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SCEJA、河野弘氏インタビュー

PS4は2月に出すと決めたので、台数は絶対にそろえていかなければならない

写真は「SCEJA Press Conference 2013」での河野弘氏
9月19日~22日 開催(一般開催日:21日~22日)

会場:幕張メッセ1ホール~9ホール

入場料:1,000円(中学生以上・前売)

1,200円(中学生以上・当日)
入場無料(小学生以下)

 東京ゲームショウ2013の開催に合わせ、様々なインタビューが実施された。ゲームタイトルの開発者も数多く来場しており、これまでにもいくつかお届けした。また、ゲームメーカーのVIPのインタビューもいくつか企画され、その1つ、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア(SCEJA)のプレジデントを務める河野弘氏にお話を伺うことができたのでお届けする。

 プレイステーション 4や新型PS Vita、PS Vita TVはもちろん、ゲーム開発者とのリレーションシップ、インディーズゲームへのアプローチ、PS4発表を受けてのユーザーの反応など様々なことを語っていただいたので、ご一読いただきたい。

好意的に受け入れられたという新型PS Vita

--東京ゲームショウ2013の会場イベントでも「METAL GEAR SOLID V THE PHANTOM PAIN」など盛り上がっていましたが、PS4の発売に向けて、こういった大作が発表されるのは心強いですか?

河野弘氏: もちろんです。私たちプレイステーションを代表するようなタイトルが新しいプラットフォームにそろってほしいと思っていますす。開発者の皆さんに新しいチャレンジをしたいとか、ゲームとして何かできそうだと感じてもらえるのは心強いし、一方で、そこに限定されるようなこともしたくはないです。プラットフォームは開かれていて、新しい人たち(開発者)にもチャンスを与えていきたいと思っています。

--それが力を入れていると発表会でも仰っていたインディーズゲームですか?

河野弘氏: それも1つですね。インディーズゲームはある意味宝の山だと思っています。将来性においても。これらの取り組みというのは、今始まったわけでなくて、プレイステーションが始まった頃から「ゲームやろうぜ」とかやっています。SCEのオリジンはやはりソニー・ミュージックの血が流れていて、タレント発掘というのがあるんですね。そういうことを支援していこうという現われですし。ゲーム業界に可能性を感じてくれる人にいるのであれば支援していかないと、業界がいつも決まった顔ぶれでやっていくことになるので。

--いつも同じ顔ぶれというのは感じていらしたことですか?

河野弘氏: 心強さと同時に、新しい人が入りづらくならなければいいなと思いますね。2010年にプレイステーションに来たときから、メジャーなゲームメーカーとのコミュニケーションはいやが上にもあるわけです。そこの開発チームに対して訪ねて行くこともあるわけです。それ以外にもうちと直接契約を結んでいないデベロッパーさんのところとかにも足を運んでいきます。その最たるものがサイバーコネクトツーさんとかガンバリオンさんとかで、そういった会社とお話をすることで、開発現場に可能性があるというか、そこが元気かどうかで業界が見えるというか。そういったところのコミュニケーションを大切に思っています。最近時間がとれなくていけてないのですが、行くと「あまりそういうこと(ほかでは)やりませんよ」といわれたりしますが(笑)。

 おもしろかったのは、サイバーコネクトツーさんの松山さんのところに行ったとき、「松山さんに会った方がいい」と言われて、松山さんを訪ねましたと言ったら、俄然やる気を出されたようですけどね(笑)。

 開発の方がどれだけモチベーションを持てるかとか、作品を形にしたいとか、我々ができるレベルでの手助けが重要だと思います。

--インディーズの方々って開発はできても販売促進といった点では難しい面も多いと思うんですね。そのなかで、SCEJAさんは発表会でも販売も促進していくと仰っていますが、具体的な計画はあるのでしょうか?

河野弘氏: (インディーズゲームの)ほとんどはたぶんダウンロード専用だと思うんですね。そうなると、我々自身が持っているPlayStation NetworkとかのメディアやPS Plusといった定額のサービスとかでお届けできることがあると思うんですね。そこに関しては、無理がないというか意思次第でできることはあると思う。

 当然その中で、人気の出るものと出ないものがでてくる。それはユーザーの選択ですから仕方ない。でも、少なくともそういった場を提供することはプラットフォーマーとしての役割だと思うんです。ぜひやりたい。

 1番重要なのはサポート体制だと思うんです。新しいプラットフォームが立ち上がるときは大変なんですよ。

--大手とインディーズとのサポートの違いは?

