フジテレビジョン、イベント「戦国武将祭」2日目レポート
コーエー「信長の野望・天道」とNHK「歴史秘話ヒストリア」
両プロデューサーがトークショーを開催


3月6日~7日 開催

会場:埼玉・さいたまスーパーアリーナ


 株式会社フジテレビジョンは、戦国時代をテーマにしたイベント「戦国武将祭」を、埼玉「さいたまスーパーアリーナ」にて3月6日~7日に開催した。企画制作は株式会社コーエー。

 「戦国武将祭」は、コーエーの戦国エンターテインメントコンテンツを核としたイベント。Wii「戦国無双3」声優陣、音楽アーティスト、タレント、武将をモチーフにしたプロレスラーなど、多数のゲストが出演。ドラマ、ライブ、トークショウ、プロレスなどのライヴイベントをメインアリーナにて披露した。コミュニティアリーナでは「戦国楽市楽座」と題し、コーエーのゲーム体験コーナー、「信長の野望」シリーズの原画展示コーナー、協賛各社による物販ブースなど、さまざまな企画が行なわれていた。

 ここでは、2日目に行なわれたゲーム関連イベントを中心としたレポートをお届けする。「戦国武将祭」、「戦国楽市楽座」の主な出展内容については、先日のレポートを参照していただきたい。




■ 戦国楽市楽座 ~戦国トークショー~

 2日目最初のイベントは、コーエー「信長の野望・天道」プロデューサーの北見健氏と、NHK歴史番組「歴史秘話ヒストリア」チーフプロデューサーの渡辺圭氏による戦国トークショー。

 トークのテーマは戦国時代の魅力。司会進行氏から「ゲーム制作のプロとして、戦国時代をテーマにしたゲームの魅力とは何処か?」と質問された北見氏は「ピンポイントに選ぶのではなく、戦国時代は群雄割拠で混沌としていた時代。『信長の野望』は、戦国時代のいち大名となって日本を統一するゲーム。ゲームとして、バラバラになっているもの(国)をひとつにするというところが、非常にゲームとマッチしている」と回答。「最初から統一されている江戸幕府だとゲームにしづらい?」ときかれると「そんなこともないが、バラバラのものをひとつにする。非常にわかりやすい」と説明する。

 「TV番組を制作するプロデューサーとして、コンテンツとして戦国時代の魅力とは?」ときかれた渡辺氏は「まず視聴率が取れる(キッパリ)。間違いなく取れます。ディレクターにもいってるんですけど『戦国は日本の華(はな)』だと。日本史の華である以上、人の生き死にがある、一生懸命生きて、戦って、恋をして、策謀を巡らせて。人間ドラマとしての魅力は、他に無い時代」と回答。受け取り用によっては身も蓋もない回答だが、それだけに実感がこもったリアルな“生の声”ともいえる。

 好きな武将についてきかれると、北見氏は「個人的に好きなのは真田幸村とか。ただ、ゲームを作るときは『この武将!』というよりは、みなさんがそれぞれ好きな武将が魅力的に思ってもらえるように作っています。特定の武将について作りこむことは、あまりしていない。日本人って、判官贔屓みたいなところがあるじゃないですか。ただただ華々しい武将よりは、志なかばで倒れたような……そういった武将を魅力的に感じることが多いですね」とコメント。

 渡辺氏は「誰といわれれば信長とかになりますが、番組を作っているときは1本ずつ主人公がいるわけで、それが、その時々で好きになる。このあいだは、宇喜田秀家。なんで宇喜田秀家をやろうと思ったか。ご存知のとおり関ヶ原の戦いで負けてしまうんですが、1番最後まで生き残っている。八丈島まで島流しになって、それから50数年生きている。だけど、その間に関ヶ原で勝った人たちがどんどん死んでる。勝ち組が早死にして……ある人は改易されたり、家が潰されたりするなかで、87歳まで生きて、ご子孫まで残している。人の幸せってなんだろうなって思ったとき『秀家、お前の生き方は、実は幸せだったかもしれない』とか。ただ単に格好いい、強いというだけじゃなく、この人の生き方って共感できるよなぁ、とか。その時々、取り上げている武将が好きになる。江戸時代初期、宇喜田秀家を褒め称えることはなかったはず。だから、切り口の部分……お客さんが『信長』、『幸村』と言っているときに『いやいや、宇喜田もこうやって見ると面白いんだよ?』っていうのをやるのが、私の仕事だと思っています」という。

