FF展レポート「FFVII 15周年記念ステージ」 & 「植松伸夫トークステージ」
「FFVII」から「FF音楽」まで、ゲームファン必見のトーク満載でお届け!!
ファイナルファンタジー25周年を記念して開催された「FINAL FANTASY展」の2日目に行なわれたステージイベントより、「FINAL FANTASY VII 15周年記念ステージ」と、「SQEX MUSIC SPECIAL/TALK STAGE FF音楽の父! 『植松伸夫』トークステージ」の模様をお伝えしよう。
「FINAL FANTASY VII 15周年記念ステージ」は、プレイステーション用ソフト「ファイナルファンタジーVII」の発売から今年で15周年となったことを記念して、クラウドの声を演じた声優の櫻井孝宏さん、同じくケットシーを演じた石川英朗さん、ザックスの声を演じた鈴村健一さんが、「FFVII」を振り返るというもの。楽しいトークをたくさん披露した。
「SQEX MUSIC SPECIAL/TALK STAGE FF音楽の父! 『植松伸夫』トークステージ」では、ステージイベント名のとおり、“FF音楽の父”植松伸夫氏が登壇し、植松氏ならではの裏話をたっぷりと披露してくれた。
■ 櫻井さん、石川さん、鈴村さんが振り返った「FINAL FANTASY VII 15周年記念ステージ」
声優の櫻井さん、石川さん、鈴村さんの3人で「FFVII」15周年を振り返るというトークイベントとなった |
ステージに登場したのは、映像作品「ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン」でクラウド役の声優を務めた櫻井孝宏さん、同じくケットシー役を勤めた石川英朗さん、PSP用ソフト「クライシスコアFFVII」でザックス役を勤めた鈴村健一さんの3人。「FFVII」だけでなく他の「FF」シリーズ作だけでも数多くのキャラクターを演じている3人が、それぞれに「FFVII」を振り返った。
3人とも「FFVII」はもちろん、大の「FF」シリーズファン。「FFVII」以外にも出演作品は多く、PSP用「ファイナルファンタジー零式」では、櫻井さんはクラサメを、鈴村さんはジャックを、石川さんはカトルを演じて3人ともに出演しているほか、さらに鈴村さんは「ファイナルファンタジーX-2」のギップルを、石川さんは「ファイナルファンタジーVIII」のスコール、「ファイナルファンタジーX」のアーロン、「ファイナルファンタジーX-2」のトーブリと、非常に幅広く演じられている。
まず、「FFVII」シリーズの作品を映像を交えつつ振り返っていく。「FFVII」作品に本格的な声優がついた映像作品「ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン」では、ヴェネツィア映画祭にも出展され、櫻井さんもヴェネツィアにいったことから、「こいつヴェネツィア声優や! ヴェネツィアンマンだ!」と2人にはやし立てられ、櫻井さんが誇らしげにするというシーンも繰り広げられた。
クラウド役の声優を務めた櫻井さん | ケットシー役を勤めた石川さん |
PSP「クライシスコアFFVII」でザックス役を勤めた鈴村さん | これまでの「FFVII」シリーズを振り返っていった |
続いて、「FFVII」ファンの方に事前に答えてもらったアンケートの集計結果が紹介された。アンケートの質問と回答を順に紹介しよう。
○ 「FFVII」をいつ頃(何年前ぐらいに)プレイした?
1位:「1997年の発売当時」 65%
2位:「約10年前」 23%
3位:「5~6年前」 10%
その他:2%
○ 「FFVII」で印象に残ったシーンは?
1位:「エアリスの最期」
2位:「オープニングシーン」
3位:「ニブルヘイムで炎の中に消えていったセフィロス」
鈴村さんは、当時夜中の2時ぐらいにプレイしていて、1位のシーンを目の当たりにしてあまりの衝撃にひっくり返ったそうだ。
○ 印象に残った台詞は?
