Bethesda Softworks、「Dishonored」開発者インタビュー

「血を伴わない復讐もある」。ストーリーに込められた想いとは!?


4月13日開催

会場:W Hotel



 「Dishonored」プレスプレビューの締めくくりとして開発者インタビューをお届けしたい。インタビューに応じてくれたのは、「Dishonored」の開発元Arkane StudiosでCo-Directorを務めるRaphael Colantonio氏とHarvey Smith氏。

 インタビュー時間が限られていたため、ゲームについてあまり深く掘り下げて聞くことはできなかったが、「Dishonored」がシングルプレイ専用のゲームであり、マルチプレイは搭載していないこと、PC版は60フレーム表示に対応し、Wii U版の発売予定はないことなど、デモンストレーションではわからなかった情報を聞きだすことができた。また、Smith氏からは実はこのゲームの着想は日本の忍者から得たという意外な一言も聞くことができた。

 今年、レトロフューチャーのメジャータイトルとして、2K Gamesからも「Bioshock Infinite」がリリースされるが、ライバルについてどう見ているのかといったことも聞いてみたかったが時間不足で聞けなかった。機会があればE3で聞いてみたいと思っている。




■ ヴィクトール・アントノフ氏起用の経緯と世界観の魅力

「Dishonored」Co-Directorを務めるRaphael Colantonio氏(左)とHarvey Smith氏(右)。
1815年頃のヴィクトリア朝をモチーフにしたというグラフィックス

――「Dishonored」はヴィクトル・アントノフ氏のアートが印象的なゲームですが、彼を起用した経緯を教えて下さい。

Harvey Smith氏 彼とは7年前、彼がValveにいるときから知り合いで、優れたビジュアルデザイナーだということはわかっていました。Arkaneのビジュアルディレクターのセバスチャンが声をかけて一緒にやることになりました。

――彼を起用したことで、ゲーム世界はどのように変化しましたか?

Smith氏 彼が加わったことで、共同で新しい世界を作っていくことができました。光の当て方やネズミの演出の仕方など、お互いに意見を出し合いながら一緒にゲームを作っています。

――このゲームは“レトロフューチャー”がひとつのキーワードになっていますが、なぜゲームの世界観にヴィクトリアスタイルを採用したのですか?

Smith氏 世界観が決まるまでに紆余曲折がありましたが、まずはゲームプレイの内容から入っていって、ナイフなどの登場するアイテムのディテールやスチームパンクの世界観などを踏まえた結果、最終的にヴィクトリアスタイルを選択することにしました。

――実際にゲーム内のアートで気に入っているものはありますか?

Smith氏 たくさんあります。Golden CatやMad Houseなどは、とても魅力的でエレガントで非常に気に入っています。敵として登場するパーティーの衣服やクラシックな雰囲気も気に入っています。それだけではなく廃頽した表現もあって、美しさと醜さが融合しているところが特に気に入っています。

――ゲームエンジンにUnreal Engineを使っているということですが、使っているバージョンと、特に気に入っている表現はありますか?

Smith氏 正確なナンバーはわからないが、Unreal Engineの最新バージョンを使っている。3.0よりもう少し新しかったはず。ライティング周りには特に力を入れているつもりです。 

――PC版では、DirectX 11に対応するなどの特別な仕様になりますか? またWii U版のリリース予定はありますか?

Smith氏 PC版は60フレーム表示に対応するところが最大の違いで、そのほかはすべてPS3/Xbox 360版と同じになります。Wii Uに対応する予定はないです。




■ ストーリーの魅力について

Colantonio氏によれば、最初にダークサイダーから力を授かる。ここがストーリー上のキーポイントになるようだ
圧制が敷かれる世界に光明は見いだせるのか?
圧政の象徴として描かれるTollboys

――ストーリーについてですが、このゲームを通じてゲームファンに伝えたいメッセージは何ですか?