 ゲームキャラクターとしての信長の魅力についてきかれると、北見氏は「激烈、苛烈なイメージ。その時代を引っ張っていった武将。そういった意味でも、ランドマークというか。そういう立場の武将ですよね」と回答。信長に対する切り口についてきかれた渡辺氏は「苛烈な信長っていうのは、実はもう番組を山ほどやっているんですね。『歴史への招待』の頃から始まって、延々30年間……。そういうとき、苛烈な信長をいまさらやってもしょうがない。(でも)我々が共感できる信長ってなんだろうと思っても、共感できませんでした。格好よすぎる、強すぎる、革新的すぎる。そんなとき『こんな親父がいたら、嫌だよな』と。我々は何百年もたってから信長を見てるからいいんですけど、当時の身内はたまらんなって思ったときに『あっ、これだ!』と。彼らの子供とか、そういう気持になったとき、信長がどう見えるかというのが、新しい切り口なのかな? という発想でやっています」と回答してくれた。

 4月7日放送予定の「歴史秘話ヒストリア」では、信長最後の3日間を“女中は見た!”という切り口で番組が構成されているという。「さっきいったように、どう切り口を見つけるか。本能寺の変をやるぞ! とは決めていたが、誰が黒幕だ? っていう、そういう話はもういい。じゃぁ何をやろうかというとき、太田牛一が書いた『信長公記』に立ち返ろうと。『信長公記』や京都に残されている古文書に、信長の最後、本能寺がどう書かれているか。一次資料に徹底的にかえってみたら、結構面白かったんです。公式な記録で、信長の最後は女中が見てるんです。ステレオタイプなイメージだと、炎のなかで『蘭丸~!!』といいながら燃えてる感じなんですけど、最後は市原悦子……じゃなくて女中が見ている」という渡辺氏。北見氏も興味津々で「今(番組予告を)見せていただいたけど、凄く見たい!!」という。

 現在発売中の最新作「信長の野望・天道」はシリーズ13作目。コンセプトについてきかれた北見氏は「タイトルにあるとおり“道”がコンセプト。当時って、道は非常に重要な役割を果たしていた。現代ほど整備されていたわけではないなか、当然、政略、戦略的にも重要なところだった。そこをクローズアップしてみようか? といったところからスタートした。ただ、道作りをリアルにすると物凄く細かくなりすぎるので、リアルにシミュレートするよりは“道って重要なんだ”というのがわかるよう表現した」と説明する。この点について渡辺氏は「私も『信長の野望』を昔からやっていたんですが“道”できたか、と。大河ドラマや時代劇もそうですけど、合戦に出ると、もうカットバックでポン、ポンと戦場に着いちゃってる。でも、その過程に何があるか。実際、山越え、峠越え、川があると大変だよねっていう。1回うちもチラッとやったことがあって。上杉謙信が関東に攻め込むときの話をやったんですけど、越後山地を越えるために軍用道路を作っているんですね。実はそれが苗場スキー場にいく道になっている。関東から苗場スキー場にいくお客さんは、上杉謙信のおかげでいけるんです。それを全面展開して(ゲームを)作られるというのは、相当な発想転換がないとできない」とコメント。

 「戦国時代の名言で好きなものは?」という質問に、北見氏は徳川家康の辞世「先にゆき 跡に残るも 同じ事 つれて行ぬを 別とぞ思ふ」と回答。「実際に武将が発した言葉って、自分のなかで色々と想像することができる。はたして、本当にそういう意味なのか? もちろん、死に臨んで『一緒に死なないんだから、同じでしょ?』と文字のとおり受け取ることは可能だが、信長の命で嫡男を処断した背景などを考えると『息子を死なせて生きながらえたが、結局は自分も死ぬことになるんだ。あのとき一緒に死ぬことはできなかったが、これでよかったんじゃないのか』というような想いが、もしかしたら、この句に反映しているのかもしれない。その人の言葉って、その武将の息吹を感じさせてくれる。自由に想像をめぐらせて楽しむことができる」という。

 渡辺氏は「これ、名言っていえるかどうか微妙なんですけど……」と前置きしつつ、織田信長の「是非に及ばず」と回答。「歴史上の人物の言葉ってだいたい2種類あって、ひとつは教訓。いつの時代の人がきいても『あぁ、この人いいこというなぁ』と伝わる。番組の放送が終わった翌日とか、会社の社長さんとかから電話があって『あの言葉なんていうんだ? 朝礼で喋りたいんだ』というような感じで使われる。もうひとつは、この瞬間、この人だからこそ残った名言。信長は、まさにコレだと思うんです。我々が何か大変なことが起こったとき『是非に及ばず』といったら、お前ナメてんのか? と。リスク管理としてどうするんだと怒られるんですけど、信長の場合、この一言に彼の生き方、潔さ、決断がすべて入っている。本能寺の変が起きたときも、あの一瞬、この言葉にすべて集約されている」とコメント。