1位:クラウド「エアリスは、もうしゃべらない もう……笑わない 泣かない……怒らない…… 俺たちは……どうしたらいい? 指先がチリチリする。口の中はカラカラだ。目の奥が熱いんだ!」
エアリスの最期に感情を爆発させるクラウドの台詞。
2位:セフィロス「なぜなら、クラウド。おまえは……」
ジェノバ「なぜなら、おまえは……人形だ」
エアリスの最期に悲しむクラウドに向けて言うセフィロスの台詞と謎めいたジェノバの台詞。
3位:エアリス「ね、クラウド わたし、あなたをさがしてる あなたに会いたい」
ゴールドソーサーでのデート中にエアリスがクラウドに向かって言う台詞。
このほかにも思い出深い台詞が紹介された。「FFVII」の名場面が次々に紹介され、会場からもそれぞれの場面を思い出して思わず出た声がそこかしこから挙がっていた。そうした台詞を紹介したということで、せっかくなのでと、3人がゲーム中場面の生アフレコも披露した。
それぞれ、鈴村さんは隊長となったザックスがソルジャーに向けて話すシーンを、石川さんはケット・シーが星を救う決意を固めたシーン、クラウドが女装イベント前に話す「ここに女装に必要ななにかがある。俺にはわかるんだ」というコミカルな台詞を熱演! 特に、石川さんのケット・シーの名場面と櫻井さんのクラウドのシーンは、「FFVII」ゲーム中の場面ではボイスがついていなかったシーンだけに、この生アフレコは貴重な体験となった。
上位3位には入らなかったものの、その他の名台詞を選んだ回答も多数挙げられていた | |
ゲーム中の場面を3人が生アフレコ! 櫻井さんは記憶に残る場面ながらもユニークなシーンを演じてオチをつけた |
○ 「FFVII」の開発スタッフから、声優である3人に逆に質問するコーナー
ケット・シーだけでなくアーロンなど多数のキャラクターを演じている石川さんには、「今後どんなキャラを演じてみたいですか?」という質問。
これに対して、「どんな役でも……それこそ女性キャラでもやります!」と答えて笑いを誘っていた石川さんだが、今後は年齢の高いキャラクターにも挑戦してみたいとのこと。アーロン(作品中では35歳)もすでに石川さんからみて年下になっており、自分が演じたキャラクターの年齢を実年齢が追い越していくというところにも、感慨深いところがあるということだ。
鈴村さんには、「明るいキャラクターを演じてもらっていますが、ザックスというキャラクターはどんなところを意識して演じられましたか?」という質問。
この質問に鈴村さんは、ザックスは基本的に明るいので軽い調子ではあるが、後々に成長してソルジャーとしての地位も高まっていくので“ブレのない芯のある軽さ”を心がけたという。また、ザックスは結末がすでに他作品で決まっていたので、「その結末が際立つように、より明るく演じましょう」というオーダーもあったそうだ。そうしたところからも難しさがあったそうだが、それだけに演じられて良かったと思えるキャラクターとのこと。
櫻井さんには、「クラウドを演じられる中で難しかったと印象に残っているシーンは?」という質問。
櫻井さんにとっては常に難しい場面の連続だったようだ。中でも「アドベントチルドレン」のアフレコは2年ぐらいかかり、それこそ1つひとつにグラム単位、ミリ単位の演出が入っていったとのこと。アフレコ中の時期にはいつまでも終わらないかのような苦しさもあったということだが、それだけにやりがいのあるキャラクターであり、作品が完成したときは感慨深かったという。
エアリス役を演じた坂本真綾さんから、ビデオレターでのメッセージも寄せられた。当時の想いでを振り返ってくれた |
最後に、エアリスの声優を務めた坂本真綾さんから届いたビデオレターによるメッセージも上映された。エアリスというキャラクターは、初代作品からすでに絶大な人気を持つキャラクターだけに、その後の映像作品で参加する事になった時には、とても光栄だったという。
そもそも坂本さんのお兄さんが「FF」シリーズが好きで「FFVII」をプレイしているところを坂本さんが横で見ていたこともあったそうだ。それが後に坂本さんがエアリスの声優を演じることとなり、お兄さんは驚き喜び、同時に自分の妹がエアリスになるというところに複雑な表情も見せたそうだ。
こうして幕を閉じた「FINAL FANTASY VII 15周年記念ステージ」。声を演じた3人からの裏話あり、プレーヤー目線から懐かしむトークもあり、ファンサービスもありと、大満足のステージとなった。
■ 「FF音楽の父! 『植松伸夫』トークステージ」 -裏話満載! 「ディスタントワールド」最新情報も!!
