東京ゲームショウ 2011レポート
TGSフォーラム 2011 Mobage、ハンゲーム、ジンガの首脳陣が語るソーシャルゲームの未来像
DeNA小林氏「僕ならZyngaの客単価を5倍にできる」意見百出したソーシャルゲーム論
めったに見られない豪華な顔ぶれのセッション |
「東京ゲームショウ 2011」のビジネスデイ2日目に、「TGS フォーラム 2011」のソーシャルゲームセッション「ゲームビジネス大転換! ソーシャルゲームはこうして成功させる!」が開催された。
日本のソーシャルゲームビジネス市場は現在急成長を続けており、日本オンラインゲーム協会(JOGA)の推定では2010年には1,000億円を越え、2011年には2,000億円市場になるのではないかと予想されている。これは映画や音楽のCD販売市場に並ぶほどの大きさで、ソーシャルゲームがエンターテイメントの中で主流と呼べるポジションに付きつつあることがわかる。
セッションでは、そんなソーシャルゲームブームの中心的な位置にいる3人のキーパーソン、NHN Japan代表取締役社長の森川亮氏、ジンガ・ジャパン代表取締役CEOの松原健二氏、ディー・エヌ・エー取締役ソーシャルゲーム事業本部長の小林賢治氏によるトークセッションと、日経エンタテインメント!編集長の吉岡広統氏をモデレーターにパネルディスカッションが行なわれた。
韓国に本社を持つNHNと、アメリカが拠点のジンガという非常にグローバルな顔ぶれが揃い、日本や世界の亜ソーシャルゲーム市場について数字を交えた多角的な分析を様々に聞くことができ、非常に興味深いセッションとなった。少々長い記事になるが、ソーシャルゲームの今後を予測する様々なキーワードが詰まっているので、ぜひ読んでみて欲しい。
■ 将来は家庭用とモバイルPCがマージしていく
NHN Japan代表取締役社長の森川亮氏 |
NHN Japanは韓国NHNが2000年に設立した日本法人。韓国NHNは元々検索サイト「NEVER」を運営していたが、ブローバンド時代の到来と同時にこれからは人と人のつながりが重要になるという予測のもと、ゲームポータル「Hangame(ハンゲーム)」のサービスを開始した。日本でのサービスは2000年に始まり、現在は累計登録会員数4,800万人の日本一のゲームポータルサイトとなっている。
韓国語で「1」や「ちょっとした」という意味を表す「ハナ」とゲームを合体したハンゲームという名前の通り、当初はカジュアルなゲームが中心だったが、近年にはハイクオリティなゲームへの志向の高まりに合わせて、MMORPG「TERA The Exiled Realm of Arborea」のような大作も自社開発を行なうようになっている。
さらに今年に入ってからは日韓のNHNがタッグを組んで、スマートフォンへ注力している。森川氏は今後、タブレットやAndroid OSの普及、ゲームクラウドサービスによってPC、コンシューマ、携帯市場がマージしていくと予想している。しかしコミュニケーション要素がなくなることは決してないので、ネットワークとゲームのバランスをいかに取っていくかが重要になると語った。
スマートフォン市場に参入するに当たり、今までのスタイルをどう変化させていくかを検討した結果、原点に立ち帰った「定番ゲーム」からスタートした。定番ゲームは、ルールを説明する必要がなく継続力が高いという利点があるが、競争が激しくそれ自体で収益をあげることが難しい。また独自の調査によって、スマートフォンで定番ゲームをやっているところを人に見られなくないと、特に女性層が感じていることがわかり、オシャレなデザインに気を配るなどの工夫を凝らした。現在は134本のアプリをリリース、国内で800万ダウンロードを達成している。
アプリをつなぐ横軸となるスマートフォン向けのプラットフォームは、当初PCとIDを統一させていた。しかしスマートフォンのユーザーは登録を嫌い、ダウンロードをした後の登録率が40~50%と低迷したため、登録なしで遊べるようシステムを変更した。
その代わり、ゲームの中にコミュニケーション要素を入れて、ゲームのバイラル性によって登録を増やせるような展開を進めている。「これまでは知らない人同士で遊ぶシーンが多かったが、今後は電話帳などを通して知り合い同士で遊ぶシーンを作れないか考えている」と、モバイルのソーシャルゲームが、ソーシャルグラフを使って遊ぶという原初的な定義に近づいていく方向性を示唆した。