 なお、4月7日の番組ではこの言葉を女中がきいているといい、渡辺氏によれば「最後、信長が女中に向かってこんな言葉をいい残していきました。泣けます。自分で作っておいてなんだけど、ホロッときます。ただ、それがドラマチックになるかというと……炎のなかで敦盛を舞ってもらったりとか、色々あるじゃないですか。みんなが期待する本能寺。それはあくまでも作り物、フィクションの世界なんですけど、ノンフィクションのなかで『本当の最後はなんなの?』っていうのは、わからない。女中が見たあとは、誰も見てません。あぁ、いいじゃんコレって。ちょっと意外な、泣ける台詞。番組を楽しみたい人は『信長公記』を読まないでください。読むと載ってますから」とコメントしてくれた。


コーエー「信長の野望・天道」プロデューサーの北見健氏(上画像・最左)とNHK歴史番組「歴史秘話ヒストリア」チーフプロデューサーの渡辺圭氏(同・中央)。歴史ファンにはたまらない話を披露してくれた

【アーティストライブ「ELISA」】
以前コーエーのパーティに招待されたことがキッカケで、今回の出演が決定したというELISAさん。コーエー作品では「遥かなる時空の中で3」を遊んだことがあるという。「HIKARI」、「Real Force」など3曲を熱唱

【戦国トークショー Part.2】
NHK大河ドラマ「風林火山」で板垣信方役を演じた俳優の千葉真一さん(上画像・最左)と、同ドラマチーフプロデューサーの若泉久朗氏(同・中央)によるトークショー。収録中のさまざまなエピソードや、武田晴信役の市川亀治郎さんを今でも親しみを込めて「若」と呼んでいること、俳優や制作側の矜持、本物の時代劇を今後も伝えて生きたいことなど、実に熱いトークが披露された




■ 戦国武将祭 ~声優陣による生アフレコによるドラマ、パフォーマンス、プロレス、ライヴと盛りだくさんの内容~

 俳優の大東俊介さん、モデル兼女優の杏さん、お笑いコンビ「麒麟」の4人が総合司会を担当。それぞれのキャラクターボイスを担当した声優陣が「本能寺の変」、「天正壬午の乱」、「小田原の戦い」、「関ヶ原の戦い」を導入部を生アフレコ。戦いの様子は、武将に扮したプロレスラーがリング上で“プロレス”という肉体言語で再現する。

 途中、佐々木希さん(お市役)、次原かなさん(甲斐姫役)、MOTOJUJI(太鼓演奏)、六本木金魚とG-Rockets(演舞と殺陣)によるパフォーマンスや、Do As Infinity、SHANADOO、alanさん、谷村奈南さんによるライヴが行なわれ、GACKTさんによる戦国LIVE、Phoenix 2:00 AM feat. Ami Suzukiが本イベントのタイトルソングを披露してグランドフィナーレ。3時間半がアッという間に過ぎ去っていった。

 歴史、声優、プロレス、ライヴを行なう各アーティストなど、それぞれのファンが混在するなか進行していった本イベント。前日を見た人から「色々な意味でカオスだった」と耳にしていたため、「プロレスにお客さんが全然興味を持ってくれなかったらどうしよう」とか「GACKTさんのライヴが終わったら、それだけを目当てにきていた人が一斉に帰り始めたりしないだろうか」と戦々恐々としていた筆者だが、最終的には杞憂に終わってホッとしている。プロレスパートでは、本当に初見の人しか発することができない“感情から先にくる声”というものを久しぶりに耳にすることができたし、声を含めた“肉体表現の絶対的な強さと魅力”を再確認できたのが、なにより嬉しかった。GACKTさんのライヴに爆発的なピークを設定していたことも、余韻を作る意味で無難な構成といえる。次回開催は未定だが、もし次があるなら、戦国楽市楽座を含めたカオスさをうまく活かすのか、それとも再構成してまったく異なる空間を作り出すのか、とても興味がある。


【パフォーマンス】
佐々木希さん、次原かなさん、MOTOJUJI、六本木金魚、G-Rocketsがそれぞれパフォーマンスを披露。舞台に躍動感と華やかな彩を与えていた

【プロレス】
一部コアなプロレスファンから「武藤ーッ!」など声がかかるも、ほぼ圧倒的多数がプロレス初体験らしい反応。すれにすれまくったプロレスファンは、もはや「お約束」でしか盛り上がれなくなってしまったが、パイルドライバーなどの技で芯から出たような「キャーッ!」という悲鳴を耳にすると、あまりの新鮮さに一種の感動を覚えてしまう

【ライヴ】
Do As InfinitySHANADOOalanさん
谷村奈南さんPhoenix 2:00 AM feat. Ami Suzuki
公演最大のピークはGACKTさんによる戦国LIVE。文字どおり、アリーナ全体が“爆発”したかのような凄まじい盛り上がりを見せた



(2010年 3月 8日)

[Reported by 豊臣和孝]