【特別企画】秋の夜長に楽しみたいFacebook向けソーシャルゲーム特集
「The Sims Social」や「Mafia Wars 2」など最新作、期待作を一挙紹介!






 この秋はFacebookのソーシャルゲームが熱い! 日本でもすっかりおなじみになったソーシャルゲーム。海外ではFacebookをはじめとしたPCが主戦場になり、世界中のゲームメーカーが次々に新しいゲームを世に送り出している。

 ここ数年はFacebookの世界的なブームとともに、ソーシャルゲームメーカーも右肩上がりの急成長を続けてきた。しかし、2011年に入り業界の様相にいくつかの変化が起きている。

 1つめの変化は、これまでソーシャルゲーム業界を牽引してきた新興ゲームメーカーの成長鈍化だ。9月24日に米Zyngaが発表した第2四半期の利益は、昨年の同時期に比べて95%もの大幅なダウンを記録した。

 2つめは、英語圏以外からの参入増加だ。Facebookのソーシャルゲームのランキングを発表しているInside Social Gamesには、中国語やタイ語のゲームが頻繁にランクインするようになった。ブラジルやロシア、中国、台湾、韓国、そしてもちろん日本からもFacebook市場への挑戦が行なわれている。

 そして最後は、大手の参入だ。Electronic Arts(EA)が8月にサービスを開始した「The Sims Social」は急激にユーザー数を伸ばし、10月12日現在はMAU(月間アクティブユーザー数)でランキングトップの「CityVille」を脅かす存在になっている。

 さらに日本時間の10月11日深夜から、「FarmVille」とともにソーシャルゲーム黎明期に一大ブームを巻き起こし、無数の類似タイトルが生まれた「Mafia Wars」の続編「Mafia Wars 2」がスタートした。また、Zyngaは10月12日に独自のゲームポータルサービス「Project Z」を発表した。

 「Project Z」はFacebook Connectを使ってFacebookアカウントで利用できるサービスで、Zyngaの公式ページで発行される「Ztag」というIDを使って友達のプレイ状況を知ることができるというXbox 360の実績やPS3のトロフィーに似た機能が付加される。ほかにもPC用の新作「CastleVille」やHTML5で作られた3つのスマートフォン向けソーシャルゲームが同時に発表された。

 初期の熱狂的なブームを終えて、Facebookのソーシャルゲームは、取り巻く環境も作品のクオリティも次の段階にさしかかっているのを強く感じる。ハロウィンを月末に控えて、各ゲームはこぞって独自性のあるハロウィンイベントをスタートさせている。何かと話題作の多いこの時期、秋の夜長を、最新のソーシャルゲームで過ごしてみてはどうだろうか?



■ グラフィカルに進化を遂げた大ヒット作の続編「Mafia Wars 2」

イメージガールにもなっているNPCのゾーイ。ゲーム内ではプレーヤーの手助けをしてくれる
Facebookの「Mafia Wars 2」公式ページで読めるコミック

 2009年にスタートしたZyngaの代表作の1つで、対人型ソーシャルゲームのフォーマットを作った「Mafia Wars」。ボタンを押すだけの単純さがうけて、ピーク時には月間アクティブユーザー数2,800万人を記録したヒット作だ。その続編がいよいよサービスを開始した。

 冒頭にカットシーン、ヒップホップの歌入りBGMとかなり気合いが入っている。プレーヤーは出所してきたばかりのワル。トニーという親分からシマを預かるが、裏切られ殺されそうになり復讐を誓うところからゲームがスタートする。

 斜め見下ろしの街並みの中を小さなキャラクターが動くゲーム画面は、テキストベースだった前作とは似ても似つかず、一見しただけではこれが「Mafia Wars」の続編だとは気付かない。だが、プレイしてみると見た目が激変するほどの進化を遂げてはいるが、確かに「Mafia Wars」の続編なのだと納得させられる。

 前作の「Mafia Wars」は、マフィアとしてクエストをこなしながら、他のプレーヤーと協力して強いボスを倒したり、他のプレーヤーと対戦するというゲーム。「怪盗ロワイヤル」など日本のソーシャルゲームにも大きな影響を及ぼした完成度の高いシステムだが、全てテキストベースで進むので、グラフィカルな最近のゲームに比べると地味な印象は否めない。

 例えばレベル上げのためのミッションは、前作では「服屋に強盗に入れ」とか「みかじめ料を集めろ」といったテキストが一行書いてあり、横にある「Do Job」というボタンを数回押すだけで遂行することができた。

