株式会社セガからリリースされた「涼宮ハルヒの並列」は、タイトルからわかるとおり、谷川流氏原作の人気作を題材としている。キャラクターボイス(CV)はアニメ版と同じ声優を起用し、全てのセリフがフルボイスで収録されたこだわりのある作りになっている。
■ 記憶と経験を引き継ぎながら、ループする1日から脱出するアドベンチャー
基本システムはベーシックなアドベンチャータイプ。操作で戸惑うことはないだろう |
通常のアドベンチャーゲームであれば、誤った選択肢を選んでゲームオーバーとならないように、何度も同じストーリーをプレイしながら、正しい選択肢を選べるようにプレイする。本作では1日がループしており、前のループで得た記憶と経験が引き継がれるため、同じ選択肢を選んでも異なるストーリー展開が起きるのが特徴的。それまでに得た記憶や経験、選択肢によっては、メインと異なるストーリーにも分岐していく。
ファンが気になるCVは、全員アニメ版と同じ声優を起用。フルボイスで完全新規のストーリーが展開する。
アドベンチャーゲームでは何度も同じ場面をプレイすることから、スキップ機能やオートモードなどの充実が気になるところ。本作ではその辺りのフォローはしっかりされており、オートモード、表示速度変更、既読スキップなど、便利な機能が充実しているので安心してほしい。
プレイは、Wiiリモコンのポインタ+ボタンで進める。一部の特殊な操作が必要な場面以外では十字キーとボタンでも進めることができる。
EXTRA MODEでは、様々な衣装の3Dキャラクター、プレイ履歴などの情報、体験したイベントムービーなどの閲覧が可能。ファンには嬉しい配慮だ。
新キャラクターも登場する完全新規のオリジナルストーリー | メインとなるストーリー以外にも多種多様なストーリーがあり、ボリュームは十分 | モデルビューアなど、おまけ要素もしっかり収録されている |
■ 新キャラクターが登場する完全新規のオリジナルストーリー
夏休みを順調に消化していたある日のこと……キョンと妹は、ハルヒに遠方の港まで呼びつけられた。仁王立ちで待っていたハルヒは、停泊している豪華客船を指す。あれに乗り込んで、半漁人でも探すつもりか。それとも、シージャックしてバミューダ海域あたりの秘密を探ろうと言い出すのか。どちらにせよ、あまり想像したくない未来には違いない。 それにしても、航海中に感じるなんとも説明しがたい違和感、奇妙な既視感は一体……? |
新キャラクター「三栖丸(みすまる)ミコト」と「伊集院泰一郎」を交え、豪華客船にて繰り広げられるオリジナルストーリー。福引でなんと10枚もの「豪華客船クルーズ招待券」を引き当てたハルヒ。いつものSOS団のメンバーに加え、国木田、谷口、鶴屋さんやキョンの妹までもが一緒に豪華客船に乗り込みストーリーは展開していく……。花嫁候補を選ぶクルーズ?SOS団の分身が登場?と、いつもの調子でとんでもない展開が待っている。
妙な既視感を覚えたキョンは、長門の力を借りることで、経験と記憶を引き継いだままループする世界を奔走する。果たしてループから抜け出し、世界を元に戻すことはできるのか?
ゲーム序盤、とある条件を満たせば、ループ開始点で長門にナノマシンを直接注入してもらえるようになり、経験を引き継いだままプレイができる |
■ シーンに割り込む「インタラプト」と出来事やアイテムを記憶する「トピック」
通常のアドベンチャーゲームと同様、流れるテキストを読み、選択肢を選んでいくのだが、本作での特徴的な点の1つとしてインタラプトというイベントがある。インタラプトは、制限時間内に操作を完了する必要があり、反応がありそうな部分をポイントしてAボタンを押すことでストーリーの展開を変えるもの。インタラプトに失敗したり、傍観して制限時間を過ぎてもストーリーは進んでいく。
インタラプトが発生すると、画面中央に大きく「Interrupt!!」と表示される。ここだと思った場所をポイントしてAボタンを押すことで、シーンに割り込み、ストーリーの展開を変えられる。シーンに割り込むのも、割り込みせずに傍観するのもプレーヤーの自由だ |
キョンが体験した出来事はトピックとして記憶していく。トピックを獲得すると、ストーリーの展開や会話、選択肢に変化が起きる仕組みだ。何度も1日をループしながら、トピックを獲得して、新たな展開に進んでいく。トピックによっては、思いもよらない新たな展開を引き起こすことがある。
ストーリーを進めたり、特定の選択肢を選ぶことで入手できるトピック。ストーリーの展開によってトピックの内容が変化したり、トピックが影響してストーリーの展開が変わることがある |
ここからは、参考として、筆者の1回目と2回目のプレイを時間毎に区切って紹介する。どのような変化が起きるかを見てほしい。
このように所持トピックや選択肢によって、発生するイベントやストーリーが変化していく。
