★ダウンロードコンテンツショートレビュー★
荒廃の世界を離れて、アラスカの激戦へ!! 巨大戦車との戦いが待つ外伝的ストーリー 「Fallout 3 Operation: Anchorage」 |
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タウンロードコンテンツ(以下、DLC)は、現行のコンシューマゲームにおいて、我々の遊びの一角を占める重要な要素になりつつある。追加シナリオから、追加マップ、衣装等のデータ、追加音楽、ミニゲームなどなど種類は様々で、既存のゲーム世界の魅力をグッと高めてくれる存在だ。
本稿は「Fallout 3」のDLC第1弾「Operation: Anchorage」を取り上げたい。本DLCが追加されることでプレーヤーは、コンピューターシミュレーションを通じて200年前の過去の世界を仮想体験できる。「Fallout 3」は核戦争後の世界を生き抜くための戦いと、そこに生きる人々を描く作品だが、「Operation: Anchorage」では軍人として任務に挑むという、ひと味違った体験ができるのだ。
DLCの一連の追加要素により、ゲーム全体はどう変わり、どのようなコンテンツに進化するのか。追加要素はどんなユーザーに向けているのか、ダウンロードするとどの辺がおトクなのか。これからも様々な作品を取り上げていくのでお楽しみに!
【Operation: Anchorage】 | |
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■ 極寒の地での決死の奪還作戦。「失敗すれば死」の戦闘シミュレーション始動!
今回のクエストはすべて軍事シミュレーションのものとなる。失敗したら死亡するという訓練システムは、核戦争前の世界の異常さも物語っているように思える |
戦闘ホバークラフトは本DLCを象徴する乗り物。自分で運転できないのが残念だ |
「Operation: Anchorage」は、RPG「Fallout 3」のDLC第1弾である。「Operation: Anchorage」はXbox Liveを通じてダウンロードすると“クエスト”の1つとしてプレイできるようになる。ダウンロード後にゲームを始めると「アウトキャスト」からの暗号通信を傍受できるようになる。暗号通信に従って進んだプレーヤーは、戦前の軍事施設にたどり着く。ここではあるシミュレーションをクリアすることで戦前の装備が手に入るという。
このシミュレーションのテーマが「Operation: Anchorage」だ。核戦争の起きる200年前、中国軍に占拠されたアラスカの精油所を奪還するための作戦にプレーヤーは参加する。シミュレーションは現実と区別がつかないほどにリアルで、シミュレーション内の死は現実世界の死を意味する。
シミュレーションポッドに入ると、そこは極寒のアラスカ世界。目もくらむ高さの断崖絶壁に設置されたわずかな足場を辿って、アメリカ軍の侵攻を阻む中国軍の迫撃砲を止めなくてはならない。プレーヤーの装備は消音ピストルとナイフだけ。後の装備は随時戦場で調達しつつ進めなくてはいけない。
「Operation: Anchorage」は、核戦争後の世界を描いた「Fallout 3」とは全く別のベクトルを持った作品になっている。武器を手に戦地を進み、敵をなぎ倒しながらオブジェクトを達成していくというFPSそのままの展開である。現実世界に戻らないままクエストが連続するため、途中で街に戻ることもできず、体感的にも他のクエストとは違った大きなボリュームを持っている。
このクエストそのものにレベル制限はないが、過酷な戦闘が続くため、基本となるSmall Gunsのスキルと、Big GunsかEnergy Weapons、Melee Weaponsのいずれか1つくらいはしっかり上げた上で望みたいところだ。また、素手戦闘用の武器がほとんど登場しないのも注意したいところだ。この軍事シミュレーションの中でも経験値を稼ぐことができるので、レベルが上がった際は「Operation: Anchorage」に適したスキルを習得するのもいいだろう。
ローカライズも一工夫してある。原文が「中国語なまりの英語」なのか、ちょっと甲高い、中国の人が日本語を独特のイントネーションで話す感じをうまく出している。リアルに考えれば、アメリカに来たからといって敵が英語を話すとも思えないが、声優さんの熱演もあって、本作独自の味を加えている。
アウトキャストのスタッフが解析しているシミュレーションマシンで200年前のアラスカの戦いを体験することになる。危険なミッションがはじまる | ||
軍事シミュレーションであることを気付かせるかのように敵は倒すと消え去る。断崖絶壁や、広大な戦場など本編ではなかった風景が楽しい |
■ 戦いに特化した展開、新兵器を駆使して中国軍と渡り合え。クリア後には超兵器が我が手に!
