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【GDC 2013】任天堂、「Nintendo Web Framework」の仕様を公開
Wii Uを介して様々なWebサービスをリビングで使おう!
(2013/3/28 18:55)
任天堂がWii UでGoogleと組んで2月に始めた新サービス「Wii Street U」は、Wii U上でGoogleマップやストリートビューがグリグリ遊べるというダウンロードソフトだ。Wii U GamePadでささっとマップやストリートが見られるだけでなく、テレビにも出力でき、それぞれ別々の映像を出したり、同じにしたり、状況に応じて使い分けることができる。Wii Uの新しい可能性を提示した画期的な新サービスだ。
ただ、このサービスがどのような技術で実現されているのかについては謎だった。GDC2013ではこの疑問に答えるかのように、新しい開発フレームワーク「Nintendo Web Framework」を正式発表し、さっそくその概要を説明するセッション「Nintendo Wii U Application Development with HTML and JavaScript」が行なわれた。本稿ではその模様をお伝えしたい。
任天堂がついにWebサービスを本格サポート!
スピーカーを務めたのは任天堂環境制作部の島田健嗣氏。2007年の「脳トレ」セッションに続いて2度目の登壇となる。
「Nintendo Web Framework」は、HTML5、Java Script、HTTP、CSSといったWeb向けの標準言語をサポートしたWii U向けの開発環境となる。従来、任天堂のSDKでは実現できなかったHTML5とJavaScriptのみでのゲーム開発が可能になり、Wii U GamePadやWiiの資産など、Wii Uの機能をフル活用する形でWii Uのインターネットブラウザーを介したリビング向けのWebサービスを提供できる。
もちろん、単に動かせるというレベルではなく、「Wii Street U」が実証しているようにパフォーマンスや使い勝手という点でも、Wii U向けにかなりチューニングされており、十分に商用に耐えられる水準で、実際にWeb向けのベンチマークを動かす余裕を見せた。その上で走らせるWebサービスについては、ゲームかどうかは問わず、動画系のサービス、「Wii Street U」のようなアプリ系まで自由度は高いようだ。
気になるビジネスモデルについても、価格やリリース日はデベロッパーサイドが決められたり、Free to Playのサポート、両社の取り分は“業界水準に従う”など、かなりデベロッパーに歩み寄った内容となっている。
Wii U向けにWebサービスを提供することのメリットについて島田氏は、デフォルトでテレビとWii U GamePadの2画面に出せることと、使いやすさには定評のある任天堂のコントローラーが利用できることなどを挙げた。
コントローラーについては、タッチパネルUI全盛の現在でも絶大な自信を持っているようで、ドイツのカジュアルゲーム「Gunman Clive」の例を引き合いに出して、依然として大きなアドバンテージを持っていることをアピールした。「Gunman Clive」はもともとiOS/Android向けのアプリとして開発されていたが、3DSのダウンロード版をリリースしたところ、1カ月でiOS/Android版の数字を追い抜いたという。理由はボタン操作によって操作性が向上し、遊びやすくなったためではないかという。
また、Wii Uの機能についてはハードウェアのみならず、ソフトウェアについても利用することができる。島田氏は、セーブデータ、ソフトウェアキーボード、ビデオプレイバック機能、そしてMiiverse。実際適しているかどうかはともかくとして、HTML5とJavaScriptで、バリバリのWii Uタイトルを開発することも可能になる。
Wii Uを介してWebサービスをリビングで!
その後、エンジニアスタッフが登壇し、PC上で動作している「bamboo TV」という架空のWeb動画サービスをWii U向けにポーティングしたり、WebベースのWii Uタイトル「JavaScript GameDemo Sketch Battle」が、テレビとWii U GamePadの両方で動作するデモなどを行なった。
「bamboo TV」のポーティングについては、表示はPCとWii Uでほぼ同じで、パフォーマンスについても遜色なかった。マウスカーソル操作も、アナログスティックで吸収できるため、その気になればすぐWii U向けにWebサービスを提供できそうだ。
「JavaScript GameDemo Sketch Battle」は、ステージとキャラクターをエディットして楽しめる横スクロールタイプのアクションゲーム。Wii U GamePad側でレベルデザインして、任意のタイミングでそれをテレビ側にも反映させて遊ぶという単純なゲームだが、ゲームの操作がWii U GamePadのコントローラー操作のみならず、ジャイロ機能も使えていたのがおもしろかった。
竹田氏は締めくくりとして、「Nintendo Web Framework」のロゴに竹が描かれている理由に、コードネームがバンブーだったことと、日本ではポピュラーな植物であり、タケノコが竹となって伸びていく様をゲーム開発になぞらえ、竹ののように伸びてほしいという想いを込めて正式名称のロゴにも残したという。
最後に、デベロッパーに向けてスペシャルイントロダクションプログラムを提供していることを明らかにし、興味を覚えたデベロッパーはぜひ任天堂ブースまで足を運んで欲しいと結んだ。ちなみにこのスペシャルイントロダクションプログラムは、Unity for Wii Uも含まれるということだ。
任天堂は、今回の発表でWebサービスを積極的に自らのプラットフォームに取り込んでいく移行を明確にした。その判断が正しいかどうかはまだわからないが、「Wii Uを介してWebサービスをリビングで」というキャッチフレーズは強く印象に残った。Wii UがリビングにおけるWebサービスのセットトップボックスになりきれるかどうか、今後の推移を見守りたい。