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【スマホアプリ今日の1本】「ひとほろぼし」何も生まない“滅ぼす”行為
巨大生物が破壊するだけ。物悲しさが募る独特の世界観
(2016/4/12 00:00)
「ひとほろぼし」の3大ポイント
・物悲しさを覚える独特の世界観
・操作はタッチするだけ
・難しくはないがプレイ時間が短いのが残念
「世界を破壊したい」。ゲームにおいて、その衝動は時に実現できる。日頃の鬱憤を爆発させて、建物などをなぎ倒していけば、爽快な気分になることだろう。しかし同じ破壊行為でも、なぜか物悲しい気分になってくる作品、それがところにょり氏個人によるAndroid/iOS「ひとほろぼし」だ。
しっとりとしたサウンドと無機質なデザインでどことなくはかなげなイメージを抱いてしまう本作。ストーリーはなく、プレーヤーは謎の巨大生物となり、シルエットで表現される街を破壊し人を滅ぼしていく。この巨大生物は紫色の「へんなえきたい」を吐き出し、攻撃してくる戦闘機や戦車を戦闘不能にさせる。そして建物などと一緒に踏みつぶしていくのだ。
ゲームは2D画面、横スクロールで展開され、謎の巨大生物は自動で右へ右へと移動していく。初めは巨大生物しかいない場所から少しずつ建物が増え始め、段々と大きな街へと進んでいく。街が大きくなるにつれて、巨大生物を攻撃する戦闘機や戦車の数も増えていく。
プレーヤーは謎の液体を吐き出す位置を長押しによるタッチ操作で指示するだけ。押している時間で吐き出せる「へんなえきたい」の量は決まってくるが、巨大生物が液体を吐き出せるタイミングは一定の間隔があるため、戦闘機や戦車の位置を狙って上手く「へんなえきたい」を吐きかけるのがポイントだ。
この液体では、戦闘機や戦車は破壊することができない。あくまで戦闘不能にするだけで、自らの体で飲み込まないと「ほろぼした」人数はカウントされていかない。一方で巨大生物にもライフゲージがあり、敵に攻撃されて、ライフが底をつくと巨大生物は真っ黒になり動かなくなる。ゲームオーバーだ。少しでも長く「ほろぼし」をしていくために、戦闘機等の攻撃を止める必要があるのだ。
本作の最大の特徴は、その独特の世界観にある。破壊して滅ぼしていくはずの本作なのに、そこには爽快感や達成感はない。むしろ、前述のとおりのサウンドとビジュアルデザインも相まって感じられるのははかなさや哀しさだ。人を滅ぼしている生物に対しても、なぜだか哀れみを感じる。その上、ストーリー性がないためか、「なぜこの巨大生物は人を滅ぼしているのか」、「どうしてこの生物は生まれたのか」など逆に色々考えてしまのだ。
また、ほろぼした人数はオンライン上で共有されて増えていく。この巨大生物は、世界に一体だけではないのだ。ゲームプレイ時間はほんの数分と短く、操作も非常に簡単で、ゲームとしては単なるミニゲーム程度でしかないのだが、なぜだか感情的な部分を動かされてしまう独特の感性がある。感傷的な気分に浸りたい方や不思議な世界観を感じたい方にオススメの1作だ。