 「Mafia Wars 2」は前作のゲーム性を踏襲しつつ、ボタンを押すだけだった部分に演出やストーリーを盛り込んで、より派手にグラフィカルに見せている。ミッションはマップ上のNPCから受ける。依頼を受けた後は、家をクリックして強盗に入ったり、徘徊している敵と銃撃戦を繰り広げたりと、より具体的に絵で見せるという演出が加えられている。

 戦闘部分でも、敵を倒すと吹っ飛んで血を流しながら地面に倒れる。表情も見えないようなチップキャラなのに、その様子がとても生々しいのはさすが洋ゲーといったところだろうか。


自分のシマに武器屋やカジノを建ててお金を稼ぐ友達を誘って、仲間を増やせばそのぶん街を守りやすくなるところどころに重厚なイラストのカットシーンが挿入される
ミッションをこなすためのカジノタウン強力なボスとの戦いでは、仲間に助けを求めることができる黄色い吹き出しのNPCからはミッションを受けられる

 プレーヤー同士が、お互いのシマからお金やアイテムを奪い合う対人戦は「Mafia Wars」の面白さを支える重要なコンテンツだ。「Mafia Wars 2」では、対人専用エリア「ファイトアリーナ」で不特定多数のプレーヤーと戦う対人戦と、戦った相手のシマに強奪にいく「強奪」の二段構えになっている。

 「ファイトアリーナ」はいかにも決闘場所という雰囲気の裏寂れた砂漠の基地で、レベルの近いプレーヤーがランダムに徘徊している。相手をクリックすると戦闘が始まり、数回打ち合って先に体力がなくなった方が負ける。

 戦った相手は「ライバル」タブの中に記録されていく。「強奪」にいって相手を倒すと、街の施設やNPCを襲うことができるようになる。どうしても勝てない相手なら、暗殺リストに入れて仲間に暗殺を依頼することもできる。気になるライバルはマークしておくことも可能だ。

 自分のシマに誰かが強奪しにきた場合、強奪しにきたプレーヤーのキャラクターは自分のシマに残っているので、戦って追い払わなければならない。建物をアップグレードすれば、お金や物資を奪われにくくなる。

 対人戦は「Mafia Wars」のキモの部分だけに、非常に丁寧に作られている。武器や防具、キャラクター強化のバリエーションも非常に豊か。「Mafia Wars」で味気なかった部分が全般にグラフィカルに、豪華に、派手になっている。そのぶんプレイのお手軽さがトレードオフになっているが、それはここ最近のソーシャルゲーム全体の傾向でもある。

 本作は16カ国語でサービスされるが、その中には日本語も含まれているので最初から日本語でプレイできる。ただ、Facebookの翻訳機能を使っているため多少言い回しがおかしいのはご愛敬だ。もっともソーシャルゲームらしい要素を備えたゲームの続編だけに、本作がどのように受け入れられていくかは今後のソーシャルゲームを占ううえでもとても興味深い。


うらぶれた雰囲気の「ファイトアリーナ」自分のレベル+2程度のプレーヤーがランダムに現われるアリーナの武器屋では専用の武器を販売している
アリーナで戦ったプレーヤーの街を襲撃することもできる決闘終了後にはバトルの結果を見ることができる戦うことで称号を入手できる



■ 人気の秘密は、ブランド名だけじゃない「The Sims Social」

日本人にも好まれそうなキャラクターイラストはPlayfishの持ち味

 EAの持つブランド力と、傘下に入ったPlayfishの持ち味が絶妙に融合した「The Sims Social」はスタート直後から右肩上がりにユーザー数を伸ばし続けている。「The Sims」はシリーズの累計販売本数が1億本を超えたEAの大ヒットシミュレーションゲーム。ソーシャルゲーム版は初代「シムピープル」を思わせる斜め見下ろし画面に加え、お馴染みのBGMやSEも使われていて、昔からのファンなら懐かしさを感じずにはいられない。

 これまでも有名なフランチャイズのソーシャルゲームはあったが、ソーシャルゲーム単体として楽しめるほど高い完成度とボリュームを持っているゲームは少なかった。本作を開発しているPlayfishは「Restaurant City」などで知られるEAの子会社。Playfishのお家芸ともいえるクセのないキャラクターと小技の効いたモーションは、本作でも遺憾なく発揮されている。

 本作はシミュレーションゲームというより、コミュニケーションツールという色合いが強い。シムはプレーヤーのアバターで、ネイバーのシムを訪ねて交流する。しかし、シムのアビリティを育ててお金を稼ぎ、そのお金で家を作っていくという「The Sims」の楽しさは健在だ。