ステージ上にずらりと並べられた「FF」シリーズの音楽CD。これでも主要な一部なのだが、サントラ、アレンジアルバムと本当にたくさんのCDがリリースされてきた |
このステージは植松信夫さんがこれまでに発売してきた「FF」シリーズ関連のサウンドトラックを振り返りつつ、まったり、たっぷりと話すというリラックスした雰囲気の中進められた。植松さんの柔らかな口調も相まって、肩の力を抜いて聞けるトークだったが、その内容は「FF」ファン必聴のものばかりだ。
なお、ステージ上にはこれまでに発売されてきた「FF」シリーズ作品のパッケージや、植松さんが手がけたサントラやアレンジアルバムがずらりと並べられた。その数たるや壮観なものがあり、植松氏もこうしてズラッと並べられたのを見たことがなかったということで、感慨深く眺めていた。
● 当時の裏話満載トーク!! これまでの「FF」音楽を振り返る
植松:そうそう。初代「FF」の時にはサントラを発売しようっていう発想があまりなかったんですよね。それで「II」の時に一緒に。それでもね、当時のファミコンのゲームって1本に入っている曲数が少なかったからね。2枚組で出しても(容量が)余っちゃうんだよね。だから、シンセでアレンジした10分ぐらいの長めの曲をつけてね。強引にサントラらしくしましたね。
――当時のファミコンのサウンドってそもそも使える音が3音だけですもんね。それでメロディーを作るっていうのも難しいと思うんですけども。植松:うんうん。でもね、面白かったですよ。今のゲーム機なんて凄く進化しているから、それこそオーケストラで録った曲やロックバンドの曲をそのまま流したりってできて、もちろんそれはそれでいいんですけど。3つの音しか使っちゃいけないっていう制限があると「その3音でどんなことができるだろう?」って想像するというか、クリエイティブになるよね。
コナミさんにしても、ナムコさんにしても、任天堂さんにしても、当時はみんなが同じ「3音」っていう条件の中で作っていたから。ほかのメーカーの曲を聴いて「おおーこうきたかー!」とか、「こういう風に音を使っているんだ」とか、プログラマーと一緒に研究したりしていましたね。
植松:僕も厳密には覚えていないけども……。「FF」のフィールドか、街か、バトル中の曲のどれかだと思う。というのもね、その3曲を作っておけばRPGってとりあえずなんとかなるんですよ(笑)。開発チームから早く曲をくれくれって言われるんですけど、それらを使い回してくれれば制作中にもとりあえずどこでも曲が鳴るようになるんだよね。もちろん後から曲が増えて変えていくんだけども。だいたいそのあたりから作るよね。
今はそのゲームのメインテーマも(早い段階で)作るかな。でも当時はメインテーマっていう発想が無かったから、「FF」のメインテーマは最初の方に作った曲ではなくて、開発中盤に作った曲だね。
「プレリュード(クリスタルのテーマ)」なんかは、「FFI」のゲームがもうできあがっていたんだけど、ROMを出す直前に坂口さんが「今すぐこの場面の曲を作ってくれー!」って来て。本当にもう時間は30分もないような状況で。そこで難しい曲を作ることなんてできないから、その場しのぎにアルペジオで「タリラリラリラリ……」って作ったら、シリーズ通して流れる曲になってね。世の中って何が起こるかわからないね(笑)。
――その曲がなんと25年も流れたわけですが、25周年を迎えていかがですか?植松:25年ねぇ……。僕も当時は20代だったからね。それが今やすっかり白髪のおじさんになっちゃって(笑)。
――25年って、人間が成人して社会人になるような時間ですからね。植松:そうだよね。スクエニさんが今でもリメイクとかで昔の作品を出すことがあるけど、そうすると、今はもうお父さんになっている人が子供の頃に遊んでいたゲームを、その人の子供が遊ぶっていうこともあったりしてね、素敵な話ですよね。親と何か一緒に遊ぶっていう経験って僕はあんまりなかったけど、ゲームを通して親子で楽しんでもらえてるのかもって考えると、ちょっと嬉しいよね。
本当、25周年ってなかなかないですよ。1つの名前のエンターテイメントが25年続いているっていうのは、世の中を見渡しても滅多にない。映画とかにしてもさ、たいがい続いても4作品なんだよね。で、4作品目はもう面白くないんだよね(笑)。「FF」は今25周年で(ナンバリングが)14まで続いてるでしょう。14なんて数字まで続くエンターテイメントのシリーズ作品なんて……奇跡に近いよね。
