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「ストリートファイターV」“国内最速”トーナメント観戦レポート

発売前のゲームで大会開催! 有名・強豪選手がひしめく中、覇者となったのは誰だ!?

12月23日 開催

場所:TKP新宿カンファレンスセンター

会場への入場には制限があったものの、それでも選手と観客で合計100名を越すプレーヤーが来場。試合そっちのけで試遊台を遊ぶ人もかなり多かった
当日は「ストV」の杉山晃一プロデューサー(左から2人目)や綾野智章アシスタントプロデューサー(最左)も会場に訪れ、会場の雰囲気を盛り上げていた
会場内には、協賛社であるマッドキャッツの物販コーナーもあった

 12月23日、TKP新宿カンファレンスセンターにおいて、ウェルプレイドが主催するトーナメント大会「ストV国内最速トーナメント『いきなり強いやつに会いに行く!』」が開催された。当トーナメントは「ストリートファイターV(以下、ストV)」のCBT3バージョンを使用しており、ゲームが発売される前に実施されるという、格闘ゲーム大会の歴史においても異例のものとなっているのが特徴だ。

 参加者については、希望者が大会公式サイトにて応募する形で登録可能となっていたが、64名の上限に対して応募数は規定の3倍以上に到達。これにより、抽選にて参加者が決定されることとなった。ちなみに筆者とその友人も応募をしてみたが、いずれも結果は落選。残念ではあるが、今回は取材に徹することにした。

 大会は、参加者がそれぞれA~Fの6グループに分かれ、3ゲーム中2ゲーム先取、いわゆる「2先」のルールで勝敗を決定。敗者復活などはなしで、ブロック決勝を制したプレーヤーが決勝ブロックへと進出する形式で行なわれた。

 記念すべきグループAの第1試合には、何とスクウェア・エニックスe-Sports部の部長である、「ケンちゃん」選手が登場。会場が盛り上がりを見せる中、さらに対戦相手となるはずだった選手が欠席、急遽補欠の選手が割り当てられるなど、波乱を予感させる立ち上がりとなった。

 試合内容については、参加を希望して集まっているプレーヤーということもあってなかなか見応えがある展開が多かった印象だ。それでも満足に連続技がつながらないプレーヤーもいれば、鮮やかな連係で対戦相手を封じ込めるプレーヤーもいて、短いCBT期間中にどれだけゲームに触れていたか、というやりこみの差が如実に現われるシーンも随所に見られた。

 そうして決勝トーナメントまで進んでみると、格闘ゲーム界でも名高い「KSK」選手、「だしお」選手、「はげじん」選手といった強豪が並び、一気に緊張感も高まってきた。なお、試合中の画像は配信動画よりピックアップしたものであり、解像度など若干お見苦しい点があることをご了承いただきたい。

今回の試遊台は全部で7台。どこから聞きつけたのか、海外勢の団体もプレイを楽しんでいた
実況陣は「ウルIV」でおなじみMCのかりぱく氏(左)、実況のヨシヲ氏(中央)、解説の志郎氏(右)
Aブロック第1試合で戦った、ケン使いの「ケンちゃん」選手(手前)とザンギエフ使いの「ヅカ」選手(奥)。対戦前のひとコマ
決勝トーナメントに残った8名。壇上ではそれぞれが決勝に向けての抱負を述べた

決勝トーナメント1回戦第1試合/KSK(R.ミカ) 対 Brick(ザンギエフ)

 お互いがコマンド投げを持つキャラクター同士の対決。1ゲーム目は、KSK選手がR.ミカの立ち強Kを主軸に攻めつつ、要所でレインボータイフーンを織り交ぜ、さらに、反撃にはスーパーアーマー属性(相手の打撃を無効化)のあるEXシューティングピーチをうまく使いこなして先取。

 2ゲーム目は、Brick選手が積極的に狙うコマンド投げが決まり、最後はVトリガーのサイクロンラリアットを当ててからのボルシチダイナマイト(空中専用のコマンド投げ)でコンボを決めるという「ストV」ならではの流れで勝利をつかんだ。ここまでは両者ともに譲らぬ展開だったが、3ゲーム目はKSK選手が強気の攻めで押し切り、準決勝にコマを進めた。

Vトリガーのサイクロンラリアットはボタンホールドで性能が変化。打撃を当てて相手が空中に浮いたところにボルシチダイナマイトを当てれば、大ダメージを狙うことができる

決勝トーナメント1回戦第2試合/はねやま(春麗) VS 豊泉三兄弟(ネカリ)