河野弘氏: 基本的にはありません。大手さんは大手さんでリレーションシップを組んでますし、内部の体制もしっかりしているので。大手だからだとかインディーズだからだとかで線引きはありません。十分かと言われれば、わからないのですが。

--「SCEJA Press Conference 2013」で様々な発表が行なわれたわけですが、それを受けての市場の反応は?

河野弘氏: まずはPS Vitaの「2000番」。これは第2ステージに乗せて薄くて軽くて、ユーザー層を広げていく。それに対する反応もいいですし、想定内です。想定外と言えば、PS Vita TVですね。これは発表会ではそんなに盛り上がらないと思ってたんですね。自分はPS Vita TVにすごい可能性を感じていて、特別なプロジェクトを立てて、毎週ミーティングを行なっていて、私も出席して進捗を確かめています。たとえば動画サービスを呼び込んでくる部会とか、どうやってマーケティングやっていくかとか、PSNとどうやって連動させていくかなどです。それと、プレイステーションフォーマットからしばらく離れていた人をどうやって軽い感じで引きつけていくかをやっていきたいと思っているんです。ゲームメディアやゲームファンとは違うところにアプローチしなければと。

 しかしふたを開けてみると、ゲームのファンの方からすごく反響あって、ソニーストアでデータをとっているんですが、新型PS Vitaと一緒に買う人がすごく多い。単純にPS Vitaを大型のディスプレイで遊びたいということなんでしょうね。それと、PS4と一緒に買いますという人もいて、PS4の予約はまだ開始していませんから、予約が始めれば一緒に買いますという人も多い。こちらはリモートプレイですね。これらのデータには驚きましたね。そんな風に考えてくれているんだと。お値段も比較的買いやすいようにハードルを下げているのでそれもあるのでしょうけど、案内している数はすべて売り切れているんです。

「SCEJA Press Conference 2013」の発売日が2014年2月に決定したことに対しては、やはりがっかりしたという意見が多かったという

 そしてPS4の発売日は、きっと「がっかり」と言うコメントが来るんだろうなと思っていました。ただ、SCE全体のこと考えたり、地域の事象、タイトルのそろい方を考えると、日本は2月にしようと会社で決めたわけですから、(この結果は)覚悟はしていました。でも、「がっかりだ」と仰る方は楽しみにしてくれている人たちなので、どうやって答えていくかなと言うのが課題で残っています。長い目で見ると「あの判断は正しかったよね」といってもらえるようにするのはやっていくとして、やはり「誠意」ですよね。

--「KNACK」の同梱などのことですか? それ以外にも考えておいでですか?

河野弘氏: 「KNACK」の同梱とあと延長保証があの時に考えた答えですけど、「KNACK」は新規IPですので、たとえば「FF」とかであれば価値がわかるのでしょうが、価値が計りきれないんですよね。でも、「KNACK」はPS4を1番知っているマーク・サーニーが作っていますし、自社のIPなのでふさわしいと思って入れています。延長保証も安心料として入れています。

 しかし、それがユーザーに伝わっていないのであれば、今後も伝える努力をするものの、さらに誠意を見せられないのか? 「がっかりだ」という声が沸き起こってそれに乗って「ごめんなさい!」という謝罪で出すのではない。どうやって(ユーザーの声に)答えていくか。決して謝罪ではなく、気持ち……なんかやれることをやろうよと言うのが今の気持ちです。そしてそれは打ち出していくつもりです。

--これまではTGSに新型ハードが出展され、そこから2カ月でハードが発売されてといったスケジュールでしたが、2月発売ということになると、少し時間が空いてしまいますね。

河野弘氏: 大きなイベントはないのですが、逆に言えば小さなイベント。PS Vitaの時にもやりましたが、日本全国を巡るという。イベントなどをやりたいと個人的には考えていますね。もちろんそこではPS VitaやPS Vita TVも遊ぶことができるという。具体的なスケジュールも検討中なので、10月中旬の予約の開始後に予約促進も含めてやれればなと。

様々な可能性を秘めているPS4

--発売が2月になるので、たとえば先取りの機能ですとか、日本独自のアプリケーションの導入などは考えていらっしゃいますか?