植松:「FFV」あたりだとサントラが50万枚ぐらい売れているんだよね。すごいでしょう!? これはかーなりスクエニ儲けてるぞ(笑)。
――思い出深い1枚というのはありますか?植松:「FFVI」のオーケストラアレンジのアルバムなんだけどね、ウィーンで録ったのかな。これはね、作曲家がいて、アレンジを担当するアレンジャーがいて、それでスタジオに入って録音するんですけども。当時はMIDIがなかったので、スタジオで聴いてみるまでどんなアレンジになっているのかわからなかったんですよ。聴いてみて思っていたものと違っていたり、こうしたいっていうのが出てきても、根本をその場で変えることはできなかったのよ。
当時、アレンジャーに曲を預けた人はみんなそういう想いがあったと思うんですけども、どうせやるなら徹頭徹尾、自分が思っているようなオーケストラ表現っていうのを実現したいなぁって思っていたんですね。
それがMIDIデータが使えるようになってアレンジャーの人ともっと綿密なやり取りができるようになったのが「FFVI」の頃。「FFVII」のオーケストラアレンジではアレンジャーの浜口氏とMIDIデータで細かにやり取りをして、その頃から自分も納得がいくアレンジアルバムができるようになったんだよね。「FFVI」あたりが転機になって変わっていったんだね。
――時代とともに1作品あたりの収録曲数も増えていきますね。「FFIX」だと160曲もあります。植松:「FFIX」の頃はハワイで作曲してたんだよね。ただハワイでの仕事部屋がね、部屋に窓がなくて真っ暗な部屋で。そこで深夜になるまで仕事をして、家に帰ってまた行っての繰り返しだったから、ハワイでやる意味が全くなかったんだよね(笑)。
植松:どうかなぁ。僕もやりたかったし開発チームからもアイディアがあったと思うんだけど。「FFIV」のあたりから(スーパーファミコンになるということで)容量が増えるってなって、主題歌みたいなものを入れてみたいよねって話ぐらいからしていたね。
まぁやっぱりスーパーファミコンでも容量は足らなくてね。「FFVI」でオペラのシーンをやってるのも歌声を入れたいっていうのがわかるものだね(笑)。(プレイステーションで)CD-ROMになって容量不足というのはなくなったんだけど、「FFVII」の頃はまだプレイステーションを使いこなそうっていうのにみんな一生懸命で。歌を入れようっていう余裕がなかったんだよね。セフィロスの「片翼の翼」でコーラスが入ったりしつつ、「FFVIII」でやっと主題歌が実現したんだね。
――「FFVII」の当時に好きな曲として「蜜蜂の館」を挙げていましたが植松:好きなんだよねぇ(笑)。かわいいじゃない? 僕ってシリアスな曲を作る人って思われがちなんだけど、ポップで愉快な音楽って好きなんだよね。でもそういうのって「FF」ではなかなか使いどころがないでしょう。せめてチョコボの時にあるぐらいで。ああいうタイプの曲はあまり作ってないからね、好きなんだよね。でも誰も「あの曲いいですよね!」って言ってくれたことないんだよ(笑)。いつかどこかで演奏してやろうって思ってるんだけどね。
――会場でCDを購入するともらえる「コンポーザーセレクションCD」というのがあって、そこで植松さんは「FFVI」のティナのテーマを選んでいますが、それはどういう理由なんでしょう?植松:実を言うと、どの曲でも良かったのよ。どの曲も思い出深いものばかりだからね。ただ、ティナのテーマは単純に自分が好きだっていうのもあるし、当時「FFVI」の開発が終わった頃は東京に大雪が降ったのよ。1カ月ぐらい毎日「FFVI」の曲のモニタリングをしていたような時で、外に出たら雪がものすごく降っていてさ。「なんか冒頭の魔導アーマーが歩いているシーンみたいだなぁ」って思った記憶があるんだよね。
あれは気に入ってるし、オーケストラコンサートを海外でやった時もあの曲はウケがいいんだよね。海外のファンの人には「FFVI」がすごく人気があるね。
――「FFX」からは浜渦氏、中野氏が加わって作曲が3人になりましたが。その人選はどういった理由だったんでしょう?植松:3人になったのは、単純に手が足りなかったからだよね。「FFIX」の頃でもう(サントラに入っているだけでも)160曲とかあったし、「FFX」は「FFIX」を作っている途中からプロジェクトが動き始めていましたから。人選は、僕の個性にはないものを持っている人を入れたかったからだね。