ソーシャルゲームのプラットフォームは、オープン化によって躍進しているが、ハンゲームのプラットフォームは現在のところオープン化を行なっていない。これについては、現在はオープン化よりも、どういう形がベストなのかを自分たちの中でモデルを作ってチャレンジしているところだそうだ。
開発体制については、カジュアルゲームは日本で作り、長いスパンで収益化への道を探っていく一方、韓国にある開発で即時に収益化しやすい中型や大型のタイトルを急ピッチに準備している。今年の年末から来年にかけて、50本程度がリリースされる予定だ。
現在は90%以上が内製だが、パートナー企業との連携も進めている。その際重視しているのは、運営体制をしっかり作れるかどうかということ。また「スマートフォンらしいゲームをちゃんと出してくれるような提案をしてくれるところと組んでやっていきたい」のだそうだ。
数をそろえるのではなく、面白いもの、クオリティの高いもの、ビジネスになりそうなものに絞って、ライブドアと共同でデータセンターの支援やデータ分析のコンサルティングを行ない、確実に収益をあげられるような展開を進めていく。
■ ソーシャルで、ゲームを取り巻くすべての環境が変わる
ジンガ・ジャパン代表取締役CEOの松原健二氏 |
ジンガ・ジャパンは、アメリカのソーシャルゲーム最大手のZyngaの日本法人。Facebookとともに成長してきたZyngaは、世界のソーシャルゲームをけん引するメーカーとして常に大きな注目を集めている。それだけにその方向性や今後の戦略について気になる部分が多い。
当然この講演でもそうなのだが、現在Zyngaは北米で上場の準備を進めており、企業のIR活動を自粛する「クワイエットピリオド」に入っている。そのため、今後の方針については話すことができない、と冒頭で松原氏が謝罪した。代わりに、これまでの道筋と、松原氏個人が考えるソーシャルゲームの展望という形での講演となった。
Zyngaという企業を数字で概観する次のようになる。設立は2007年。開発したゲームは、現在160カ国で遊ばれている。DAU(デイリーアクティブユーザー)6,000万人、MAU(マンスリーアクティブユーザー)2億3,200万人、すべてのユーザーのプレイ時間を合計すると、毎日20億分(Minutes)遊ばれていることになる。
数字だけでも突き抜けた巨大さが分かる。ユーザー数がこの規模になると「たとえばローディングタイムについても非常にセンシティブになっていて、ローディングタイムが世界中で何分縮まったというようなデータについても社内で共有しています」と、わずかなことが大きな影響を及ぼすようになる。
ZyngaはアメリカでのFacebookの急成長とともに拡大してきた。現在最もユーザー数が多いタイトルは、2010年12月にスタートした「CityVille」でMAUは7,500万人。今年5月にスタートした「Empires & Allies」は現在第2位でMAUは4,000万を記録している。
松原氏は「CityVille」をモデルケースにZyngaのゲームに備わっているソーシャル活動を促進する様々な機能、ギフトやメッセージ、ネイバーのリストなどを説明した。さらにその背後にあるZyngaのデータ分析についても言及した。
Zyngaのデータセンターでは毎日15TB(テラバイト)のデータが収集され、ほとんどリアルタイムで分析が行なわれている。「今この瞬間に昨日と比べてどれだけお客さんが多いのか、少ないのか。昨日この機能を入れたが、どれだけのお客さんがたった今どのくらいいるのか、それが予測とどの程度違うのかを分析してレポートする人たちがいます」と松原氏。
Zyngaのゲームには、ライブラリとして提供されているデータを収集するためのツールが組み込まれており、データを集めて、リアルタイム分析し、次の日にでもフィードバックする。
しかし「これはITのサービスとしてはごくごく当たり前のことなのです」と言う。ソーシャルゲームメーカーの中では抜きんでているが、例えばAmazonやeBeyといったシリコンバレーのIT企業の中ではごく当たり前のように行なわれている基本的なことであり、これらのIT企業と同じようなしっかりしたサービス体制を敷いているのが、Zyngaの大きな特徴であり、強みでもある。今後は日本でも、運用体制の強化が進んでいくだろうと語った。
今後の展望については、個人的な考えだと前置きしたうえで「ソーシャルゲームという呼び名すらなくなるかもしれない」と言う。松原氏自身も、家庭用ゲームがソーシャルゲームと融合して大きな進化を遂げることを期待しているし、それを目標に進んでいく心積もりだ。
