「仁王」レビュー

仁王

祝卒業! 珠玉の“死に覚えゲー”がついに発売!

ジャンル:
  • ダーク戦国アクションRPG
発売元:
  • コーエーテクモゲームス
開発元:
  • コーエーテクモゲームス
プラットフォーム:
  • PS4
価格:
7,800円(税別)
発売日:
2017年2月9日

 初出からいく歳月。あの「仁王」がついに卒業……ではなく“発売”された。「仁王」としてタイトルが発表されたのが2005年。先に結論から申し上げると、約13年の雌伏を経て現出したその姿は、費やされた時間や人々の思いを感じさせる“念の塊”あるいは“質量”を備えた本当に素晴らしいものとなった。

 筆者はα体験版の時点で夢中になってしまい、β体験版は許された時間のすべてを使わせていただいた。正直アクションが得意とはいえないため、β体験版2回目の宗茂相手に幾たび骸を晒したか記憶にないほどだが……それでも秀逸なアクション性ゆえの“指(肌)触り”が無限のモチベーションとなり、プレイを支え続けてくれた。

 乱暴な言い方かもしれないが、α~β体験版でなにがしかの“手ごたえ”を感じた筆者らユーザーは、その時点で大半が購入を決めただろうし、ゆえに本稿に目を通される方々の多くは「実際どうなの?」と懐疑的な人が多いと想定され、まずはゲーム序盤から本作の特徴や魅力などをファーストインプレッション風にお届けする。

【「仁王」ローンチトレーラー】
【オープニングムービーより】
一見「無双」系と勘違いする人もいそうな重厚感とケレン味あふれるオープニングムービー。難易度の高さに耳目が集中しがちだが、実はストーリー関連もなかなか渋い仕上がり。このあたりは当初のコンセプトや設定などが活きているのだろうか?

やろうと思えば1時間たっぷり楽しめる超豪華な導入部

 念のため概要をざっくりお伝えすると、本作は妖怪や賊がはびこる戦国末期を舞台に屈強な敵たちと渡り合うダーク戦国アクションRPG。これまでに3度リリースされた体験版はゲームの世界観に即飛び込む感じだったが、製品版では主人公「按針」ことウィリアムがなぜ日本を訪れるに至ったかを実際にプレイして体験する“導入部”が用意される。

 一般にこうした導入部はサクッと済ませられるかムービーで一気に見せられるのが常だが、本作は一部チュートリアルを兼ねたプレイパートがたっぷり用意されている。しかもウィリアムが幽閉されたロンドン塔という洋風ステージから始まるため、体験版をやっていた人ほど「えっ!」と驚いたはず。かくいう筆者も、あまりにも作りこまれたステージ構成に「もしやイギリスパートがしばらく続くの!?」と勘違いしたほどだ。

 発売から間もないため詳細は伏せるが、色々ありつつもウィリアムは宿敵を追って豊後(現在の大分県)臼杵の黒島にたどり着く。アクションRPGとしてのキャラクター育成は黒島から始まるため、ぶっちゃけ導入部は軽く流すくらいでもいいのだが……前述のとおりあまりにも丁寧に作られているため「どこに何があるのかな」とあちこち見て回ったり、塔内の全敵を相手にしていると、導入部だけで余裕で1時間くらい遊べてしまう。

 黒島にわたる直前にあらためて詳しいチュートリアルが(希望すれば)始まるが、余裕がある人は基本中の基本を身につける意味でも、導入部とチュートリアルをしっかりプレイすることをおすすめしたい。

導入部はイギリス編。ロンドン塔に幽閉された主人公ウィリアム。精霊に「死が訪れる」と告げられ脱出を試みる
とても導入部とは思えない恐ろしいほど丁寧な作りこみ。ここで獲得したものは日本に流れ着く前にリセットされるので流しプレイでもいいのだが、せっかくなので色々細かい所をチェックしたりドロップアイテムを見て楽しんでみては?

