「侍道外伝 KATANAKAMI」レビュー

侍道外伝 KATANAKAMI

ハクスラ×剣術アクション! ダンジョン探索と鍛冶屋経営、1度に2度おいしいRPG

ジャンル:
  • 剣術アクションRPG
発売元:
  • アクワイア
開発元:
  • スパイク・チュンソフト
プラットフォーム:
  • PS4
  • Nintendo Switch
  • Windows PC
価格:
3,980円(税別)
発売日:
2020年2月20日

 スパイク・チュンソフトは、プレイステーション 4/Nintendo Switch/ PC(Steam)用剣術アクションRPG「侍道外伝 KATANAKAMI」を2月20日に発売する。前作「侍道4」から実に9年振りとなる新作に、初代「侍」からプレイしている身としては心が躍った。

 「侍」そして「侍道」の魅力は1人の侍として生きていき、様々な事柄に関わっていくことにある。プレーヤーの判断とアクションで物語が、人々がどう変わっていくかを楽しむ。1人の風来坊の侍が、世の中に嵐を巻き起こしていく。自分の“刀”が世界を変えていくところが楽しかった。

 今回の「侍道外伝 KATANAKAMI」は、「ハック&スラッシュによるダンジョン探索」と「鍛冶屋経営」というこれまでにない要素でのゲームとなる。ゲーム性を一変し、その名の通り“外伝”となる本作がどんなものか、ファンが大きい反面、ほんのちょっとの不安もあるだろう。プレイする前の筆者もそうだった。

 結論から言えば不安は杞憂だった。実際にプレイをした感想としては、アクション性や世界観、そしてバカバカしいノリまで、ジャンルこそ違えど“間違いなく「侍道」”であった。大きく変わった新たな面白さと、「侍道」シリーズが持つ変わらない面白さの両面で本作の魅力を語っていきたいと思う。

【「侍道外伝 KATANAKAMI」 紹介トレーラー】

かわいい娘を嫁にするため、魑魅魍魎との戦いに身を投じる!

 本作は、シリーズ1作目の世界観と時系列で、「黒生家」、「赤玉党」、「宿場町」の3勢力が抗争する六骨峠が舞台。その戦いの裏側で生きる、もう1人の侍の物語を描いている。

 刀鍛冶屋を営む「堂島軍二」の娘、「堂島七海」が、店の借金のカタとして連れ去られてしまうシーンからゲームが始まる。事の一部始終を見ていた主人公は、七海を嫁にもらうという条件で、借金返済に奮闘することとなる。

いきなり娘をくれという、かなり破天荒な主人公
当然断る堂島だったが、すぐに意思が変わるダメ親父っぷり

 堂島が抱える借金は総額10万銭以上と巨額。プレーヤーが必死にがんばっても数千銭しか稼げず、しかも店の運転資金にも充てなければならない。このため分割して返済していくこととなるのだが、借金には返済日が設定されており、期日までに目標金額を貯めて返さなければならない。

 ゲームは、夜の「ダンジョン探索」と、昼の「鍛冶屋経営」の2つのパートがあり、ダンジョンで拾った刀などを鍛冶屋の商品にして売りさばき、「資金を稼ぐ」→「返済」のルーティンがゲームの基本の流れとなる。

 初めは、店に商品の刀も無ければ、作る材料すらも無いという開店休業中ともいえるとんでもない状態。この状況を打破するため、夜になると開かれる「辞界」と呼ばれる異空間の中に潜り込み、探索していく。

コツコツと返済し、全額完済することがこのゲームの目的である
夜になると輝く一本松。ここがダンジョンの入口となっている
中はおどろおどろしい空間。宝も眠っているが、危険も潜んでいる

 ここからは、ゲームのメインとなるダンジョンパートについて語っていこう。入る度に地形が変わる自動生成ダンジョンを繰り返し潜ってアイテムを収集していく。1度ダンジョンを出るとレベルが1に戻るという王道のローグライクなゲームシステムである。

 だが、そんな王道の中にもしっかりと「侍道」ならではの要素を落とし込んでいる。従来のローグライクゲームといえば、ダンジョン内はマス目に沿って移動し、自分が行動をすると敵も動き出すターン制バトルだが、本作のバトルは過去作同様のアクションゲームとなっている。