目眩のするような高さに張り巡らされた橋。たった2人で迫撃砲を破壊しなくてはならない |
ホバークラフトの戦車「キメラ」にロケット砲で立ち向かう |
「Operation: Anchorage」は「Fallout 3」本編とは全くテイストの異なる世界が展開する。フィールドも足がすくみそうな断崖絶壁、敵の砲弾が降り注ぐ塹壕、雪原地帯と核戦争後のアメリカとは全く違う風景が広がる。本編を深くプレイしているほど違った感覚が楽しめる。スタッフがあえてまったく“別なこと”をしてみたかったという気持ちが伝わってくる。
最初は断崖絶壁に作られた足場を通り、アメリカ軍本隊に砲撃を加える迫撃砲を爆破する特殊任務につく。クエスト中はシミュレーションのため、これまで持っていた装備は一切持ち込めない。また、倒した敵は装備ごと“消失”してしまうため、敵の装備も奪って活用するということもできなくなっている。全体的に遠距離の射撃戦が多いため、Small GunやBig Gun、Energy Weaponsあたりのスキルは高めにしておきたいところだ。
クエストで入手できる武器はほとんどが既存の武器だが、新しい武器として使用できるのが近接用の「トレンチナイフ」と、プラズマ兵器の「ガウスライフル」だ。どちらも非常に強力だが、トレンチナイフは近付かなくては使用できないため、銃撃戦が多い「Operation: Anchorage」では使い道が限られる。一方、ガウスライフルは戦車とも渡り合えるほどに強力なEnergy Weapons系のスナイパーライフルだが、弾薬の数が少ないため、使い所を考えなくてはならない。
迫撃砲破壊ミッションでは、特殊工作兵のような感覚が追体験できる。現われる敵を排除し爆薬を仕掛け任務を遂行していく。相棒のベンジャミン軍曹は強い兵士でプレーヤーをしっかりフォローしてくれる。敵の武器を奪うことはできず、回復アイテムは出てこないが、頻繁に回復ポイントが現れ、体力と弾薬の補填ができる。無理をせず敵を撃ち倒していけばいいだろう。
迫撃砲を破壊した後も、主人公らは広いフィールドを舞台にいくつもの任務をこなすことになる。敵の砲弾が降り注ぐ塹壕を進んだり、敵の施設に突撃をかけたりと、完全に戦争をテーマにしたFPSの様なノリである。特に面白いのが中国軍の巨大戦車「キメラ」との戦いだ。軍事用ホバークラフトで、ビーム砲やマシンガンなど強力な武装と装甲に覆われている。この兵器といかに渡り合うかが「Operation: Anchorage」攻略の鍵となっている。
フィールドでの任務は、「部下」を連れ歩ける。また、自分の装備もスナイパー用セットや、近接用セットなどいくつかの種類からカスタマイズができる。任務がきついと思ったら、装備を変えて取り組むのも手だ。冒険と探索が楽しい「Fallout 3」本編とは違うが、「キメラ相手だからロケットランチャーを持っていこう」など、軍人のロールプレイが楽しめる。非戦闘系のスキルが充実している「Fallout 3」だが、こと本DLCに限っていえばほぼ戦闘系のスキルのみが求められる。あえて本編とは意識を切り替えて、戦闘に特化した成長させるのもありかもしれない。
シナリオと共に「Operation: Anchorage」の大きな魅力が「新装備」である。200年前のアメリカ軍、中国軍の装備がクエスト終了時に入手できるようになる。どれも強力なもので、当時の科学技術の高さをうかがい知ることができる。
ガウスライフルとトレンチナイフはクエスト内で手に入れられるが、それ以外にもクエスト内では様々な新兵器が登場する。プレーヤーは特別な任務に奔走するが、重火器を手に前進する米軍本隊は寒冷地用の特別なパワーアーマーに身を包んでいる。また、中国軍は「中国軍のステルスアーマー」という特殊装備を持っている。透明になれるというやっかいなアーマーで、透明中はV.A.T.Sでは命中確率が0%になってしまう。攻撃するためには目視で銃弾を撃ち込んだり、手榴弾でダメージを与えなくてはならない。この他、追加ダメージを与えられる「ショックソード」も敵が使ってくる。
