G-Star 2011レポート

【G-Star 2011】NEXON、「三国志を抱く」体験レポート&インタビュー
鬼才キム・テゴン氏に歴史にこだわる意図と、その魅力について聞いた


11月10日~13日開催

会場:釜山国際展示場(BEXCO)

入場料:大人5,000ウォン
学生/子供2,000ウォン


 今年のNEXONの発表会で、大きくフォーカスされた人物が、開発子会社Ndoors常務のキム・テゴン氏だ。物静かで優しい面立ちと黒縁メガネがトレードマークのキム氏は、ゲーム開発者というより歴史の教師のような雰囲気を漂わせている。代表作は「巨匠オンライン(邦題「巨商伝」)」、「君主オンライン」、「アトランティカ」。いずれも歴史を題材とし、戦略的要素を備えているという一癖あるオンラインゲームばかりを生み出しており、韓国オンラインゲーム業界において独自の個性を放っている人物だ。

 その彼の最新作が「三国志」の世界観をモチーフにしたMMORPG「三国志を抱く」である。同作は「G-Star 2011 Press Conference」レポートでもお伝えしたように、Unity採用のマルチプラットフォームタイトルとして脚光を浴びているが、彼が手がけた“歴史を題材にした戦略級のMMORPG”という点でも大いに注目したいタイトルである。今回は、キム氏に彼のゲーム制作哲学について話を伺った。



■ プレイフィールは「三国志英傑伝」。まるでクライアント型のMMORPGのようにグリグリ動作

「三国志を抱く」ブラウザ版のゲーム画面。マウスで遊ぶターンベースの戦略シミュレーションゲームになっている
こちらがiOS版「三国志を抱く」。インターフェイスはタッチ式で、メニュー表示などが若干異なるが、ゲームはブラウザ版と同じだ

 インタビューに入る前に、NEXONブースで短時間ながら「三国志を抱く」を実際にプレイすることができたので、そのインプレッションをお届けしておきたい。

 ブースでは、Windows PCベースのブラウザ版と、iPhoneベースのiOS版が出展されていた。ブラウザゲームながら、表示そのものは一般的なクライアント型のオンラインゲームと同じように16:9準拠のサイズで表示し、一見しただけでは、ウィンドウ表示でクライアント型のオンラインゲームをプレイしているのと見分けが付かない。

 iOS版については、画面表示がシンプルとなり、インターフェイスもタッチ式に切り替わっているものの、中で進行しているゲームはまさに「三国志を抱く」そのものだ。サーバーも同一ということなので、外出時はiPhoneでプレイし、自宅ではPCでプレイするという遊び方が当たり前になるのかもしれない。

 ブラウザベースのゲームなのでグラフィックスはクライアント型と比べるとかなり劣るが、動きの滑らかさや豊富なエフェクトなどブラウザベースの3Dゲームとしてはかなり高い水準にある。カットシーンはリアルタイムレンダリング、フルボイスにこだわるなど、作りとしては非常に丁寧なのが好印象だ。

 デモはキャラクターメイキングからチュートリアル、そしてゲーム序盤をプレイすることができた。印象的だったのはカットシーンが多用され、ブラウザゲームでアリながら演出が非常にリッチであることだ。武将達の台詞はフルボイスで展開され、同時に字幕表示も行なわれる。チュートリアルでは、移動方法やインベントリーの使い方など基本的なゲームの操作が学べる。

 チュートリアルを終え、街の外に出ると、新たにクエストを提供してくれるNPCがたっており、彼からクエストを受けることでバトルシーンに移行する。バトルは数十秒のローディングを挟み、スクウェアで区切られたマップを使ったターンベースバトルとなっている。敵味方が順番に移動や攻撃などの行動を行ない、すべてのユニットの行動が終わると1ターン終了となる。