 武器での弱攻撃、強攻撃、蹴り、投げをはじめ、コマンドで繰り出せる必殺技などもあり、戦闘はこれまでの「侍道」と同じ感覚で遊ぶことができる。シリーズのファンとしては、RPGになってアクション性が薄くなったり、簡略化されたりしているのではないかと不安に思っていたが、そこはしっかりと「侍道」のゲーム性が生きており安心した。

 これまでのシリーズでは、現実的な世界観で人間同士の戦いを軸としている作品であったが、今作では異空間で化け物や魑魅魍魎と戦っていくという斬新な内容となっている。あまりの急展開に初めは困惑したが、ここまで突き抜けた設定を放り込まれると一周回って逆に惹き込まれてしまう。

ゲームのジャンルは変われど、アクション性はこれまでと変わらない
化物を相手に戦うという、ナンバリングタイトルにはないぶっとんだ内容となっている

 ダンジョンを進んだ先で何が起こるかわからないハラハラ感と、やられてしまうと所持品を全て失ってしまうという緊張感こそがローグライクゲームの醍醐味である。本作でももちろん、その面白さは踏襲されている。

 探索中に常につきまとう注意点は“刀の耐久度”だ。攻撃をしていると刀の耐久度がどんどん落ちていき、それに伴い与えるダメージも低下していってしまう。耐久度を回復させるにはアイテムの砥石か、ダンジョン内にランダムで設置されている砥石台を使わなければならない。

 これは“ダンジョンゲーあるある”だが、不要な時にはやたらと出てくるのに、欲しているときに限ってなかなか出てこない。耐久度が0になって“鍛えた自慢の刀も、まさに形無し”といったピンチな場面を何度も味あわされた。

欲しい時に欲しい物が出てきてくれた時の喜びは、ローグライクゲームでしか味わえない感覚だ

 ダンジョンを探索して、アイテム集めをするのも本作の面白さで、レアリティの高い高性能な武器を拾えた時の嬉しさはハンパじゃない。しかしその反面、ダンジョン内でやられてしまうと所持品を全て失うという過酷なルールが存在するので、良いアイテムを入手した時こそ緊張感を持たなければいけない。

 1度やられた時点ではまだ、失ったアイテムを回収するチャンスもある。やられてしまった次の探索では、落とした所持品を全て持っている「ツクモガミ」という敵が出現するようになり、倒すことで所持品を全て回収することができる。

 ただし、所持品を落とした次の探索で、ツクモガミから回収する前に再びやられてしまなど、ツクモガミを逃してしまうと、辞界の「隠レ里」にいる化け物から、落とし物として買い戻さなければならなくなるので、注意したい。

ツクモガミはなかなか手強いので、心して掛かるべし

 本作には「活力」という要素があり、攻撃やダッシュする度に消費していく。活力ゲージが0になると「死神」という強敵が出現するようになる。何も知らない筆者は、見慣れない敵に斬りかかるもダメージはほぼ通らず、逆に一撃で瞬殺されてしまった。

 死神が出現して初めて、活力が0になると死神が出てくるというチュートリアルが入り、「もっと早く教えてくれ!」という気持ちで一杯になったが、以降は活力が回復できる食料を万端にして探索するのを心掛けるようになった。失敗から学んで学習する。これもローグライクゲームの楽しみ方だ。

圧倒的強さの死神。ちなみにこの時、絶賛ツクモガミ捜索中だったため、全てを失って絶望した

 ダンジョンの奥には巨大なボスも待ち受ける。ボスの強さは戦ってみるまで未知数なので、“最深部まで行って勝負を挑む”か“途中で引き返して町に戻る”か……その決断をいつも悩ませられる。刀も強化し、装備品やアイテムも万全――のつもりだが、万が一、戦ってみて戦力差が絶望的だった場合、その時点で全てのアイテムを失ってしまうことを意味する。そんな最悪な結果が頭をよぎると、なかなか踏ん切りがつかず、ダンジョンに潜っては引き返しを延々と繰り返していた。