クリアするとこれらのユニークウェポンが根こそぎゲットできる。いずれも非常に強力だが、その一方で本編のバランスを崩してしまうのは問題だと感じた。「Fallout 3」でも強力なアイテムが登場するが、それらは往々にして難易度の高いクエストのベストな選択肢を選ばないと手に入らないものだったりする。対して、「Operation: Anchorage」ではクリアするとすぐにそれらに勝るとも劣らないアイテムが1度にごっそり手に入ってしまう。追加コンテンツとはいえ、いささか安直過ぎるかなとも思った。
断崖絶壁を越え、米軍に攻撃を加え続ける迫撃砲に到着。爆薬を仕掛けて破壊する | ||
味方の本隊と合流して、さらなる破壊工作へ。使用する武器を選択して出撃する | ||
左から、トレンチナイフ、ガウスライフル。右はシミュレーションクリア時に入手できるステルススーツと、ショックソード |
■ 追加クエストとしてはかなり異質な存在。できれば本編クリア後に挑戦して欲しいところ
迫撃砲を破壊。ミッションを遂行する楽しさは、本編ともまた違った味わいがある |
全体的な感想としては「Operation: Anchorage」は名実共に「Fallout 3」の外伝的エピソードなのかな、という印象を持った。このクエストに挑戦すると、本筋から大きくはずれたストーリーを強制的にプレイすることになり、テイストも戦争をテーマにしたFPSそのままで、作品の方向性そのものが明らかに違う。「Fallout 3」は足の先から頭のてっぺんまで“核戦争後の世界”に浸かりきる作品であるため、この方向性の違いは違和感があった。コアなファンは“違う”と感じる部分が多いのではないだろうか。
一方で本作は「Fallout 3」のエンジンを使って、何か違うことができないか、というスタッフのチャレンジ精神を面白く感じた。本編には断崖絶壁や広大な戦場はなかったし、軍隊となって特殊任務を遂行するというのもできなかった体験だ。「Fallout 3」の世界観やストーリーではなく、システムでの冒険を試みた作品だと思った。もうひとつ、「米国の開発者は本当にFPSが好きなんだなあ」とも感じた。既存のシステムである程度のスケールのFPSを作りたい、自分たちもFPSライクな作品が作れるんだ、という気持ちがスタッフの中にあったに違いない。
筆者の意見としては、この「Operation: Anchorage」は本編をまずクリアして、ゲーム世界を完結させた上で、頭を切り換え、ゲームの「幅」としてプレイした方が楽しいと感じた。ゲーム内の“現在”の荒廃した核戦争の世界に住む、破滅から再び立ち上がろうとする人が見た「過去の夢」というのが本作のポジションではないかと思う。今日を生き抜くギリギリのサバイバルや、ゆくべき人類の道を想いをはせる、変貌し尽くした世界をまさに歩いている「Fallout 3」の“現役”のプレーヤーにとって、このアラスカの世界は異質であり、夢としては長い。プレイ中にこちらに寄り道してしまうと、本編とはひと味違う作品として、気持ちを切り替えて遊んだ方が楽しいのではないだろうか。
「Fallout 3」はこの後も2つのDLCがアナウンスされている。公式ページでは2つめの「The Pitt」のムービーなども公開されている。こちらはレイダーが支配する街と言うことで、「Fallout 3」の要素をより濃くピックアップした世界を体験できそうだ。公開を期待したい。
軍隊に所属し、味方と共に戦う。本編と大きくテイストが違うため、外伝として割り切ってプレイしたいところだ |
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□「Fallout 3」のホームページ
http://www.bethsoft.com/jpn/fallout3/index1.html
(2009年 4月 3日)