 まだ序盤なので敵の数も少なく、受けるダメージも小さかったため軽くあしらうことができたが、敵の数が増え、兵科のバリエーションも増えてくると、かなり楽しめそうだ。プレイフィールとしては、キム氏もインタビューで語っているが「ファイアーエムブレム」に近い。個人的には「三国志」を題材にしている点でコーエーの「三国志英傑伝」シリーズに非常に近いゲームだという印象を持ったし、まさにキム・テゴン氏ならではのオンラインゲームだと思った。彼のゲームは好き嫌いが分かれるが、私は非常におもしろいと感じた。

【三国志を抱く】
簡単な操作で派手な対人戦が楽しめる「Cyphers」。後ろで見ていても十分に楽しさが伝わってくる作品だ



■ 歴史ゲームに手応え。実は日本のシミュレーションゲームファン

Ndoors常務キム・テゴン氏。「三国志を抱く」の開発総指揮を執る
「三国志を抱く」プロデューサーのオ・ジュンギョン氏。細かい部分を補足して貰った

編: まずはキム・テゴンさんの経歴からを教えてください

キム・テゴン氏: ゲーム開発の経歴は20年ぐらいになりました。昔はRTSゲームの開発が多かったのですが、最近は歴史をモチーフにしたゲームを作っています。

編: キムさんの作品は歴史をモチーフにしたものばかりですが、その理由は?

キム氏: 偽りの話ではなく、実際に過去に起きた話の方が共感、理解しやすいと思いました。作った話だと、リアリティに欠けると思いますし、歴史だとこれは実際の話だと、人たちは知っています。新しい情報をユーザーに一々説明する必要も無く、そういう面が開発する上で便利ですね。また、個人的にも好きなジャンルでもあります。そういった理由で、歴史をモチーフにしたゲームを開発してきました。

編: また、キムさんが関わったタイトルは、戦略的な要素も積極的に取り入れられていますが、これも過去の開発経験からきたものですか?

キム氏: ストラテジーゲームを長く開発していたことで、このジャンルの魅力を知ることができました。プレーヤーごと、自分流のパターンがあって、操作の上手さにあまりこだわりがなく、プレーヤーの思考が一番大きなプレーヤースキルになるジャンルです。プレーヤーの操作能力を競うゲームは多いので、我々はプレーヤーの思考を要するゲームを作ろうということになりました。

編: 日本でもストラテジーゲームは多いですが、何か好きな日本のタイトルは?

キム氏: システムソフトの「大戦略」シリーズも好きですし、若い頃はコーエーの「三國志」シリーズをよくプレイしました。見方によっては、「三国志を抱く」や、「アトランティカ」は、日本ゲームに影響されたゲームだとも言えます。

編: キムさんが考える“戦略的要素の楽しさ”とは具体的にどのようなことを指していますか?

キム氏: 古くから多くの人たちが楽しんだゲームは全てターン制のストラテジーゲームですよね。将棋や囲碁、チェスなど、すべてそうです。数千年も飽きることなく楽しんだゲームがターン制ということを見ると、そういう戦略ならではの魅力があったと思います。そういうゲームたちを具体的に見てみると、各駒の移動方法や攻撃方法に関するルールによって、戦略が生まれるのだと持ってます。「三国志を抱く」もそうですが、武将が各駒になって、ルールに従った動きをします。人類が古くから楽しんだ戦略の楽しさが、覚えるのもシンプルで最高の楽しさではないかと思います。

編: その「三国志の抱く」についてですが、Unity 3Dを採用した理由と開発してみた感想は?

