E3 2011レポート

任天堂ラウンドテーブルに宮本氏、青沼氏、小泉氏が登場

「ゼルダ」、「マリオ」など新作裏話が満載。今年の「ピクミン」情報は?


6月7日~9日 開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center



同日行なわれたカンファレンスでの写真。左から、手塚卓志氏、宮本茂氏、小泉歓晃氏、青沼英二氏

 E3では毎年恒例のイベントとなっている任天堂のラウンドテーブルが、今年もE3初日の6月7日に開催された。

 ラウンドテーブルでは毎年、任天堂の宮本茂氏を中心に、主要な開発者が自ら新作のゲームを紹介する。今年は宮本氏のほか、「ゼルダの伝説」シリーズのプロデューサーを務める青沼英二氏と、「スーパーマリオギャラクシー」シリーズのプロデューサーを務める小泉歓晃氏が、それぞれの新作タイトルについて語った。

 今年のE3における任天堂の最大のトピックスはもちろん、新型ゲーム機「Wii U」だ。ラウンドテーブルでもその話が中心になるのかと思われたが、宮本氏は「ニンテンドー3DSのタイトルもたくさんあるので、そこにフォーカスして話したい」として、あえて「Wii U」の話はせず、3DSとWiiでの新作について語り始めた。2012年発売予定とされている「Wii U」の裏話は、来年のE3のラウンドテーブルで詳しく語られることになりそうだ。

 なお、これも恒例のことながら、ラウンドテーブルでの写真撮影は一切禁止となっている。デモプレイ時の写真なども掲載できないので、その点はご了承いただきたい。




■ 品質向上に加え初心者サポートも。「ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D」

3DS版ではもちろん立体視にも対応する

 まず最初に、日本でも6月16日に発売予定の3DS用「ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D」について。本作は1998年にNINTENDO64用に発売された「ゼルダの伝説 時のオカリナ」のリメイク版。昨年のE3のラウンドテーブルでその存在が明らかにされ、3DSの立体視デモが披露された。

 宮本氏は本作について、「フレームレートがかなり上がって、テクスチャも貼り込んでいる」と、立体視だけではないクオリティアップを強調。さらに「(NINTENDO64版以来)久しぶりに遊んだが、結構新鮮。当時あんなに遊んだのにほとんど忘れていた。結構いいセリフがあったので、これいいなと思ったら自分で書いたんだったと思い出した。スタッフのセリフが酷いと言っていたのに、今見るといいものもあって、褒めてあげたい」と作品本来のよさも付け加えた。

 また今回初めて遊ぶ人のために、ヒントとなるムービーを100本ほど入れてあるという。「作り手としては教えたくない、自分で考えて欲しいという立場だが、ちょっとしたカットを見せて、いろいろ試して、これでいいのかと気づけるような、かなり厳選したものを入れている」と説明した。ただこれは任意のタイミングで見られるものではなく、「特定の場所で何回かチャレンジしたことがわかるとムービーが出るという仕掛け」だという。「『時のオカリナ』ももう出てから13年で、今の小学生は生まれていないですから」と感慨深げに語っていた。

 逆にプレイ経験がある人に向けては、「ミラーモードやボスバトルもある。いろんな人に楽しんでもらえるよう作っている」と述べた。




■ 飛行機ゲームの上下の操縦を1つにする?「スターフォックス64 3D」

対戦ではプレーヤーの顔を見ながらプレイできる

 続いて紹介された7月14日に発売予定の3DS用「スターフォックス64 3D」は、こちらもNINTENDO64からのリメイク版となるシューティングゲーム。宮本氏は「スターフォックス」シリーズをを「シューティングゲームだが、空間の隙間を抜けていく、自分が空間を飛んでいるのが楽しいゲーム」と評した。

 宮本氏はこのタイプのゲームにおいて永遠の悩みを抱えているという。「スティックを上に上げると、自機が上に行くと思う人と、スティックは操縦桿だから自機は下に行くと思う人の2種類がいる」というもの。「上に動くと思った人はセガで育ってきた人」と笑いを取りながら、「ゲーム業界全体で(この答えが)1つになれば、あとから作る人が楽になると思う。いつか1つにしたい」と密かな野望を明かした。

 宮本氏はさらに続ける。「『時のオカリナ 3D』を作っている時、パチンコを上に向けるとき、パッドを上に向けたくなる。それで悩みモードに入ってしまったが、『時のオカリナ 3D』ではジャイロも使ってみた。パチンコを上に撃つ時は、本体を上に向ける。世界を1つにできるチャンスだ」と語り、再び来場者を笑わせた。

