★PS3ゲームレビュー★

大人のためのエンターテインメント
伝説の龍、三度現わる

「龍が如く3」

  • ジャンル:アクションアドベンチャー
  • 発売元:株式会社セガ
  • 価格:7,980円
  • プラットフォーム:プレイステーション 3
  • CEROレーティング:D(17歳以上対象)



 伝説の龍、桐生一馬が活躍する人気シリーズ最新作「龍が如く3」が、2月26日に株式会社セガより発売された。豪華声優の起用、矢沢永吉さんの楽曲提供、多くの企業タイアップなどで、「龍が如く」シリーズは以前から発売前後の話題づくりに積極的なイメージがある。発売を待ちわびたファンも多かっただろう。

 「大人のためのエンターテインメント」を目指して作られた本シリーズは、「見参」からプラットフォームをプレイステーション 3へと移し、表現力、インパクトをぐっとアップさせてくれた。そして、PS3での2作目となる「3」は、どのように進化したのだろうか?



 
■ 「足りないものがあるのか?」と疑うほど、なんでも揃った総合エンターテインメント

 メインとなるのは元極道の桐生一馬が活躍するアクションアドベンチャー。笑いあり、涙ありの人間ドラマに仕上がっている。シナリオの完成度が高く、筆者は何度もホロリとしてしまった。サブストーリーも100以上用意されていて、どこから進めるかが悩ましいほどだ。

 今回は新たな舞台として、沖縄が登場。沖縄らしい作りの町や人々が待っている。本シリーズには欠かせない東京・神室町と沖縄の2つを舞台に物語は進んでいく。街の作りこみには力が入っているようで、松屋やカラオケ館など実在企業とのコラボレーションもあいまって、まるで本物の町を歩いているかのようだ。

 基本的な戦闘は、左スティックで移動、ボタンで攻撃となっている。攻撃はボタンの組み合わせのみで、複雑なコマンド入力などはなく、誰にでも遊べるよう配慮されている。しかしながら、単純で底の浅いものではなく、やればやるほど楽しさが増してくるようなシステムになっている。

 プレイスポットも抱負で、ギャンブル・スポーツ・ゲームセンター・キャバクラ・ゴルフ・釣りなど、信じられないほど多くのプレイスポットを搭載。それぞれのプレイスポットも凝っていて、どれもかなり遊べるものになっている。

 なお、本作はHDDへのインストールが必須で、5,120MB以上の空き容量が必要だ。

新たな舞台となる沖縄・琉球街。昔ながらの風情を残した町並みが特徴的眠らない街、東京・神室町。繁華街らしく、多くの人が街を行き来する実在企業とのコラボレーション。外観を見るだけでなく、店舗に入って買い物や食事ができる
突如発生するサブストーリー。メインとなる物語と合わせて、楽しんでいきたい。クリアすれば報酬が得られる様々な場所に落ちているコインロッカーの鍵。コインロッカーを開けるとアイテムを入手できるブロードバンドを使った各種コンテンツの追加配信にも対応。今後どのようなコンテンツが配信されるか期待しよう



 
■ 国家規模の事件に発展していく壮大な物語と豪華なキャスト
 
 2007年1月、桐生と遥は神室町を去り、新たな生活を始めようとしていた。沖縄へと渡った2人は、小さな養護施設“アサガオ”を営み、さまざまな境遇を持った子供たちと慎ましくも幸せな日々を過ごしていた。しかし、そんな桐生たちに突如、土地買収という脅威が襲いかかる。沖縄に巻き起こる“基地拡大計画”と“リゾート開発計画”。政治という不条理な力によって安息の地を狙われた桐生は、土地買収に絡む地元組織との戦いに、立ち向かっていく。南の島の辺境の地で起こった小さな戦い。しかし、それは東城会を巻き込み、国家規模の事件へとつながろうとしていた……。それから2年後……2009年3月、沖縄と東京で同時に起こった2つの銃撃事件を皮切りに、土地買収を巡る「陰謀」は激しく動き出していく。信じた人間を襲われた桐生は、事件の真相を追うべく神室町へと向かう。2つの現場で目撃された“風間の姿をした男”を追い求めて……。

