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早速遊んだ!「Project Morpheus」最新プロトタイプ試遊レポート
OLEDパネル採用は是か非か!? VR感を引き立てる全要素に大きな前進
(2015/3/5 12:50)
GDC 2日目の現地時間3月3日、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のプレスカンファレンスにてPS4用VRヘッドセット「Project Morpheus」の最新版がお披露目され、2016年上半期の発売も公約された。
発表の内容とスペック概要については速報記事でお伝えしているので、本稿では同会場で披露された新しいVRデモの内容を踏まえて新型Morpheusの感触をご紹介していこう。
度肝を抜く120Hzをはじめ、全面グレードアップの新型Morpheus
今回披露された新型Morpheusは、SCEWWSプレジデントの吉田修平氏が「限りなく製品版に近いバージョン」と言うとおり、昨年公開された初代機から全面的に大きな進化を遂げている。まずはスペック上のポイントを使用感レベルでまとめてみよう。
・ネイティブ120Hz表示
解像度は初代機と同じ1920×1080ドットとなっているが、リフレッシュレートが倍増した。快適なVRにとって高リフレッシュレートは必須の特性だが、Oculus DK2の75Hzを一気に超えてきたというのはとてつもないインパクトだ。吉田氏によれば、PS4が実はネイティブ120Hzを出力できるというのは今の今まで伏せていた、とのことで、60Hzにとどまると考えていた記者陣の度肝を抜いたわけである。
PS4側で120Hzの映像をレンダリングすることについては、今回公開されたデモのうち「Magic Controller」ではネイティブで実現。つまりサイドバイサイドの立体視映像を1秒に120フレーム描画し、そのままMorpheusに出力している。それが難しい他のデモでは60fpsで3Dシーンを描画する代わり、センサーから送られる最新の視線方向パラメーターをもとにレンダリング後の映像をディストーション(ずらす)することでフレームを補間、ヘッドトラッキングについては120Hz相当のレスポンスを実現する仕様だ。似たテクニックがOculus Riftでも採用されているが、それを高リフレッシュレートの実現のために使っているのがユニークであり、なみなみならぬこだわりを感じる。
・5.7インチ OLEDディスプレイ
表示系にOLED(有機EL)ディスプレイを採用し、視野角も10度ほど広がった。OLEDは画素の書き換えにかかる時間がIPS等の従来型液晶パネルに比べて比較にならないほど速く、圧倒的な低残像を実現する。ただしOLEDは開口率が低くなりがちで、画素のスキマが目立つ、すなわち網目感が出てきがちなのが弱点。例えばSamusungのGalaxy S3と同タイプのOLEDを採用したOculus DK2では、三原色(RGB)を構成するサブピクセルが複数画素で共有されている(サブピクセルが少ない)という仕様上の弱点も相まって、強い網目感が問題となっていた。
そこで新型Morpheusでは、各画素をきっちり3つのサブピクセルで構成するタイプのOLEDディスプレイを採用したことを強調している。それが1920×RGB×1080という表現だ。これによる見え方の違いは歴然。OLEDの高速応答性により初代Morpheusに見られた残像感の問題をほぼ完全に解決しつつ、Oculus DK2ほどの網目感も無し。ただ、そもそも網目感が皆無で画素がギッシリ詰まっている印象だった初代Morpheusと比べると、本当にわずかながら“画素間のスキマ”が感じられるようになったのは痛し痒し。今回の試用で唯一気になった点である。
・ヘッドトラッキング用LEDの追加
ヘッドセット各部で青く光るトラッキング用LEDが、初代Morpheusの6カ所から9カ所に増加した。これによりPS Cameraで捉える頭部のうごきはより精密になったと見られる。LEDが多く、大きくなればカメラで捉えやすくもなるはずで、応答速度が18ms以下となったことにも関係しているかもしれない。
ただ、これについては今回試したのデモゲームの範囲内ではさしたる違いを感じることはなかった。ヘッドトラッキングの確かさについては初代Morpheusからかなり高い水準にあったともあるが、フレームレートの向上による滑らかさアップの影に隠れてしまってわかりにくい、ということもあるかもしれない。これについてはGDCの3日目以降の機会でもう少し調べを進めてみたいと思う。
白熱ガンアクションから入門コンテンツまで!新型VRデモを体験