 ジャイロは「スターフォックス64 3D」でも使われているが、ジャイロを使って本体を動かすことで、画面を見る角度が変わって立体視がしにくくなるという問題もあるという。宮本氏はこの点について、「プログラムで補正してはいるが、いつも立体視で遊ぶこともないと今は思っている」という衝撃的なコメントを残した。ただしきちんとフォローも入れ、「普段は2Dで、どこかで立体視になるような感じでいいのでは。ただ3Dのほうが遊びやすいし、『時のオカリナ 3D』のイベントシーンなどでは、すばやく3Dボリュームを最大にしてほしい」と述べた。

 「スターフォックス64 3D」においては、「上下はジャイロで、左右はスライドパッドで操作すると、立体視を保ったまま遊びやすい。ハイブリッド操作になっているので好みで使って欲しい」と語った。またプレーヤーの顔をインカメラで撮影して対戦時に見せる機能について、「4人で自分の顔を表示しながら遊ぶのは、意外と楽しいのでやってみて欲しい」と述べた。




■ 今度はカートで「凧マリオ」? 「マリオカート(仮)」

ウイング搭載で迫力ある3Dレースを実現する

 次に紹介されたのは、3DS用「マリオカート(仮)」。こちらは3DS向けに新規開発されたタイトルとなる。宮本氏は「60フレームで動いていてとても気持ちいい」と軽快な動作をアピール。さらに「開発スタッフが今度はウイングを付けるという話をしていて、『ウイングくらいならいいか』と思っていたら、触ってみると結構いい感じ」と語った。ウイングは、カートが大きくジャンプした時に開くハンググライダーのようなもので、空中を滑空する。宮本氏はこれを「スーパーマリオ・カイト(凧)」と呼んでいるそうだ。

 本作の開発は、「ドンキーコング リターンズ」を開発したRetro Studiosと共同で行なっているという。「今はコースを共同で作っている。今年中に『マリオカート』が遊べるのはRetro Studiosのおかげ」と言い、会場に観覧に来ていたスタッフを賞賛した。

 宮本氏からの紹介はここまでとなったが、その最後に、「今年・来年出るラインナップは十分遊べるが、3DS本体に入っている機能を使ってもっと遊んで欲しい」と語られた。ちなみに会場では宮本氏が「プライベートのMii(オフィシャルで配布されているものとは違う)ですれちがい通信をしている」と発言したことから、話を聞きながらも3DSを開いてせっせと確認している姿が会場のあちこちで見られた。




■ 同じ場所で、新しいイベントを起こす仕掛けを搭載。「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」

Wiiリモコンで剣を振る、鳥に乗って空を飛ぶといった新要素を搭載

 「ゼルダの伝説」シリーズ最新で、北米では2011年末の発売が予定されているWii用「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」の紹介は、プロデューサーの青沼氏が担当した。

 まず先に紹介された「ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D」について、「昨年のラウンドテーブルでお話しした、水の神殿のヘビーブーツが簡単に脱いだり着けたりできるようにした。メディアの方には楽になったと記事に書いて欲しい」と、1年越しの約束を守ったことを明かした。また宮本氏によると、「昨年、水の神殿が難しいという話をしたら、『あれは難しいんじゃなくて、めんどくさいんです』という話になった。難易度は変えていない」のだそうだ。

 本題の「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」については、デモプレイを交えながら紹介された。「『ゼルダ』シリーズはその世界に隠されているものを見つけるというのが伝統だが、今回はそれを拡張して、いろんなものを見つけるという要素が入っている」という。これの具体的なコンテンツとして、序盤から2つ目のフィールド「火山」が紹介された。

 ここには、先に進むための神殿の鍵が5つに分けられて隠されているという情報が得られる。鍵を見つけ出す方法は、剣の力を使ったダウジング。Wiiリモコンを画面に向け、ポインタを動かして、フィールドに隠されているアイテムを探す。アイテムに近づくほど反応が強くなっていく。もちろん単なる宝探しではなく、途中にはモンスターもいれば、障害物に阻まれて進めない場所もある。バクダン花などマップにあるものも活用して、そのアイテムを獲得する。

 もう1つ新たな要素として、「サイレン」という世界がある。今回はマスターソードの誕生を描いたストーリーで、リンクにはある試練が与えられている。デモプレイでは、森の中にあるマークが描かれた岩に剣を刺すと、森のイメージが変化し、「サイレン」に入った。リンクはここで「しずく」というアイテムを集めて脱出しなければならない。「サイレン」には「しずく」のガーディアンがいるのだが、リンクは剣を刺してこの世界に入ったので武器がなく、ガーディアンの攻撃を1発でも受けたらやられてしまう。