Smith氏 このゲームは王女殺しの疑いを掛けられてすべてを失った主人公のリベンジ(復讐)ということをひとつのテーマにしていますが、その方法はユーザーに委ねられています。誰にも見つからずにミッションを遂行することもできるし、皆殺しにしながら復讐を果たすこともできる。伝えたいメッセージとしては、復讐だからといって必ず血を伴わなければならないというわけではないということ。そこがこのゲームのユニークなところだと思います。

――デモンストレーションでも大活躍していた主人公の超常能力ですが、彼はどのようにしてそれを習得しているのですか?

Colantonio氏 まず始めにアウトサイダーと呼ばれる謎の人物からその能力を与えられます。新しい能力はゲームを進めていくと手に入るルーンを集めて、ルーンを消費して購入する形になります。能力には様々なものがあり、どれを選ぶかによってもゲーム展開が変わってきます。

――このゲームは非常に自由度の高いゲームですが、遊び方によってどの程度ストーリーが変わってくるのですか?

Smith氏 ゲームの中では、プレーヤーがどういうことをしたかをチェックしています。プレーヤーの行動によってある人物が元気になったり、ある人物を殺さなかったことによって、後のミッションで登場したりするでしょう。もちろん、エンディングも変化します。

――Tollboysと呼ばれるSF的な乗り物は極端に背が高かったり、Golden Catにいる女性は皆露出度が高かったりしますが、あれはどういうメタファーなのですか?

Colantonio氏 女性が薄着なのは、単純にあそこがいかがわしい店だからです(笑)。ほかのミッションでは女性は普通の格好をしています。トールボーイに関しては、屋外には病気に感染した人々がいるので、彼らから病気をうつされないように距離を取って監視しているという設定です。ルールを守らない市民は上から撃ち殺します。

――主人公や市民にとってはまさにひどい世界になっていますが、彼らにハッピーエンドは訪れますか?

Smith氏 もちろんです。善行を繰り返していけばハッピーなエンディングになるでしょう。ただ、それが皆さんの期待した内容かどうかはわかりませんが(笑)。

――このゲームのボリューム、クリアまでの想定時間はどれぐらいですか?

Colantonio氏 正確な時間は人それぞれですが、クリアするだけなら14時間ぐらい。スニークでクリアするなどじっくりプレイしていけば25時間ぐらい掛かると思います。

――このゲームの最大の魅力は何だと思いますか?

Colantonio氏 アクション、ステルス、色んなスキル。様々な選択肢の中でいかにゲームを進めていくかでしょうか。




アイデア次第で様々な戦い方ができる「Dishonored」

――このゲームにマルチプレイモードを搭載する予定はありますか?
Colantonio氏 ありません。ゲームの仕様や雰囲気なども踏まえて、シングルプレイに特化したゲームになっています。繰り返し何度もじっくり遊んで欲しいです。

――ダウンロードコンテンツの予定は?

Smith氏 現時点ではまだ具体的な話はできないが、すでにDLCは企画されていて、リリースされることも決まっています。

――影響を受けたゲーム、目標としているゲームを教えて下さい。

Smith氏 「Bioshock」、「FarCry2」、「Deus Ex」、「Thief」。そのほかにも影響を受けたゲームはたくさんある。目標は、ステルスアクションのジャンルでナンバーワンになることです。

――日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。

Colantonio氏 このゲームを日本で発売できることをとても名誉に思っています。新しいタイプのゲームに仕上がっているので、ぜひプレイしてみて下さい。

Smith氏 このゲームのインスピレーションは、忍者から得た部分が大きいので、それが生まれた日本で発売できることをとても嬉しく思っています。私にとって日本は特別の場所です。ぜひゲームも楽しんでいたければと思います。

――ありがとうございました。


【スクリーンショット】
独特の質感で描かれた雰囲気たっぷりのグラフィックス。ゲームをプレイすることでこの世界観のファンになる人も出てきそうだ

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(2012年 4月 27日)

[Reported by 中村聖司]