河野弘氏: 特別と思ってもらえるかわかりませんが、日本にしかないソリューションはあるんです。たとえば「NASNE」とか。だから、私たちはPS4の位置づけを考えると、「NASNE」との連動は必須だと思っているんですね。だからそういうものをどれだけ準備できるかは考えています。ですが、ゲームに関して日本だけ特別にとなると、仕様に関わってくるの難しいかなと思いますけどね。

 「NASNE」は先日1TBに対応すると言いましたが、PS Vita TVもそうなのですが、やはり「NASNE」に対応していくということは考えています。どこまで進化と言えるかわかりませんが、結構おもしろい商品なので、チームはいろいろなアイディアを持っているようです。ゲーム性を持ったAVネットワーク機器じゃないですか? タブレットやPS Vitaが繋がってきますし、当然PS4も繋がります。デバイスの乗り入れを考えると、「NASNE」が先を行ってるんですよね。そういうことを考えると、我々がもっと使いやすくわかりやすくソニーグループとして伝えたいと思います。

 PS4を中心に連携して様々なことができるというのは「SCEJA Press Conference 2013」の最後に流したPVにすごく現われています。あの世界(各デバイスを使ってそれぞれのシチュエーションで様々なゲームが連動して楽しめること)を実現するためにはゲームの作り方……ああいった遊ばれ方をするようなゲームの作り方をしなくてはいけないし、そういった意味でもチャレンジなんです。ああいった世界を実現しませんかと、各ゲームメーカーさんに提案しているところなんです。PS4が出てきて、グラフィックスがきれいになるのは当然として、こんな世界が実現したらおもしろいし、実現してみませんかと提案しています。

--PS4が中心になって、各デバイスが繋がってというのは、PS3とPSPとかでも実現できたと思うのですが、PS4になってどのように変わるのかもう少し具体的に教えていただけますか?

河野弘氏: もう少し夢を語ると、見ている人がどんどんエネルギーを供給していくというか、見てる人たちがプレーヤーに影響を与えることができるということがシステム的にできるんですね。そう考えると、PS4はPS3と全然違い可能性を持っているなと思います。

--これまではゲーム映像を配信するとなると法律に引っかかるかなとかグレイなものがあったのですが、そこもSCEさんとしてクリアしていくということですか。

河野弘氏: 権利系とかですね。パブリッシャーさんから見て、このゲームはダメだとか、このシーンは配信できないなというところは、配信できないようにすることができます。たとえば音楽だけは配信できないとか。その辺はゲーム会社さんが判断できるようになっています。

 この配信系の話は、現段階では各社さんとも非常にポジティブにとらえてもらっています。映像をお客さんに発信することがどれくらいの影響力があるかについてはポジティブに議論されています。

--今までアップするとすぐに消されていたりしましたが、それとPS4での配信の違いは?

河野弘氏: SCEが公式にやるという安心感ではないでしょうか。もうトレンドとして(映像配信は)起きつつあるので、それに対してどう行動を起こすかという段階ですね。

--PS4が出る中で、PS3から乗り換えてほしいと思われると思うのですが、同時にPS3を販売していく戦略とは?

河野弘氏: 正直に言えば、PS Vitaが出たときに、PSPからすぐに乗り換えてくれたらそれはうれしいです。ただ、やはりソフトというのは、新しいハードが出たらすぐに移るわけではないので、そう言うことを考えるとオーバーラップする時期があるのは仕方ないことだと思うんですよ。お客さんのことも考えても、いきなりすべて新しいものにというのはありません。ある程度平行してプラットフォームが存在するという感じですね。

 ある意味、PS4からPS3に移行するように手助けすることはできるかなと。たとえばPS3とPS4で出ているタイトルでPS4に移管しやすいようにすることはできますよね。「FFXIV: 新生エオルゼア」ではPS4に無料で移管すると仰いましたが、それも方法の1つですし。

 PS4が出るからといってPS3の価値がなくなるわけではなく、これだけのソフトウェアの資産がありますし。そこは潮目が変わるタイミングがあるかなと思いますね。

--新型PS Vitaではツートンカラーの新色が用意されていますが、これはどういう経緯で決まったのでしょうか?