 主人公は、伝説の龍と呼ばれる元東城会四代目の桐生一馬。本作では、沖縄で養護施設「アサガオ」を営んでいる。プレーヤーは彼を操り、物語を進めていくことになる。

 本シリーズをプレイしてきた人なら、登場人物やこれまでの事件についてもご存知だろうが、本作から始めるプレーヤーにはさっぱりわからない。そんな人でも、「1」と「2」のダイジェスト映像が用意されているので安心してほしい。ダイジェスト映像は、トップメニューの「回想」から選択できる。

「龍が如く」
消えた100億の鍵となる少女・遥と出会い、人として生きる意味を見つけていった
「龍が如く2」
関東と関西の覇権を巡る一大抗争や海外組織ジングォン派との闘いが繰り広げられた
「龍が如く3」
沖縄で養護施設アサガオを営み、幸せな日々を過ごしていた桐生。しかし……

 有名芸能人が声を演じていることも本作の魅力の1つだろう。渡哲也さん(謎の男 役)、泉谷しげるさん(名嘉原茂役)、藤原竜也さん(島袋力也 役)、中村獅童さん(峯義孝 役)など、映画が撮れそうな豪華さだ。他にも釘宮理恵さん(遥 役)、大塚明夫さん(田宮隆造 役)と、人気の声優も参加している。

桐生一馬(黒田崇矢さん)
元東城会四代目。擁護施設アサガオの土地を巡る事件に巻き込まれ、再び闘いの中に身を投じることになる
遥(釘宮理恵さん)
桐生の最愛の女性、由美が残した12歳の少女。桐生と共に養護施設アサガオで暮らしている
謎の男(渡哲也さん)
既に亡くなっている桐生の渡世の父・風間新太郎に瓜二つの姿をしている。彼は一体誰なのか、何が目的なのか
名嘉原茂(泉谷しげるさん)
沖縄・琉道一家の組長。アサガオの土地所有者でもある。昔気質の極道で義理人情にあつい
島袋力也(藤原竜也さん)
沖縄・琉道一家の若頭。内地からやって来た桐生を敵視するが、兄貴と呼ぶほど桐生に惚れ込んでい
幹夫(宮川大輔さん)
沖縄・琉道一家の若衆であり、力也の舎弟。どこか間抜けな面があり、憎めない若者
神田強(宮迫博之さん)
東城会若頭補佐・直系三代目錦山組組長。徹底的な武力路線で、神室町を飲み込もうとする
浜崎豪(高橋ジョージさん)
東城会若頭補佐・直系浜崎組組長。横浜を拠点とし、中国系マフィアとの繋がりも噂されている
峯義孝(中村獅童さん)
東城会若頭補佐・直系白峯会会長。三十代前半ながら、株取引と不動産事業で巨万の金を動かしてい


 
■ 白熱のバトルとヒートアクション 

 本作では、街を歩いていると、ヤクザやギャングといった敵が近寄ってきて戦闘が始まる。基本的に近寄ってくるのは、街を歩き回らず、立っているので、慣れてくれば、どの相手が絡んでくるのかわかってくる。遠めの距離を走り抜ければ、相手が近寄ってきても、振り切って戦闘を回避できる。「3」の大きな特徴は、このバトルへの移行がシームレスになったことだろう。

街を歩いていると、なにやら怪しげな男が駆け寄ってきたなんだかんだと文句をつけられ…どんな相手かが表示され、戦闘開始となる

 左スティックで移動、ボタンで攻撃やガード。これらを駆使して戦闘をこなしていく。まずは、基本となる攻撃から紹介する。

 □ボタンでのラッシュコンボ、△ボタンでのフィニッシュブロウ、L1でのガードを使えば、大抵の雑魚戦は問題なく勝てる。ラッシュコンボは、1発のダメージが少ないものの、隙が小さく、連打していけるのが強み。□□□△などといった、ラッシュコンボ数発~フィニッシュブロウが攻撃の基本形となる。他にもスウェイ、投げ、ダウンしている相手への追い討ち、武器を拾って使うなど、多彩な行動がボタンの組み合わせだけでできる。

ラッシュコンボ(□ボタン)を数発叩き込んで大ダメージのフィニッシュブロウ(△ボタン)を決めるさらに倒れた相手に追い討ち(△ボタン)を決めたり、掴む(○ボタン)こともできる
相手の攻撃をガード(L1ボタン)し、被ダメージを抑えつつ、ガード後にできた相手の隙に攻撃を叩き込むのが有効。ただし、背後からの攻撃、刃物や銃弾による攻撃はガードできない所持している武器、敵が落とした武器、落ちている物でも攻撃が可能。ただし、武器には使用回数があり、使用回数を越えると壊れてしまう。所持している武器に限り、武器屋で修理ができる敵を倒せば、お金やアイテムをくれる。重要な収入源の1つなので、きっちり倒して稼ごう