ソーシャルゲームの登場によってゲームを取り巻く環境は激変しつつある。流通は、これまでパッケージの業界が何度か取り組みながらも、完全に移行することができなかったオンライン販売が、ソーシャルゲームでは当然のものとなった。
技術に関しては、自分たちで技術開発をしなくてもIT技術の進化にフリーライドできるという利点がある。現在はまだスマートフォンやブラウザの技術は家庭用の技術に追いついていないが、そういったゲームの中身を作る技術とは別に、ゲームを分析したり24時間確実にゲームを運用するようなITの技術が重要になってくる。
ビジネスモデルはF2P(フリー・トゥー・プレイ)に変わり、ゲームデザインもそれに合わせた形に変わる。ゲームデザインについて松原氏は「非常に大胆な言い方をさせて頂くと、ソーシャルゲームは途中でプレイができなくなるゲーム」だと言う。例えば「CityVille」ではエネルギーがなくなるとそこでプレイがストップする。プレイが止まるポイントを復活させるには、時間で復活するのを待つ、ソーシャルな活動をしてエネルギーを手に入れる、そして課金で解決するというマネタイズにつながる要素がある。
「今までの家庭用ゲーム機のゲームは、のめりこんだら寝食を忘れて何十時間もぶっ続けで遊んでエンディングを見てバンザーイという作りで、私もそういう作り方をたくさん見てきました」。しかしソーシャルゲームは何分間かプレイをするとそこでプレイが止まる仕掛けを入れて、上記の3要素をどう絡めるかという部分のバランスが重要になる。
プロモーションの方法も変わる。ソーシャルゲームはランキングに載らなければバイラル性を発揮できずガクンとユーザー数が減る。これまでのゲームは紙やウェブや体験版などを使ってお客様の目につくようなプロモーションを行なってきたが、ソーシャルゲームではいかにランキングに載るかという部分をモデル化してシステム化するかが進歩している。
「残念ながら従来のゲーム業界からはこの新しい流れが生まれてこなかったが、この10年ほど続いていたゲーム業界の停滞をソーシャルゲームが底上げして市場を押し広げ、海外へ進出していくチャンスを生んでくれたことは非常にありがたい」と松原氏。従来の家庭用ゲーム機vsソーシャルという言い方ではなく、ゲーム業界全体の大きな変化だととらえて、様々なチャレンジを続けていきたいと締めくくった。
■ 成功するソーシャルゲームを作るための条件
ディー・エヌ・エー取締役ソーシャルゲーム事業本部長の小林賢治氏 |
ディー・エヌ・エーの小林氏は、データ分析に強みを持つプラットフォーマーらしくたくさんの数字に裏打ちされたセッションを行なった。
日本の家庭用ゲームの市場が2001年の42%から2010年には15%と縮小し、世界市場の中で存在感を失っていく一方、日本のソーシャルゲーム市場は海外と日本がどちらも2,000億程度で拮抗している。1つの国単位ならば日本が世界最大の市場ということになる。
現在は海外のソーシャルゲーム市場はPCが主。しかし、スマートフォンの普及に合わせて今後海外でもさらに市場が拡大していくのではないかと、小林氏は予想している。
「365日肌身離さず持っているのは携帯電話以外にはあり得ません」と、フィーチャーフォンやスマートフォンは誰にとっても身近なものだ。しかしこれまでのフィーチャーフォンでは、国ごとに多数のキャリアや仕組みが入り乱れ、非常に参入が難しい状況にあった。これがスマートフォンの時代になったことでプラットフォームが整理され、参入のハードルは一気に低くなった。
スマートフォンのアプリで最も購入され、利用されているのはゲームであり、今後PCやフィーチャーフォンを抜いてスマートフォンがソーシャルゲームのメインプラットフォームになる日はもうすぐそこに来ている。
すでにApp Storeの英語圏のランキングを見ると基本無料のソーシャルゲームが数多くランクインしている。売上ランキング上位100位の比率で見ると、2011年1月時点では39%が基本無料タイプのゲームが販売したアイテム課金の売り上げだったが、6月にはこれが65%まで伸びている。客単価も、ダウンロード販売が中心だった2010年1月には約9ドルだったが、基本無料タイプが増えた2010年6月には14.66ドルまで伸び、ダウンロード数も7.5倍になった。
「世界的に見てもソーシャルゲーム大席巻時代が来ている。早く海外に出ないほうがおかしいという状況になっているという感じです」と小林氏が焦るのも無理ない状況だ。しかし日本のゲームはまだ海外のランキングではまだ少なく、入ってくるのもベンチャーが多いのだという。