プレイ中、画面左下に探索モードと表示されることがある。このモード中は、気になる場所や人物をポイントしてAボタンを押すことで調べたり会話したりできる。上下左右に視点移動が可能で、視点移動をしないと調べられないものもある。大抵の場合は、その場面にいる人物全てに話しかければ、ストーリーが進むようになっている。
探索モードでは、視点を動かして、気になる場所を調べたり、人物と会話することができる。始点を動かさないと画面内に入らない物や人物がいることがあるので気をつけたい |
これらゲーム中のイベント以外にも便利な機能が多く用意されている。+ボタンを押せば、以前読んだテキストを読み戻すことができるヒストリーが利用できる。誤ってスキップしてしまった場合に役立つ。テキストを読むだけでなく、音声を再生することも可能となっている。-ボタンを押せば、ポーズメニューが開く。獲得したトピックを確認できるトピックス、プレーヤーのとった行動が時間軸に沿って記録されるタイムライン、各種設定の変更が可能なコンフィグなどが利用できる。
ほかにも、タイムラインで選択したストーリーでAボタンを押せば、ストーリーの最初からプレイできる。ただし、所持トピックによってストーリーが変化するためか、ストーリー途中からのスタートはできない。ある程度プレイして、ストーリー後半の選択肢で別なものを選びたい場合などに、スタート場所を選択できたら……と思うことは多かった。そんな場合には、1度でも読んだことのあるテキストを高速再生してくれる既読スキップを使うのがいいだろう。ただ、既読スキップはイベントムービー中は適用されず、手動でスキップを選択するしかなかった。1度見たイベントムービーのスキップ機能も欲しかった。
誤って飛ばしてしまった文章を読むのに便利なヒストリー。このような機能はアドベンチャーゲームにはよくあるが、音声まで再生できる機能を持つものは珍しいのではないだろうか | ストーリーが進むと、内容に応じてタイムラインに記録されていく。前回のループで記録されたものが、別の行動を起こすことで更新されることもある。コンプリートを目指すなら、全イベントをプレイし、タイムラインを埋めよう |
■ キャラクター閲覧やプレイ履歴が閲覧できる部室 エキストラモード
エキストラモードでは、お馴染みの部室でSOS団員に話しかけることで、キャラクターやプレイ履歴などが閲覧できる。ファンにはたまらないものが多く用意されている。
涼宮ハルヒに話しかけ、閲覧したいキャラクターと衣装を選択すれば、各キャラクターの3Dモデルが閲覧できる。選べる衣装はゲームの進行度によって増えていく。いつもの学生服、ストーリー中に着用していた衣装など様々だ。回転、拡大、縮小に加え、モーション付きのセリフを選択して再生することもできる。
モデルビューアでは、登場する主要人物のキャラクターとその衣装を選んで閲覧できる。回転・拡大・縮小に加え、モーション付きのセリフを再生することも可能 |
長門有希に話しかければ、累計ループ数や選択肢所要時間などがわかる「ループ現象について」、累計や平均プレイ時間がわかる「プレイ時間について」、誰と最も多く会話したかがわかる「会話傾向について」、体験済みのイベントや所持トピックの達成度がわかる「達成度について」と、各種プレイ履歴の閲覧が可能。「達成度について」は、コンプリート率を確認するのに便利だ。
長門は、ループ数、インタラプト回数、平均プレイ時間、達成度など、多くの情報を教えてくれる |
朝比奈みくるに話しかければ、本編で流れたBGMを再生し、それぞれの曲について、コメントしてくれる。
古泉一樹に話しかければ、体験したイベントムービーを再生することができる。それぞれの映像ごとに用意されたキョンのコメントもなかなか楽しい。
ミュージックプレーヤーでは、本編で流れたBGMを再生できる。お気に入りの曲をじっくりと楽しもう | イベントビューアでは、体験したイベントムービーを閲覧できる。改めて見てみると新たな発見があるかもしれない |
■ 最後に
涼宮ハルヒを知っていれば、より楽しめるだろうが、知らなくても十分に楽しめる1本に仕上がっている。人気作家によるストーリーなだけあって、シナリオのクオリティも高く、アドベンチャーゲームとして必要な機能も備えている。
これだけ膨大なセリフをフルボイスで収録する開発スタッフのこだわりには拍手を送りたい。収録は、5月28日に発売されたDS「涼宮ハルヒの直列」で使われる分とあわせ昨年末に行なわれ、「キョンのセリフは1万以上もあった」とセガ塩谷尚史プロデューサーは語っていた。
(C)2006谷川流・いとうのいぢ/SOS団 (C)SEGA
http://sega.jp/
□涼宮ハルヒの並列のホームページ
http://haruhi.sega.jp/
(2009年 6月 13日)