即死上等の敵とわたりあう“緊張感”を支える戦闘システム

 本作最大の特徴は、戦闘システムにあるといっても過言ではない。いわゆる“死に覚えゲー”のなかでもキャラクター側の行動選択肢がとても多く、ここにステージ構成、敵の特徴、演出といった要素が加えられることで「仁王」ならではの緊迫感あふれる戦闘シーンが生み出される。

 武器は近接が刀、二刀、槍、斧、鎖鎌の5種類。飛び道具が弓、鉄砲、大筒の3種類。近接、飛び道具ともに、あらかじめ2種類を設定してR1+方向キーで瞬時に切り替えが可能。防具は兜、胴、籠手、膝甲、脛当の各部位があり、総重量により敏捷性が変化する。

 武器や防具は敵のドロップや宝箱などから入手。ランダムで特殊効果がつくため、好みや強い武器を探し求めるハクスラ要素(ハック アンド スラッシュ)も「仁王」の特徴のひとつ。それなりに(あるいは膨大な)手間はかかるが、鍛冶屋を利用すればより強い武器や防具が手に入る。なお、特定の武器防具を同時に身に着けた際に発揮される「セット効果」がとても強力で、必要な装備の製法書を敵から入手できたときの嬉しさはとてつもなく大きい。

【初プレイのときはチュートリアルを忘れずに!】
日本に着く前にチュートリアルをプレイするか確認される。初めての人はもちろん体験版をやったけど覚えていない人は要チェック
武器や防具の入手は倒した敵からのドロップ、宝箱や骸が基本。お金があれば鍛冶屋でも可。ドロップや製作時にランダムで特殊効果がつくことがある。不要なものはアムリタ(経験値)や鍛冶屋で素材に変換できる。頻繁に利用するとお得意様扱いしてくれるようになるが、その頃には天文学的な金額を要求されるはず。ねえトメ……お得意様ってもしや意味が違うんじゃ……

 近接武器は、□ボタンで速い攻撃、△ボタンで強い攻撃。飛び道具はL2ボタンで狙いをつけてR2ボタンで射撃。防御はL1ボタン、回避は×ボタン。ここで重要なのは、近接には上段、中段、下段の“構え”が用意されていること。構えはR1ボタンと△ボタン同時押しで上段、□ボタン同時押しで中段、×ボタン同時押しで下段、刀のみ〇ボタンで抜き撃ちが可能。

 ざっくりと各構えの特徴を説明すると、上段が直線的なリーチと威力、中段が幅と防御、下段が手数とスピードに優るといったイメージで、どれが1番いいとかではなく、状況や敵のタイプなどで使いわけが必要になるといった感じ。たとえば狭い場所だと武器を横に振る中段は届く前にオブジェクトにひっかかったりするため、上段あるいは下段のほうが戦いやすいくなる。逆に複数の敵を相手にしたり横に動く敵は中段といった具合だ。

 最初のうちは“構え”がおっくうに感じられるかもしれないが、慣れるにしたがい使いわけの“実感”が得られ、そのうち敵にあわせて自然と指が動くようになるはず。テクニカルな操作が身につくと「仁王」はもっともっと楽しくなる。

地形や敵など状況によって戦いやすい武器や構えがある。迷いは死に直結するので柔軟かつ素早く対応できるようにしたい
弓や鉄砲などの飛び道具は敵のタイプによって急所を狙うと大ダメージ。悶絶中に間合いを詰めてさらに効率よく攻撃したい

気力ゲージと“残心”を制する者が「仁王」を制する

 本作では、戦闘アクションを行なうごとに体力ゲージ直下にある“気力ゲージ”が一定量消費される。たとえば武器をブンブン振っていると、そのたびに気力ゲージが減っていき、なくなるとウィリアムの息があがって一定時間無防備になってしまう。ボスはもちろんザコでさえ即死級の攻撃をしかけてくる本作において、一定時間無防備という状況がいかに危険かは説明するまでもない。

 気力ゲージは、戦闘アクションをしていなければ一定のスピードで回復していくが、L1を押した防御状態だと遅くなるうえに、防御していても重い攻撃で気力ゲージを大量に削られることが多々ある。そこで本作には、気力ゲージの消費を補う“残心”システムが用意されている。