儲かるというイメージの強いソーシャルゲームだが、全く儲からないものを作ってしまう会社もある。小林氏はソーシャルゲームを作る上で、失敗するパターンとして以下の3つをあげた。
・社内の余剰リソースでやってしまう
・仕組みがよくわからないまま外注に丸投げ
・作ったあと何のフォローもしない
逆に成功の要因としては以下の3つをあげた。
・日々の状況に合わせて、迅速にゲーム内容を変化させていくスピード感
・製造業からサービス業への意識転換
・エース級人材の投入
このうち「エース級の人材」とはどういう人材なのかという点については「どの要素がゲーム全体の面白さを左右するかの勘所が見抜ける人」だと語った。
ソーシャルゲームを運営する上で、ユーザーがどこで脱落しているかを調べてそこを改善したり、期間限定のイベントを実施したり、継続的なアップデートを行なうのは当然のことで、もっとも大切なのは「変化する状況の中でゲームバランスをいかに最適化するか」であると小林氏。
前述した3つが完璧に行なわれていても、肝心のゲームバランスが狂っているとユーザーは離れていってしまう。課金ユーザーと無課金のユーザーの差が開いていく中で、最適なゲームバランスはどこなのかを見定められる人材がいなければ「とんでもなくつまらないゲームができる」のだ。
大量に収集するデータも、どこを分析すればいいのか分からなければ、なにをどう直していいのかわからない。成功するプロジェクトには、このゲームはこの部分が崩れるとだめだろうという部分を察知して、そこに絞ってデータを収集し、適切に改善できるリーダーが欠かせない。
ソーシャルゲームはローンチしてそれで終わりというジビネスではなく、サービスを開始した時点から作り始めると言ってもいい部分がある。小林氏は、あるゲームが18カ月後にサービス開始時の180倍の売り上げを記録したという事例を上げて、収益規模を持続的に拡大していけるという今までの家庭用になかった売り方こそソーシャルゲームの魅力なのだ。
■ 日本人は本当にバーチャルグッズが世界一好きなのか?
mobageとZyngaのARPUの違い |
モデレーターの日経エンタテインメント!編集長の吉岡広統氏 |
パネルディスカッションでは、普段聞くことができない疑問や質問がパネリスト自身からもどんどん出てきた。口火を切ったのは、DeNAの小林氏。「ZyngaはMAUもDAUもすごいのに、売り上げはDeNAと変わらない。どうして日米でこれほどARPU(ユーザーごとの収益平均)に大きな違いがあるのか?」という率直な疑問を、隣に座っていた松原氏にぶつけた。
日本のARPUがその他の国から見ても高すぎて「日本人はバーチャルグッズを買いすぎなのではないか」と見る向きもあると小林氏。これを日本市場に特有の現象と位置づけたがる傾向があるが、小林氏自身はゲームデザインの差が大きいと考えている。「僕ならZyngaのARPU(客単価)を5倍くらいにできる自信があります」とまで煽り、なぜZyngaがそれをしないのかについて松原氏に見解を求めた。
松原氏は苦笑しながら「まだその原因を断定するにはデータが足りない」と言いつつも、ゲームデザインによってARPUに違いが出るのは確かで、ゲームがストップするポイントでお金を払ってでも解決したいと思わせる要因が強いゲームと弱いゲームがあり、それが差になっているという仮説は立てうると語った。
またプロモーションの地域特性にも触れて、ソーシャルゲームのTVコマーシャルをこれだけ集中的に行なうのは日本の特徴で、アメリカではTVCMによるプロモーションはほとんど行なわれていない。プロモーションの違いによって集客する客層に差が出ている可能性があるという別の仮説も提示した。もう1つ、考慮に入れるべき要因として、アメリカではエンターテイメントにかかる費用が総じて日本よりも安価なことも地域的な理由の1つになりうるかもしれないと付け足した。
同じ質問に対して森川氏は「日本でARPUが上がったのはガチャが入ってから。他の国では、見えるものに積極的にお金を払うが、日本では何が入っているかわからないという期待感にたいしてお金を支払う」と語った。そしてもう1つの要因として日本人のコレクション要素好きをあげた。
小林氏もガチャの効果は認めて、法的に日本と同じには使えない部分があるとしながらも、Storm8という北米のメーカーがiOS用のアプリでガチャによるマネタイズで成功している例を出して「ガチャが日本で受けているのは確かですが、海外でも可能性はあると思います」と語った。
