2016年12月6日 00:00
バンダイナムコエンターテインメントより11月22日に発売されたプレイステーション 4/PlayStation Vita用ガンダムシミュレーション「SDガンダム ジージェネレーション ジェネシス」。今作は、いわゆる「宇宙世紀もの」のガンダム作品に対し自らが作ったオリジナルの部隊を指揮して各作品の戦場へと介入する原作追体験型のゲームとなっている。
つまり、地球連邦軍とジオン軍が激戦を繰り広げた「ジャブロー攻防戦」や、アナベル・ガトーに奪われた「ガンダム2号機の奪還作戦」など、宇宙世紀史上の幾多の戦いに、自分のモビルスーツ部隊を率いて参戦できるのである。
「SDガンダム ジージェネレーション ジェネシス」はガンダムのキャラクター性を活かしつつ、いくつもの戦場を駆け抜けていく。詰め将棋のような息詰まる戦いが楽しめる高い戦略性と、やり込み要素の強い育成など魅力的な要素がたくさん詰まっている。実は筆者は「ジージェネ」シリーズは今回が初挑戦。初心者という視点からも本作の魅力を語っていきたい。
プレイの順番は自分次第! 17作品の「宇宙世紀」に参戦せよ
本作には「機動戦士ガンダム」から「機動戦士ガンダムUC」まで、宇宙世紀に関連したガンダム作品のストーリー17作品分が収録されている。また、ゲーム内に登場するモビルスーツや戦艦など(総称・ユニット)は映像化されている作品のものだけでなく、他のガンダムゲームに登場したものや本シリーズオリジナルの機体も含まれている。その関連作品数はトータルで40ほどにもなるという充実ぶりだ。
各ステージは原作のストーリー上で重要な位置づけの戦場を再現した形で構成されており、それらが時系列に連なって用意されている。例えば「機動戦士ガンダム」のステージを最初から最後までプレイすれば「機動戦士ガンダム」の物語をダイジェストながらもすべて追体験できる、ということになる。
このさまざまな作品のステージは、どういう順番でプレイしてもかまわないようにできている。最初に「機動戦士Zガンダム」のステージ1をプレイしたあと、「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」のステージ1をプレイして、また「機動戦士Zガンダム」に戻り、今度はステージ2をプレイする……といった変則的な進め方も可能となっているというわけだ。ただし、ステージ1をクリアせずにいきなりステージ2から始める、というようなことはできないのであしからず。
なお、各ストーリーにおいては、プレイの度合いによって獲得できるパイロットやモビルスーツ、戦艦などがアンロックされる。それらは作品との関連性があるため、例えば「ガウ攻撃空母を手に入れたい!」となれば、「機動戦士ガンダム」を重点的にプレイしていく必要があるわけだ。どのストーリーをどう遊んでいくかは非常に迷うところだろう。
今回、筆者は最初にプレイするシナリオとして、いわゆるファーストガンダム、「機動戦士ガンダム」を選んだ。筆者が初めて見たガンダムであり、スタートとしてもこれがふさわしいと思ったからだ。実際に遊んでみると、ゲームが戦闘メインである以上、すべてのシーンが語られているわけではなかったが、そこは割り切ってプレイできた。
それでもゲームの展開で、ガンダムが大地に立ち、シャアが若さゆえの過ちを認めず、ガルマが謀られるシーンなどが、ゲームマップ上だけでなく、イラストやテキスト、ムービーなどのさまざまな形で再現されると、否が応でも気分が盛り上がっていった。
とくに印象的だったのは「ジャブローに散る」のなかで、シャア専用ズゴックが登場したシーンだ。SDであってもシャア専用ズゴックの格好良さがきちんと再現されており、それがジムを貫くシーンをムービーで表現しているのは「制作サイドもわかってるな~!」と感じた。直後に戦闘マップ上でウッディ大尉がファンファンによる特攻を行ない、散ってしまったあとにステージがスタート……と、導入部分としては完璧な流れだった。また、直後のジャブロー攻防戦にしても想像以上に多くの敵ユニットが登場することで緊張感も高まり、世界観が存分に楽しめたのもポイントが高かった。
精鋭を引き連れて実戦をかいくぐれ!