 意を決してボスに挑むと、ボスの規格外のデカさに正直ビビってしまった。見るからに絶対強いというのがヒシヒシ伝わってくる相手で、実際にかなり手強く、回復アイテムもほぼ底をつくという状況まで追い込まれながら辛くも撃破することができた。普通のゲームであったら「負けたらしょうがない、またリトライ」という感覚で気楽に遊んでしまうが、本作では、プレイしてきた全てを失ってしまうため、“絶対に負けられない”という意思でプレイしている。甘っちょろい遊び感覚など微塵も無く、まさにガチのプレイなので、クリア出来たときの達成感や喜びはとても大きかった。

緊張のボス戦。主人公と比べてこの大きさだ
トラップを踏んで、ボス戦で寝てしまうという絶体絶命の場面も
最後は大技の奥義を発動し、撃破に成功

 ダンジョンを攻略すると、以降の探索で裏のエリアに行けるゲートが出現するようになるのだが、軽い気持ちで足を踏み入れたらここが本当にヤバい。

 モンスターハウス並みの大量な敵の出現に加え、「敵の攻撃が必ずクリティカル」や「アイテム使用不可」などの様々な不利な条件が設定されており、油断をしていると一瞬でやられてしまう。かなり険しい道だが、その分貴重なアイテムもドロップできるので、探索欲を掻き立ててくる。このハラハラ感とワクワク感はプレイしていて病みつきになる。

裏エリアはDANGERと書かれたゲートを進む
いきなり大量の敵に囲まれた状態なんてことも

金の為ならどんな手でも使う!? 荒唐無稽な鍛冶屋経営が楽しめる!

 もう1つのパートである鍛冶屋パートにも触れていこう。主人公の拠点となる鍛冶屋では、刀の鑑定や強化、耐久度の回復など、刀関係のことなら全てここでまかなうことができる。ダンジョンで集めた材料から刀を作製をすることもでき、作った刀を自分の物にするか売り物にするかを自由に決められる。

 鍛冶屋の客となるのは、初代の「侍」をプレイしたユーザーなら懐かしい「黒生家」、「赤玉党」、「宿場町」の3勢力。3つの勢力から刀の注文が入り、要望通りの物を売って収入を得るのが経営の基本となる。

 しかし、堂島の作る刀は客からバカにされるほどの低品質で、それ故に販売価格もめちゃくちゃ安い。作った刀だけを販売していても目標金額に到達するのは極めて困難である。

刀の強化や修理など、堂島が一通りのことをやってくれる
堂島が作った刀の販売価格、わずか22銭。これでは返済額の10万銭までは途方もない

 大きなお金を稼ぐには地道に刀を売るだけではなく、あらゆる手段を講じなければならない。

 膠着状態が続いている3つの勢力には、それぞれ「緊張度」というものが設定されている。この緊張度が高まっていくほど三つ巴の戦いが激しさを増し、結果、武器の需要が上り、売り上げが激増する。これが「戦が起これば鍛冶屋が儲かる」という儲けの戦術だ。

 肝心な緊張度の上げ方なのだがこれがかなりの力業で、3勢力のメンバーを夜に闇討ちすることで組織内の緊張度が上るのだ。辻斬りで緊張度を上げつつ、相手が持っていた刀はそのまま回収して売り物にすれば一石二鳥。こんなぶっとんだ方法で店を経営するゲームなんて他にはないだろう。

人気が少ない夜に辻斬り。これも借金返済のため
次の日の瓦版では、緊迫した様子が伺える
戦意を煽った結果、町で戦いが勃発。これで刀の売り上げがアップだ

 さらに、お金を稼ぐチャンスは他にもあり、武力目標として掲げている一定の目標数の刀を売ると、「千客万来」というフィーバー状態に突入する。千客万来となれば、その名の通り1日中絶え間なく鍛冶屋に客が押し寄せ、お金を落としてくれるのだ。

大量に刀を売れば「千客万来」となり、普段は閑古鳥が鳴いている店に長蛇の列が!