 「サイレン」に入ると、ガーディアンはすぐさま動き出す。しかし「しずく」を取ると、ガーディアンの動きが一定時間停止する。「しずく」を連続で取り続けている限り、ガーディアンは動かないという仕組みだ。「しずく」の位置はヒントがあるので、それをもとに時間内にしずくを見つけるというゲームになっている。

 青沼氏によると、「『サイレン』で森のいろいろなところに行くが、森の状態をしっかり覚えておくと、ゲームの進行が楽になる」という。これには狙いがあるそうで、「今回はフィールドがダンジョンのようになっている。今までの『ゼルダ』は1度イベントが起こったフィールドではその後何も起きなくなるが、今回は同じ場所で何度もイベントが起こる構造になっている。世界の構造が頭の中に、印象に残っていくというのが、今回の1番の特徴」と語った。




■ 立体視でこそ楽しめるマリオらしいマリオが登場。「スーパーマリオ(仮)」

たぬきマリオが登場。立体視を活かしたマップも用意されている

 次は小泉氏が壇上に上がり、北米では2011年末発売予定の3DS用「スーパーマリオ(仮)」を紹介した。本作は任天堂の東京制作部で開発されたタイトル。小泉氏は本作の方向性について、「『スーパーマリオギャラクシー』とは明らかに違う、とてもマリオらしい世界にした。『ギャラクシー』は宇宙に行ってしまったが、宇宙ばかり考えていたのではなく、1番考えたのは『スーパーマリオ』がどんなものかということ。テンポやドキドキする難易度を、『ギャラクシー』1と2でいろいろ研究してきた。今回は全てマリオの要素で面白さを作ろうと思った」と述べた。

 具体的には、3Dの「スーパーマリオ」で初めてBダッシュができるようになった(操作はXとYボタンを使うが、要するに高速なダッシュのこと)ことを紹介。またデモプレイで、フィールドの端から落下しそうになりながらも浮き上がって戻ってきた「たぬきマリオ」を見て、「たぬきマリオは落下が遅いので、上級者はこんなすごいプレイができるけれど、上級者でない人でも遊びやすくした」という。またステージの最後も「ギャラクシー」のスターではなく、シリーズの伝統である旗とポールになっている。

 また本作は立体視にもこだわっているという。ステージ奥から棍棒が前に突き出てくるフィールドや、初代「ゼルダの伝説」をオマージュした、マリオを頭上から見てプレイするフィールドなどでは、棍棒やジャンプしたマリオが手前に飛び出てくる感覚を意識して開発したという。

 最後にボス戦も紹介された、小泉氏は「マリオは踏むゲームなので、ボスも踏む」と戦い方を説明。またE3に用意した試遊版には4つのコースがあり、「そのどこかに無限1UPができる場所がある」とも語った。ビジュアル的にも内容的にも、「スーパーマリオ」の伝統を意識して継承したタイトルになっているようだ。




■ 裸眼立体視の実験タイトルから製品化が決定! 「ルイージマンション2(仮)」

掃除機で吸い込む迫力が立体視で伝わる

 2人のタイトル紹介の後、宮本氏は「最後に1つ」と前置きして、2012年発売予定の「ルイージマンション2(仮)」を紹介した。

 「任天堂にはいろんなフランチャイズがあるのに、どうして『ピクミン』じゃなく『ルイージマンション』なのか」と自ら切り出した宮本氏は、その理由を説明。「立体視の実験をした時、最初にニンテンドーゲームキューブの『ルイージマンション』を立体にした。その印象から、いつ作ろうかとずっと思っていたら、『スーパーマリオストライカー チャージド』や『PUNCH-OUT!!』を作ったカナダのNext Level Gamesが開発を手伝ってくれることになった。彼らも乗り気で、軽く作ってみたら全社で『これは仕上げよう』という話になった」という。

 本作については、宮本氏が率いる情報開発部のプロジェクトではないが、宮本氏が直接プロジェクト責任者になっているという。オバケが住み着いた屋敷でオバケ退治をするというゲームの内容について、「前作は幽霊に懐中電灯を当てていたが、今回はストロボになってバシッと当てる。バシッと当てて吸い込む感じが気持ちいい」とアピール。「オヤ・マー博士も登場する。スキャナーは改良されデジタル化」といった前作ファンに向けたメッセージも聞かれた。

 フィールド内にいろいろな仕掛けがあるのも本作の特徴だという。「下の画面にはずっと地図が出ているので、それを合わせて見ていると、フィールド内のいろいろな仕掛けを見つけられる。壁の隙間の前で「X」という文字が出た時にXボタンを押すと、奥をのぞける。その時はジャイロを使って周囲をキョロキョロできる」のだそうだ。宮本氏は本作を「謎解き半分アクション半分。女性でも遊べる内容」と語った。