 バトル関連で最も特徴的なのが「ヒートアクション」と呼ばれる行動。ヒートアクションを起こすには、画面上部にあるヒートゲージをためる必要がある。ヒートゲージは、敵を攻撃したり、アイテムを使うことでためることができ、ダメージを受けたり、一定時間が経過したり、ヒートアクションを発動すると減少していく。また、お酒を飲むとヒートゲージが溜まりやすくなるが、街で敵に絡まれやすくなってしまう。

 ヒートアクションは、習得した技、武器を使ったもの、追い討ちなど様々。画面上部に「極」と表示されている間に△ボタンを押せば発動する。攻撃力が高いので、ここぞという場面では惜しみなく使っていきたい。技によって、技中に追加の入力があり、入力に成功するとダメージを上げることができる。

ヒートゲージがたまった状態でビールケースを持って敵に近づくと、「極」が出た。△ボタンを押して、ヒートアクション開始相手にビールケースを被せて攻撃。さらにビールケースを回して、相手をフラフラにさせて手刀でとどめをさす。通常の武器攻撃を遥かに上回るダメージを与えられる

 また、ボス戦専用のヒートアクションも存在する。それが「超追い討ちの極み」だ。ボス戦中に特定条件を満たすと超追い討ちの極みにつながる演出が始まる。この時、ヒートゲージが一定未満だと、R2ボタンを連打してヒートゲージを増やすことができる。一定以上ヒートゲージをためたら、どの技を出すかボタンで決定するという流れになっている。技によって、技中に追加のボタン入力があり、入力に成功するとダメージが上がる。

超追い討ちの極みのチャンス到来。R2ボタンを連打して、ヒートゲージを増やせどの技を出すのか、ボタンで選択する強力な超追い討ちの極みが発動。追加入力をキッチリ決めて、ダメージアップを計りたい

 特殊な技や超追い討ちの極みの追加技を習得するには、下記のような特定の人物や場面に出会う必要がある。

  • マック・シノヅカ
     彼と出会うと天啓を得られるようになる。街で起こる様々な出来事を見て天啓を得れば、新たなヒートアクションを習得できる。天啓で習得できる技の中には、超追い討ちの極みの追加技があるので、確実に習得しておきたい。

  • 与那城尚二
     武器を持った与那城に勝利することで、武器を使った格闘術を身につけることができる。

  • 古牧宗太郎
     彼から出される試練をクリアすることで、古牧流無手格闘術を習得できる。特に「古牧流・受け流し(R1ボタンで構えながら敵のパンチ系の攻撃に合わせて○ボタン)」が強力。決めれば相手を気絶させ、無防備な相手に攻撃を叩き込むことができる。ボス戦など、1対1の戦いでは特に重宝する。このR1+○ボタンのコマンド入力は、敵を掴む(○ボタン)とコマンドが重複しているため、相手がパンチ系の攻撃をしていたら古牧流・受け流しが発動し、ガードや無防備であれば掴みが発動する2段構えの技だ。早い段階で習得しておくと物語をスムーズに進めるのに役立つだろう。 
  • 時折、マックからメールが届く。メールの情報を元に天啓が受けられそうな場所に向かう主観モードにして「見る」が表示されれば、正解だシャッターチャンスのタイミングで表示されたボタンをうまく押せば、先に進むことができる
    最後に選択肢が出る。これに正解すれば、技が習得できる。失敗しても、出直せばやり直しがきく酔っ払いの動きを元に、酔っている時にだけ出せる「酔鉄山」を習得した天啓を得ると業を習得できるだけでなく、「天啓を得たり」のブログも更新される
    与那城との修行。覚えたい武器の格闘術を選び、与那城を撃破するだけで習得できる古牧宗太郎は、素手で使える技を教えてくれる。大抵のバトルは素手での戦闘になるので、確実に習得しておきたい古牧流無手格闘術は、技レベルを上げることで覚えるものと、古牧から教わるものの2種類がある。強力な「受け流し」「虎落とし」は、古牧本人から教わる必要がある。
    追いかけたり、追いかけられたりと忙しいチェイスバトル。追いかけるときは、近寄ってタックルを当てて、相手のチェイスゲージを無くせば捕まえられる様々なグランプリに出場し、優勝を目指す地下闘技場。テレビ番組のような演出がたまらない。シングル戦だけでなく、2vs2のタッグマッチもある武器・防具の売買・チューニング・修理などが行えるワークス上山。優れた武器の修理代は半端ではない