 好調な経営で着実にお金を稼いでいたのだが、まさかの落とし穴もあった。

 売れに売れて刀の在庫が底を尽いてしまい、残っているのが堂島が作った失敗作の刀のみとなったときだ。試しに売ってみると、金額は安いながらも普通に販売することができたので、そこから調子に乗って失敗作を客に押し付けて一掃したのだ。

 邪魔な物も無くなって小銭も稼げたしでご機嫌でいたのだが、その後日、ゴミを掴まされた客たちがまさかの夜襲を仕掛けに来たのだ。圧倒的な数に押され、堂島共々ボコボコにされて商品の武器をごっそり持っていかれてしまった。やはり悪質な商売をしていると天誅が下るということを身をもって知った瞬間だった。

 心を入れ替えたその後も、連日連夜、3つの勢力が日替わりで襲いに来て、毎晩鍛冶屋で死闘が繰り広げられた。さすがに連日の夜襲はシンド過ぎるので、怒りを鎮めてもらうためにハムなどの高級品を献上することで、なんとか鎮火することができた。ダンジョンだけでなく、鍛冶屋の経営もまさに命がけである。

失敗作を売りつけたら、まさかこんなイベントが待っているとは思わなかった……

シリーズ伝統のバカバカしさも健在!

 「侍道」シリーズといえばバカバカしさも魅力の作品である。本作はメインビジュアルからカッコ良さが滲み出ており、プレイ前はギャグは期待できないかとも思ったのだが、本作でもバカなノリは全開であった。

 「侍道3」にあった要素である「土下座システム」が本作で復活を遂げ、好きな所で自由に土下座することができるのだ。土下座なんかして何の意味がある? と思われるかもしれないが、これが意外と便利で様々な場面で活躍する。

 土下座最大の強みは、“土下座をすれば割と許してくれる”。返済日なのにお金が無いなんてときは、まず一発土下座をかましてやるのだ。それによって確実に返済期限を延ばしてくれることも。また、道端にいる気に食わないやつに蹴りを入れても、即座に土下座をすれば許してもらえる。土下座は偉大だ。

 そして、究極的な使い方は、“土下座アタック”だ。相手に対して零距離で土下座をするとヒットしてダメージを与えることができる。攻撃をした訳ではなく、あくまでも“土下座がぶつかってしまった”ということなので相手もキレるにキレられない状況になるのだ。憎いやつには土下座を連発して成敗すると最高にスカッとする。こんなギャグなアクションを取り入れてしまう本作は、良い意味で本当にバカなゲームだ。

借金が返せないときはとりあえず土下座。状況によっては効かないこともある
謝罪の体で攻撃にも使える土下座アクション

 借金のカタに取り立て屋に連れていかれた本作のヒロイン七海も、かなりクセの強いキャラクターであった。囚われの七海に差し入れを送ることができるのだが、彼女には謎の濃いファンが付いており、毎日大量の差し入れが送られてきているのだ。町の瓦版には、“差し入れ番付”なるランキングまで掲載していてやりたい放題。囚われの身なのか、楽しんでいるのか、もはや謎である。

町にいる「でっち」に頼めば、差し入れを届けてくれる
差し入れの品評などもしており、完全にふざけ倒している。番付を見ると、差し入れを送っているのは名前からしてヤバいやつらばかりだ……

 さらに、七海に差し入れを送り続けているとポイントが貯まり、一定ポイントを超えると七海から特製アイテムが送られてくる。プレイしていてもらえたのはなんと七海の限定生写真だ。

 “決して転売してはいけない”という説明文のあるこのアイテム。使用すると強運状態になるという効果を確認してウィンドウを閉じた。しかし一瞬、アイテム画面に引っかかる文字が見えた気がしたので再度確認する。二度見してみると、確かに限定生写真を選択すると“使う”の項目の下に“食べる”という項目が間違いなくあった。

 かわいい女の子の生写真は、人によっては確かに食べ物という説もあるが……。“使う”と“食べる”、こんな選択肢を見せられたら食べない訳にはいかない。生写真を食した後、どうなってしまうのか、それは是非自分の目で確かめてもらいたい。

本作でも「侍道」らしいハイブローのギャグが炸裂

 ハック&スラッシュがメインのゲーム性に大きく変わったものの、アクション面や作品の雰囲気は紛れもなく「侍道」といえる内容であった。

 舞台が一作目と同じということもあり、「坪八」や「ドナドナ」など、「侍」に登場した懐かしのキャラクターも多数登場しており、過去作をプレイしているファンならばニヤリとできる要素が散りばめられている。

 価格も3,980円(税別)ととても手に取りやすく、値段以上に楽しめることは間違いない。シリーズファンはもちろん、本作からプレイする人でも問題なく楽しめる内容となっている。本稿を読んで気になった人には強くオススメしたい1本である。