キム氏: これからのMMORPGは、より手軽に触ることができて、色んな環境でもプレイできる方向に行くべきではないかと思っていましたが、その途中でUnity 3Dに出会いました。でも、実際に開発してみたら、開発に参考できるような作品がなく苦労しました(笑)。100人以上の大規模で開発していますが、Unity 3Dでこれほどの規模の作品はありませんでした。それで、ここ1年間で、ゲームコンテンツの開発と共にUnity 3DエンジンをMMORPGに対応できるように改良するようにUnityに交渉してきました。

編: プレーヤーのゲーム世界における役割について教えてください。

キム氏: プレーヤーは武将たちを率いる君主になります。君主は三国志には登場しない仮想の人物ということですね。でも、ストーリー上では君主であるプレーヤーは登場しません。プレーヤーは一歩引いたところで、武将たちの物語を観察するというものになります。

編: プレーヤーと武将は対等の関係ですか?

キム氏: 違います。強いて言えばプレーヤーは武将たちの上司になります。ただ、実際は登場せず、ストーリーにも介入しません。

編: 戦闘システムを教えてください。

キム氏: 大きく分けて2つの戦闘方式があります。1つ目は一般戦闘と、2つ目は戦略戦闘です。一般戦闘は囲碁の台のように碁盤状のマップで、1ターン費やして、敵を倒せば戦闘が終了するものですね。戦略戦闘は三国志に登場する有名な戦闘を実際に再現した戦闘になります。

編: 戦闘人数は?

キム氏: 味方の武将は最大で5人まで参加可能です。敵の場合は、特に制限はなく、多い場合もあります。また、パーティーでの戦闘もありますが、こちらは3人のプレーヤーが参加可能です。最大15人の武将が戦闘に参加できます。

編: 「三国志を抱く」はブラウザゲームというカテゴリですが、Facebookや、そのほかのSNSで展開する予定はありますか?

キム氏: 検討はしています。今、準備している作業が終わったら、真剣に検討してみるつもりですね。現時点では、まだ決定した内容は無いです。

編: 「三国志を抱く」はPC以外に、スマートフォンやタブレットにも対応しますが、全てのプラットフォームで同じサーバーに接続してプレイできるのですか?

キム氏: 今の開発段階では別のサーバーですが、実際のサービスでは同じサーバーを利用する予定です。

編: iOS版はスマートフォン版とタブレット版でゲームに違いはありますか?

キム氏: ブラウザ版とは2点で違います。1つ目は、画面の大きさが違うので、ブラウザ版より幾つかのインターフェイスを省かなければなりません。2つ目は、マウスではなくてタッチパネルで操作するということです。ですが、ゲームコンテンツ的にはすべて同じです。だから、同じサーバーで遊べます。

編: ビジネスモデルは?

キム氏: これはまだ確定ではありませんが、基本無料で、武将と装備に関するアイテム課金を検討中です。

編: 韓国のサービススケジュールは?

キム氏: 2012年の上半期を予定しています。今年の年末からクローズドβテストを開始する予定です。

編: 韓国のほかのサービス地域は?

キム氏: 韓国サービスインしてから、来年、日本サービスを予定しています。その次は中国ですね。それ以外は、台湾、東南アジアなどを検討中です。

編: コンソールでの発売予定はありますか?

キム氏: Unity 3Dはコンソールへ移植は簡単ですが、まだ予定はありません。とりあえず、PCバージョンとiOSバージョンに集中しています。AndoroidはOSのレベルで必要な技術があるので、それを待っているところです。その次にするとしたらSNS対応ですね。

編: 最後に日本のユーザーさんにメッセージを

キム氏: 「三国志を抱く」は「三国志」原作を読むのと同じ感覚を味わえるゲームを目指しています。今のオンラインゲームでは、「三国志」をモチーフにした無数のゲームがありますが、この「三国志を抱く」こそ「三国志」ゲームの頂点になるようなゲームに仕上げたいと思います。「三国志」ゲームの始まりは、日本のゲームからだったんですが、最終型という座は「三国志を抱く」になれるように頑張ります。

編: ありがとうございました。


【「三国志を抱く」トレーラー】

【「三国志を抱く」バトルシーン】

【「三国志を抱く」イベントシーン】

【「三国志を抱く」都市育成シーン】

(2011年 11月 12日)

[Reported by 中村聖司]