新しいMorpheusの披露に合わせて、セカンドパーティ製のVRデモにも新バージョンが登場。今回公開されたのは「London Heist」、「The Deep」、「Magic Controller」、「Bedroom Robots」の4種類となるが、試遊機会の範囲内で試すことのできた3つのデモについてインプレッションをお伝えしておこう。
VRガンアクション「London Heist」
PS Moveを両手に持ち、VR空間内に現れるバーチャルな自分の手を操作してプレイする全身体感型のVRデモ。初代Morpheusでプレイできた「The Caslte」の武器を銃に持ち替えたVRガンアクションという感じだが、遊びの幅、迫力ともに過去最高レベルのVR体験が楽しめた。
冒頭、スキンヘッドの怖いおじさんに尋問されているシーンから始まる。強面のおじさんはプレーヤーに視線追従するようになっていて、こちらが身じろぎするように動くと目で追ってギロリと睨みつけてくる。そして尋問に対して首を振るとバンッ!と椅子を蹴って立ち上がり、にじり寄ってきて、拷問用らしきガスバーナーを着火しながら上から目線で凄んでくるのだ。VRだとわかっていても怖い。体がビクリとしてしまう。これは恐怖版の「サマーレッスン」だ。トキメキと恐怖でベクトルが180度違うが、どちらもえらくドキドキすることは間違いない。
その後暗転を挟んでミッションシーンへ。高級そうな屋敷に忍び込んで巨大な宝石を物色しているというシチュエーションだ。目の前にある机の引き出しをPV Moveのトリガーを通じた“掴む/離す”の操作で開け、中を覗きこんでカギや拳銃、予備マガジン等のアイテムを見つけていく。見つけたアイテムはPS Moveで掴んで使う。例えばカギは、手に掴んで鍵穴に差し込むことで使用する。これ以上直感的なインターフェイスはない。
やがて銃撃戦が始まり、銃もPS Moveで撃つ。平面モニターでプレイするFPSのように便利な照準点は存在しないので、きちんと命中させるためには銃の照星(アイアンサイト)を使って照準するのだ。そのためには腕を突き出して、正しい射撃姿勢を取る必要がある。腰撃ちではなかなか当たらない。それと同時に、被弾を避けるため頻繁に屈む必要もあってなかなかハードだ。
エアガンを持ってサバイバルゲームに興じたことがある人なら、それそのものの経験をVR内で楽しんでいることに気がつくだろう。VRで射撃術を鍛えるのはとても面白そうだ。
弾を撃ち切った後は予備マガジンを掴んで差し込むことでリロードするのだが、マガジンを予めテーブルの上に並べておくと素早く装弾できるなど、やっていることは完全に現実と同じ雰囲気。このVR体験の説得力は凄いものがある。触れば感動間違いなし、イチオシのデモだ。
「Magic Controller」&「Bedroom Robots」
この2つのデモは、PS Camera標準アプリである「PlayRoom」のいわばVR版。かわいらしいロボット“Asobi”を使ったインタラクティブVRコンテンツだ。
「Magic Controller」では手に持ったDUALSHOCK 4がVR空間内に現れ、現実で操作したとおりにVR空間内でもスティックやボタンが反応する。コントローラーの反応は現実と一致しているのに自分の手だけが見えないという、ちょっと不思議な感覚だ。
そのコントローラー上に示されるインタラクションにしたがってボタンを押していくと、タッチパネル部がパカッと開いて、中からAsobiたちが飛び出してくる。そこでプレーヤーが顔を近づけたり、バーチャルなDUALSHOCK 4から発射されるスポットライトを当てていくと様々なリアクションが楽しめるというものだ。まさに「PlayRoom」のVR版。
なおこのデモはネイティブ120Hzのレンダリングを実現しており、明らかにキャラクターの動きがスムーズだった。筆者は日頃120Hz~144HzのモニターでPCゲームをプレイしているが、それと同じくヌルリとした滑らかさ。その一方で、DUALSHOCK 4のポジショナルトラッキングはそれより周波数が低いらしく、大きく動かしたり傾けた際にカクカクとした動きになって見えたのが気になった。
「Bedroom Robots」はミニチュアサイズのAsobiたちを眺めて楽しむVRコンテンツだ。コントローラーを使った操作はいっさいないものの、ヘッドトラッキングはしっかり反映されていて、何かに興じているAsobiたちに注目したり、顔を近づけていくと、様々な反応を見せてくれる。それだけといえばそれだけなのだが、新Morpheusのカッチリとした画質のおかげでミニAsobiたちの実在感がやたらリアルに感じられ、ついまじまじと見つめてしまった。
こういった楽しいノンゲームコンテンツは、プレーヤーへの負荷がとても低く、VR入門用にとても良さそうだ。これら2つのデモは「PlayRoom」と同じく標準アプリとして、製品版Morpheusについてくるものになるだろう。そういった面でも今回の新型Morpheusは、“製品版に限りなく近いバージョン”なのだと言える。