――ピアノコレクションのアレンジもたくさん出されていますよね植松:特にファミコン時代の3音だけで作っている頃だと、メロディーがあってアルペジオがあってベースがあってというのはわかってもらえるとは思うんだけど、「これはフルートでやりたかったのかな?」とか「ヴァイオリンでメロディーをやりたかったのかな?」とかまでは伝わらないじゃないですか。なので、こういう想いでやっていたんですよっていうのを伝えるというのを結構やっていて。それをピアノ単体にするとこうなるよっていうのがピアノアレンジだね。
今はもう楽器の生音をそのまま使えるから、そのまま伝わる。やっぱりファミコン、スーパーファミコンあたりまでのアレンジとかは自分で聴いても新鮮だよね。昔は本当に3音だけでやっていたから、どこのメーカーさんも苦労してましたよ。でも、苦労しているからこそ独自の音をそれぞれ持っていたんだよね。
PSG音源で3音しか使えないっていう同じものを使っているのに、作曲家さんごとにまるで色が違うっていうのが凄く興味深かったですね。制限が多いほうがよりクリエイティブな気持ちになると思うよ。
――他のコンポーザーさんの曲を聴いてというと、「FFIV」の頃、古代祐三さんが手がけたスーパーファミコン「アクトレイザー」の曲を聴いて、「FFIV」の曲を1から作り直したという噂を聞いたことがあるんですが。植松:それは(尾ひれの付いた)伝説だね(笑)。曲を作り直してはいないね。当時は、サウンドプログラマーとコンビで毎日朝6時ぐらいに会社にいって、スーパーファミコンの音源を研究していたんだよね。「こうしたほうがいい」とか「こうするともっと良くなる」っていう感じにやりあって。これはイケるだろうってなってたの。
で、そんなある日「アクトレイザー」が発売されて早速手に入れて立ち上げてみたらさ……「なんじゃこりゃああ!!」だよ(笑)。絶対勝てないって思って。それで音を撮り直したんだよね。曲は作ったものと同じだったんだけど。でもね、やっぱり当時は勝てなかったよ。「アクトレイザー」は当時のスーパーファミコンの中ではダントツで良かったね。
● 「今年の展開」 ― Distant Worldsの東京・大阪公演の日程が決定!! 新オーケストラアレンジCDも発売決定!!
本音や裏話がたっぷりなトークのままに、今後の「FF音楽」の展開やイベントについても紹介された。
まずは、オーケストレーション(オーケストラアレンジを構成する人)の中山ショパンさん(中山博之氏)と組んだピアノアレンジアルバム「PIANO OPERA FINAL FANTASY」について。こちらはすでに「I/II/III」と「IV/V/VI」が発売され、全国各地でのコンサート公演も行なわれたのだが、こうなってくると当然出てくるのが、「VII/VIII/IX」の発売はあるのか?という話。
東京公演でもこの話題は出ていたのだが、「(話はまだ)止まっている」ということで今のところ未定のようだ。ただ、「中山ショパンにセフィロスのテーマやらせてみるか!」という植松さんの言葉もあったので、今後に期待したいところ。
全国各地で開催された「PIANO OPERA FINAL FANTASY」コンサートの模様。「VII/VIII/IX」の発売とコンサートにも期待したいところ |
「Distant Worlds」の公演日程が決定! 東京大阪で年末に開催される。最終日はなんと12月31日! |
このステージで発表された今後の展開の中でも、最も大きなものはオーケストラコンサート「Distant Worlds」の公演日程が発表されたことだろう。日程は以下のようになる。
・12月26日:東京(東京国際フォーラムA)
・12月28日:大阪(グランキューブ大阪)
・12月31日:東京(東京国際フォーラムA)
12月31日という最終日にはさすがに会場からも大きな声が挙がる。植松さんもこれには「12月31日ってすごいよねぇ。さっきスクエニの人とも話してたんだけど、31日にやるならいっそ年を越そうよって。年越しの瞬間に勝利のファンファーレ鳴らしたりしてね(笑)。」と、楽しいアイデアを膨らませていた。