「SDガンダム ジージェネレーション ジェネシス」は本格的なシミュレーションゲームだ。プレーヤーは原作をモチーフとした様々な戦場を戦っていく。システムはターン制で、MSには武器により様々な射程が設定されている。基本的に敵は自軍を上回る数が出撃しており、プレーヤーはどうユニットを動かし、敵を撃破していくかに頭をひねることとなる。
ステージには「勝利条件」と「敗北条件」のほかにステージ内でのイベントを発生させるための「イベント条件」および、達成することでボーナスが得られる「チャレンジ条件」といった各種条件が設定されている。ゲームの流れとしては、イベント条件を満たしてステージイベントを進行させつつ勝利条件を満たしていくことになる。もちろん、その間に敗北条件が満たされてしまうとゲームオーバーとなってしまうので注意が必要だ。
本作のユニットはHP制となっていて、攻撃を受けるとこれが減り、ゼロになった時点でユニットが破壊されてしまう。また、ユニットにはエネルギーも設定されており、武器を使用するとこれが消費されていく。HPもエネルギーも母艦に帰還すれば補給が受けられるため、敵が多いマップなどでは補給のためにこまめに帰還することが攻略の第1歩となる。ちなみに、戦艦は毎ターン、わずかながらも自動的に回復するようになっている。
また、戦闘においてはユニークなシステムが導入されており、オリジナリティの高い戦略性を持ったバトルを楽しむことができる。その1つが「チャンスステップ」。これは敵ユニットを撃破した味方ユニットが再度行動できるようになるというもの。ユニット間の戦力差がよほどなければ単機の1撃で敵ユニットを撃破することは難しいが、2機以上で協力して敵のHPを減らす役とトドメを刺す役を決めておけば、通常よりも早いペースで敵を撃破していける。
チャンスステップは1機につき1ターン中2回までと決まっているために延々と繰り返すことはできないが、うまく利用すれば最大、3連続まで相手を撃破できることになる。また、それによってパイロットのテンションも高まり、ダメージの大きなクリティカル攻撃が出やすくなってくることを考えると、ステージ攻略のみならず、ユニットの経験値かせぎにも最適のシステムと言えそうだ。
ほかにも、支援連携攻撃などは実用性の高さもさることながら、見た目にもかっこいいのがポイント。先日、弊誌の記事でも紹介したような特定の条件で発生するものだけでなく、お気に入りのユニットの組み合わせによる支援攻撃でも十分に見応えがある。
戦艦専用の「グループ攻撃」は圧巻で、発動時は戦艦から一定の範囲内にいる、その戦艦所属のユニットが一斉に攻撃を行なうというもの。戦艦のみに許された攻撃なので多用はできないが、効果は高い。こういった多彩な要素を組み合わせ、不利な戦況を覆していくのが本作の大きな楽しさだ。
オリジナルチームの育成要素もたっぷりのめり込める!
ガンダムの宇宙世紀100年の作品の世界を凝縮し、ゲームとして再現した本作だが、その特徴は最初に述べたように自分で編成したモビルスーツ部隊を指揮してさまざまな戦場に介入していける点にある。以下では、そのモビルスーツ部隊編成における魅力を語っていきたい。
ゲームの大きな楽しみが「オリジナル部隊」を作り、各戦場に参加していくことだ。オリジナル部隊は用意されているオリジナルキャラクターで構成された部隊を使ってもいいが、自分好みのカスタムキャラクターを作成して参戦することもできる。宇宙世紀の英雄たちを自分の部隊に編成できる「スカウト」により、様々な宇宙世紀の英雄達を部隊に加えて育てていくことが可能だ。
「スカウト」はステージを進めていくことでキャラクターが追加され、ゲーム内通貨の“キャピタル”を消費することで部隊に組み込める。ガンダムタイプの歴代パイロットを集めたドリームチームで強敵に挑んだり、ドズルにガイア、オルテガ、マッシュを率いさせて戦場を駆けめぐる、といった感じの妄想力全開編成でガンダム世界を堪能できる。
なお、原作で強かったキャラクターは本作においても基本ステータスがそれなりに高いが、そうではなかったキャラクターでもどこかしら意外な個性が隠されていることもある。例えば、「機動戦士ガンダム」のアムロであればパイロット向けの能力値が最初から高水準のものになっていたり、「機動戦士ガンダムUC」のタクヤはパイロットにはまるで向いていないが、整備のステータスだけは高いなど、きちんと物語に即した形だ。
ちなみに、能力の高いキャラクターほど高いキャピタルを要求されるので、ゲーム開始時から理想のフルメンバーで、とはいかない。まずはキャピタルを稼ぐためにゲームを進めていくこととなる。その努力の道も来るべきドリームチーム結成のときを思えばどうということはないはずだ。
意外だったのはハロもパイロットとして選べた点だが、こちらはほぼすべての能力値の値が「86(ハロ)」になっていて、遊び心が感じられた。ちなみにこの86という数字は、低すぎるわけでもなく、かといって高くもない微妙な数字となっている。また、キャラクターには成長要素も用意されているので、基本の数字だけでは一概に判断できないのも面白いところと言えるだろう。
筆者は、最初に右も左もわからない状態でカスタムキャラクターを2キャラクターほど作成。また、ハロが低コストでスカウトできたので、ついでに雇用してみたのだが、ハロはアビリティに全体回復を持つなど意外に優秀なキャラクターだった。なお、ハロは現在もカスタムキャラクターともども愛用している。
もちろんモビルスーツや戦艦もたっぷり! 理想の機体を手にしよう!