■ Q&Aでは恒例の「ピクミン」開発報告。プラットフォームをWiiからWii Uへ

 一通りのタイトル紹介の後、Q&Aの時間が設けられた。「3DSにはメジャーなフランチャイズが揃い、コアユーザーに向いた印象があるが、DSではカジュアルなフランチャイズが多かった。3DSではどうするのか」という質問には、宮本氏が「カジュアルなゲームタイトルもたくさん作ればいいと思うが、僕らが3DSで考えたタイトルは、本体機能として入れてしまった。本体があれば、当分カジュアルな遊びができるだろうと考えている。DSはタッチペンだけで遊ぶという新しいハードウェアだった。今度は3Dで遊ぶという基本機能があるので、ゲームらしいゲームを作らなければと思って慌てて作っている。僕はそちらにフォーカスしている」と答えた。

 次の質問は「『ルイージマンション2』は女の子でも遊べるようなソフトと言ったが、男女の遊びの区別はどのあたりにあるのか」というもの。宮本氏は「『マリオ』は女の子も遊べるが、『マリオギャラクシー』は男の子っぽい。『ルイージマンション』を作った時は、『女の子は怖いからやらない』と言われた。基本的に、男の子も女の子もゲームを楽しむという意味では変わらないと思って作っている。ただ『スターフォックス』を作る時には、自分が戦闘機に乗るような、男の子の夢を形にして見せたい、自分の中で経験したいというのはある」と語った。

 「任天堂のWii用ソフトは『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』が最後になるのか」という質問も挙がった。宮本氏は「僕は新しいハード(3DSやWii U)に作っていかなければいけないので、これが最後かそれに近いものになると思う。だが任天堂のスタジオは他にもあるので、まだまだある」と回答。続けて青沼氏が「『ゼルダ』25周年記念の作品なので、これがWiiの最後のタイトルになってもふさわしいものにはしたいと思っている」と答えると、宮本氏がすかさず「それはこれが最後の『ゼルダ』ということ?」と尋ね、青沼氏が「そんなことはないですよ!」と慌てて答えていた。

 宮本氏によると、この話には裏がある。宮本氏は、「『スカイウォードソード』では、これが最高の『ゼルダ』でなければ、もう『ゼルダ』は作らないと言った。『スターフォックス』のプロデューサーにも、やっぱり『スターフォックス』は面白いと思ってもらえないなら、もう作らないと言った」という。「だから結構、みんな真剣に作っている」と宮本氏は笑っていたが、それだけいいものに仕上がってきているという手ごたえもあるようだ。

 2009年のE3で発表された「Wii Vitality Sensor」はどうなっているのか、という質問には、「ずっと開発は続けているが、安定した性能を出すのが難しく、正確に測れないというところ。ずっと研究は続けている」と宮本氏が答えた。

 3DS用の「スーパーマリオ(仮)」には「『スーパーマリオブラザーズ3』では完全に飛べた『たぬきスーツ』が飛べなくなったのはなぜか。また尻尾で飛べるというアイデアはどこから来たのか」という質問が挙がった。小泉氏は「飛べるようになると、3Dのゲームが破綻してしまう」と回答。後者の質問に対しては、会場にいた手塚卓志氏が急遽ステージに呼ばれて「スーパーマリオブラザーズ3」での経緯を語った。「マリオに尻尾を付けて、敵を蹴散らすのに使おうとしたが、他のことにも使いたいと思った。そこで、ばたばた尻尾を動かすと、ちょっと飛べるようにした。それからいろいろやっているうちに、いっそ飛べるようにしてしまえ、ということになった」という。この回答に会場は笑いと拍手で答えた。

 最後に宮本氏は、「今年は『ルイージマンション』の10周年。ということは、もう1つ10周年のゲームがある」と前置きして、「本当は『ピクミン』を出したかった」と漏らした。昨年のラウンドテーブルでも宮本氏自身が「作っている」と公言した「ピクミン」だが、「Wii Uの開発を続けているうち、HDグラフィックスとリモコンを使っていると、どうしてもそちらで『ピクミン』を作りたくなった。そちらで作る」と、プラットフォームをWiiからWii Uに移すことを明らかにした。合わせて「Wiiで既に途中まで作っているので、そんなに先にはならないと思う」とも述べ、Wii Uの発売からまもなく「ピクミン」を投入したいという姿勢を示した。


(2011年 6月 9日)

[Reported by 石田賀津男]