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「バイオハザード HDリマスター」発売! 平林良章プロデューサーミニインタビュー

「屋敷の扉すべての時間を調節した」徹底的にチューンした、いま遊ぶ「バイオ」

【バイオハザード HDリマスター】

11月27日 発売予定

価格:
3,990円(PS3パッケージ版・税別)
4,990円(PS3コレクターズ・パッケージ・税別)
11,111円(PS3 LIMITED EDITION・税別)
3,694円(PS3ダウンロード版・税別)
3,694円(Xbox 360ダウンロード版・税別)
CEROレーティング:D(17歳以上対象)

あまりにも有名なゾンビの見返りシーン。洋館に入り、おそるおそる開けたドアの果てで見たこのシーンは、プレーヤーにとって一生忘れることのないシーンの1つだろう

 カプコンは11月27日にプレイステーション 3/Xbox 360版「バイオハザード HDリマスター」を発売した。価格は、PS3パッケージ版が3,990円(税別)、PS3コレクターズ・パッケージが4,990円(税別)、PS3 LIMITED EDITIONが11,111円(税別)、PS3ダウンロード版とXbox 360ダウンロード版が3,694円(税別)。CEROレーティングはD(17歳以上対象)。

 「バイオハザード HDリマスター」は、名作ホラーゲームとして未だ人気の高いゲームキューブ版「バイオハザード」をHDリマスター化したもの。原作の持ち味はそのままに、グラフィックスやサウンドを高品質化。操作性についても現代のプレイ環境に向け最適化している。

 画面比率は原作と同じ「4:3」の画面比率での表示はもちろん、「16:9」のワイド画面への表示切り替えが可能。ワイド画面での表示については、ワイド時に表示しきれない背景画像については、キャラクターの移動時に合わせて上下にスクロールする仕組みを採用している。

 PS4、Xbox One、PC版については2015年初頭の発売を予定しており、価格は未定。PS3版とXbox 360版は720Pでの出力解像度となるが、PS4とXbox Oneの出力解像度は1080Pとなる

 このほど、発売に合わせ、平林良章プロデューサーにミニインタビューを敢行。短いながらも、「バイオハザード」の制作の裏側を垣間見ることができる貴重なお話を伺うことができた。

 同時にゾンビが弊社を襲撃! 壮絶な現場をとらえたので一緒にお届けする……。

平林良章プロデューサーミニインタビュー

「バイオハザード HDリマスター」のプロデュースを手掛けた平林良章氏。ゲームキューブ版「バイオハザード」が最初に手掛けたゲーム作品。そしていま再び「バイオハザード」に挑む

――「バイオハザード」シリーズは長く続いていて多彩な作品が並んでいますが、平林プロデューサーにとっての「バイオハザード」とはどういうものでしょうか?

平林良章氏: そうですね、僕にとっての「バイオハザード」シリーズの本質とはサバイバルホラーの一言に尽きるんですね。シリーズ中どの「バイオハザード」であっても1番中心にあるのはすごく緊迫した状況下の中で自分の知恵を振り絞って生き延びていくという部分がないと「バイオハザード」と呼べないと思います。そこがサードパーソンシューターだったり客観視点だったりというのは、あくまでも表現の違いであって、芯の部分さえしっかりしてさえいれば、極論ですが、それがストラテジーゲームであったとしても「バイオハザード」と呼べるんじゃないかなと思います。

 ただ、客観視点とサバイバルホラーが上手く融合した作品として、「バイオハザード」は1つの完成形だと思うので、サバイバルホラーのスタートポイントとして、「バイオハザード HDリマスター」をぜひとも楽しんでいただきたいですね。もしかしたら今の方達は「バイオハザード4」以降のサードパーソン視点の作品から入ってこられた方もいらっしゃると思うので、「スタートはこうだったんだ」と体験として知っていただければ、「バイオハザード」ってこういうことをしたかったんだねとわかってもらえると思います。

ゾンビが出てくるシーンとアイテムの配置も、もちろん計算され尽くされている

――どうしても過去の作品はユーザーの中で美化されてしまい(思い出フィルター)、それぞれの方の中で名作として残っていると思うのですが、その記憶の中の名作に打ち勝つために今回の「バイオハザード HDリマスター」ではどのような工夫をされたのでしょうか?

平林良章氏: 今回のコンセプトとしては“思い出フィルター”で美化されているところも含めて、皆さんが原作をプレイした時に思っていたすごく恐くて楽しかった部分を再現できるようにというのが開発のコンセプトです。

 僕ら自身も思い出として残っているのものがすごくて、最初にHD化した映像を見たときに「えっ? 元(原作)と変わらないんじゃない?」って感じたんです。でも原作と「HDリマスター」を並べてみるとしっかり差があるんですよね。だから僕たちが最初に感じた印象は、ゴールではなくてユーザーさんにとってのスタートポイントなんです。つまり、美しいグラフィックスにするのはまず第1段階。そこからさらにプレイ体験をHD化するにはなにが必要なのか? と考えるのにいいきっかけになりましたね。

 今回の「HDリマスター」化で考えていたのは、絵を綺麗にすることだけがHDリマスターのゴールでは無いんです。美化された思い出に負けないことも大事なのですが、「当時の傑作」を今のみなさんに遊んでもらいやすい形にするためには、なにが足りないのか?