 家具の一部に材料が必要なものがあったり、部屋を拡張するのにネイバーの協力が必要になるなど、ソーシャルゲームらしい要素も盛り込まれている。家具にはシムが稼いだお金で買うもの、ネイバーと交流するともらえるソーシャルポイントで買うもの、課金アイテムの3種類がある。もともとある「The Sims」の遊びの中に、ソーシャル性が溶け込んでいる。


キャラクターメインキング。髪型、顔、服装などかなり細かいカスタマイズが可能。見た目はいつでも変更できる
本作のイメージガール、ベラがゲーム序盤をガイドしてくれるギターやPCなど、機能性の家具はステータスやアビリティに関係している2人がけのソファを作るためには、アイテムを収集しなくてはいけない

 シムには「Creative」、「Villain」、「Socialite」、「Rocker」、「Romantic」、「Introvert」、「Tycoon」、「Geek」、「Athlete」という8つのパーソナリティがあり、キャラクターメイキングの時に決定する。さらに9つの特徴から最大6つを選んで設定することができる。これらのパーソナリティや特徴は、インタラクティブの選択肢やキャラクターのモーションに反映される。例えば「Ninja」という特徴を覚えると、キャラクターがテレポーテーションできるようになる。

 衛生、空腹、トイレ、睡眠、楽しさ、ソーシャルを全て満たすとInspiredという状態になる。この時記事を書いたり料理を作ったりといった仕事をすると、普段よりも沢山のゲーム内通貨を稼ぐことができる。序盤はお金が足りないことが多いので、積極的にInspiredを狙って、沢山お金を儲けたいところだ。ネイバーとは他人からスタートして、コミュニケーションを取るたびに知人から親友へと関係が深くなっていく。相手が異性なら恋愛関係に発展させることもできる。

 まだサービス開始から1カ月弱しか経っていないが、既に会員数は6,600万人を突破している。今後どういった展開を見せていくのか、今最も注目されている作品の1つだ。


アビリティを伸ばすことで、稼げるお金が増えていくパーソナリティと共にシムの個性をだす「TRAITS(特徴)」友達の家でコミュニケーションをとって関係を深めていく
家具やデコレーションは毎週のように新しいものが追加されている土地を拡張して、部屋数を増やしていく「Inspired」になれば、仕事の獲得金額が増える



■ 「インディ・ジョーンズ」のような大冒険が待っている「Adventure World」

ゲーム内に使われているBGMもインディ・ジョーンズをほうふつとさせる

 Zyngaが8月にスタートした「Adventure World」はプレーヤーがトレジャーハンターとなってマップを探検し、宝物を探すゲーム。タイトルには「AN INDIANA JONES GAME」という副題がついていて、映画「インディ・ジョーンズ」シリーズの世界観や雰囲気がベースになっている。現状でもゲーム内でインディからの手紙が届いたりしているが、タイトル画面には「Indy is coming in Oct」の文字があり、どうやら本人も登場する予定があるようだ。

 本作は、同じZyngaの宝探しゲーム「Treasure Isle」の進化形といえるようなゲームだ。「Treasure Isle」はスタートしてしばらくは、宝島に船で赴き、その地面を掘って宝物を見つけるというゲームだったが、1年間の進化を経て、ギミックをクリアしながら進んでいくストーリー性のあるミッションがメインとなった。

 このリニューアル自体はとてもよく出来ていて非常に遊びやすくなっているのだが、幾多のアップデートでシステム周りが非常に煩雑になり、バグも多いゲームになってしまった。「Adventure World」は「Treasure Isle」の最も基本的な要素と進化した部分だけを抽出したようなゲームで、シンプルだがよく考えられたゲームになっている。

 ゲームの基本的な流れは、ベースキャンプを拠点に、探検マップに移動して目標となる宝物を目指すというもの。マップの中にはプレーヤーに襲いかかってくる蛇や、隠された洞窟、トラップなど冒険心をくすぐるギミックが隠れている。

 蛇に襲われたりトラップに引っかかったりしたときに減るのは、プレーヤーが(おそらく)1番重要視している行動エネルギーだ。行動エネルギーがなくなると、回復するまでは冒険がお預けになってしまうので、なるべく罠に引っかからないように、蛇から攻撃されないように神経を使う。この要素が、アクション性のないソーシャルゲームの中に、「インディ・ジョーンズ」のようなハラハラドキドキ感を生んでいる。


時々、インディから手紙が届くマップには蛇や罠などたくさんの仕掛けが待ち受ける宝物が詰まった秘密の洞窟を見つけることも
像のレバーを操作すると罠を解除できる解除せずに罠に侵入すると、エネルギーが減るマップをクリアすると、新聞に載る演出が