 「ウルトラストリートファイターIV(以下、ウルIV)」でも有名な春麗使いであるはねやま選手と、ファミ通の編集部員として活躍する豊泉三兄弟選手の対決。1ゲーム目は、はねやま選手が「ウルIV」で培った地上戦と、Vトリガーによる多段攻撃を使って押していく展開。これで1ゲーム目を取ったはねやま選手が、2ゲーム目も同様に巧みな攻めで1本を先取。

 あとがなくなった豊泉三兄弟選手だったが、ここから反撃を開始。VゲージとEXゲージがフルに溜まった状態からのしゃがみ中K→Vトリガー発動→しゃがみ中K→弱・勇猛なる決起→クリティカルアーツというコンボで大ダメージを奪う戦法がうまくハマり、2ゲーム目、3ゲーム目ともに連取した。

立ち強Kでクラッシュカウンターを狙う豊泉三兄弟選手。これにVスキルも交え、まずはゲージを溜める、という立ち回りが印象的だった
Vトリガーがらみのネカリのコンボは威力抜群。クリティカルアーツも、通常なら名誉の儀式であるところがVトリガー発動中なら上位バージョンの魂の献上となり、よりダメージがアップする

決勝トーナメント1回戦第3試合/だしお(リュウ) vs こじろー(春麗)

 だしお選手、こじろー選手ともに「ウルIV」でその名を馳せる有名プレーヤー同士の対決。お互いが自分のキャラクターのリーチを生かせる間合いを調整しながらの、ジリジリとした地上戦が続いた。1ゲーム目をだしお選手が取り、2ゲーム目の1本目もだしお選手が取ってリーチをかけたが、そこでこじろー選手も取り返し土俵際で粘る展開に。

 しかし、3本目にだしお選手がこじろー選手を画面端まで追い詰めたところでジャンプ攻撃。そこまではガードしたこじろー選手だったが、そのあと無理に動いたことでリュウの立ち中P→強P→昇龍拳→真空波動拳という強烈なコンボを食らい、2ゲーム目もだしお選手の勝利となった。

相手の起き上がりに投げかレバー→+強Pを重ねる戦い方を好んで使っていただしお選手。受け側が対処を間違えれば大ダメージとなるだけに相当なプレッシャーをかけていける
だしお選手の勝利を決めた立ち中P始動のコンボ。リュウの立ち中Pはその後に繋がる技が多く、連係の始動技としてもかなり優秀だ

決勝トーナメント1回戦第4試合/フリーダム横浜(バーディー) 対 はげじん(バーディー)

 フリーダム横浜選手、はげじん選手いずれもバーディーという同キャラ対決。この戦いではお互いに、Vスキルで空き缶を投げたりバナナを捨ててきっかけを作りつつ、スキあらばブルリベンジャーやハンギングチェーンなどを食らわせ、チャンスではブルヘッドがらみの連続技を狙う……という展開に終始した。

 1ゲーム目はうまく攻撃がハマったフリーダム横浜選手が勝利。2ゲーム目は、はげじん選手が1本先取するも、フリーダム横浜選手も取り返し、勝利へリーチをかける。しかし、3本目ははげじん選手が流れをつかみ、ほぼ無傷でフリーダム横浜選手を倒して2ゲーム目を奪取。3ゲーム目の1本目をフリーダム横浜選手が取って今度こそ勝利かというところで、そこから逆に2本を連取したはげじん選手が準決勝へと進出した。

注意していないと意外と回避しづらいEXブルリベンジャー。ちなみに回避するためにはジャンプすればOKだ
距離が離れていたり相手がダウンしているときには、Vスキルを使って空き缶やバナナを投げ、フィールドを支配していくのが常套手段

決勝トーナメント準決勝第1試合/KSK(R.ミカ) 対 豊泉三兄弟(ネカリ)

 準決勝からは、先に3ゲームを取る「3先」の形にルールが変更となった。KSK選手は立ち強Kや接近してのコマンド投げ、それに対し、豊泉三兄弟選手はこちらも立ち強Kのクラッシュカウンターを多めに、コマンド投げやしゃがみ中Kからのコンボも狙うという、これまでのスタイルを継続する形で流れを作っていく。