 戦闘アクションで気力ゲージが減る際、減ったゲージの左端から白いゲージが素早く伸びていく。そのまま右端まで行き着く前にR1ボタンを押すと、減った気力の一部が即座に回復。これが“残心”と呼ばれる効果で、最大幅のジャストタイミングで行なうと、ちょくちょく敵が地面に発生させる厄介な「常世」を消す“常世祓い”になる。残心をするとしないでは、攻撃の手数が段違い。このあたりの習熟度で楽しさがグン! と上がるのも「仁王」のいいところ。

 最初のうちはゲージを見ながらじゃないと難しいかもしれないが、できればコンボなど一連の入力とあわせてタイミングを身体に刻みたい。なお、気力ゲージの消費は後述の一部スキルも大きく関わってくる。特定動作で残心が発動するようになるスキルは、優先的に覚えるとがぜん戦いやすくなる。

慣れないうちは比較的弱い敵を相手に練習したほうがいいかも。武器とコンボごとにタイミングを覚えて自然にやれるのがベスト

敵にも気力ゲージがある! ~視覚化による納得のシステム~

 一般に気力ゲージ的なシステムはプレーヤー側だけにあるものだが、なんと「仁王」は敵側にも設定されている。気力MAX状態の敵はザコといえども厄介だが、気力ゲージが減った敵は、ボス級といえども対応しやすくなる。このあたりの戦略性が「仁王」ならではのポイントで“敵の行動パターンを把握する”というアクションゲームの基本中の基本が、より一層重要なものとなっている。

 個人的に、気力ゲージは「仁王」の生命線ではないかと考えている。最大のポイントは、プレーヤー側はもちろん敵側の気力ゲージも“視覚化”されていること。敵味方に同じルールが適用されているという“フェア感”が、ユーザーの得心に大きく作用しているように思われるのだ。もちろん完全に平等なんてことはないが、少なくとも敵の気力ゲージがMAXのときに強引に仕掛けて返り討ちにあったとして、それは明らかに「己が悪い」と自覚できる。足場を踏み外すなどあからさまな例をのぞき、死因の大半は冷静さを欠いた気力ゲージの無駄遣い、もしくは仕掛けるべきチャンスを何度も逃すといったケースが多いように思われる。

 本作はザコ敵にも攻撃の種類や回数に幅を持たせるなど、戦いが単調にならないようさまざまな工夫が施されているが、それもこれも気力ゲージという特徴的かつ堅牢な土台のうえに成り立っている。

スキルによっては気力ゲージが尽きて肩で息をしている無防備な賊に大ダメージを狙えるものがある
プレーヤー側とまったく同じではないがボス級にも気力ゲージがあり、一部例外をのぞき損耗を狙う意味もある

アクションRPGなのでキャラクター育成も重要

 シビアなゲーム性により最重要はなんといってもプレイスキルだが、本作は“アクションRPG”なので“キャラクター育成”で補える部分も大きい。

 敵を倒すなどして得た経験値“アムリタ”を消費して能力パラメータを高め、さらに獲得したスキルポイントで近接武器、忍術、陰陽術といったスキルを伸ばしていく。能力パラメータとスキルはアイテムによる振り直しが可能で、万が一「うわコレきつい」となってもやり直しがきく。ただし、振り直しアイテムは購入のたびに価格が上がっていく。

 最初のうちは「何が1番効率がいいのか?」となりがちだが、色々やってみた印象では「肌に合う」とか「これが好き」といったものを素直に伸ばしていくのが1番いいように感じられた。残心関連、パッシブ、一部忍術に「これは取っておかないと!」といったものはあるが、あくまでも便利とか有利に働く範疇。特に効果が高いものは回数制限があるし、ゲームを土台から壊してしまうものではない。とはいえ、筆者程度の腕ではアイテムフル活用でも猛烈に難しいのだが……。

 敵ドロップをまんべんなく使うために平均的にいくか、一芸に秀でたエキスパートを目指すか。やり方次第でどれでもいける懐の深さは「仁王」らしさのひとつだと強く感じる。もし続編がでるなら、願わくばこの路線を堅持していただきたい。