CD2枚組+アナログレコード盤1枚という構成でリリース予定だという新オーケストラアレンジCDも。プラハでの収録模様が紹介された |
さらに、25周年を記念した「FF」シリーズの新オーケストラアレンジCDが発売されることも発表された。こちらは「この曲ってまだオーケストラになってないよね」という新録のものと、これまでのオーケストラアレンジを含めたもので、CD2枚組+アナログレコード盤が1枚という構成になるということだ。
収録はプラハで行なったということで、「Distant Worlds」でも指揮を務めてきたアーニーロス氏のもとドボルザークホールで収録。会場ではその模様も上映された。
アナログレコード盤がつくということだが、植松さんが「FF」関連のアナログレコードをリリースするのは初めてのこと。
これについては、「レコード盤って音いいよね。音がねー、やっぱり暖かいの。柔らかくてね。CDを初めて聞いた時はすごく音がいいなぁって喜んだんだけどね、ある日レコード盤を聞いてみたらすごく音がよかった。CDってデジタル収録だからある程度、上や下の音がカットされちゃってるんだよね。それに比べてレコード盤はアナログだから、全部の音が聞こえてくる。だから音がいいんだよね。このアナログ盤もぜひ聴ける環境があったら、聴いてみてもらいたいなぁ」と、念願が叶った喜びを交えつつ語っていた。
ドボルザークホールでの収録は、プロ意識の高いぶつかりあいもあったということで、力の入ったものになっていそうだ。長年の夢が叶ったアナログレコード盤も音の良さやジャケットデザインに期待したい |
終始、満面の笑顔で本当に楽しいトークをしてくれた植松さん。健康にも気を使っていて、50周年にも元気に活動をしていたいと語ってくれた |
こうしてトークイベントは終了の時間になったのだが、この日は「FF展」の最終日でイベントもこれが最後だったということもあり、多少の時間的余裕があるということで、植松さんの発案で急遽、会場の人からの質問コーナーを行なうことに。最後にそちらも掲載しよう。
――私は自分の結婚式に大好きな「FF」の曲をたくさんかけたのですが、もし、もう1度結婚式を行なうようなことがあったら、その時には「この曲をかけるべき」という曲はありますか?植松:あのー、次は「ドラクエ」にしてください(笑)。
――ジャズアレンジCDを出してもらいたいです!植松:わかりました! 考えておきます(笑)。なるほど、ジャズっていう手があったな。ただね、ジャズとクラシックって、クラシックは聴いているとこう気持ちが上向きになるんだけど、ジャズって下に落ち着いていくんだよね。わかるかなあ? 詳しく話すと長くなっちゃうから、また今度話すね(笑)。
――「FFII」に使用されなかった戦闘曲があったと思うのですが、そうした未使用曲もたくさんあるんですか? あればぜひ未使用曲集のCDも出してもらいたいです!植松:未使用曲はねぇありますよいっぱい。ただ、今からそれを掘り起こすのはなかなか難しいんだよね。「FFII」だと当時MSXで作ってたし、「FFIII」あたりからはマッキントッシュになったんだけど、それもすごく古いバージョンだから、今は再生できないんだよね。僕も同じように考えて、ちょっと前に古いボツ曲を掘り起こしてみたんだけどね、1番古いもので「FFXII」あたりのデータだったんだよ。
――植松さんはプログレッシブロックに影響されたという話がありますが、「FF」の曲でも何か影響を受けたものはありますか?植松:左手のベースラインを複雑にするっていうのは、キース・エマーソンに影響されたクセだと思うんだよね。
質問コーナーも終わって、植松さんより最後の挨拶。植松さんは、「早いもので、あれから25年経ってしまいましたけどね。いい時期だと思いますね。25年経って1から最新のものまでを俯瞰できたというのはいい経験になりました。それらが反映されている「PIANO OPERA」、発売される新録のオーケストラCDもぜひ聴いてください。そして、年末には東京と大阪でのDistant Worldsもありますが、これは初演の曲が多いと思いますので、新たな感動が得られると思います。次回は50周年記念でお会いしましょう(笑)」と、締めくくった。
(C)SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA
(2012年 9月 3日)