 序盤はKSK選手の戦略が相手とうまく噛み合い、1ゲームを先取。これを受けて、豊泉三兄弟選手がKSK選手のコマンド投げに対し、垂直ジャンプで回避する形を多めにした戦法に変更。さらに、自身のコマンド投げも狙い所を増やしプレッシャーをかけていく。結果、KSK選手の攻めを豊泉三兄弟選手がうまくかわして反撃するパターンが多くなり、さらには要所でコンボも決めた豊泉三兄弟選手が2ゲーム目から4ゲーム目までを連取し、決勝の舞台へと立つことになった。

1ゲーム目は相手のコマンド投げをスカして垂直ジャンプからの連続技まで決めるなど、落ち着いた対応を見せていたKSK選手だったが……
ピンチの場面でもあせらず確実にクリティカルアーツがらみのコンボを決めた豊泉三兄弟選手。CBTでもかなりやり込んでいたのだろう

決勝トーナメント準決勝第2試合/だしお(リュウ) 対 はげじん(バーディー)

 大胆かつ精確な攻めで相手を圧倒してきただしお選手と、苦難の同キャラ対決を制したはげじん選手が激突。筆者はここでもだしお選手が大暴れするかと思ったのだが、その予想は見事に覆された。けん制で撃った波動拳に対して、はげじん選手はブルホーンで対応。リュウ側がこれをやられると、波動拳を撃つたびに攻撃を食らうことになるため、ここでだしお選手のけん制手段がかなり抑制されることとなる。

 一方、飛び道具を撃ちづらくなったリュウに対し、はげじん選手はここぞとばかりに間合いを詰め、立ち中K、しゃがみ中Kといったスキが少なく、かつリーチも長めの基本技を軸としつつ画面端に追い詰める。これではげじん選手が2ゲームを連取し勝利も目前かと思われたが、そこはさすがのだしお選手、戦術を切り替え、ブルホーンを気にせず波動拳を多めにして強引に自分の流れを作り、1ゲームを取り返す。だが、反撃もそこまで。リュウ対策は万全とばかりに、はげじん選手が最初と同様に戦いの流れを取り戻し、4ゲーム目に勝利、決勝進出となった。

波動拳に対して、ブルホーンを使い回避と攻撃を同時に行なうはげじん選手のバーディー。毎回こんな対応をされたら、リュウ側はかなり厳しい展開となりそう
相手の目の前に置くような形で出すバーディーの立ち中K。技のスピードが早めなので、仮に飛び込まれてもガードぐらいなら余裕で間に合う

決勝トーナメント決勝戦/豊泉三兄弟(ネカリ) 対 はげじん(バーディー)

決勝の場に立ったはげじん選手(左)と豊泉三兄弟選手(右)

 お互いが確たる戦法を確立させている、熟練者同士の戦い。当然、激戦が繰り広げられると予想されたが、蓋を開けてみるととんでもない試合展開が待ち受けていた。豊泉三兄弟が得意としていたネカリの立ち強Kやしゃがみ中Kを軸にした連係が、ほとんどバーディーの立ち中Kにつぶされてしまうのである。

 ときおりネカリの攻撃も当たるものの、バーディーはそれ以外にもネカリに攻撃を当てていて、ダメージ差は広まるばかり。そこでジャンプ攻撃を織り交ぜるなど戦法を増やした豊泉三兄弟選手だったが、バーディーの絶対的な対空技であるしゃがみ中Kを崩しきることはできず、相打ち後はまた画面端に戻されるという絶望的な展開に。結局、バーディーがネカリを完封するような流れとなり、そのままはげじん選手がストレートに3ゲームを先取し、はげじん選手の優勝となった。

最後までバーディーの立ち中K攻めを崩せなかった豊泉三兄弟選手。バーディーの技の強さもさることながら、はげじん選手の絶妙な間合管理と豊富な地上戦の経験、そしてやり込みが大きく生きた試合だったと言える

 今回の大会は、発売されるよりも前に行なわれるということで、最初のうちはゲームの展開がどうなることかと心配すらしていた。だが、実際にはその道の猛者が集まったことで、あたかもすでに発売済みのゲームであるかのように、熱く激しい戦いを見ることができたのは、とても面白い結果だったと言えるだろう。「ストV」発売まであと2カ月と少し。ファンとしては、このあとも何か面白いイベントがあることを期待してやまない。

CBTではバーディーしか使っていなかったというはげじん選手。本来の持ちキャラ・ザンギエフをもう少し面白い調整にしてほしかった、とのメッセージも
主催社ウェルプレイド代表の谷田氏。本人も現役プレーヤーとして対戦格闘ゲームに触れている。閉会の挨拶では、今後もこういった大会を開催していけたらと語った

(泊 裕一郎)