 いかにもソーシャルゲームらしい箱庭作りの要素もある。アイテムを売るショップや、補給のためのボートなどがあるベースキャンプは、カスタマイズして街のように発展させることができる。ベースキャンプのすぐそばにはエルドラドへの入り口がある。ドアの封印を解くためには、冒険で手に入れる黄金の像が必要で、序盤はこの像を手に入れるために友達を誘ったり、レベルを上げたりすることになる。

 今年に入って成長が一段落した感のあるZyngaだが、それまでの安く素早く作るという体制から、開発費と時間をかけてよりゲームらしいゲームを作るという方向にシフトしてきている。2009年6月にスタートした「Farm Ville」はすでに2周年を超えたものの、アップデートを繰り返し、一定の人気を保っている。

 2年前には1本のゲームの寿命は3カ月程度と言われていたが、ゲームの複雑化や開発規模の拡大に従って、半年、1年のプレイを前提としたゲーム性が問われるようになるのだろう。ソーシャルゲームもまた短期間に遊び捨てるようなものではなく、1年、2年という長いスパンにわたって遊ばれるものになりつつある今、土台となるゲーム作りも長期的なアップデート計画を踏まえた、オンラインゲームのような作りが求められつつある。


探検マップには繰り返し行けるレベル上げ用のものと、1回しかクリアできないメインストーリーに関わるものがあるマップのロード画面では、そのマップの説明を読むことができる繰り返し可能なマップでは、クエスト報酬を何度も受け取ることができる
ベースキャンプは街のように発展させることができるベースキャンプの側には、エルドラドへの入り口がある入れない場所にある遺跡。土地を拡張することで、発掘できるようになる



■ 筆者オススメの注目タイトル

 上記3作以外にも、意欲作やリニューアルなど様々な話題作が登場している。その中でも筆者が注目している作品をピックアップして紹介したい。

「King's Bounty:Legions」

開発:Nival
ジャンル:シミュレーションRPG

 ゲームエンジンUnityを使って開発された本格派3DシミュレーションバトルRPG。本格的なゲーム過ぎて英語を沢山読まなければプレイが進まないのが日本人には辛いところだが、これまでFlashが中心だったソーシャルゲームの新しい可能性として注目したい。


ヘックスで戦うリアルなシミュレーションバトル

「Pioneer Trail」

開発:Zynga
ジャンル:西部開拓ゲーム

 Zyngaの「FrontierVille」が新要素追加とともにタイトルを変えた。これまでのゲームデータはそのままに、友達とパーティーを組んで農場の外を旅してクエストをこなすという要素が追加された。


現在はゴーストタウンでハロウィンのイベントが進行中だ

「Monster World」

開発:Wooga
ジャンル:農場ゲーム

 ドイツのソーシャルゲームベンチャー企業Woogaがサービスしているモンスターの農場ゲーム。レモネードのビンやランプの魔神など、不思議な作物とカラフルなキャラクターが特徴。


Facebookはヨーロッパでも人気だが、ヨーロッパ発のヒット作は意外と少ない

「Dungeons & Dragons: Heroes of Neverwinter」

開発:Atari
ジャンル:シミュレーションRPG

 TRPG「ダンジョン&ドラゴンズ」の世界観を背景にしたシミュレーションRPG。選べるクラスはFighter、Wizard、Rogue、Clericの4種類。街の酒場で他人のキャラクターを雇ってパーティーを組むことができる。難易度はかなり高めで、パーティー構成をしっかり考えて準備していかなければ、序盤でもかなり苦戦する。


日本でも人気の元祖TRPG「D&D」の世界観をベースに、本格的なシミュレーションバトルが楽しめる

「Ravenshire Castle」

開発:6waves Lolapps
ジャンル:箱庭育成ゲーム

 童話の世界に迷い込んだような、綺麗で少しダークな世界観が女性に大人気の「Ravenwood Fair」。開発したlolappsは、2011年7月に中国の大手ソーシャルゲームパブリッシャー6wavesと合併して、6waves Lolappsとなった。その合併の少し前に発表したのが「Ravenwood Fair」と世界観を共有する新作の続編「Ravenshire Castle」と「Ravenskye City」だ。ローンチは年内で、秋というより年末の期待作ということになるが、「Ravenwood Fair」と4月にスタートした「Ravenstone Mine」と地続きの世界になるので、まずはこちらで遊んでみるといいだろう。


6月に発表された「Ravenwood」ユニバースの世界観。左上が現在サービス中の「Ravenwood Fair」とその地下にある「Ravenstone Mine」

Facebook (c) 2011

(2011年 10月 14日)

[Reported by 石井聡]