能力ポイントと並行してスキルを獲得してキャラクターを強化。近接武器に使うサムライスキル、ニンジャスキル、陰陽スキルの3種類があり、それぞれポイントを消費して獲得。上位スキルはゲームを進めて修行で段階的にアンロックしていく
経験値による成長のほか、リワード達成ポイントを使って特殊能力や効果を得る恩恵ポイントシステムもある。選んだ項目に新たな恩恵が追加され、選ばなかった項目はそのまま残り続けるのが面白い

多彩なステージ構成とボリューム ~木霊探しも楽しい!~

 本作はクエストごとにプレイを進めていくシステムだが、メインのほかにサブ、さらにはオンラインで定期刷新される高難易度ミッション「逢魔が時」が用意されている。メインを進めていくだけでも手ごたえは十分すぎるくらいで、サブや後述のオンライン要素を並行で進めていくと「これいつ終わるんだろう?」とさえ思えてくる。しかも後々DLCまで控えているというのに……。

 数はもちろん“質”についてもぬかりはない。たとえば冒頭の黒島から始まる九州のクエストは「 体験版に比べると微妙に難易度が下がってない? ぬるくなった?」と油断していたら、中国近畿と進めるに従い「すいません! 舐めてました! 本当にごめんなさい!」と土下座したくなる“死に覚えゲー”の本領発揮。

 特に九州を出た直後の厳島は、序盤とは思えないシビアさに涙が出そうになったほど。海に落ちて即死するたびに冷静さを失い「熱くなったら負けって、今まさに身に染みてわかってるんだけどなぁ……」と自己嫌悪。ちょっと落ち着こうと横になっても、すぐ「あそこはこうすれば……」と脳内シミュレーション。こうして原稿を書いている間さえ、コントローラーに手を伸ばしたくて仕方がない。

 敵のバリエーションも“和風”テイストがぞんぶんに反映された素晴らしい造形とモーションでプレーヤーを苦……楽しませてくれる。ただし、単体相手のときはめでる余裕もなくはないが、複数となれば阿鼻叫喚でそんな余裕は微塵もない。敵配置も徹底的に練られており、おおよそ序盤を過ぎた頃には「ハイハイ、これ絶対あそこに1匹いるわ」などと猜疑心の塊と化した自分に気づかされる。

 ステージ内の木霊たちを見つけるといった探索、さらにはハクスラ要素の数々が高いリピート性を生み、プレーヤーを飽きさせないのもポイント。余談になるが(というかα体験版の頃から執拗にいってますが)木霊たちは本当にキュートで、しぐさのいちいちが可愛くて仕方がない。もしシリーズが続くなら、木霊たちが本作の“アイコン”になってくれたらなぁ、としみじみ思う。

ステージや敵のバリエーションは豊富の一言! といっても戦闘中は必死だし、探索中も不意打ちを警戒しなくちゃだし、プレイ中はこの造形美を堪能する余裕がない……
史実を踏まえた展開にファンタジー要素がからみ独自のストーリー性をかもしている。影絵演出や人物描写が渋くいい感じだ
仕草がとてもかわいい。本編もさることながらタイトル画面放置でじゃれあう姿もまたかわいい

カジュアルに遊べるオンライン協力プレイ

 本作のオンライン要素は、オンラインで他プレーヤーが死んだ場所に出現する「血刀塚」、ひとりの他プレーヤーと一緒にプレイできる「一期一会・まれびと招喚」、特定の勢力に所属して戦う「勢力戦」がある。

 「血刀塚」は、地面に突き立った赤い刀の近くで〇ボタンを長押しすると、そこで死んだ他プレーヤーのキャラクターが“屍狂い”となって襲い掛かってくるというもの。実際にそこで死んだプレーヤーのキャラクターだけでなく、NPCとしてあらかじめ設置されているものもある。キャラクターレベルや装備、さらにはそのプレーヤーの行動パターンが反映されるため、うかつに手を出すと本当に酷い目にあわされるが、まれびと招喚に必要な「お猪口」などアイテム目当てについつい狙いたくなる。

