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Valveが無料配布するVRミニゲーム集「The Lab」を体験!
高詳細映像に緻密な体感操作。シュールさ満載の「Portal」ワールド
(2016/3/19 14:03)
日本円で約11万2000円と、コンシューマーVR界隈でトップエンドの価格と性能を誇ることになったSteamVR初号機、HTC Vive。Valveはその発売に合わせて、10種類以上のVRミニゲームを楽しめるコンテンツ「The Lab」を無料配布する予定だ。
その「The Labs」はGDC 2016で初出展。エキスポ会場前にあったValveの大型デモルームで、本作に含まれる4種類のミニゲームを体験することができた。2つのVRコントローラーを同梱し、ルームスケールVRを謳うHTC Viveの底力をフルに活かした内容だ。
HMDをかぶると、そこは淡いグレーのタイルが敷き詰められた仮想空間。甲高い声がするので目をやると、「Portal」でおなじみの棒人間たちが「コッチニオイデヨー」と手を振っている。自分が立っている場所からは結構な距離があって、ルームスケールVRと言えど実際に歩いて近づく訳にはいかない。そこでどうするかというと、VRコントローラーを行き先の地面に向けて、トリガーを引く。すると、一瞬のまばたきを経てその地点にテレポート。これが本作の基本的な長距離移動方法だ。
2人(?)の棒人間たちが謎の装置を前にしてワイワイやっているので見ていると、中空に浮くサッカーボール大のスフィアに飲み込まれていった。これは何らかのテレポート装置だ。スフィアの中をよく見ると、フォトリアルな山岳の風景が映しだされている。そのスフィアを手に取り、もっとよく観察するために顔に近づけてみると……。次のミニゲーム「Vesper Peak」へテレポート。
フォトグラメトリーで再現された超フォトリアル空間「Vesper Peak」
ふと気が付くと、周りの風景は現実と錯覚されるほどリアルな岩山の頂上。これが最初のミニゲーム「Vesper Peak」だ。
Vesper Peak=ヴァスパー・ピークは、ワシントン州にある登山家・クライマーたちの名所だ。その名所をフォトグラメトリー技術でVR化した空間として楽しめるのがこのコンテンツ。冗談抜きにリアルすぎて、目の前にあるのがコンピューターグラフィックスによる非現実の空間であることを忘れそうになるほどの出来栄えである。空は快晴でまぶしく、ゴツゴツとした岩山も存在感たっぷり。遠方に見える雄大な風景に見とれていると、HMDの解像感とか、かすかに感じる網目感といったものが完全に気にならなくなるほどのインパクトだ。
圧巻の風景を楽しんでいると、足元に変な生き物がいることに気がつく。トイレットペーパーの芯に4本の棒とボール1個をはめ込んだような形のロボットだ。それがお尻を振りながら「ワン、ワン」とか言っている。地面に落ちている棒きれを放り投げると活きの良い魚レベルの動きでピョコピョコ追いかけて行って、棒きれを咥えてプレーヤーのもとに戻ってくる。犬だ……。
そんなこんなでシンプルすぎる形状の犬ロボと戯れていると、目の前に新たなスフィアが現れ、次のミニゲームへ。
ポンコツコアたちを撃ちまくる「Slingshot」
次のミニゲームは「Slingshot」。周りの風景はAperture Scienceの巨大倉庫で、遠くには大量の木箱が積まれている。そしてプレーヤーの目の前にあるのは大量のポンコツコアたち(『Poral 2』でお馴染みの球体型人工知能ロボWheatleyの仲間だ)と、プレーヤーの身の丈を越す、超巨大スリングショット。何をか言わんや。騒がしくお喋りしているポンコツコアたちをスリングショットに装填しては撃ち、装填しては撃ち。倉庫に積まれた木箱をガンガン破壊していく。
この巨大スリングショットは弦のストロークが1メートル以上はあって、腕だけではとても引き絞れない。コアが装填されるたびに両腕でホールドし、2歩ほど下がって弦を引き絞る。その間、装填されたコアが早口でいろいろ喋っていて非常にやかましい。このシチュエーションがシュールすぎて思わず笑ってしまった。
今回のプレイではこのポンコツコアたちが何を喋っているのかまでは気が回らなかったが、字幕表示が難しいVR環境での日本語対応はどうなるのだろうかと気になった。ともあれ、巨大スリングショットを体全体で引っ張り、コアを打ち出しては木箱の山を破壊するという遊びを繰り返しているうちに、どんどん狙いがうまくなるのが楽しくて夢中になってしまった。そうこうしているうちに新たなスフィアが出現。