小林氏によれば、DeNAは、内製タイトルではあまりガチャを使ってこなかったそうだ。「1つのパターンにはまりすぎるのを恐れたからというのが大きいです。あまりにも強力なデザインなので」という理由だ。ディー・エヌ・エーはngmocoがサービスしている「We Rule」というゲームで、日本で成功した手法を導入してARPUを上げる実験をしたことがある。期間限定の実験ではあったが、その期間内でARPUが3倍ほど上昇したのだそうだ。小林氏はその結果を踏まえ「日本でやっていることは海外では通用しないという定説がありますが、僕はそんなことはないと思います」と断言。日本のノウハウを海外で生かすチャンスは大いにあると語った。
スマートフォン・ソーシャルの可能性 |
モデレーターの日経エンタテインメント!編集長の吉岡広統氏 |
フィーチャーフォンからスマートフォンへ移行が進む中で、フィーチャーフォンの勝ち組が必ずしもスマートフォンでも勝てるとは限らないと言われている。そこで今後スマートフォン市場でどういった部分に力を入れていくかという質問に対しては小林氏が詳しく解説した。
小林氏は、スマートフォンに移行することでアプリが高機能化することで、家庭用のゲームで遊んでいるコアゲーマー層を取り込んでいけると言う。すでにそういったゲームの開発も行なっており、今後はグラフィックス的にクオリティの高いゲームが登場する。
フィーチャーフォンの時代に「ノンゲーマーだけが遊んでいるわけではない」ということが分かった。むしろ、かつてはゲーマーだった人が多かったという。若いころには1日に何時間もゲームで遊ぶヘビーユーザーだったが、年を取って子供ができると忙しくなって何時間もゲームをプレイする時間は無くなる。「でも5分ならできるのです。松原さんが言うように、5分でエネルギーが切れて、でもいいセンまで行ったからもう少しやろうかなと100円課金をすると、そういう感じです」と小林氏。
スマートフォンでは、そんなゲームをする時間はないけれど、ゲームが好きという層を取り込んでユーザーの幅を広げるのがディー・エヌ・エーの戦略だ。しかしそうなってくると、開発費がどんどん高騰してくるのではないかという懸念がある。この点については、確かに今よりも上がるだろうが、家庭用のようにはならないという。その理由は、ソーシャルゲームはサービスを開始した後、ユーザーの反応を見ながら機能を追加していけるので、スタート時にすべてを実装する必要がない。
スマートフォンのソーシャルゲームのユーザー構成については、「そういうマーケティング戦略をとっていることもあり、最近は30代以上が伸びている」と小林氏。男女比については、かつては男性が多かったが現在では発売されるスマートフォンの機種に左右されることが多いのだそうだ。ゲームを作る時には、当然どの世代や性別をターゲットにするかを考えるが、その2つだけを指標にするのではなく「どういうユーザーに、どういうオケージョンで遊ばせたいのかを考えます」という。
「モンスターハンター」が好きな人に向けて作るアクションゲームと、挨拶をしたいだけのカジュアルゲーマーが面白いと思うゲームは全く違うものになる。「どういうタイミングでどういう面白さを与えるゲームになるのかという部分を最初に設計します」と、ゲームを企画する時のポイントにも触れた。
松原氏は、ソーシャルゲームもかつて家庭用ゲームがたどってきたように、ハイクオリティでリッチな方向性に行くのだろうと予測する。今はまだ高度な3Dのプログラミング技術は必要ないが、すでにPHPしかできないプログラマーでは通用しなくなってきているのだそうだ。「今後はITのバックグラウンドがないプログラマーはかなり厳しくなっていくのではないかという気がします」と述べた。
森川氏は、スマートフォンになってようやくグローバルで投資を回収できるめどが立ち、スケーラブルなビジネスが可能になったと言う。「今後は非常にライトなものからコンソールでも通用するような大作まですべてがタブレットで動くような時代がやってくるので、シームレスなプラットフォームとして非常に期待しています」と、自身の会社で始めたクラウドゲーミングビジネスにも絡めて将来を予測した。
□CESAのホームページ
http://www.cesa.or.jp/
□「東京ゲームショウ 2011」のホームページ
http://tgs.cesa.or.jp/index.html
□NHN Japanのホームページ
http://www.nhncorp.jp/
□ジンガ・ジャパンのホームページ
http://www.zynga.co.jp/
□ディー・エヌ・エーのホームページ
http://dena.jp/
(2011年 9月 19日)