ゲームの“真の主役”といえるモビルスーツやモビルアーマー、戦艦(総称は『ユニット』)などを揃えていくのも本作の大きな楽しみの1つ。プレーヤーには最初に戦艦1隻と4機のモビルスーツ、2機のサブフライトシステムが与えられる。これを使えば問題なくゲームを進めていけるのだが、余裕があればこのユニットの編成にもこだわっていただきたいところだ。
現在使用しているキャラクターにユニットを合わせてみたり、特定のテーマに沿ったユニット編成をはじめるとがぜん楽しくなってくるが、クリア重視で強さのみを追求するというのもアリ。ただし、最初から強力なキャラクターを用意できないのと同様にユニットも序盤から強力なものは獲得できない。とくにゲーム開始直後はユニット選択の自由がほぼないので、まずはお目当てのユニット獲得まで我慢を強いられる。
ユニットを増やすには、ステージ攻略中に降参したユニットを鹵獲するか、ユニットごとに定められた条件を達成したのちに自分で生産していくのが基本となる。鹵獲は無料だが、生産については強いユニットほど高いコストがかかるため、気軽に戦力を増強させるのは難しい。
なお、ユニットには成長要素があり、戦闘でEXPを獲得するとそれに応じてユニットのステータスもアップし強くなっていく。また、モビルスーツに関しては「開発」を行なうと、レベルアップした機体をベースに別のモビルスーツへと強化していける。低レベルのまま開発を行なうと逆に弱くなるのだが、基本的にレベル3以上に育ててから開発をすれば、それなりに強いモビルスーツへと進化させることが可能だ。
数ばかりを揃えようとしてジムやザクといった比較的早い段階で開発できるユニットばかりを増やしてもしかたがないので、戦場で敵を撃破してモビルスーツのレベルをたくさん上げ、強力なモビルスーツ軍団を整えていきたい。とはいえ、強いユニットを作り出そうとすると、やはりそれなりに手間はかかってしまうもの。「いざプレイしてみたら弱いモビルスーツばかりしか持てずモチベーションが維持できない……」などということのないよう。
筆者の場合は、最初から所持していたトルネードガンダムとフェニックス・ゼロのレベルを上げてから開発を重ね、比較的簡単に強いユニットを揃えることができた。それをもとに「機動戦士ガンダム」のステージをクリアしてキャピタルをかせぎ、真のお目当てである「機動戦士ガンダム 0083 STARDUST MEMORY」に登場したユニットを徐々に揃えていく、という形でプレイしている。
筆者は今回、初めて「ジージェネレーション」シリーズに触れたわけだが、正直言ってこれほど楽しいガンダムシミュレーションだとは思わなかった。ガンダム系で最後にプレイしたシミュレーションゲームは「ギレン」シリーズだったが、あれとはまたちがい、SDの良さを生かしたカジュアルさとゲームテンポのよさで楽しめている。また、シナリオの数が多いのも好印象だ。
ただ、本作に不満を感じた部分もある。1番大きいのは、「ちょっと初心者にはわかりにくいゲームだな」というところだ。チュートリアル的なものがゲーム中では最初にテキストで1回表示されるのみで(メインメニューの「ギャラリー」であとから確認は可能)、本作ならではの駆け引きや、高い戦略性を存分に味わいにくい。もう少し導線がきちんとしていれば、と感じた。
また、オリジナルキャラクターがどうして戦場にいるのか、彼らが何者なのかの説明が一切ないところもびっくりした。こういったところはシリーズの“お約束”なのかもしれないが、だからこそ“疎外感”を感じてしまった。
もちろんこういったポイントはゲームをプレイして、のめり込めば全く気にならなくなる。とにかく、ユニットやパイロットを育てて強いモビルスーツを獲得していく楽しさは何者にも代えがたいものがあるからだ。このあたりは「ガンダム万歳!」といったところだろう。豊富なシナリオやチャレンジ要素が用意されているおかげで、ハマれば長く楽しめることは間違いない。
本作は「極上ガンダムゲーム」である。ぜひ、自分の好きなように最高の「ガンダムごっこ」を楽しんでいただきたい。
(C)創通・サンライズ
(C)創通・サンライズ MBS
※画面はPS4版のものです。