 例えば操作感。いわゆるラジコン操作をすごく楽しんでいただいた方やもどかしい部分が楽しいという方もいらっしゃるので、もちろんオリジナル操作として遊べるようにしているのですが、クラッシックな「バイオハザード」をプレイしたことのない、例えば最初から「Devil May Cry」シリーズに慣れているとか、客観視点の3Dアクションに慣れている方達が、初めてラジコン操作に触れたとき、楽しむ前のハードルが高すぎて、ゲームを楽しむところまで行き着いてもらえない可能性があると思うんです。

 ですから操作性という点では、いまのプレーヤーさんに遊んでもらいやすいような操作性を用意することが大切だと思います。画面比率もそうです。昔は「4:3」の画面比率だったものが、今ではHDテレビで「16:9」ですよね。画面の左右に黒帯を入れて「4:3」のままで出すよりは、少しでも昔の記憶に近づけるという意味では臨場感を感じてもらえるような画作りを優先しました。とは言え、オリジナルの画面を削ったり引き延ばしたりしないよう、工夫を加えていますが。

 こういった遊んでもらう前の導入部分を、いかに入っていただきやすくするか? ゲームの中に入ってもらえさえすれば、きっと今のゲームファンにも“傑作”と呼ばれていた作品をしっかり楽しんでもらえると考えています。過去に遊んだことのあるプレーヤーさんに向けては、ビジュアル面で「美化された思い出」に追いついた時は、ゲームプレイ中の“思い出”を損なわないということですね。「昔は入っていた要素なのに、なぜ今回は入っていないの?」ということを極力ないようにしたかったので。

 たとえば、ドアの開け方ですとか……実はドアって1個ずつ“間”が微妙に違うんですよね。実はドア職人と呼ばれるスタッフがいて、洋館にある200以上のドアの“間”を調整しているんです。入るときの開き方と戻ってくるときのドアの開き方で違いますし。こういったドアの開け閉めって現在のゲームの基準ではスキップしても良い部分なのですが、スキップすると当時の作品として完成されたテンポが上がってしまう。ドアの開け閉めの間に「何かあるんじゃないか?」というドキドキ感が損なわれてしまうのは問題があると感じました。

 敵の出現とアイテムの登場もちょうど良いバランスを心がけました。例えば敵が登場し、ここで何度か噛まれてしまい、その先何部屋かクリアしたらハーブがあってホッとする。こういった気持ちの流れをあえて変えるというのは違うよねと話し合いました。こういった所はあえて変えずにいます。現在のゲームファンに向けたチューニングについては、スタッフ総出でポイントをホワイトボードに書き出して、「ここは直そう! ここは変えない!」と徹底的に話し合いました。

――では、ドアの開け閉めのタイミングはゲームキューブ版とほぼ一緒と言うことですか?

平林良章氏: そうですね。ハード間の違いは若干ありますが、ほぼ一緒です。ユーザーさんの感じてもらえる“間”は昔も今も同じで、逆にその感覚には気をつけました。

――ドアの開け閉めの時間が違うという話しは面白いですね。

平林良章氏: 初めはデータのなにか手違いかなと思ったのですが、意図的にそこは調節していたということで、オートクチュールだったんです。

――でも、平林さんは、始めて手掛けられた作品がゲームキューブ版の「バイオハザード」ですよね? その当時からドアの開け閉めのタイミングとかレクチャーを受けてらしたのでは無いですか?

平林良章氏: 当時は1番下っ端でしたから、そういった諸先輩方が考えている部分は知るよしもありませんでした。それこそ背景の木にカブトムシがいるですとか、敵が見えなくなるインビジブルモードがあるですとか、そういった一プレーヤーの視点で見ていたんですね。でも今、作った側の気持ちになって再現しなければならなくなったとき、各要素の制作者の“思い”の深い部分まで考えさせられましたね。

 また、シーン毎に「限られたマシンスペックの中でどうみせるか?」を徹底して考えて制作されているので、実は現代のグラフィックスと見比べても実は遜色ないんです。ただしその代償として、シーン毎に全く作りが異なっているので、それぞれのカットを再現するのはまるでアンティーク時計の部品をバラして再構築するような苦労がありました。

ある意味主役とも言える洋館。徹底的に作り込まれている
自分で開けなければならないということで、ドアを開ける瞬間の恐怖感はゲームならでは。ゾンビに襲われる覚悟の上で開けなければならないことも。ドアの開け閉めは重要な要素と言える