体感型タワーディフェンス「Longbow」
次のミニゲームはタワーディフェンス。文字通りのタワーディフェンスで、プレーヤーは塔の頂上に陣取り、城壁に向かって攻めてくる板人間を弓を使って撃退していくという遊びだ。
このコンテンツでVRコントローラーのパワーを最もよく感じられた。両腕を使って弓を引き絞る動作をし、トリガーを離すと矢が射出される仕組みなのだが、矢をつがえるときや弦を引き絞るときに発生するハプティクスが、「ギリギリギリ」とプレーヤーの手に伝わってきて、本物の弓を引いているような気持ちになれる。VRコントローラーの位置トラッキングも極めて正確で、非常に細かく板人間たちを狙うことができる。数射してコツを掴んでくると、ヘッドショットも狙って出来るようになってきた。これは楽しい。
しかし棒人間たちもやられてばかりではない。だんだんと同時に攻めてくる人数が増えてくるのと同時に、鉄兜や盾を装備した棒人間たちも登場。さらに板人間たちは厚みがなく、横を向くとほぼ無敵化するので、ここぞというタイミングできっちり矢を当てる必要があって、無駄にスキルフルなゲームだ。ずっと遊んでいたいほどだったが、ほどなくして新たなスフィアが登場、次の体験へテレポート。
手で遊ぶ弾幕シューティング「Xortex」
最後に体験したミニゲームは、手で遊ぶ弾幕シューティングだ。中空に浮かぶプラモデルサイズの宇宙戦闘機を握るとゲーム開始。プレーヤーの手そのものが“自機”となり、周囲に出現する敵機の群れや、敵が発射する弾幕を避けながら撃ちまくり、できるだけ多くの敵を倒してハイスコアを目指すというものだ。
自機の動きは完全自由。手にプラモデルをもって「ブーンブーン」とやるのと全く同じ。敵の弾幕が厚くなってくると、隙間を縫うように精密に動かしたり、あるいはぐるりと腕を回して敵の薄い空間に素早く移動させたりと、腕の届く範囲でありとあらゆる動きができる。それでも危なくなったら、ルームスケールを活かして大きくポジションチェンジだ。
遊びとしてはシンプルだが、まさかこのような視点・操作法で弾幕シューティングをプレイする日が来るとは。友人とのハイスコア競争がアツくなりそうだ……。
今回遊べたのは以上だが、「The Labs」には全体で10種類以上のミニゲームが収録されているという。そのどれもがViveならではのルームスケールVRの性能を活かしたものになっていることは間違いなく、新鮮な遊びがまだまだ見つかりそう。早く自宅でも楽しんでみたいものだ。
200インチ超の仮想スクリーンでゲームをプレイする「デスクトップシアター」
この場ではもうひとつ、SteamVRの機能のひとつとなるデスクトップシアターモードも試すことができた。
SteaVRのデスクトップシアターモードは、VR空間内に出現する200インチ超の巨大スクリーンで、ありとあらゆるSteamのゲームがプレイできるというもの。PlayStation VRで話題となったシネマティックモードとコンセプトは全く同じものだ。
今回のデモではSteamの人気インディーゲームのひとつ「Broforce」をプレイすることができた。PSVRのシネマティックモードと違い、こちらのデスクトップシアターモードでは、大スクリーンのほかに仮想の部屋の風景が表示される。その部屋の壁や床に、スクリーンから発せられる光がうっすら反射しているなどかなりリアルな雰囲気で、まさにバーチャルシアタールームという感じだ。
この仮想スクリーンの中で、2Dアクションゲームである「Broforce」がスムーズに動作。デスクトップモニターでプレイするのとおなじ感覚で、普通にプレイできてしまうのには笑ってしまった。画質も悪くない。「Broforce」はもともとピクセルの巨大なゲームなので解像感についてはなんとも言えないが、表示は極めてシャープで、細部までくっきりと見ることができた。これで「Fallout 4」や「Witcher 3」をやってみたい……。
ちょっと気になったのは、時折生ずるコマ飛び感。これはおそらく、HMDが90Hz表示であることに対して、「Broforce」が60fpsで動作しているせいだろう。フレームレートが一致しないため、数フレームに一度のタイミングでカクっとコマ飛びしているように見えるのだ。このあたりについては、60Hzの映像を120Hzに整数倍でリプロジェクションできるPSVRのほうが一枚上手だ。
そんな弱点もありつつも、SteamVRのデスクトップシアターモードでは全てのSteamゲームが仮想の大画面で遊べてしまうという大きなメリットがある。PCゲーマーのほとんどを占めるデスクトップ環境ではそこまで大きなモニターを置けないので、その恩恵はかなり大きそうだ。