 「常世同行」と「一期一会・まれびと招喚」は、いわゆるオンライン協力プレイ要素。誰かを手助けしたいプレーヤーは、拠点の社から「一期一会」で検索。このとき、ゲーム中の社から「まれびと招喚」で手助けを求めるほかのプレーヤーがいればマッチングが成立。「常世同行」は、特定のミッションを最初から協力プレイしたい人向け。ステージなど条件のほか、合言葉を設定して特定のフレンドを呼ぶことも可能。ゲーム中の社からの「まれびと招喚」のみ、助力を乞うごとにアイテム「お猪口」をひとつ消費する。「お猪口」は通常プレイだとなかなか手に入らないが、屍狂いが比較的ドロップしやすいようだ。

 「勢力戦」は、紅白にわけられた武家のいずれかに所属し、獲得した武功で7日ごとにオンラインランキングを競うというもの。武功は、倒した屍狂いのレベルなどに応じて加算。武家ごとに能力アップなどの特殊効果が得られるほか、勝った勢力には豪華報酬が、負けた側も武功に応じて報酬がそれぞれ与えられる。本稿執筆時点でまだ7日どころかその半分も経過していないため、結果に関わらず具体的な報酬内容が気になるところだ。

「常世同行」は片方が生きていればいいが、「一期一会・まれびと招喚」は手助けを求めたホスト側が死ぬとその時点で終了。ソロプレイのようなペナルティはないためカジュアルに協力プレイに臨めるのがいい

α体験版レポに引き続き“アレ”とは似て異なると強く言いたい

 α、βの期間限定体験版をやるたびに高まる一方だった、自身の「仁王」熱。それは製品版でピークと思いきや、やればやるほどさらに上昇。体験版で得た“感触”や“手ごたえ”そして“期待”を軽々と超えてくるような作品は稀有だが、「仁王」くらい文句なしに「やってくれる!」と膝を打つような作品にはそうそう出会えない。体験版で感動したリトライ時のロードの速さは、もちろん製品版でも健在。これのおかげ(?)で本当に止めどきが見つからない。「ブロック崩し」から延々ビデオゲーム沼の底を揺蕩(たゆた)い擦れに擦れまくった筆者がそうなのだから、刺さった人によっては“神域”まで十分ありえると思う。

 個人的にはα体験版から削られた要素で気に入っていたものもあるが、国内外のユーザーの声が反映された製品版ディレクションは十二分に納得がいく完成度で、もはや何の杞憂もない。唯一気になったのは、SNSなどで今なお本作を“和風「ダークソウル」”と表現する人たちが(本当に極一部だけど)いることくらい。そういう言い方が簡単かつ便利なのはわかるし、もしかすると何某かの意図を込めているのかもしれないが、それは「仁王」はもちろん「ダークソウル」や「ブラッドボーン」に対しても失礼ではないかと筆者は思う。

 α体験版記事の繰り返しになるが……同じ“死に覚えゲー”というくくりでも「仁王」と「ダークソウル」、「ブラッドボーン」は“似て異なる”ものだ。「ダークソウル」と「ブラッドボーン」は、レベルデザインのスケール、そこでプレーヤーがやれること、作り手側がやらせたいことが明確で、古典的名作にも通じる“構成美”がある。一方の「仁王」は、似たコンセプトでもウォー(ボード)ゲームでいえば作戦級を戦術級に寄せたアプローチ。プレーヤーの選択肢を増やしつつ、レベルデザインなどもそれにフォーカスした構成になっている。なにより差別化が図られた部分がきちんと“活きている”ことが重要だ。

 ゼネラルプロデューサーのシブサワ・コウ氏が「ブラッドボーン」にハマった影響下で「仁王」の最終コンセプトが固められたのは、さまざまな記事などで周知のとおり。和風云々はそこに根差したものだろう。だが、絵柄や一部を変えた程度のパクリが通用するのは、ゲームに関する知見が浅いユーザーが今なお大多数を占めるソーシャル市場くらい。コーエーテクモほどの大手が、フォロワーレベルを据え置きで出す意味はない。

 ソーシャル全盛の現代、正当性などと関わりなく刺激が強く簡潔な表現ほど独り歩きしやすい。ただ、もし和風云々で「仁王」に手を伸ばした人がいたとして、さほど問題はないかと思われる。なぜなら、その先入観は“最高にいい意味で裏切られる”だろうから。

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