――ホラーゲームは上手くいかない“もどかしさ”というプレイ感も大切なところがあるかと思うのですが、一方で操作感という所ではどれくらいのレベルに持ってくるかという点は難しいですよね。そのバランスは作品毎に違っていて、それこそがゲームのオリジナリティだとは思うのですが。

平林良章氏: 作り手としてそういった操作性の部分は、言い訳にできてしまう部分でもあるんですよね。遊ぶ側からすれば「上手く作れなかったんでしょ?」って見えるんですよね。「調整しきれなかっただけでしょ?」って思われるのは避けたかった。

 操作性をそのままにしておいても、「原作当初を再現したのだから」と言い訳がきくんです。でも、僕らとしてはそう感じて欲しくなかった。原作を大切にすると言うのは、僕たち制作者側のエゴじゃないのかと。“もどかしい”がプレイしにくいとかゲームを続けたくないといったレベルだったらまずいかなと。ラジコン操作はプレーヤーを選ぶ操作法です。当時もそうだったし、今はもっと選んでしまうと考えています。

 いまでは、非常に上手にチューニングが施されているアクションゲームもありますから、「バイオハザード HDリマスター」の新しい操作方法がプレイしにくいだけのものであってはならない。でも、快適すぎたら、先ほどの話では無いですが、もどかしさが演出している部分などが無くなってしまう。

 制作現場とも話したのですが、「ゲームキューブ版とテンポが変わるのはまずい」と。今の操作方法だと直感的に動けてさっさと移動できるんです。当時のゲームキューブ版は少しもったりとしているんです。基本的にボタンを押さないと走らないというところもあって、基本的なテンポが“歩く”というところをベースにして作られているんですね。でも現代的な操作方法だとスムーズに動け過ぎてしまいます。

 ですから、どこまでレバーを倒したら走るに切り替わるのかについて感度はギリギリまで絞って、深く倒さないと切り替わらないようなバランスにしています。最初は半分くらいで走るような設定にしたら、延々と走っているんです。それでは「バイオハザード」のテンポでは無くなってしまいます。

 本当にギリギリまで調節しテストしたのですが、担当者から「平林さん、これ、もうレバー倒しても走りませんよ」と言われたんです。人によってはコントローラーを使い込んでいて、古くなっているとコントローラーの動きが甘くなるんです。ですから、ある領域まで踏み込むと、コントローラーによっては反応しない場合もある。そのギリギリの所まで来ないと走らないような設定にしてあります。

――それでは古くなったコントローラーを持ってきてテストしたのですか?。

平林良章氏: そうですね、色々なコントローラーでテストしました。

――PS4とXbox Oneとの違いとアピールポイントは?

平林良章氏: 解像度が、PS3とXbox 360版は720pですが、次世代機版は1080pで違います。

 出力される映像だけでなく、素材自体を720pと1080pで根本的に変えています。一般的なプロセスであれば720pで制作した素材を1080pにアップスケーリングして使用するのですが、この作品はそこにもこだわっています。

 また、ハードスペックが上がっているので、影の表現の仕方も1080p用の調整を入れています。

――では最後にリリースを待っているユーザーさんに向けて一言お願いいたします。

平林良章氏: まずはPS3とXbox 360版が「バイオハザード HDリマスター」のお披露目となります。昔プレイされた方は思い出フィルターを加味しても、きちんと再現できていると思いますので、良き思い出を楽しんでいただきたいと思います。

 また当時は1ハードだけの発売でしたから、プレイできなかった方もたくさんいらっしゃると思いますが、今回初めてプレイされるという方は、「サバイバルホラーの原点」として楽しんでいただければと思います。

ドラマの顛末はぜひ自身の手で切り開いて、恐怖の物語を体感して欲しい

【「バイオハザード HDリマスター」プロモーションビデオ】

ゾンビ襲来!!

弊社の玄関に現われたゾンビ達……なにを求めているのか? 生前の記憶を元にさまよい歩き、押し寄せてくる……
玄関から階段へ。ゲームの洋館とは違い、現代的な非常階段だが、薄暗い中ゾンビは確実に迫ってくる……
会議室を開けると遂に犠牲者が!! 振り向いた様はまざにゲームのゾンビそのもの!
最後に犠牲となるのは撮影者なのか! みなさん、さようなら、さようなら……

 今回編集部を襲撃したゾンビの特殊メイクを担当したのは「有限会社 自由廊 特赦メイク・特殊造形 アーティスト養成学校 AMAZING SCHOOL JUR」。現役で活躍するプロのアーティストが講師として全ての授業を分担しており、実践的なアドバイスを受けることができるとともに、講師によるデモンストレーションの機会も多く、プロの技術に直接触れることができる特殊メイク・造形学校。また、特別講師として、現在ハリウッドの第一線でプロとして活躍しているアーティストを招いての授業などが行なわれている。

□AMAZING SCHOOL JUR
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(船津稔)