任天堂、2012年3月期決算短信を発表

3DSのソフトデジタル版販売は小売店で値付けが可能に!


4月27日 公開



岩田 聡代表取締役社長(2011年9月)

 任天堂株式会社は、2012年3月期決算短信の概要および社長説明を公式HPに掲載した。

 それによれば、売上高は6,476億円、営業利益は373億円の損失となり、為替差損が277億円発生したことにより、経常損失は608億円、当期純損失は432億円となった。売上総利益率の主な減少理由としては、「Wii」や「ニンテンドー3DS」のハードウェアなどの値下げや在庫補償等の影響でハードウェアの収益率が大幅に低下したことおよび、値下げにより赤字販売となっている「ニンテンドー3DS」ハードウェアの売上高占有率が上がったことによるとしている。

 3DSは1,353万台を販売、国内においての普及スピードは過去最速で500万台を超えた。ソフトも「スーパーマリオ 3Dランド」、「マリオカート7」などヒット作が生まれ、国内の2012年第1~16週におけるソフト販売上位20位までのうち、3DSタイトルが12、DSタイトルが1、と市場を牽引するまでとなったが、欧米では年末商戦の立ち上がりが遅く、全世界で3,600万本の販売にとどまった。

 Wiiでは「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」などがヒット。ハードウェアが984万台、ソフトウェアが1億237万本を販売した。

 次期の見通しとしては、ニンテンドー3DS向けに4月21日に配信した「ニンテンドーダイレクト」でも公開された「New スーパーマリオブラザーズ2」を8月に(欧米も8月という)、「とびだせ どうぶつの森」を今秋、「脳トレ」シリーズ最新作「鬼トレ(仮)」を今夏に国内で投入。アジア各地での3DS本体の販売を順次開始する。

 また、3DS本体の「売れば売るほど赤字になる」という「逆ざや」状態に関しては、次期半ばまでに赤字解消を見込む。さらに「Wii U」を日米欧で2012年末に販売。これらの取り組みにより、次期の業績予想は、売上高8,200億円、営業利益350億円、経常利益350億円、純利益200億円を見込んでいる。

 なお、Wii Uの最終形はE3 2012にて公開されるのは既報と変更はなく、年内のソフトラインナップについて発表されるが、発売日や価格に関しては、E3のもう少し後になるという。



■ DL販売は「New スーパーマリオブラザーズ2」からスタート!
  デジタル販売は小売店でも行ない、小売店で値付けが可能に!

「New スーパーマリオブラザーズ2」

 来期の3DS本体は1,850万台、ソフトは7,300万本の販売を予想。Wii Uを含むWiiは1,050万台、ソフトは7,000万本と予想している。なお、3DSとWii Uのソフトウェア販売予想には、デジタル配信によるパッケージソフトの販売数量も含まれている。これは、第3四半期決算説明会での同社代表取締役社長、岩田 聡氏の講演内容を裏付けるものとなっている。

 パッケージソフトのダウンロード販売は、パッケージと併売の形で、8月に投入される「New スーパーマリオブラザーズ2」からスタートする。今夏に予定されている「鬼トレ」もパッケージ版とデジタル版を併売する。デジタル版は、SDカードに格納され、ダウンロードした本体のみで使用できる。

 また、商品の選択と購入決定、そして決済について、小売店とニンテンドーeショップのどちらでもできるようになるという。店頭や、小売店のオンライン・ショッピングサイトで、商品の選択と購入決定、そして決済を行ない、そこで16桁のソフト引き替え番号を発行。ニンテンドーeショップで入力することで購入が可能になる仕組みがすでに用意されている。

 これはダウンロード販売の障害になっている、「クレジットカード番号入力に対する不安」、「年齢によってクレジットカードや携帯電話での決済手段を利用できないユーザーへのフォロー」の意味合いを持つ。「『いつも慣れている方法でソフトにお金を支払っていただく』という方法は、お客様に購入いただくハードルを下げることにつながる」と岩田氏は講演の中で述べている。

 また、小売店でのデジタル販売版に関して、「小売店でも在庫を持たずに済む」、「在庫切れによる販売機会の損失が防げる」という今までのメリットだけでなく、「小売店で販売されるデジタル配信ソフトは、パッケージソフトと同じように、小売店で値段をつけることになる」という。

 このシステムは、任天堂が小売店にデジタル商材を卸売販売し、ユーザーは小売店から購入するという販売形態を取ることで実現される。任天堂は小売価格の決定に関与しない。つまり、小売店によってパッケージ版と差異のないデジタル版の値付けが可能となる。

 また、これまでのニンテンドーeショップのビジネスでは、任天堂が課金決済コストを負担する形を採ってきたが、通常のパッケージ商品と同じように、任天堂は課金決済のコストを負担しない構造に変わることとなる。

 さらに、Wii Uではハード発売時からこの仕組みを展開し、ユーザーがパッケージとデジタル2つの形態から選択できることを予定しているという。

 最後に岩田氏は、「『追加コンテンツ販売を意識するあまり、パッケージとして未完成と受け止められるような商品を任天堂としてご提案するつもりはない』、『ネットワークを通じてコンテンツを配信することで、さらにお客様に長く、深く遊んでいただくために、追加コンテンツ販売を行なっていくが、この際には、あくまでお客様に提供するクリエイティブなコンテンツを制作したことに対する対価として、お客様にお金を支払っていただけるようにする』、すなわち『構造的に射幸心を煽り、高額課金を誘発するガチャ課金型のビジネスは、仮に一時的に高い収益性が得られたとしても、お客様との関係が長続きするとは考えていないので、今後とも行なうつもりはまったくない』ということです。これらのことをご理解いただければ、『『どうぶつの森』は、アイテム課金ゲームになるのではないか?』というような誤解をされることもなくなると思います」と締めくくっている。

 この取り組みは、メーカー、小売店、ユーザーがそれぞれ納得できるデジタルビジネスの1形態となるのかどうか、今後が注目される。


(C) Nintendo

(2012年 4月 27日)

[Reported by 佐伯憲司]