    ■ 種類が多く、かなり遊べるプレイスポット

      シリーズを追うごとにパワーアップしていくプレイスポットも本作の魅力の1つ。ギャンブル・スポーツ・ゲームセンター・キャバラクラ・ゴルフ・釣りなど、驚くほどたくさんの遊びが用意されている。ただ遊ぶだけでなく、ランキング戦形式になっていたりと、内容も凝っている。

    カラオケ館では音楽に合わせてボタンを押すプレイスポットが楽しめる。誰かと一緒に来ることも1人で来ることもできる。桐生一馬の合いの手が面白くて、ついついプレイしてしまう雀荘ではランキング戦に参加して、本格的な麻雀が楽しめる。面子がポツポツと喋るのも楽しい格闘ゲームのような「インナーファイター7」。心の強さが体力となるので、心をレベルアップさせて対戦に臨みたい。なんと勝利すると技が習得できてしまう
    椿姫彩菜さんがモデルで、本人が声を担当しているオイルマッサージ。画面右のバーを上下どちらかにはみ出さないように調節するプレイスポットになっている難易度が選べるバッティングセンター。まずはノーマルから挑戦し、自分の力量を見極めるのがいいだろう1人で遊ぶ、店の人と対戦する、スプリットに挑戦と、遊び方が選べるボウリング。通常の10フレームだけでなく、3フレームだけ遊ぶこともできる
    カジノでは、ルーレット、ポーカー、ブラックジャックが楽しめる。ゲームに使うチップは現金で購入可能。チップは景品と交換することができる
    クラブセガでは、「ボクセリオ」スという風変わりなシューティングゲームや、アーケードで好評稼動中のクイズゲーム「Answer×Answer」、UFOキャッチャーが遊べる。店員に頼めば、UFOキャッチャーの中身を替えてもらうこともできる
    順位戦など、本格的な勝負が楽しめる将棋。段を持っている相手になってくると、かなり厳しい戦いを強いられるだろうダーツは、1人でのプレイや、お店のスタッフとの対戦が可能。01ゲーム、クリケット、カウントアップと、好きなルールで遊ぶことができるビリヤードも、1人でのプレイや、お店のスタッフとの対戦が可能。ナインボール、ローテーション、エイトボール、好きなルールで遊ぶことができる
    「キャバつく」というキャバクラ嬢を育成し、お店のナンバーワンを目指すプレイスポットもある。最初は、街で女の子をスカウトするところから始まる。連れてきた女の子をトレーニングをしてスキルアップさせつつ、店内を回って需要の高いタイプの女性にドレスアップ・メイクアップさせて、人気や売り上げを上げていく。売り上げに応じて、資金が増え、高級なアクセサリーの購入などができるようになる
    キャバクラでは、雑誌小悪魔agehaのモデル達が登場し、桐生をもてなしてくれる。注文内容や会話の選択肢によって、仲良くなれる沖縄の海では釣りを楽しめる。釣った魚は市場で買い取ってもらうこともできるので、金策の手段として使うのもいいコンペやニアピンコンテストが楽しめるゴルフ。なんとフルラウンドまわることができる



    ■ 本編もさることながら、プレイスポットやサブストーリーにも注目  

     あれもやりたい、これもやりたいというワガママなプレーヤーにはもってこいな本作。これほど高いクオリティを保ちながら、これほど多くの要素が入ったゲームが今までにあっただろうか。間違いなく買って損はない。PS3を持っているなら、是非プレイしてみて欲しい。

     メインとなる物語はもちろんのこと、おまけにしては遊べすぎるプレイスポットやサブストーリーといった寄り道が楽しい本作。もし次回作が発売されるとしたら、桐生と遥にはどんな物語が待っているのか。どんな進化を遂げるのか。どれだけ多くのプレイスポットが入るのか。気が早いだろうが、次回作にも期待せざるをえない。


    (C)SEGA

    (2009年 3月 23日)

    [Reported by 木原卓 ]