戦闘が終了すると、全体マップに画面が移動して、マローネが住むおばけ島に戻ることができる。おばけ島では、戦闘時に味方になるキャラクターを作成できるほか、味方キャラクターに持っているアイテムを装備させたり、戦闘で傷ついたキャラクターのHPやスキルを使用する際に消費されるSPの回復、持っているアイテムの強化や合成、キャラクターの称号の変更など、さまざまな方法でキャラクターやアイテムを強化することが可能となっている。
中でも頻繁に利用することになるのはキャラクターやアイテムを合成する魔導合成師。キャラクターやアイテムをマナを消費しながら合成することで、ステータスを強化することはもちろん、アイテム固有のスキルをキャラクターに移動することも可能だ。このスキル移動を繰り返せば、さまざまなスキルを持ったキャラクターやアイテムを作成できるので、戦闘の主力となるキャラクター達には、どんどん便利なスキルを移動していこう。
■ ついついハマりがちなランダムダンジョンだが、全滅には注意
また、ダンジョン師というキャラクターが作成できるようになれば、ランダムダンジョンに行って、キャラクターをレベルアップさせたり、有用なアイテムを持ち帰ることもできる。ストーリーを進行中、強敵に出会ってどうにもならないときは、気分転換にランダムダンジョンに挑戦して、キャラクターやアイテムを強化してから再戦を挑むといいだろう。
ランダムダンジョンでは、ステージを連続してクリアして階層を進むごとにクリア時の経験値にボーナスが10%ずつ追加されていくため、キャラクターのレベルアップに最適だ。ただし、全滅してしまうとそこでゲームオーバーとなってしまい、そこまでに得た経験値やアイテムがすべてパーになってしまう。ボーナスを期待してついつい無理して先の階層に進むと、特別なステージに強敵が現われて、全滅の憂き目にあうことも。連続ボーナスはなくなるものの、余力のあるうちにダンジョン師のスキル“リターン”を使っておばけ島に戻り、セーブするように心がけたい。
■ 追加された新シナリオ“もうひとりのマローネ編”も楽しめる
新シナリオでは、いきなりマローネ以外の人が全員死んでしまうことに。あまりに唐突で、笑いしか出なかった |
彼女が異世界からやってきたマローネ(通称クローネ)。本編のマローネとは違い、寡黙でやや大人びた印象だ。彼女の導きのもと番外編のストーリーは進んでいく |
本作には、Wii版ならではの追加要素として、新シナリオ“もうひとりのマローネ編”が追加されている。この追加シナリオでは、突如としてマローネ以外の人間が死亡してしまう。そして、別の世界からやってきたマローネ(通称クローネ)と協力しながら、話が進行していく。
この追加シナリオでは、本編でマローネのライバルとして登場したキャラクター達が味方のファントムとなり、共に戦うことができる。彼らの持つ、強力なスキルを使うこともでき、本編で苦しめられた人は、それらのスキルを使えることが嬉しいことだろう。
この追加シナリオは、本編をプレイしていることを前提としており、難易度が少々高めとなっているので、本編をプレイしてから挑戦することをおすすめしたい。なお、本編をクリアした後に、キャラクターやアイテムを持ち込んでプレイすることも可能だ。この場合は、逆に難易度的には簡単すぎることになるが、手軽にシナリオを楽しみたいという人には嬉しい配慮といえるだろう。
冒頭では、この3人のほかにも、本編で登場したキャラクター達が多数仲間になってくれる。さながらイヴォワールオールスター勢揃いといったところか | 本編では強敵だったラファエルも新シナリオではファントムになりたてということでレベル1になる。積極的にコンファインして育てていきたい | 番外編には、本編では登場しなかったアイテムも登場。新アイテムにどんなスキルが備わっているかは、使ってみてのお楽しみだ |
■ 単なる移植作品にとどまらず、細かい点にも手が入れられた決定版
そのほかにも、PS2版から比べてグラフィックスが向上しているほか、ステータス画面の表示方法の改善などを施し、より見やすくわかりやすい表示方法となっている点も見逃せない。また、容量の都合でPS2版ではカットされていた各種ボイスなども追加されており、あらゆる面でパワーアップした内容となっている。
気になる操作方法も、Wiiリモコンやヌンチャクコントローラはもちろん、クラシックコントローラや、ゲームキューブコントローラにも対応している。PS2版をやりこんだという人は、クラシックコントローラやゲームキューブコントローラを用意すれば、さほど違和感なく楽しめるはずだ。
このように本作は、自由度の高いやり込み甲斐のあるゲーム性はそのままに、グラフィックや表示方法の改善、キャラクターボイスやシナリオの追加など、あらゆる面でパワーアップした内容となっている。筆者の場合、本編をクリアするまでに約50時間、番外編で15時間程度かかったほか、クリア後にはサブイベントなども用意されており、ボリュームも十分。PS2版をやりこんだという人はもちろん、本作をプレイしたことがないという人にも、やり応えのあるシミュレーションRPGを求めている人におすすめしたいタイトルだ。
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http://www.nippon1.co.jp/
□「ファントム・ブレイブ Wii」のホームページ
http://nippon1.jp/consumer/phantom_brave_wii/
(2009年 6月 12日)