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【GDC 2014】ピーター・モリニュー氏がAAA制作を辞めてインディーズに戻った理由を明かす

期待の新世代ゴッドゲーム「Godus」の最新ビルドを披露

3月17日~3月21日開催(現地時間)

会場:San Francisco Moscone Convention Center

今年のGDCは、参加者の絶対数が減ったためか空席が目立つセッションが多かったが、本セッションはご覧の通りの満席。彼の神通力はまだ衰えていない
お馴染みの独特の手振りで話し始めた22Cans代表のピーター・モリニュー氏

 欧米ではキックスターターによるゲーム開発プロジェクトが盛んに行なわれている。日本でも稲船敬二氏がキックスターターを採用して「Mighty No.9」プロジェクトをスタートさせたことで話題になったが、ここ数年で一気に普及した印象がある。

 英国が誇るゲームゴッドのひとりピーターモリニュー氏もキックスターター活用者のひとり。2012年にLionhead StudiosおよびMicrosoftを退社し、22Cansと呼ばれる新たなゲーム会社を設立。キックスターターを利用して出資者を世界中から募り、新作モバイルゲーム「Godus(ゴッダス)」の開発を進めている。この「Godus」は既報の通り、DeNAのヨーロッパ法人DeNA Westがモバイル版のライセンスを獲得し、日本でもMobageからサービスが提供されることが決定している。

 モリニュー氏は、GDC 2014の「Independent Games Summit」に登壇して「From Indie to AAA to Indie」と題したセッションを行ない、Microsoftを退社して、22Cansを設立した理由と、現在開発している「Godus」の最新デモを公開したのでご紹介したい。

 モリニュー氏は、まずはじめに自身が最初に起こした会社であるBullfrog時代を写真で振り返り、自分の汚いデスクを写真に収めるという悪趣味を披露しながら、モリニュー氏独特の表現で、ゲーム制作魂やインディーズ魂をアピール。22Cans設立の理由については、革新的な創造性によってゲームを制作し、今ゲーム産業を包み込む“真空状態”を満たしたいと、50を過ぎてなお衰えぬ旺盛な創作意欲を見せつけた。

 その真空状態とは何かというと、これが笑ってしまうほど辛辣な表現のオンパレードだった。いわく、世界中で無数の新規ゲーマーが魅力的なゲームを待ち続けているにも関わらず、我々はお粗末なゲームを作り続けており、無作法で強欲なマネタイズを行ない、新しいゲームテクノロジーは少しもゲームを進化させておらず、我々が用いる分析はゲームを良くしていないと、モリニュー氏ならではの皮肉たっぷりの表現でゲーム業界を全否定した。

 ちなみにモリニュー氏は、もともと批判精神が旺盛な人物だ。それは自らが生み出したタイトルについても例外ではなく、とりわけ自らの意思が届かない部分で下された決断については毎回手厳しいコメントをメディアに伝えている。「Fable II」は「駄作」といい、「Fable III」は「シリーズを破壊した」といい、Free to Playのビジネスモデルの内容で批判を受けたモバイル版「Dungeon Keeper」については「馬鹿げている」と一蹴している。

 そのモリニュー氏自身も近年は「The Room」や「Curiosity」など実験的なプロトタイプしか制作していないのも事実で、今回の「Godus」は自らの近年のキャリアにおける贖罪と名誉回復のために何が何でも成功させたいという強い意志を感じさせる。

【自分のデスクの変遷】
Bullfrog時代は強烈に汚いが、Lionhead時代に徐々に綺麗になり、Microsoft時代は仕事をしているように見えないほど綺麗(笑)。現在は電子タバコとMacBookで、快適なデスクで作業しているようだ

「Godus」のプラン。モリニュー氏がプロトタイプ時点でこうしたものを出すことはほとんどないため、今回はキチンとサービスインさせるつもりであることがわかる
オンラインプレイの階層図

 さて「Godus」はこれまでモリニュー氏が手がけてきた無数のプロトタイプとは異なり、キックスターターで出資を募ったことからもわかるようにアプトプットを大前提としている。モリニュー氏は、キックスターター開始からこれまでの状況を数字で説明し、「Godus」プロジェクトが順調に進んでいることをアピールした。

 続いて始まったデモでは、iOS版を使い、指1本で気軽にゴッドゲームがプレイできることをアピールした。雰囲気としては、「ポピュラス」と「Black & White」を足して2で割ったような、絵に描いたようなゴッドゲームで、プレーヤーはその地に天変地異をもたらすほどの絶対的な力を持つゴッドとなり、人々の暮らしを見守り、育てていくというものだ。

 途中からオンラインモードも紹介され、こちらはさらに元僚友のウィル・ライト氏の代表作「SPORE」や「シムシティ」のような感じで、プレーヤー同士が1つの惑星に同居し、互いに影響を及ぼしながら成長を続けていく。このオンラインプレイの1単位をHubworldと呼んでおり、この集合体をSuper Hub Hubworldと呼ぶ。

 デモではiPadに最適化されたUIを指で操りながら「ポピュラス」を思わせるようなダイナミックな地形操作や、「Black & White」を彷彿とさせるゴッドパワー、それからマネタイズ要素となりそうなスタチューやコスメティックといった要素、時代の変遷による各種パワーの獲得やアップグレードなどを確認することができた。

 ゲーム画面は、ミルフィーユのように幾重にも地形の層が折り重なって1つの島を形成しているのが印象的で、プレーヤーはその層を剥がしたり付け足しながらして整地し、人々が暮らしやすい島を整備してあげる。人々をSettlement(入植者)と呼び、新しい島へVoyage(航海)、家屋をAdobe(レンガ造りの家)と呼ぶなど、非常にロマンティックなゲームで、リリースが楽しみなモバイルゲームだ。

【「Godus」トレーラー】
世界全体の繋がりを示したトレーラー。ウィル・ライト氏の「SPORE」的なイメージだ

【「Godus」デモ】
すでにiPadへの最適化もほどこされ、基本的なゲームは組み上がっている。サービス開始時期は明らかにしていないが、そう遠くはなさそうだ

(中村聖司)