河野弘氏: これは、原色系がいいんじゃないかとかいろいろな議論があって、ツートンカラーで、ほんわかと柔らかい色じゃないですか? うーーんって(笑)。たとえば私くらいの年代だと「アピール弱くない?」といった意見もあったんですが、製品担当の者やデザイナーといった20歳代の意見によれば淡い色調だったんですね。やはりターゲットユーザーに近い人たちの意見やアパレルの色のトレンドとか考え合わせた上で、決めました。

 これまで購入いただいていたのはコアなユーザー層で、次に狙うのはその周辺の人たちです。ですから女性や若者を意識した柔らかめになるんですよね。PSPの時と同じ発想だと思います。

PS Vita TVはPlayStationアーカイブスや動画サービスを楽しむ端末として広げていきたいという

 PS Vitaは本当にがんばらないといけませんね。でもPS Vita単体でがんばるわけではなく、PS4やPS Vita TVなどプラットフォーム感を出していこうと思います。

 PS Vita TVは広めていければおもしろいかなぁと。たとえばPS Plusと一緒に販売していくとか。動画サービスをいろいろフィーチャーしていくと思うので、とにかくおもしろいねと思ってもらえるようにしたいですね。

--やはり重要なのはコンテンツの量だと思うのですが、PS Vitaはもちろん、PlayStationアーカイブや動画サービスがあれだけ見られて、さらにはGAIKAIの技術を利用してPS3のタイトルを楽しめるといったことも発表されました。これからも積極的に増やしていくつもりでしょうか?

河野弘氏: そうですね、プレイステーションのプラットフォームに存在するコンテンツの宝の山を活性化させていくことは、すごく重要だと思うんです。ビジネスとしてもそうですし、ゲーム産業としてみてきたときに、古いものの良さを見直してもらえるようなトレンドができると、これはすごいことだなと思っていて、そう考えるとPlayStationアーカイブスの資産の価値はすごいんです。その価値の顕在化を出せていないのはプラットフォーマーとして大きな課題だと思っているんです。これまであれだけ名作をたくさん作ってもらっていて、それを紹介できればなと。

 PlayStation Plusで100タイトル以上あって、是非どんどんやっていこうよと言っているんです。ゲーム会社さんに交渉して、無料プレイでやりましょうと誘致しているのです。そういったときに重要なのは手軽さだと思うんです。そういった意味でもPS Vita TVは、過去の膨大な資産をおもしろく提示することでいろいろできないかなと思いました。僕はPS Vita TVを見たときに、これはハードとして売るのではなく、月々500円のPlayStation Plusを遊ぶためのデバイスとして売りたいよねと話していたんです。たとえばPlayStation Plusの会員になればPS Vita TVがついてくるみたいなことがやれればいいなと。

--最後にユーザーに対して意気込みのほどをお願いいたします。

河野弘氏: PS4は2月に出すと決めたので、台数は絶対にそろえていかなければならない。2月にほしいという人にはきちんとお届けするということで、社内で何台確保しなければならないとか議論しています。

 そして、PS4のみならずプレイステーションプラットフォームとしてやらなければならないことは、ゲーム全体の活性化だと思うんです。どこかの競合とか、スマートフォン対策とかではなく、全体的にゲーム産業が活発になること。そのためには家庭用ゲームのウエイトが非常に重要だと思っています。

 スマートフォンのソーシャルゲームがもたらしたインパクトは大きくて、それを家庭用ゲーム機がいい意味で学んだというか、得られたことはあるんですね。ハードルを下げてプレイしてもらって、その上でビジネスをやるとか。気軽にゲームをプレイしてもらうという点でもソーシャルゲームから学ぶことはありましたね。

 しかし、全部がそうなるかというとそうではなくて、産業として成長するためには家庭用ゲームの没入感ですとか、いわゆる大作と呼ばれるゲームも大切ですし、カジュアルなところも大切です。その全体をやっていかなくてはいけない。プレイステーションはどちらかと言えばその家庭用の活性化させるためにプラットフォーマーとしての責任があると思うので、PS4のみならずPS Vitaとの連携など、ここをしっかりとやっていきたいと思っています。そして、こんなゲームを表現できるんだと思ってもらえるような、開発者のモチベーションになればなと思います。そうでなければ業界が一種のコモディティ化してしまいますし、そうならないようにするのが我々の使命感の1つです。

(船津稔)